森のかけら | 大五木材


当ブログに記載の商品の料金、デザインは掲載当時のものであり、
予告無く変更になる場合がございます。
現在の商品に関しまして、お電話、又はオンラインショップをご覧ください。

今日のかけら・#028【鹿子木/カゴノキ】 クスノキ科ハマビワ属・広葉樹・宮崎産

 

 

 

 

 

 

20150630 1北舞子のモデルハウスの最後にこの木に出会うとは思ってもみませんでした。灰褐色で平滑な樹皮が、成長するにつれ円状に薄片が剥がれ落ち、その跡が白い斑紋となりあたかも鹿の子模様のように見えることからカゴノキ(鹿子木)』の名前が付けられました。その特徴は大木になるほどにハッキリするといわれていて、25mほどに成長する常緑の高木です。関東以西の本州から四国、九州などの標高600mまでの低地の照葉樹林の中、特に瀬戸内海沿岸部に多く現われるという事です。

 

愛媛の山中にも多く自生しているらしいのですが、恥ずかしながらこの木が立っている姿をまだ見たことがありません。樹皮に特徴があるからすぐ分かるよと言われるのですが、目にはしていても見えていないパターンだと思います。材としては付き合いが古くて、昔九州から変わった材を持ち込まれていて銘木関係の業者の方がよく扱っておられて、その関係でいくらか仕入れていてその存在はよく知っていました。ただし既に材となっていたため、特徴的な樹皮はお目にかからず。

 

Exif_JPEG_PICTURE濃い赤褐色の材として認知していたため、鹿というイメージに結びつきにくかったのですが。その方から教えてもらったのは、稀に木目の中に星柄の模様が出る事があって、それが出たものは銘木的価値が上がり、「ホシカゴ」が変転して「ホシゴカ」と呼ばれるのだと教わりました。それまで名前が変転するという感覚が分かりませんでしたが、いろいろ調べてみると方言名などにおいてはそういうケースも多く、話し言葉として語りやすいように木の名前もドンドン変化しています。

 

Exif_JPEG_PICTUREカゴノキについても愛媛では、地域によっては「コガ」とか「コガノキ」と呼んだり(東予、南予の一部地域)、葉の形や樹形の特徴が似ている木の名前を冠して「コガアサダ」、「カゴガシ(樫)」、「コガガシ」などと呼ぶところもあるようです。その材については主に器具や小物細工、鼓の胴、楊枝、薪炭などに使われているようですが、それほど大きな材が採れない事からなかなか建築現場では使われる事は少なく、多くが装飾的な意味合いで使われる事が多いようです。

 

20150630 5弊社にあるカゴノキもいわば【森のかけら】用で、長さもせいざい1.5mの小幅な耳付き材。かけらでも作っていなければ買ってもいないサイズです。大きな材は滅多にないと聞いていましたが、好奇心が勝り集めていたので、明石住建さんのモデルハウスで出窓のカウンターに使われた大きな、しかも星柄の現われた「ホシゴカ」に出会った時は驚きました。よくぞまあこれだけ立派なカゴノキがあったものだと。神社のご神木だった樹齢300年の木と訊いてそれも納得。




明石住建設さんの北舞子のモデルハウス(設計はLaboさん)には『適材適所に使われた天然木・13の木の物語』として、各所に様々な木が使われております。それは1階にとどまらず2階も同様。昨日、階段の手摺に滑りにくい『キハダ』を使われている事をご紹介しましたが、笠木には『カツラ』の木が使われています。カツラには『トチは絹糸の肌触り、カツラは木綿の肌触り』という言葉があるように、触感は少しザラリとしていますがそれが笠木に使われる理由。

 

また、中国ではカツラは非常に神聖なものとされ、月にあるとされるカツラの巨木によって月の満ち欠けが左右されている、いやそれどころか月そのものがカツラの木で出来ているとも言われるほどにお月様との結びつきも強く、カツラの木は不思議な魔力があると信じられてきました。そんなカツラには魔除け的な意味合いもある事から、昔から家のどこかに使う事で家の安全を願う慣習もあったほどです。まだまだ続きます、2階の洗面台には『赤タブ』の耳付き板が使われています。

 

『赤タブ』というのはタブノキの中でもとりわけ色合いが濃い(赤身の強い)木を指して言う言葉です。弊社では九州は宮崎の方から仕入れさせていただいていますが、比較的西日本の方のタブが色合いが濃いようです。タブノキは、『今日のかけら』のかなり初期で取り上げた木なのですが、現場での実際の使用例が少なくて、このブログでも取り上げるのはそれ以来で非常に懐かしいような気分になります。洗面台だけでなく傍らにあるタオル掛けにもしっかり赤タブの姿が!

 

イヌグス」などとも呼ばれ、クスノキの仲間でありながらクスノキよりも劣ると見下されたりもしますが、もともとは精霊の宿る巨木として『霊(タマ)の木』と呼ばれていて、それが転訛してタブノキになったというのが語源だとされていますので、下に見るなどとはとんでもない事!毎朝の洗顔の際にも霊験新たかな赤タブがあなたを見守ってくれるでしょう。そんな思いが込められています。その赤タブの手洗いの奥の壁面に使われているのは、『オニグルミ』。古代ギリシャやローマでは、長寿・豊饒・多産の象徴として使われてきました。そのクルミをパネリングに加工していますが、こちらについては弊社から納品させていただきました。たまたま幅の広い材があったので柾目で揃える事が出来ましたので、クルミ独特のしなやかで上品な雰囲気が出たのではないかと思っています。

 

Exif_JPEG_PICTUREそして2階の書斎の前に居並んだ沢山の木製の箱。実はこれはすべて『キリ』で出来ていまして、可動式の収納箱となっています。おとなが両手で抱えるほどの結構な大きさがあるのですが、日本最軽量の木・キリで作られた箱ですので、持ち上げてみれば驚くほどに軽量!大きさからイメージする重量感を裏切る小さな驚きですが、小さな子どもでも動かすことが出来るようにとの配慮が込められています。壁一面がこのキリの収納箱が入るスペースになっています。収納箱としてだけでなく、しっかりと作ってありますので並べればそのままベンチにもなってキリの温もりを肌で感じる事も出来るのです。このキリの収納箱はなかなかの優れもので、ちょっと弊社でも真似をさせていただきたいほど。適材適所の理由を探るだけでも楽しくなってしまうモデルハウスなのです。まだ続きます!




Exif_JPEG_PICTUREまだまだモデルハウスのこだわり沢山あって、こちらは階段ですがその段板は国産の『モミ!あえて国産と書いたのは、決して日本の森林において珍しい存在ではないモミですが、私の知る限りその利活用はあまり多くないように感じたからです。私自身も5年ほど前に地元で出材された大きなモミの原木を仕入れてから日常的に国産のモミを使うようになりましたが、それまでモミといえば北米産のモミ(ファー)がほとんどでした。実際に使ってみれば経年変化でその差は歴然。

 

北米産のファーは時間が経つとやや褐色にくすんで全体がとぼけた印象になります。国産のモミの場合は、時間が経つとやや飴色がかった色合いになります(勿論個体差や産地による違いはありますが)。これはどちらが優れているかどうかというよりもそれぞれの木の特徴です。ただしモミって見た目の印象からは想像できないほどに暴れやすいやんちゃな木でもあって、色白の柔らかそうな木に見えるのに乾いてくるにつれてねじれや暴れが出るのですが、それがまた半端ない

 

あまりに堅いので、釘を打つのにもキリで揉(も)んで下穴を開けないといけないから、揉み →モミ→樅に転訛したという伝承もなるほどと頷かざるを得ないほどに力強く豪快に(?)暴れまくります。渡辺社長からも、この階段もかなり暴れて取り換えなどして大変苦労したというお話を伺いました。そんな大変なら使わなければいいじゃないかと思われるかもしれませんが、そんな木だからこそ俺が使ってやれねばという木フェチならではのアンビバレントな複雑な思い(笑)。

 

一番下は収納になっています。蹴込み部分には照明が仕込んであって、夜になると足元がはっきり確認出来て酔っぱらって帰って来たお父さんにも優しい設計。これは設計者のリアルな体験が活かされているのかも・・・。このモミの階段を登ると二階へ、おっとその前に階段横の手摺や笠木にも気になる木の姿が!手摺には生薬などにも使われるキハダ環孔材ですので肌触りがやや粗くザラリとした触感ですが、その特徴を利用して手摺に使われていて、ひとつひとつに理由とこだわりがあります




更にモデルハウスの探索は続きます。内装材というわけではありませんが、家の中で使われる生活用品についても木の適性が具体的な形で示されています。台所にはヤナギのまな板。まな板として有名なのは、イチョウですが、まな板御三家と呼ばれるのは『イチョウホオ、ヤナギ』。いずれも刃物との相性がよく、刃あたりがいいので木屑が出ない、耐水性がある、弾力があるなどの特徴がまな板に適した素材だという事です。ヤナギの木についてはいずれまた改めて触れます。

 

水に強い事がまな板の適性の1つでもありますが、その特徴を利用して洗面台のカウンターにはイチョウの耳付きの一枚板が使われています。そのように適材適所にふんだんに木が使われているものの、決して奇をてらったりした唐突な使い方をされているわけではないので、なぜこの木をこの場所に使っているのかという背景を話さねば、一般の方にはその材でなければならない理由が分からないかもしれないほどさり気ない使い方。こういうこだわり方が心憎いばかりです。

 

心無い人の中には、そこまでこだわったって誰にも分からないじゃないかと言う人もいらっしゃるかもしれませんが、分かりやすいところにだけプロの仕事があるわけではありません。説明を聞いて知るこだわりというものもあります。そんなところにも工夫や配慮があるのかと改めてプロのものづくりの矜持に感心することもあります。特に壁で隠れてしまう家の構造部分にはそういう大工さんのこだわりって随所にあるものなのです。そういうわけでこちらのタオル掛けもイチョウ

 

王道を行かれる大手の材木屋では味わえないような、重箱の隅を突くようなフェチな木へのこだわりが楽しめるのも零細材木店の特権。そしてそれを受け入れてくださる工務店がいるという事が なによりもありがたいこと。ただ自己満足だけで終わってしまっては、木のファンを広めていくことも出来ませんし、何よりも木にも申し訳ない。こういう事を言うと必ず、それでは万人の心を掴めないなんて王道論を展開する輩が出てきますが、残念ながらここは王道ではなく、森のあぜ道ですから




次々と各部屋をご紹介。キッチンのフローリングもリビングのヒノキと同様に豪快に一枚板の幅広いキリの縁甲板が貼られています。キリは和箪笥に使われている事で知られていますが、掛け軸や骨董品をはじめ表彰状など高価で大切なモノを収納する箱の定番として利用されているのも、調質性が高いことから湿気や虫の害などから中身を守ってくれる特性があるからです。日本でもっとも軽い素材で加工性が高く、肌触りがよいとか熱の伝導率が低いといった特徴も箱材に好まれる要素

 

20150626 2軽いという事は軟らかいという事です。ですから当然傷もつきやすいのですが、家の素材選びって結局、そこに住む人が何を優先順位に考えるかという事だと思っています。ここでは少々傷がつくことよりも、長時間家事をされるお母さんの事を考えて足元に感じる温かみや軟らかさの方を上位に置かれています。当然私もそちら派なので、今までにも何度も床にキリのフローリングをご提案をしてきました。すると不思議なもので、その軟らかさから想像するほどに傷がありません。

 

20150626 3提案させていただく段階で、実際にキリの床材とその他の床材を持ち比べてもらったり、掌で硬さや重さ等しっかり体感していただくなどとキリの特徴についてお話させていただきますので、キズがつきやすい事など納得済み。そのうえで採用していただきますので、使われる方も高い意識を持って暮らされますので、例えるならば交差点の無い四差路のようなもので、互いが慎重に気を配りながら運転するため交通事故が少ない(他の樹種のフローリングよりもむしろ傷が少ない)。

 

20150626 4それは1つの例ですが、あまり一般的に使われていない樹種を使うという事は、少々大袈裟に言えば、薦める方にも選ぶ方にも相応の理解と覚悟が必要という事です明石住建さんでは、その覚悟を持って一歩足を踏み出し、実践されているわけですが、モデルハウスで実物を体感できればこれに勝る説得力はないでしょう。誕生木の出口商品の建築資材バージョンがリアルな形になって目の前にあるようで、これは木フェチにはたまらない魅力を持った恐るべきモデルハウスなのです〜!!




オンラインショップ お問い合わせ

Archive

Calendar

2015年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  
Scroll Up