森のかけら | 大五木材


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200908298月も終わります。今年は夏らしい夏ではなかったような気がします。毎年これぐらいだと過ごしやすいのでしょうが、反動で冬が怖い気もしますが・・・。住宅業界は相変わらずですが、この時期毎年㈱エス・ピー・シー(以後SPC)さんのところから『えひめ・住まいと暮らしの年鑑』が出版され、今年はどういう会社が掲載されているか見るのも恒例です。県内のそれなりの規模の工務店さんの数も分かっているので、毎年そう極端な変化があるわけではありませんが、ネット全盛の時代、紙の印刷物の刷り上りの匂いを嗅ぎながら、めくるサラの紙の質感は何ともいえません!弊社も掲載させていただきました。

1年間にわたり店頭に並べられる雑誌で、家を考える方は一度くらい手に取られた事もあるのではないでしょうか。ここ数年ずーっと広告を掲載させていただいていますが、ご来店された方からは、「見ました」とか、お声を掛けていただく事も多いです。予算もないので、他にあまり広告も出しませんが、SPCさんには【森のかけら】製作の最初の部分から大変お世話になっており(それ以前からもいろいろお世話になっているのですが)、こちらの雑誌にだけは毎年掲載させていただいております。

昔まだ、『普通の材木屋』だった頃・・・材木屋にとって広告などは縁遠い世界でした。宣伝してどうするの?という感覚でした。特定少数の工務店・大工さんが相手に素材を供給するという立場でしたから、広く宣伝する意味もありませんでした。その頃は、まさかこんな風になるとは夢にも思いませんでしたが・・・万事塞翁が馬・・・人の運命とは不思議なものです。

弊社がこっちの世界に足を踏み入れ始めた頃、うちを担当してもらっていたのがSPCのY嬢でした。もともと絵や文を書く事が好きだったので、オリジナルな木の物を作りたいというおおまかな構想はあったのですが、具体的な形にはなっていませんでした。まだ【森のかけら】の姿は遠く霧の彼方にありました。その担当のY譲に私のぼんやりした夢を話すと、目をキラキラさせながら聞いてくれました。それまで、そういう事は全てを自社で自己完結させねばならない(お金もかけたくないので)と決め付けてしまっていて、デザインや広告などを外部に頼むなどとんでもない(恐れ多い)という感覚でした。しかもそれで結局しっかりした物は出来るわけなどなく、いつも煮え切らない気持ちで悩んでいました。そういう時にY嬢が背中を押してくれました。

20090901 チラシまずは会社のチラシをお願いしたのですが、これが私の思い描いた以上の物に仕上てもらいました。そのデザインをしていただいたのも女性のデザイナーの方でしたが、女性らしい柔らかい感性でまとめてもらい、今までのモヤモヤした気持ちが一気に吹き飛びました。おおまかな構想はお願いしておいたものの、仕上がった原稿は眩しく輝いて見えました。その原稿の満足感が【森のかけら】のシールデザインへとつながり、初期の【森のかけら120】へと発展していくのです。

あの時、あの1枚のチラシがなければ、今の【森のかけら】は存在しません。二人の女性の感性が注入されたからこそ、女性の方からもご注文いただける『感性商品』に仕上がったのだと改めて感謝しています。初めて【森のかけら120】の新品の解説書を手にしたとき、涙が出そうになるほど嬉しくてたまりませんでした。Y譲とデザイナーの方と三人でささやかな祝杯をあげさせていただきましたが、あの時の事は今でも忘れる事は出来ません。自分の初のオリジナル商品と呼べるものが、世に出たという感動に心は打ち震えました。改良を重ね、バージョンアップした物が出来ても、あの時の感動を超えることはありません。

思えば3年前の暑い夏の日、大五木材が新たな道を踏み出したのです。お二人の瑞々しい感性が、私の夢を極彩色の現実に変えてくれました。あれから【森のかけら】は、北海道から熊本まで全国の多くの木のファンの元に届けさせていただきました。延べにして約30,000個の【かけら】がここから旅立っていきました。当時誰もが「夢のような話」だと嘲笑しました。「そんな物が売れたら苦労しない」と。しかし私には確信がありました。あの時の感動が私を支えてくれました。あの夏がなければ、すべてがありません。この時期が来るたびにいつも感慨深くなります。あの夏にお二人が撒いてもらった種は、その後紆余曲折がありながらも更に洗練され大きな花を咲かしてくれました。あの夏は、日差しも心も燃えた【魔法の夏】でした。




新しき風

今日は天下分け目の衆議院選挙です。私も家内としっかり選挙に行って来ました。選挙の結果については、それぞれの立場でそれぞれのご意見があると思いますが、この場でそれを論じるつもりもありません。しかし政治に無関心だった世代が相当投票にも行かれたようで、いずれにしろ政治が熱を持ってきているのは事実です。どこが政権を担当するにしても、真摯に取り組んでいただきたいと思います。

政治だけでなく、変わらなければならない事と、変えない事はどの世界でも常に表裏一体です。木製品でも、新商品が出る一方で廃盤になる木製品もあります。木製品は他の工業商品に比べると、比較的賞味期限の長い性質を持っていると思います。家そのものが、多少デザインや構造が変わろうとも、根本的な住まい方は普遍的ですから当然の事ではあります。また、建築材として使える事のできる木そのものの種類にも限りがありますので、小さなモデルチェンジを繰り返しながら延命してきました。基本的なスペックは変えようがないのですが、新建材の商品の開発のスピードがめまぐるしく、それに振り回される形で木材にも『新しさ』が求められるようになっています。

CAFL8VJV設計士さんや工務店さんも、自分のデザインした空間にマッチする『これ』を決めて使われていても、しばらくすると飽きられる方もいます。これは、仕方ありません。施主さんにしてみれば、どれもほぼ初めての体験なのですが、作る方にしてみれば、日々同じ作業の繰り返しですから、常に新鮮な感覚でいるという事が難しくなります。毎日ラーメンばかり食べていれば、たまには肉も食べたくなる感覚でしょう。供給する我々も同じような欲求持つ事はあります。たまには変わった物を・・・しかし、メーカーはそういう訳にはいきません。

桧の製材工場は、桧を作り続けなければならないし、そう簡単に樹種転換が出来るものではありません。また、無垢のフローリングにしてみても、微妙なスペックの違いまでも含めれば数数百種類はありますが、実際に先方の求められる条件(価格、サイズ、国産か輸入か、産地、節の有無、仕上げ、塗装、納期などなど)を1つ1つ詰めていけば、どんどん範囲が絞られてきて、せいぜい数点になります。そこで、最終的な消去法でどれかに決めていく・・・そういうやり方をすれば、おのずと樹種は限られてしまいます。

ある程度こちらに任せていただければ、いろいろなご提案は出来ますが、条件が出れば出るほど、必然的に樹種は限られます。特に国産材に絞られるとその傾向は顕著です。ただ、1年間程度時間をもらえれば、大抵の木で作る事は可能です。適材を伐採し、製材して人工乾燥させ時間をかけて養生、そして加工すれば、変わった広葉樹といえども出来ない事はありません。しかしそのためには、ぶれのない数量やサイズ、納期の確定など条件があります。施工中に「あと1坪足りない!」には対応できませんし、余ったら返品も論外です。

20090125 カラマツ「1年間も待つの?」と思われるかもしれませんが、終の棲家に自分の気に入ったフローリングを張ろうと思ったら、たいして長い時間ではないと思います。少なくとも40~50年は森で生きた木を使おうとしているのであれば。冷静に考えれば、森にある木が伐採され、製材され板にされ乾かされ、加工されフローリングなどになるのです、1年ぐらいかかっても決して長くはないと思います。建材感覚で、工場で原料を加工して生産されていくものとは本質的に違います。同じような感覚で捕えられては、とても太刀打ちできません。

新しさを求める向上心は理解できますが、フローリングなどの製造は酒造りのように昔ながらの基本に忠実な作業こそが生命線で、そう簡単に新しいものは作れるものではありません。古い体質と思われるかもしれませんが、かたくなに1つの商品にこだわり作り続けていく会社ほど、基本スペックは変えないものです。それは、それこそが最良だと考えているからです。そう分かっていながらも、現場から降り注ぐ『新しきもの』への欲求の風に押し倒されそうにもなることもあります。日々いろいろな所からいろいろなタイプの欲求風が吹いてくるのです。




20090829 火天の城2以前にもブログでアップさせていただきましたが、映画『火天の城』の公開が9月12日に迫り、いろいろな番宣がはられています。原作本をがっちり読んどいて言うのも何ですが、なるべく映像の先入観なしに映画を観たいと思っていたので、観ないよう読まないように避けていたのですが、ついつい目に入ってきます。最近のテレビの番宣はどう考えてもやり過ぎ、喋りすぎでしょう!他の映画ですが、あれだけ日中やれば、観る前から観た気になって実際に観なくなるのでは・・・。

 

それはそうと、既に前売り券も購入して、しっかり特典の木箸も手に入れました。朱色でアクリル塗装された物で、何の木を使っているのかは分かりませんでした。まあ、こいういう物ですから使う気もないのですが。実は【森のかけら】ブランドの一環として、『木箸』も視野に入れているので、いろいろな木箸の情報を集めています。しかし、色々調べれば調べるほど、木箸は難しそうです。まあ、他にも完成させて販売にまでもっていかねばならない商品がたくさんあるので、どっちにしろ先の話になりそうです。シンプルな形状の物であればあるほど、商品化は簡単ではありません。久万郷の井部君が、林業家からの立場から一足先に、久万杉を使って割り箸の商品化をしました。自社林を有効に使うというコンセプトで、野菜などを扱う『ちん』で販売をされていますが、かなり浸透してきてようです。ただ作ってみましたではなく、コンセプトや販売方法もしっかり考えうまく展開している事例だと思います。どうして作るのか、どうやって誰に売るのか、『作る物語』が必要です。それにしても久し振りに映画の前売り券という物を購入しました。

20090829 安土城今晩のテレビ『世界ふしぎ発見』で『戦国築城ミステリー・幻の安土城誕生秘話』がありました。番宣だと分かっていながらも、しっかり作戦にのせられました。案の定、映画の映像も結構使われていましたが、性格的にこういう番組は好きなのできっちり観てしまいました。過去に類のない奇想天外な安土城の中でも最大の論争の的、4階を貫く吹き抜があるかどうかが取り上げられていました。最近になって安土城のいろいろな資料なども見つかり、この番組以外でも安土城復元のCGはよく見かけるようになり、常に吹き抜け論争は問題視されますが、これは「吹き抜けあり」でなくてはロマンがないでしょう。私としては、吹き抜け+突き出した能舞台説を断然支持します!

20090829 松山城『火天の城』公開を控え、愛媛県内の城郭と粋なコラボレーションも決まったようです。江戸時代には全国に約170箇所も城があったようですが、戦災や火災、戦争などによりその多くが焼失し、今や江戸時代以前に建てられた天守が残っているのは全国でわずかに12城しかないといわれています。これらの天守は、「国宝」や「重要文化財」などの指定を受けていますが、その12のうち2つが愛媛にあります。1つは松山城、もうひとつは宇和島城です。特に松山城は、日本で最後の完全な城郭建築としても有名なようです。

この2つの城を含め、今治城、大洲城の4つの各城郭の天守入場券や鑑賞券を購入すると、もれなく『火天の城』の割引券をプレゼントするというものです。また逆に、映画の半券で各城郭の入場が割引になるようです。粋な計らいです。昔はよく家族で城山に登っていましたが最近ご無沙汰でした。久し振りに松山城の天守に登って、気分だけでも天下を睥睨(へいげい)してみようかと思います!

20090829 熊本城松山城は町の中心部の小高い丘の上にあり、市内を走れば嫌でも目に付きます。こういう事があると、改めてここは『城下町』だったのだと感じます。松山城も定期的に改修工事が行われているようですが、私などは城への納材などと聞くと、それだけでもう興奮してきます。一昨年は、木青連の会議の一環で熊本に行ったのですが、丁度築城400年祭りだった『熊本城』も観てきました。富山に行った時も、既に当時の城はなくなっているものの整備された『富山城址公園』に行ってきました。なんだか数年前から、妙に『城』が気になるようになってきました。

子供の頃、魚が大の苦手で特に刺身は一切れも食べられませんでしたが、大人になるとすっかり嗜好が変わってしまい、今では刺身は大好物のひとつです。そんな風に、人の嗜好も年代によって少しずつ変わっていくものだと思います。『安土城』のキーワードについつい反応してしまいます。安土城の大型模型にも手を出しそうになっている自分が怖いです・・・。映画についての詳しくは、観終わってからゆっくりたっぷりアップします。では、いざ火天の城へ!




20090811 ブタマジロ2右の画像は決して『風の谷のナウシカのオウム』ではありません。以前にご紹介した【幻の珍獣・ブタマジロ】が群がっている画です。少し大きめの親と、小ぶりな子のファミリーがいたのですが、このたび飼い主が見つかり遠く北の方へもらわれて行きました。兵庫県生まれですが、縁あって愛媛で捕獲され、東北の方で飼われる事になったわけですが、元気に育ってほしいものです。我が家の自宅で1匹だけ、プライベートで飼っていて者を残して、すべていなくなってしまいました。あればあれで、売れるかな?と心配になるし、なくなればないで寂しくなります。

20090811 ブタマジロ早く次を仕入れ・・・いや、捕獲すればいいじゃないかと思われるかもしれませんが、これを専門に作って・・・いや、発見出来る訳ではありませんので時間もかかります。このブタマジロたちは、何をしてくれるわけでも何か芸があるわけでもありません。いわば、ただの置物ではあります。桧の間伐材で作った・・・いや、生まれた珍獣です。これは決して、間伐材の有効活用などとお題目を唱えようとして作られたわけではなく、そこにあった材料で面白く遊んでみたという感覚のものです。私もこれで、間伐材の利用促進などと謳うつもりは毛頭ありません。

今、間伐材の有効活用が大きな社会問題にもなっておりますし、実際にそういう活動に熱心に取り組んでいる団体もあります。それはそれで素晴らしいことだし、是非頑張っていただきたいと思います。しかし現実には、ブルドーザーで一気に押し流してケリがつくような簡単な問題ではありません。一口に間伐材といっても、その対象となる実像と思いの間にはかなりの差があります。それは地域の林業の状況や流通体系などによっても様々です。ごく一般的に『間伐材』として語られイメージされるのは、るそれは、『森を育てていく中で、密集しすぎて、太陽の光りが届かなくなったりうまく成長できなくなった木を効率的に育てるために、弱ったり曲がったりした小さな木を間引くときに発生する、建築などに不適な小径木』だと思います。もっと分かりやすく言えば、大きく立派な木を育てるために間引かれる小さく曲がった未利用材です。

昨今の林業の疲弊感は並大抵のことではなく、現場で一切の余裕がありません。間伐によって残った木が高値で取引されれば、間伐材もきちんと整備され、植林、育林、伐採のローテーションがうまく循環するのでしょうが、住宅着工数は最低記録の更新を続けるばかりで、出口となる売価が底に張り付いたままです。まだ間伐の手が入る山はいい方で、林業を放棄した山がたくさん見受けられます。30~40年も育てて、柱1本が数百円にしかならないようでは、もはや経営は成り立ちません。例え間伐したとしても、『切捨て間伐』といって間伐した材をそのまま山に放置するケースがほとんどです。残した良質な材ですらその有様ですから、ましてや間伐材を山から搬出すれば大赤字となります。誰も好き好んで山に放置するわけではありませんが、それが山の現状です。他の県では、大規模な林業経営をされて間伐材を搬出し活用されているケースもありますが、愛媛県ではほとんどが小規模林業で、山の整備も販売システムも立ち遅れています。

20090628 久万郷11こういう話をすると、「勿体ない、山から出してくれれば使うのに」とおっしゃってくださる方もいるのですが、その搬出作業が大変で、ある程度まとめなければなりません。数がまとまるという事は、色々な物が混ざってくるという事です。もともと、曲がっていたり成長の悪い材を間伐しているのですから、大きさも形もまちまちです。それらをまとめて引き取っていたければありがたいのですが、そのうちの数本ということになると、残りを保管する費用などが発生してきます。丸太は一般の方が想像される以上に安いのですが、物が大きいだけに運ぶといってもリフトやトラックが必要で、それを運転する人間も広い敷地も要ることになります。下手をすると丸太そのものよりも、そちらの経費の方が高くなることだってあります。

また間伐材の有効活用も大事なのですが、山側としては本来の商品である『間伐して選ばれた木材』が正当な値段で売れることが前提なのです。そうでなければ幾ら間伐材が売れたとしても経営は出来ません。しかしこれは用途の違う木ですから同論で語るべきではなく、それぞれに道は探る必要があると思います。大きさも形もバラバラの間伐材を山から出せる(物理的な意味ではなく)システム、現在その最大の消費は合板原料だと思われます。山に入れば、間伐された木の中には形の面白い芸術的な物もあります。うまく使えばお宝に変わるものもありますが、その緩やかな楽しみは林業経営を支えてはくれません。森を守れとも言われますが、商業用ベースで山から伐り出される丸太の圧倒的なボリュームは、机上の想像を遥かに凌駕します。その1本1本に個性を見出す木工と、わずか数秒で削られていく合板生産が対照的に存在しているのが木の世界です。

20090610 ブタマジロ7ブタマジロは、1,2本の間伐材から産み落とされました。これによって間伐が有効に・・・などとは申しません。しかし、何の利用もされることなく下手をすれば廃棄されたかもしれない材がこうして加工され、誰かの手に渡り楽しみを与えられたという現実はあります。ブタマジロは、日本の間伐材の未来も大きなメッセージも背負ってはいません。間伐材も人間が勝手に与えた名称で、本来役に立たない木などないからです。兵庫の森から生まれたブタマジロは、そんな人間の身勝手な思惑もパクっと呑み込んで、飄々(ひょうひょう)と歩いていくのです。それで、いいのだ!!




20090516 オレンジ会4朝晩が随分涼しくなりました。暦ももうすぐ9月、早いものです。9月になると、イベントが目白押しで、ほぼ毎週何らかのイベントに関わりがあります。毎年その頻度が上がってきています。弊社に声が掛かるという事は、それだけ『』が多くの方の目に触れる機会が増えているという事ですから、ありがたい事です。さらに異業種の方で理解のある方が、どんどん増えていることはとても嬉しいのですが、逆に木材業に身を置く人があまり熱心でないのはどうしたことでしょうか。長らく同じことをした来た事により、先を読み切った諦感のようなムードが木材業界には漂っているのも事実です。

20090720 久万郷 奈月子と二人また、それをしてどうなるの?とか、いくら儲かるの?といった現実主義がこの業界の古きよき時代の趨勢でもありました。年配の方々は、今更何が・・・とおっしゃいます。若い方は、とても自分では・・と及び腰になります。だったら私ら世代がするしかないのか!ムードも空気も自分たちが作っていくものだと思います。来るべき秋に向けて、しっかりネジを巻いて、息切れしないようにせねば!

 

そうやって、またお調子者たちが無邪気に集まるのですが、ある目的に男達が集まるというシチュエーションになると、いつも私の脳裏でオーバーラップする映画があります。正確に言うと、映画ではなく『映画の宣伝コピー』です。私は映画も大好きですが、実は『宣伝コピー』と『チラシ』が大好きで、学生時代から集めたチラシは数千枚にのぼります。高校生の頃は、地元に映画館がありませんでしたので、観たい映画のチラシを穴が開くほど見つめて、裏の開設やコピーを読み込み、妄想を膨らましていました。まあ最近はすっかり記憶力が退化していますし、映画の本数が多すぎてとても目が届きませんが。映画のコピーも昔の方が断然凝っていたし、お洒落なものが多かったと思います。最近は洋画のタイトルも直訳ばかりでひねりもありません。配給会社の宣伝マンも、もう少し真剣に仕事しろ!と思います。

20090827 シシリアン2集まる男たちの映画の宣伝コピーとしての(あくまでも宣伝コピーとして!)お気に入りは、1987年製作のアメリカ映画『シシリアン』の一節。古い記憶なので自信がありません、もしかしたら宣伝コピーではなく、批評家の一節だったかもしれません。【ふたたびチミノの旗のもとに。行き先は・・・まだ、ない】というものです(だったと記憶しているのですが)。説明しておかねば意味が分からないと思いますが、マイケル・チミノという稀代の映画監督のファン垂涎の新作に、剛の物のスタッフが集まったという意味ですが、もっと分かりやすき言うと、まだどこに行くかも分からない行き先のない舟なのに、船頭の心意気に惚れて乗ってしまったという感覚でしょうか。一部のマニアにしか分からない話かもしれませんが、マイケル・チミノという映画監督は、ベトナム戦争の凄惨な姿を描いた名作ディア・ハンター』で、アカデミー作品賞に輝やき、成功と栄光を手にするのですが、次作の長編『天国の門』では膨大な制作費を注ぎ込みながらも、興行的に大失敗をして製作会社ユナイテッド・アーチスツを倒産に追い込んでいくという、まさに波乱万丈の人なのです。

20090827 イヤー・オブ・ザ・ドラゴン2その後、なかなか機会に恵まれなかったチミノが、1981年にチャイニーズマフィアとアウトロー刑事との対決をスタイリッシュに描いた『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』で颯爽と復活を果たします。興行的にも成功を収め、あの『ゴッドファーザー』の作者であるマリオ・プーゾの原作を得、当時人気のあったクリストファー・ランバートを主役に迎え、1940年代のシチリアで、民衆の支持のもと強大な勢力を誇った実在の山賊の悲運の半生を描くという、非常に気合が入った、満を持しての新作が『シシリアン』だったのです。その宣伝コピーは、映画の内容には全く触れていません!これからチミノの連勝神話が始まる事を鼓舞するかのような、チミノ目線のものでした。宣伝担当マンが熱烈なチミノ・フリークだったとしか考えられません!

 

 こんな事が許され、歓迎される監督が他にいるでしょうか!そんな豪腕チミンが大好きです、たとえ映画が大コケしようとも・・たとえストーリーが空中分解し、辻褄が合わなくなろうとも、どれだけ多くの欠点を指摘されようとも、だからチミノなんだと、むしろ清々しい気持ちになるほどです。大上段に刀を構え、無謀にも巨大な敵に正面から突撃し、いさぎよく散っていく・・・だからこそチミノなのだ、決して負け惜しみなどではない・・・断じてないのだ~!チミノ万歳!ああ、自分の姿が投影されたものに人は惹かれていくとか、いかないとか・・・。秋にチミノのように派手に散らないように頑張らねば・・・しかし、その姿にほのかな憧憬もあったりして・・・。




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