森のかけら | 大五木材


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先日、カスケードについて触れましたが、その言葉を書くたびに気になる事があって、それがパニック映画などでよく舞台となる悪名高き「サンアンドレアス断層(San Andreas Fault)」!ダグラスファー(ベイマツ)の産地でもあるカスケード山脈は、このサンアンドレアス断層の太平洋プレート側に位置しています。この断層はアメリカ太平洋岸のカリフォルニア州南部から西部にかけて約800マイル(約1300km)にわたって続く巨大な断層で、映画ではこの断層が原因で大地震が起きるという設定で度々登場します。

はっきりと「サンアンドレアス断層」という言葉が出たので覚えているのは、ザ・ロックことドウェイン・ジョンソンが主演の『カリフォルニア・ダウン』。断層のズレから起きた大地震は、ゴールデンゲートブリッジやフーバーダムを決壊させていきます。この2つの巨大構造物はカリフォルニアで発生した大地震の脅威を示す象徴のごとく常に破壊されていきます。昔の映画だと名優チャールトン・ヘストン主演の『大地震』もロサンゼルスが舞台となっていたのでこの断層が原因だったかも。

古代マヤ文明の終末予言が現実のものとなる映画『2012』も確かカリフォルニアで発生した地震が世界中に広がっていく設定だと思います。こうした映画のお蔭で行った事も無いのに、おおよその置関係を覚えたりしました。ゴールデンゲートブリッジはリブートされた『猿の惑星: 創世記』で登場します。猿たちが逃げ込んだのが樹齢1000年を越える巨木が聳えるミューア・ウッズ国定公園。大木越しに金門橋が見えていましたが距離にして20キロ足らずなるほど猿vs人間の争いにも緊張感が生まれる設定だなと。

フーバーダムは『トランスフォーマ―の舞台となったり『カリフォルニア・ダウン』では破壊されますが、日本の大林組が造ったダムが破壊されるのは心苦しい。この巨大ダムはロッキー山脈から流れ出るコロラド川の水をせき止める形で作られた貯水量は約400億トンの巨大ダム。そんな情報が材木屋として何の役に立つのかと思われるかもしれませんが、最近弊社に外国人の方が来られる割合が妙に高くなっていて、施主さんであったり、飛び込みであったり。そんな時こんな情報の1つが遠い世界を繋いでくれることも。

そんな事があるのか?なんて思われるかもしれませんが、実際に今回もクリスの故郷カリフォルニアとダグラスファーが繋がったし、ニュージランド人の方とは故郷の大木カウリの話で盛り上がりました。外国の方に限らず、出身地の事で共通認識できるネタがあれば距離感は急速に縮まります。まあそれが目的というよりは、『森のかけらのそれぞれの生まれ故郷の事も知っておきたいというのが最大の理由。そこに自分の趣味嗜好をどこまで絡ませれるか!興味の無い事はすぐに忘れてしまうもの。好奇心が「森のかけら」をより熟成させる。

 




ビワモドキ科の広葉樹・ディレニアはインドやインドシナ半島からパプアニューギニア、フィジーなどの東南アジアの島々に広く分布しています。淡水や泥炭湿地林、低地林などにおよそ60種の仲間が分布しています。日本に入って来ているのがその中のどの種にあたるのか詳しい事は分らないのですが、入手できたディレニアを見ると色合いなどにかなり差があるように感じます。日本で総称してディレニアと呼ばれている木にも幅があるので、ここから先はあくまでも私が手にしたディレニアについての印象です。

先日紹介したように私の周辺では造船の盤木土木の杭などに利用されていて、ディレニアの名前で呼ばれていますが、ディレニア(Dillenia)というのは学名のビワモドキ科Dilleniaceaeから来ています。PMGではディレニアの名前で通っているようですが、インドネシアやマラヤ、サワラクで、サバ、ブルネイなどではシンポ―(Simpoh)フィリピンではカトモン(Katmon)と呼ばれています。調べると赤い蕾と鮮やかな黄色い花が特徴的ですが、軟らかくて大きな葉は包み紙としても利用されるそうです。

さて肝心の材の方ですが、造船の盤木や土木資材に使うぐらいですからかなり重硬なのですが、60種ほどが含まれるグループなので気乾比重にもバラつきが見えて、0.56~0.93とデータの振り幅が大きいようです。私が入手しているのは総じて重硬なのですが、重さよりも違いが大きいのがその色合い!紫色を帯びた赤褐色のものから、赤茶系のものまでさまざま。35㎜角のキューブにして並べると、これは同じ木じゃないでしょう~と言われるのは必至。そもそも60種ほどの仲間を含んでいるので違う木なんですがね・・・。

ディレニアに限らず、東南アジア系の木は多くの仲間を含むグループが多いので、かけらにすると特徴が際立ち、総称名でくくることに疑問を感じる事が多いのですが、もうこれは仕方ない。「私の知ってる木とは違う、樹種名間違ってます」というコメントはしばしばいただきますが、そこがまさに木の分類の難しさ!数ある中のどれを、その木としてイメージするかでその木の印象は大きく変わってきます。私の中のディレニアは、生木の時には毒々しいまでの赤紫の妖しい木。水っ気が抜けると茶褐色になるのが残念すぎる・・・




今日のかけら番外篇・E049ディレニアDillenia   ビワモドキ科・広葉樹

M.L.Hについての前置きがすっかり長くなりましたが、本日紹介するのはパプアニューギニア(PNG)産で、いつもは他の木と一緒にM.L.Hとして雑木扱いされている木、ビワモドキ科の『ディレニア』について。M.L.Hと呼ばれているのは供給と需要の関係性の中での名称であって、その中にある木に必要性があれば、M.L.Hから抜け出して本来の固有名詞で取引される事もあります。このディレニアなどもその木のひとつですが、その出口は結構ニッチです。

この地域ではこういう性質の木が要るからM.L.Hの中から適した木として選ばれたというだけで、その出口は全国共通のものではありません。私が考えているのはそんなミニマムで地域の特性が出る小さな出口。ささやかでも、名前すら知られず数ある木の中の1本として消費されていくより全然いいと思うのです。愛媛県今治市タオルが有名ですが、もうひとつ有名なモノがあって、それが造船業。建造量国内最大で世界でも第3位を誇る今治造船をはじめ多くの造船業が集積する日本最大の海事都市なのです。

その造船工事に必要とされるのが硬くて重たい木・ディレニア。基本的は話ですが木には水に浮かべれば水面に浮かぶ木・フローターと沈んでしまう重たい木・シンカーがありますが、ディレニアはシンカー系の重硬な木。建造中に船体を支える盤木として使われるので水に沈む必要はないですが、重硬で安価な材が必要とされます。船が完成するまでの間、足元で巨大な船を支え続けて、完成時にはバラされて御用済みとなります。まさに縁の下の力持ち的役割。

愛媛に輸入されている中で、いろいろな木を試されてディレニアに行きついたのか、製材側からの提案なのかは定かではありませんが、この辺りでは造船という出口が確立されているようです。また製材した端材から土木資材などにも活用されています。いずれにしても化粧で木肌を楽しむような用途ではなく、陰で支える黒子的役割。しかしこのディレニアという木は、人目につかぬ黒子でその一生を終えさせるにはモッタイナイほど美しい一面も持っています。




さて、そういうわけで妖怪と精霊の棲む島パプアニューギニア(以下PNG)からはるばる日本にやって来てくれた南洋材の木の話です。先にお断りしておきますが、PNGの木の事でテンションが上がっているのは私だけで、木材業界的にはPNGの木が珍しいとか、プレミア感があるとか、高く売れるというわけではありません。むしろその逆で、今までも輸入され続けて来ているのですが、ほとんど注目を浴びる事も無くひっそりと流通されてきたというのが現状です。なので個別の名前で呼ばれる事すらなかったのです。

木材関係者の中でも南洋材を扱った事がない人は聞いたことがないかもしれませんが、南洋材には『M.L.H(エルエムエイチ)』という名前で呼ばれる木があります。これは特定の木を指し示す名前ではありません。Miscellaneous Light Hardwoodsの略で日本語に訳すと「雑軽軟広葉樹材」という意味になります。膨大な樹種を内包する南洋材において細かく樹種を分類することは非常に困難です。輸入された南洋材は、一般社団法人・日本貨物検数協会で1本ずつ計測され、樹種、グレード、欠点(損傷)が判定されます。

それを元に検量証明書が発行されて取引されることになります。その際に特徴が少なく樹種が特定できない木、樹種が確定してもあまり価値がない木については、まとめてmiscellaneous(種々雑多な)としてまとめられてました。当初は軽軟な木が対象だったので、light(軽軟)がついていましたが、その後重たい軽いに関係なく、ひっくるめて雑木という意味で名前の特定されない木、その必要が無い木を現わす名前としてM.L.Hという言葉が使われるようになりました。名前は特定されても取引上、それが求められない事も。

余程でない限り検数協会では樹種名はつくのですが、商取引の際には細かな名前は必要ない事があって、その場合はまとめて樹種名はM.L.Hとされます。例えば、梱包材やパレット材など一定の強度さえ確保できれば樹種にはこだわらないという場合、個別名は重要ではなく樹種名は記号的な意味合いしか持っていません。その出口においてはあまり価値がないかもしれませんが、別の出口に繋がれば、今まで気づかなかった違う価値が見つかるかも!ならばそれを見つけるのが、『かけらトレジャーハンター』である私の役目!




現在240種の『森のかけら』を世界最多の木材標本とすべく400種に増やす計画ですが、そのために踏み込んだのが、まだ見ぬつわものどもが数多く眠る禁断のエリア「パプアニューギニア(以下PNG)」!もちろん実際に行ったこともなければその文化や知識もほとんどありません。わずかに知っている事といえば、深い森の中にはいまだに妖怪や精霊が棲むと言われている事ぐらい。漫画家の水木しげるさんは若い頃に太平洋戦争に招集され、激戦地であったニューブリテン島(PNG)の最前線に送られ地獄を見ます。

そこで奇襲攻撃に遭い分隊は全滅。水木さんも左手を失いますが奇跡的に生き延びます。生死をさまよった日々の中で水木さんは魔訶不思議な体験をし、それが後に『ゲゲゲの鬼太郎』を生み出すファクターとなっていくのです。ニューブリテン島には沢山の精霊が宿っていて、現地の人々たちはその存在を信じていて(というかごく当たり前に共存していて)色とりどりの仮面や装飾具をつけて精霊たちの姿を表現し歌い踊る文化が根づいています。

私は木の話をさせていただく際に、単にその強度や比重、などの外的特徴だけを語るのではなく、その木がその地でどういう風に呼ばれ暮らしの中でどう関わってきたのか、加工され何にどう使われてきたのか、あるいはその木にまつわる伝承や逸話、そういった『その木から産み落とされたあらゆるモノ・モノガタリ』について語りたいし、なにより自分が知りたいのです。そういう記述には事欠かない日本の木に比べて海外の木はそういう話が少ないのですが、中でも東南アジアの南洋材はその辺りの情報がかなり少ない・・・。

これは東南アジアに限ったことでなくて、アフリカや中南米などでもそうです。硬ければハードウッド、やわらかければソフトウッドでいいじゃないかという文化と、桑は桑でも御蔵島の桑でなければ江戸指物とは呼べない!などとわずかな木の特徴の際に強いこだわりそこに価値を見出し連綿と継承してきた日本の文化の違い。世界的に見ても日本人の木に対する執着心は異常で、だから『森のかけら』のような変態的商品も生まれるのです。という事でこれから神秘的なPNG生まれの木たちを不定期で紹介していきます。




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