森のかけら | 大五木材


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弊社の事務所前に植えた『』の葉も少しずつ秋の様相を帯びてきました。この地に根付いてから4年、身の丈10尺足らずのまだまだ小さな木ですが、小天狗の団扇に使えそうなぐらいの葉はつけるようになりました。木の出前授業やイベントなどでよく『』の話をするのですが、その際に名前の由来である『栃の実』について触れるので、息子や娘もすっかり覚えていて、葉っぱが色づくと「栃の実どこ?」と尋ねてきたりします。しかし残念ながらそれはまだまだ先の話なのです。

私とてこの栃の実を無事に見れるかどうか・・・。実は、栃はかなり大きくならないと実をつけない木なのです。自然の状態のものだと30年ぐらいはかかるとも言われています。以前に実生(みしょう/種子から発芽して成長する事)の若い苗木を接木して、あれこれ手を施して見事10数年で実をつけたという研究報告がありましたが、それは特殊な例で、通常は30年が目安とされているようです。順調に実をつけたとしても齢80手前にお目にかかれる事になるのか・・・気の長い話です。

そんな貴重な栃の実を使った料理が、こちらの『栃餅』です。先月、地区の役員会の慰安旅行で「姫路~城崎方面」に行ったのですが、その時立ち寄ったお店で売っていたので購入しました。但馬の郷土名物だとか。封入してあった説明書きには、【当但馬地方で昔から山の果実『とちの実』を冬の季節に皮をはがし、流れ川に3~4日さらし灰と合わせてとちの実の「アク」抜きをし地元の良質もち米を使用した田舎独自の製法で仕上げた商品です】と書いてありました。手間隙がかかっております。

それは栃の実にサポニンタンニンなどの苦味を感じる成分が含まれているため、アク抜をするなどの調理をして主成分であるトチでん粉だけを取り出して、小麦粉や米粉などと混ぜて練ったりして餅や麺として食したのでしょうが、先人たちの創意工夫には頭が下がります。しかしそれは決して甘優しい料理の向上心などとは対極にある、これを食わねば生きられないという極限状態での選択、挑戦だったのかもしれません。木の実は、昔の山村では救荒食料として多くの命を救ってきました。

森が与えてくれるめぐみはもともと「甘い」わけではなく、先人たちの生死をかけた「創意工夫」の末に、「甘美の知恵」という調味料に辿りついたのでしょう。日本人が「飢え」から解放されたのはわずか数10年前のこと。それからあっという間に肥満・糖尿病大国に堕してしまい、「山の食糧」を顧みる事が少なくなりました。自然への畏怖を無くし、踏み込んではいけない領域にまで足を踏み込んだ人間に森が与えるのは、森のめぐみではなく自然の脅威・・・。最近熊が市街地へ頻繁に出没するというニュースが聞かれますが、それは「警告」などという甘ったるいものではなく、虎の尾を踏んだ日本人に、森は木の実ではなく獰猛な獣を遣わしたのでは・・・などと考えてしまうのです。「もう後戻りできないのだ」などという愚かな傲岸から覚め、謙虚さを取り戻さなければ・・・。栃餅のほろ苦きを噛み締めて思う。

 




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