森のかけら | 大五木材

パイオニア〔ニセ〕アカシア・ツリー*

今日のかけら・♯092【ハリエンジュ/針槐Black Locust  マメ科ハリエンジュ属・広葉樹・愛媛産  

 

森のこだま』に入っている愛媛県産材の樹種の中に、マメ科の広葉樹『ハリエンジュ』があります。漢字で書くと『針槐』ですが、一般的には『ニセアカシア』の名前の方が通っています。「アカシア」というと日本語のように思われがちですが、実は学名のRobinia pseudo‐acaciaに由来しています。Robinia(ロビニア)という属名は、17世紀初頭に米国からこの木を輸入して栽培したフランスの植物学者ジャン・ロバン (Jean Robin)の名前にちなんで命名されたとされています。種名のpseudo(プシュドウ)は「」とか「まがい物」の意味があります。

直訳すれば「ロビニアの偽のアカシア」という事になります。アカシアそのものは、マメ科アカシア属の総称名です「ニセアカシア(偽のアカシア)」という屈辱的な名前の由来は、明治初期にこの木が日本に輸入され、「アカシア」の名で親しまれていましたが、後に本物のアカシア(ネムノキ亜科アカシア属)が輸入されたため区別する意味で命名されたものとされていますが、学名に忠実に翻訳したとしても「ニセアカシア」となるのですから、元来世界的に名前が混乱しているようです

和名の「ハリエンジュ針槐)」は、若木の時には幹と小枝に幾つもの棘があり、エンジュに良く似ている事が名前の由来とされます。幹が大きくなると枝もなくなるそうですが、これは原産地であるアメリカ東部(オハイオ、イリノイ、ペンシルベニア、バージニア)に生息する山羊に対抗するために身に付けた「自衛手段」とも言われています。土質に関係なく良く育つ強靭な生命力を持った木で、西部開拓時代には新しい町の誕生とともに植えられた事から「パイオニアツリー」の別名もあります。

大きなものになると直系1m、高さ25mにもなる落葉高木で、日本においても成長が早く初期緑化の木として公園や街路樹、並木などに多く植栽されています。花は天ぷらとして食用にもなりますが、材は非常に堅牢かつ重硬で、加工や乾燥は容易ではありません。またねじれや割裂が出やすく、一部はスキー板器具としても利用されているものの、一般的にはほとんど流通していません。材料さえ揃ってうまく乾かせれば、木目も表情豊かでフローリングなどとしても利用可能です。


残念ながらこの辺りでは安定供給が難しく、現在は街路樹などを伐採した木で【森のかけら】などの小物を作る程度しか出来ていませんが、これだけ強靭で土壌改良にも貢献してくれた木をそのまま廃棄するなんてモッタイナイ。そこから生まれたのが『森のこだま・ハリエンジュ』です。色目のコントラストも絶妙で、触感の心地よさも第一級!ニセモノ扱いされた悲しい運命の木ですが、その木言葉は『親睦・友情』。まだ見ぬ可能性を秘めた素晴らしい「本物の魅力」を持った木でもあります。

 




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