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現地での木の情報や材の特性等については商社の担当者に尋ねてみたりするものの、伝言ゲームのようになってしまうのと、実際には現地でもそれらの木についての詳しい情報そのものが無いのかもしれません。それだけ中国は広く、樹種も多岐にわたり、名前の正式な名前すら分からないような木がいくらでもあって、その詳しい研究すらも行われず、またそこまで木に対する執着も関心もないまま、単に「売れるマテリアル」としか認識されていないのかもしれません。
そんな正体の怪しいものなのかと思われるかもしれませんが、例えばアフリカやアメリカ、ロシアや中国などすべての材についてその生産地にまで行って情報を確認することなど出来ません。そこは介在する商社や問屋を信用するしかないのですが、当然それが違法なものなどではないという最低限の情報はあるものの、私が欲しいのはそういう情報というよりは、その木にまつわる現地での伝承や用途についての話。それについては中国産に限らず、不明なものが多数。
そういう状況なので、現地の工場の製造事情で突然にその種の商品が生産中止に陥ったり、急にまた再開したりすることも珍しくはありません。また使うほうにしても、絶対的にその樹種でなければならないという必然性があるわけでもないので、ようやく流通が安定して世間でその存在が認知され始めた頃になると、心変わりしやすく飽きっぽい設計士さんは、次々に新しい樹種を追い求められる傾向もあって、新しい樹種の『賞味期間』は驚くほどに短いものなのです。
まあそういう大人の事情もあって、チャイニーズメープルのラスティックグレードは入荷が不安定となり遂に取り扱い中止に憂き目に。建築工期が短くなった現在、供給の安定は生命線であり、いつ入ると入らないとも分からないような商品を提案するリスクを追うことはできません。入り皮や大節、ヘアークラックなどがありながらも、表情豊かで堅牢でリーズナブルであったチャイニーズメープルのラスティック・フローリングには随分と世話になり助けられました。
地域によってはマンシュウイタヤ(満州イタヤ〔カエデ〕)と呼ぶこともあるそうですが、扱い慣れた商品の突然の取り扱い中止宣言は心苦しいものがありました。しかし背に腹は代えられません。倉庫にまだわずかにその名残が少量だけあるものの、今後は事務所の床に貼られたその姿を見ながら、懐かしく往年の輝きを思い浮かべることになりそうです。年末大掃除で、最後にオイル塗装をして今年1年の労苦をねぎらいましたが、私の足元ではこれから長い付き合いとなりそうです。
★今日のかけら・#180 【チャイニーズ・メープル】 Chinese Maple カエデ科・広葉樹・中国産
床には、弊社の看板として一時期一世を風靡してくれた『チャイニーズ・メープ』のラスティック・グレードのフローリングを貼りました。節や筋、カスリや偽芯がたっぷりあってワイルドな風合いの床板で、ナチュラル志向の方を中心に定番商品として相当お世話になった商品ですが、供給が細くなり入荷が不安定になったことから、現在は取り扱いを中止しています。ワイルドなグレードという事で、欠け節や小割れ、加工不良などのダメージなど結構出てきて、それをリフォームに使用。
ところが途中でそのB材も底を尽き、床の残り1/3は、バーチのラスティック・グレードを使用。実際に現場だとあり得ない事ですが、モッタイナイが信条のリフォームですので、樹種の違いによる色ムラなど気にも留めません。土足で踏みしめる床ということもあるのでしょうが、こちらから言わなければその事に気づく人は皆無。むしろ、この質感いいですね~と、初めてメープルのラスティックに接する人からは好評。残念ながら今は取り扱いを控えているのですが・・・。
今までにも何度も触れておきながら、『今日のかけら』で取り上げるのがすっかり遅くなってしまい、その取扱いを止めた頃にのこのこと紹介するというのは何とも心苦しいのですが、事務所床に使った今を逃せばその機会も失われてしまいそうなので、あえてこのタイミングで取り上げさせていただきます。ソフトメープルの項でも書きましたが、メープルはカエデ科の木で、北半球の温帯におよそ150種も分布しており、園芸品種まで加えるとその数は200種にも及ぶ大家族。
中国にもいくつかの種類のメープルが存在していて、そのうちの一部が現地で加工され「OOメープル」の名前が付けられ日本でも流通しています。その実態については実は私もまだ勉強不足で分からない事が多いのです。何といっても中国産の木についての資料や情報が圧倒的に少なくて、それに精通した専門家の方ともお会いしたことがありません。現品そのものを輸入している商社にしても、現地工場で生産に携わっている人と、日本で輸入された商品を販売する人は別人。
㈱ムラモトの水野君は前職も大手の某材木屋勤めで、そこでは全国を駆け回るバリバリの営業マンでしたが、彼の加入は㈱ムラモトにとって相当な戦力アップ!村本さん自身も、木については相当なこだわりの持ち主ですが、水野君のそれはまた突き抜けた別種の変態性的嗜好。夜は共に酒を酌み交わすことになったのですが、その席でその変態ぶりが爆発!互いが持てる限りの木のフェチっぷりを披露しあうという、村本さんが呆れるほどのその道のマニア垂涎の展開となったのです。
全国のひと癖もふた癖もある老舗の材木屋の親父連中と真剣勝負を繰り広げてきた水野君のマニアックでディープな木材裏話などに相槌を打ちながらも、こうして同じ理念を共有でき、共に汗をかきながら同じ方向にオールを漕げる仲間が社内にいるという事がとても羨ましく感じるのでした。村本さんとは互いの環境について折に触れて何度も話してきて、互いに同じような境遇であったと理解しているのですが、その後それそれが下してきた決断には大きな違いがありました。
理念を共有できる仲間をひとり、またひとりと社内に増やしてきた村本さんに対して、私はその仲間を社外に求めたため、様々な職種にわたるバラエティ豊かなブレーンを得た半面、社内で理念を共有できる仲間を育てられませんでした。ひとの話を聞かずに、自分だけで単身突き進む、最終的な局面を他人に任しきれないという性格も災いし、自分よりもひと回り以上も歳の離れた社員とのジェネレーションギャップもあって、新しい営業スタイルと理念を共有することができませんでした。
まあ世の中にはいろいろな業態の材木屋がいてもいいわけで、自分はそれで四半世紀も突き進んできたわけで、実はそれほど後悔も反省もしていなかったのですが、50歳を目前に控え、さすがに若い頃に比べると体力的な衰えを感じるようになって、(あくまでも男性で営業活動や現場作業等が実践出来るという意味においての)いざという時の身近な理解者の必要性を感じるようになりました。そういう意味でも村本さんの右腕としての水野君の存在が非常に羨ましく感じられる夜でした。
昨日の話の続きですが、数年前にお引き受けした松山市内の某材木倉庫の片付けの話。10トン車で積むこと5、6台。とりあえずフォークリフトで運べるものだけお引き受けしました。それでも小さな弊社の倉庫では収まりきらないので、しばらくの間、別のところで保管しておくことに。最終的には弊社に移動させたのですが、社員からは大ブーイングの嵐!私自身は、今では手に入らないであろう貴重な広葉樹の幅広の乾燥材ということで勝機はあったものの肩身は狭い・・・。
その事例に限らず、欲しい材はいくらであるもののやはり保管する場所の事を考えると、キャパシティのリアルな限界が物欲の歯止めになります。結果的はその時引き受けた材が、いろいろな場面で大活躍してくれて、大きな利益をもたらしてくらることになったのですが、当時は倉庫に詰め込むだけ詰め込んだので、奥の材を引っ張り出すだけでも大変な労力で、スタッフの負担も大変なものでした。それから何年もかかり、ようやくその時の材の大半は片付きました。
その経験があるだけに、その数十倍もある製材所の後始末を引き受けられた村本さんの英断には感服。なにしろ大型重機を使ってスクラップにしてしまう解体作業ではなく、埃とと汚れで一体何の木なのかすら分からないような木1つ1つを手作業で移動させ、それが何の木で、まだ使える木なのかどうかを判断し、仕分けして少しづつスペースを広げながら奥へ奥へと進んでいくという途方もない作業。そこから出る膨大な埃やゴミなどを考えると私など足がすくんでしまいます。
村本さんに後から聞いた話では、村本さん自身もそれだけの規模の後始末は初めて経験だったので、怖いもの知らずで引き受けた部分もあったのどと仰っていました。それでもその時の経験は貴重で、その後同様の話が舞い込むこととなった時にも経験が大いに役立ったとも。その時、高知には村本さんご本人はじめスタッフが数日間ごとに入れ替わり立ち代わり泊まりこんで作業にあたったということでしたが、その体験を聞いて感じたのは、理念を共有できる人間の数の力!
先日、石川県の至宝『能登ひば』をご紹介しましたが、年も押し迫ったこの日、その石川県から刺客(?!)が弊社にご来店。いつもお世話になっている㈱ムラモトの村本喜義社長と水野斉君のお二人です。お二人は弊社とは関係のない別のある木の仕事で愛媛にやって来られたのですが、折角愛媛に来られたのに素通りというわけにはいくまいという事で、わざわざ弊社にまで足をお運びいただきました。愛媛から遠く離れた石川県の材木屋さんでありながら、実は四国とは深いご縁がおあり。
昨年、高知県で廃業される老舗の製材所の後始末を手掛けられたのですが、その規模が圧倒的!その顛末については村本社長のブログに詳しいので、そちらをご覧いただきたいのですが、スタッフ数名が高知に連日泊りがけで倉庫の整理・片付け。倉庫整理と言っても、数十年にわたって放置されてきた材木倉庫の奥の方は、一体どうやって詰め込んだのか見当もつかないような形で大きな材が折り重なり合い、何がどうなっているのかもわからないような木材ジャングル状態!
実はこの話、村本さんに辿り着く以前に弊社にも声がかかったのですが、写真で倉庫の様子をひと目見ただけで速攻でお断りさせていただきました。その製材所の事はよく知っていて、昔間接的にお取引もさせていただいたこともあるところで、持っておられる材については興味もあったものの、それを自分で動かすという事を想像したときに、その膨大すぎる作業量にあえなく断念しました。ここまでの規模ではありませんが、数年前に松山市内でも似たような話がありお引き受けしました。
その時は巨大な階建ての材木倉庫すべての材を片付けて欲しいという依頼でした。樹種こそ限定されていたものの、10数年以上(中には20数年以上)も倉庫で寝かされていたような完全乾燥材を前に胸が高鳴ったものの、とても人間ひとりやふたりの手ではどうにもならない圧倒的なボリュームの前に腰も引け、一時はお断りしようともしたのですが、フォークリフトで移動の出きる1階部分の材については、運送会社が作業と運搬を引き受けてくれることになったので実行。
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