森のかけら | 大五木材


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いよいよ捜査は佳境に入ってきました。北海道芦別市の黄金水松公園ですが、これは「黄金水松」という木の名前ということではなくて黄金というのは地名です。豊穣の地という意味で、黄金町の水松という意。1939(昭和14)年10月に部落字名改正により黄金町となったようです。この木のある一帯はかつて上班渓御料林と呼ばれ、昭和7年には帝室林野局が保存木に指定されましたが、戦後になって開拓の対象となり、土地が払い下げられようとしたため、地元の農家が水松保存会を結成して水松を守ってきたという歴史がありました。

ということは北海道ではイチイは水松と呼ばれていた?木の図鑑や辞典では、「イチイを水松とするのは誤用」という記述がありますが、どうやら北海道芦別市では古くからイチイは水松と呼ばれて親しまれていたようです。その理由について、北海道においては、スギやヒノキといった針葉樹が少なく、針葉樹といえばトドマツやエゾマツ、アカエゾマツなど圧倒的にマツが多いので、針葉樹全般をザックリと「マツ」と呼ぶ習慣があって、そのためイチイもマツと呼ばれたのではなかろうかというのが核心のようです

ここからは私の推論ですが、その中でもイチイは日陰を好む陰樹なので、じめじめしたような日陰に育つイチイに対して「水」というイメージがついて水+松=水松になったのではないでしょうか。なので、中国原産のスイショウ(水松)と誤用しているのではなくて、水気のあるところに育つマツ(北海道での針葉樹全般の呼称)という意味の『水松』ではないかというのが私の結論です。もちろんこれは材木屋探偵の推理ですので間違っていたらごめんなさいですが。しかし、これでもまだ残る疑問が、水松がイチイだったとしてもなぜイチイを巡査の棒にしたのか?

イチイといえば、赤身と白身のコントラストを巧みに活かした飛騨の一刀彫が有名です。昔、飛騨に行った頃私もイチイのタイピンを買いました。彫刻に適するぐらいですから決して硬い木ではありません。警察の警棒と言えば硬くて折れにくいカシ(樫)の木と相場が決まっているのですが、なぜあえて折れやすいようなイチイを使ったのか。人間の世界よりも進んだ河童の世界では、言葉こそ高圧的でも力でひとを押さえつけようとする国家権力の強行は行わないのだよという皮肉としてイチイを用いたのでしょうか。

あるいは芥川龍之介も『森の出口』を探している材木フェチ野郎で、河童の国だからそこに生えていそうな水にまつわる木として水松(イチイ)をわざわざ引っ張り出してきて、暴力的ではないが地位が高いことを暗に示すために「イチイのやさしい警棒」という出口を考えていたのだとしたら・・・。最後に彼が残した言葉、「橋の上ゆ胡瓜なくれは水ひびきすなはち見ゆる禿の頭」(二つの世界を結ぶ「橋」という空間の上で、わたしは日常的な食べ物である胡瓜を、橋の外に放り投げた。水音というこの世の事象は、私の耳にも響いてきたのだが、それを求める異界の者の姿もまた見えたのだ。)合掌。

 




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