森のかけら | 大五木材


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★今日のかけら・#187【ハードサイプレスHard cypress ヒノキ科・針葉樹・オーストラリア産

住宅金融公庫の高耐久住宅向け木材の認定を受けていて、防腐剤などの薬剤を注入しなくても土台に使える木として知られているのが『オーストライアン・ハードサイプレス』。和名としては『豪州桧』と現わされます。長いのでここではハードサイプレスとさせていただきます。私がこの木に初めて出会ったのは今から20年以上も前の話。当時はまだ【森のかけら】の構想すらなくて、在庫の種類も乏しく、会社の明確な方向性も定まってなく迷走していましたが、とりあえず知らない木は実際に自分の手で触ってみたいという野心だけはありました。

そんな中で見つけたのが木材新聞に載っていた『ハードサイプレス』という名前。地元で先輩方に訊いてもまだ誰知らず、扱ったことすら無いという状況。よし、これだ!と知識も経験値の無かった自分の武器に出来るという下心のみで仕入れてみることにしました。初めて仕入れたのはハードサイプレスのフローリング。初めて目にして驚いたのは、ヒノキと名前はついているものの到底ヒノキとは思えないその質感よりも、その強烈な匂い!梱包を開けた際の衝撃は今も忘れられません。

実際には梱包された状態でもその異様な匂いはしていたと思います。悪臭というわけではないのですが、今まで嗅いだことも無いようななん表しようなない刺激的な匂いで、そりゃあこの匂いならシロアリも近づかないだろうと納得しました。今は【森のかけら】などで世界各地の木を集めてさまざまな木の匂いを経験してきましたが、こと匂いの強烈さという点ではハードサイプレスが最強と言えると思います。油分も多く含まれていて防蟻性だけでなく耐久性も高い木だという事が分かりました。

フローリング形状に加工されていて、水回りの床材などに使ったりしましたが、実はこの木はそれほど大木になる木ではありません。主な生育域はオーストラリア大陸の北東部のクイーンズランド州という事です。かつては南東部のニューサウスウェールズ州にも多く分布していましたが、その地は国立公園になってしまったので現在は伐採できなくなったようです。現地では材の特性を生かしてウッドデッキなどにも利用されていましたが、当時はまだ愛媛ではウッドデッキはそこまで浸透しておらず、何の木を使えばいいのかも定まっていませんでした。続く・・・




競争相手の少ない平地で育ったアピトンは、環境の緩さが丸太にも反映され、丸太としてはあまり良質なものは得られにくい傾向にあります。枝が多く出るので節が多くなり、上に素直に伸びる意欲が低いのか(!)ねじれていたり曲がっていたり癖も強い。その反面マレーシア産のものに比べると表面へのヤニの滲出は少ないようで、触った時の触感もアピトン独特のざらつきが少なく感じます。材となった時には忌み嫌われるヤニですが、もともとアピトンが蓄えている性質なのですから文句を言っても仕方がないのです。

こちらは、タイ産のアピトンで挽いてもらった車両材ですが、通常ならば小口から導管に沿って滲出するヤニがほとんでありません。これぐらいのサイズのアピトンだと、めちゃくちゃ重たいので両腕で抱えるように持ち上げないといきないのですが、そしたら腕やら胸にもヤニが付着して大変なのですが、ほとんどヤニがなくて助かりました。目の詰まった大径木ほどヤニが出やすい傾向にあり、マレーシア産の競争の厳しい野生育ちに比べるとタイ産の緩い環境の平地育ちは、そもそもヤニの含有も少ないのかもしれません。

タイの現地の方々はそ貪欲にそのヤニを求めていました。それがアピトンに開けられた穴の正体だったのです。最近の話ではなくずいぶん昔の話ですが、アピトンの根元にちかいところに腕が入るぐらいの大きさの穴を開けて、そこに器を置いて滲出するヤニを貯めて燃料や塗料などに利用されたのだそうです。穴の内部をよく見てみると、穴の奥の方は長年のヤニの採取作業のためか真っ黒になっていて「謎の穴」感が漂います。さすがに最近ではこういう事もないようですが、かつてはこのヤニも暮らしに欠かせない貴重なモノだったと思われます。

使い方、考え方次第では木は無駄になるものが一切ない「まるごと有用な資源」のはずで、日本人は特にそのことを理解し実践してきた民族だと思います。樹種は違えどもかぶれるリスクのある『ウルシ』を傷つけて樹液を採取して塗料に使ったり、毒性成分の含まれる『キョウチクトウ』だって強心剤などの薬用に利用していて、毒のある木も使い方ひとつ。このアピトンの油取りの穴もその実践記録として、この部分だけ製材してもらって保存しておきたかったのですが、瀬村さんに面倒くさいことを言うなと怒られそうなので自制しました(笑)。

こんなアピトンですが、最近では製材するところも少なくなってきていて、弊社にすら県外から問い合わせが来るようになりました。特別アピトンを宣伝しているわけでもなにのでどうして?と思ったら、12年ぐらい前に書いたブログを見られてとのこと。それで改めて見直してみたら、もっと沢山書いているつもりでいたのですがアピトンについているブログが思いのほか少なくてビックリ。普段目にしている機会とまったく比例していない。それぐらいアピトンが日常的な木になっていたという事ですが、その貴重さに失ってしまってから気づく愚かさよ・・・




★今日のかけら・#058神代欅/ジンダイケヤキ】 ニレ科ケヤキ属・広葉樹・宮崎産

山火事や地震は怖いけれど、火事の熱量でなければ種子は落下せず、火事で枝や葉っぱが焼かれたあとの土でしか発芽しないと言われる『ジャイアントセコイア』みたいに、ちゃっかり利用する者もいたりと自然界の相互依存関係はハードでタフ。火事で燃えた山だって永遠に禿山のままってことはなくて、やがて逞しい奴が芽を咲かせ縄張り競争が始める。火山においてもひとたびは身を焦がされたり、土石流でなぎ倒されたりしても、その数百年、数千年後に掘り出されて輝きを放つものもある。それが神代木(ジンダイボク)

神の御代の時代から土に埋まっていて、再びこの世界に現れたという意味で「神代」という厳かな冠がつけられています。要するに火山の噴火や土砂崩れなどによって地中深くに埋められ、数百年とか数千年後に道路工事などで偶然掘り出されてきた土埋木(どまいぼく)の事です。本来はその中でも特に状態、品質の優れたものだけにつけられる栄誉なのですが、最近では「土埋木=神代木」と拡大解釈され、言葉としての響きもよいことから土埋木全般に対してこの言葉が使われる傾向にあります。

弊社にも秋田県鳥海山ジンダイスギをはじめ北海道から産されたジンダイナラジンダイタモ、ジンダイニレなどいろいろな神代ありますが、これを自然の恩恵と呼んでしまうには、これらの木が埋没するに至った経緯を考えると不遜かもしれませんが、何もなければこれらの木を得ることは出来ませんでした。中でもこちらのジンダイケヤキは月のクレーターのような質感になっていて、恐らく火山の噴火によるものと思われますが、その凄まじさが伝わったきます。

熱さのためか木も全体的に強い力が加わってねじれたような形になっていて、建築や家具に使えるようなものではありませんが、地球の鼓動を伝える遺物として個人的なコレクション。土埋木は永らく地下水や地価の微生物なども影響も受けて変質しているので、通常の木材という感覚で使うと痛い目に合う事もあるので注意が必要。しかし削った時の不思議な石質感や人工物では得られない風合いは格別。私はとりわけこのジンダイケヤキに強く惹かれます。もしこれが掘り出されずにそのまま朽ち果ててしまっていたらと思うと、自然はかくも残酷でかくも美しい




 

頑丈で耐久性が求められるトラックの荷台材に欠かせない木が、東南アジア産の『アピトン(Apitong)』です。私にっての地元の木材業界の兄貴分である瀬村要二郎さん(瀬村製材所社長)が、昔からアピトンなどの南洋材を製材していたことから、私にとっても非常に身近な木のひとつでした。トラックなどの車両材はもとより、商業店舗の床材やビニールハウスの骨材やガーデニングなどにも使ってきました。主な産地はフィリピン、タイ、マレーシア、ボルネオ島などですが、近年アピトンの丸太価格が高騰したまま高値で張り付いています。

瀬村さんのところでも昔はマレーシアから丸太が輸入されていましたが、最近では主にタイ産の丸太が入ってきています。先日も瀬村さんの土場を覗いたら、タイ産のアピトンの丸太が並べられていました。アピトンの外樹皮は特徴があって、厚いコルク質で凸凹の小さな突起があり、鱗状の斑紋があるので、丸太の識別が苦手な私でも分かりやすい。樹皮が肉厚で樹脂が多くて表面にまで滲出しているからなのかもっしれませんが、比較的外樹皮が剥がれないまま残っている場合が多いように感じます。

その中に気になる丸太が何本かありました。丸太の一部に小さな窪みがあるのですが、それがなんとも不自然な形。原木商社の担当者から、それが現地の人たちが昔この木から油を採取するために開けた穴だと教えてもらいました。これは丸太の産出場所にも関わっていて、そもそもアピトンはフタバガキ科のディプティロカルプス(Dipterocarpus)属に属する木ですが、この属には75~80種が含まれていて、フタバガキ科の中ではサラノキ(Shorea)属についで多い大家族を形成。その生育環境もさまざまで低地の森林地帯から乾燥した丘陵、河岸、険しい尾根筋などなど。

マレーシアから産される丸太は、径級が大きくて通直な材を求めて森の奥地で伐採したものが出材されます。ジャングルでは競争が激しいた若葉は競争相手よりも高く伸びて太陽の光を得ようとするため、比較的節やねじれの少ない通直な丸太が得やすいのです。しかし近年は輸送の問題でマレーシアからの丸太の輸入が難しい、価格が高問している等の事情もあって、タイ産の丸太が入ってきています。タイでは森の奥ではなく、平坦な林地やひとの生活圏の近くに生えていることも多いのだそうです。明日に続く・・・




 

400種類の『森のかけら』を目指して多種多様な木を集めまくっていますが、集めてはみたもののどういう売り方をすればいいのか、その『出口』を決めかねている木も沢山あります。その中の1つが、メタセコイアです。名前だけ聞くと、外国の木と思われるでしょうが、産されたのは日本で、しかも森からではなく町からです。メタセコイアは街路樹や庭木として全国各地で植栽されています。1939年に日本の関西地方の第三紀層で、常緑種のセコイアに似た落葉種の化石が発見され、発見者の三木茂博士によりセコイアに『メタセコイア』と命名されました。 

その後1945年に中国の四川省で現存していた『水杉(スイサ)』と呼ばれていた木がメタセコイアと同種とされて、メタセコイアは『生きている化石』と呼ばれるようになったのです。かつては絶滅したと思われていた木が、今では全国各地で植栽されているというのは不思議な感じ。そのメタセコイアは板に挽くと、見た目は目の粗いスギといった趣きです。成長が早いため年輪幅が広くて材質としてはかなり軽軟で、印象としてスギよりもやわらかく感じます。街路樹や庭木に多いとはいえ、給は気まぐれなのでスギのように量で勝負できるわけではありません。

そのため、決して入手困難であるわけでもなければ貴重種で高額であるというわけでもないのですが、用途が定まらず、あるにはあるがどう売ればいいのか分からず困惑していました。ある日、そんなメタセコイアを求めて勇者がご来店!勇者は大きなサイズのメタセコイアの一枚板を見ると肌触りを確かめられて、「この木をベッドにしたい!」と申されました。メタセコイアを製材して板に加工してベッドを作るというわけではなくて、一枚板をそのまま使ってその上に寝たい、という事です。しかも削らなくてこのまま荒材の状態がいいと勇者は仰る!

最初は呆気にとられて、本当にいいんですか?と何度も何度も確認しましたが、勇者の決断に迷いなし!しかしさすがに表面に割れ止めのボンドがべったり塗ってあったので、表面と耳分部だけは表面を剥がしてもらうことにしました。しかし、メタセコイアのザラザラした木綿にような肌触りが気に入っているので、サンダー仕上げなどは望まないという事で。それでグラインダーで表面を削り軽くサンディングしてあえて凸凹感を残しました。これでベッドにして本当に大丈夫なのかと多少不安もあったので、実際に自分が寝てみることにしました。続く・・・




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