森のかけら | 大五木材


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材質が非常に安定していて狂いや収縮が少なくて軽軟なことから、日本では昔から『イチイ(一位』の木が鉛筆の軸木に使われてきました。戦後は海外からの輸入材にその座を奪われ、その後は主に彫刻材や床廻りの装飾材、お盆や菓子皿などの器などに利用されてきました。市場に出てくる事は多くはありませんが、もともと枝が多い木なので節が多く、節をよけるというよりも節を活かした使い道、『出口』を考える方がイチイの木をうまく生かせそうだと思っています

イチイはアララギとかオンコ、アカギ、キャラボク、シャクシノキ、シャクギ、スオウ、など異名の多い木としても知られていますが、私の認識では木材業界で材としてみなす場合は主に『イチイ、明治時代に伊藤左千夫の手によって作られた短歌結社誌に冠されたように文学的に使われる場合は『アララギ』、染料として名高い蘇芳(すほう)に準じた染料として使われる場合は『スオウと呼び分けられていると思っています。

聖徳太子が持っている笏(しゃく)としても知られるイチイは、仁徳天皇がこの木で笏を作らせ正一位の位を授けたのが名前の由来であるというエピソードや漢名の『一位』とも相まって、非常に由緒正しい縁起がいい木として歓迎されますが、欧米では悪役とされていて印象は決してよくありません。ローマ神話の中ではイチイの木陰で眠ると死ぬとか、古代ギリシャでは死のシンボルとまでされています。ここでいうイチイは日本のイチイTaxus cuspidata)近縁のパシフィックユー(Taxas brevifolia)の事だと思います。

伊藤左千夫たちがどういう思いでタイトルに冠したのかは知りませんが、イチイの花言葉は『悲嘆』であり、欧米の文学界でもその扱いはダークなイメージ。とりわけその印象を悪くしているのはシェークスピアだと思います。リア王では王の耳にイチイの毒を注ぎ込んで毒殺しますし、マクベスの中では魔女が地獄の悪霊たちに飲ませる鍋の中に、ヒキガエル、コウモリ、ヘビ、イモリの目玉、犬の舌、トカゲの足などとともに墓地に生えていたイチイの小枝を投げ入れます!

鍋の中に投入される「具材」はこの他にもフクロウの翼、竜のうろこ、オオカミの牙、貪欲なサメの胃、魔女のミイラ、毒ニンジンの根、ヤビの胆嚢、ユダヤ人の肝臓、死んだ赤んぼうの指があるのですがさすがにグロい!こんなメンバーの中に加えられるのですからどれだけイチイが忌み嫌われているかが分かると思います。しかい一方では死と生は二元性があり死を司る木として協会に植えられたり、西洋医学ではガンの治療薬としても利用されてきた側面もあります。明日は打って変わって美味しいイチイの話。




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