森のかけら | 大五木材

 

 

【クロガキ】

 黒柿 

カキノキ科・カキノキ属・広葉樹・愛媛産

学名:Diospyros kaki

別名:*****

 英語名Japanese persimon

気乾比重:0.60~0.85

 

黒縞の美学・JAPAN PREMIUM 黒柿①*

今日のかけらプレミアム008【黒柿/クロガキ】カキノキ科カキノキ属・広葉樹・愛媛県産

あくまでも私の個人的な趣味嗜好に基づくものですが、入手が難しい、その存在そのものが希少、特別なストーリーがある、などの木については、240種の【森のかけら】のレギュラーではなく、あえて仰々しくプレミア感を謳った【森のかけらプレミア36】として別枠に仕立てています。中には、「なぜこれがプレミアなの?」なんて意見もあろうかと思いますが、あくまでも私の趣味嗜好!そんな意見は聞くつもりもありませんが、その36種を選ぶ時にはかなり頭を悩ませました。

森のかけら・プレミア36の36種は以下の通り、アマゾンローズ、アマレロ、ウェンジオリーブウッドカステロキングウッド、グラナディロ、黒柿、黒檀、ココボロ、サントスローズ、紫檀、シャム柿、スネークウッドゼブラウッド、ソノケリン、ダオ、鉄刀木、チューリップウッド、バーズアイメープル、ヴィオレットウッド、パープルハート、パオローズ、パオロッサ、パリサンダー、パロサント、パンガパンガ、ピンクアイボリー、フランス黄楊、ベリ、ペロパローザ、ボコーテホンジェラススローズ、マホガニー、リグナムバイタレースウッド。30種のプレミアとレアなレギュラー6種で構成されています。緑色は「レアなレギュラー」です。 収納箱はブラックウォールナットで、全ての箱にシリアルナンバーがレーザー印字されています。

そんな【森のかけら36】には、日本の木が1つだけ含まれています。それがこちらの『黒柿』。クロガキという樹種があるわけではなくて、カキの木の中で心材に墨で描いたような漆黒の模様が現れたものを『クロガキ』と称します。なぜそのようなクロガキが生まれるのか、その詳しいメカニズムについては解明されていないそうですが、一説にはカキノキには柿渋の元になる「タンニン」という物質が含まれていて、それと土中から吸収した成分とが化学反応して発生するとも言われています。

100年を越えた老木のカキにしか現れないとも言われていましたが、近くの農家の方から分けていただいた50年足らずの若いカキノキを製材すると、中身が黒くなっていましたので、必ずしも老木にだけ現れるのではないと思います。ただし、木材業界、銘木業界で言うところの『クロガキ』というのは、ただ単に黒味が出ているという事だけではなく、それが文様として美しい柄になっているとか、より黒味に濃淡の深みがあるなど、芸術的な風合いが求められ、それが特別な価値を生み出しています。続く・・・

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黒縞の美学・JAPAN PREMIUM 黒柿②*

私にとって興味があるのは、どういうメカニズムでクロガキが生まれるのかという事よりも、そのクロガキにまつわる神秘的なエピソード。意図しては生まれない自然のきまぐれの中にこそ木の持つダイナミズムや妙味が感じられます。数万本のクロガキの中に1本出るかどうかといわれているのが、まるで孔雀が羽を広げたような木目に見える『孔雀杢』のクロガキ。昔より茶道具や高級和家具などに加工されて、好事家にとっては銘木中の銘木として珍重されてきました。

弊社が在庫しているクロガキは、そんな銘木と呼ばれるようなクロガキではありません。長さが2700㎜、幅が350~450㎜、厚みが100㎜ほどで全身に黒味が現れています。10年以上前にその見た目に惚れて仕入れたモノ。さすがにそのままでは使いにくいので、板ものとして使いやすいように厚みを三枚におろしました。すると中からは怪しすぎるような黒味の杢が!墨汁の墨を流して、漆黒の黒味から薄墨に変化していく濃淡の風合いは、まさに『墨流し』の形容に相応しい!

この丸太はかなりの高齢木で、美しい墨流しのクロガキとなって今こうして人の目を楽しませてくれていますが、その恩恵を受けているのは私たち人間だけではありません。その黒味の中に無数にあいた虫たちの穿孔跡。ここまでになると、その虫穴も含めてひとつの絵柄のようでもあります。クリモモ、ナシ、ミカンなどのフルーツウッドは虫たちにとっても甘い樹液と住処を提供してくれる貴重な存在。フルーツウッドにとって虫穴は避けて通れぬ宿命でもあります

一般的に顧みられることの少ないフルーツウッドを積極的に扱っていこうとするビーバー材木屋にとって、虫穴を受け入れざるしてフルーツウッドを使う資格は無いのです。虫穴ひとつ無いようなクロガキを欲される方は、銘木屋さんに行かれるべき。そんな銘木屋では歯牙にもかけられない虫穴のあるクロガキにこそ、光を与えられるのがビーバー材木屋の腕の見せ所であり矜持。虫たちに我が身を与えたアンパンマンのような慈悲深いクロガキに相応しい舞台がきっとある!続く・・・

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黒縞の美学・JAPAN PREMIUM 黒柿③*

数え切れないほどの大小さまざまな虫穴の開いたクロガキを見ていて私の脳内では、クロガキが生まれてきてメカニズムが浮かび上がりました。あくまでも私の勝手な脳内妄想ですが、あるところに大きな一本の大きなカキノキがありました。そのカキノキはもともとクロガキではありませんでした。しかし長年の風雪に耐えたクロガキの樹皮は剥がれボロボロになっていました。その部分から虫が入ってきて卵を産み付けました。やがて卵は孵化して幼虫たちは甘いバリバリとクロガキを喰っていきます。

このままでは危ないと身の危険を感じたカキノキは非常事態宣言を発動!枝折れしたところから体内に侵入してきた水分を利用して、自らのタンニンと融合させて秘密兵器『スミナガシ』を生成。体を蝕む虫たちに向かってスミナガシガがジワリジワリと向かっていきます。紆余曲折を経て虫穴にたどり着いたスミナガシはその中に含まれている毒素(あくまでも私の脳内妄想)を使って、次々と虫たちを撃破!虫がすべていなくなった頃には全身にすっかり墨が回って立派なクロガキに変身したのです!(繰り返しますが脳内妄想

そうやって数々の虫穴のあいたクロガキが出来たのだと勝手に納得しているのです。だからこそ虫との激しい戦いを勝ち抜いたこの木に敬意を払い、それに相応しい舞台で輝いていただきたいのです。ならばその名誉の傷を隠すことなく、受け入れていただける人と出会ってもらうことが肝心。その出会いを待つこと10数年。遂にそんな出会いがありました。虫に喰われたその痛々しい傷以上に、心を惹きつけてやまない墨流しの妖しくて美しすぎる自然の造形美の極致!

そのまま一枚で使うには狭いサイズでしたが、三枚におろしたことで木目が左右対称になるシンメトリーで使うことが可能になりました。それでも足りない幅を補うために中央にクロガキに負けないような濃茶のブラック・ウォールナットを挟みました。この長手方向に幅剥ぎしたブラック・ウォールナットの短めの板がL型に繋がって、大きなキッチンカウンターとなります。バランスも完璧で、寛容なお客様が全面的に受け入れていただき、己の身を虫に与えたクロガキは遂に日の目を浴びることになったのです。続く・・・

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黒縞の美学・JAPAN PREMIUM 黒柿④*

このクロガキを加工する際の問題は無数に開いた虫穴。当然もう虫はとっくにいないくなっているのですが、大小さまざまな穴をどう処理するかという事。これがクロガキでなくて、ここまで虫穴の数が無ければ、色目を考えて木粉などで処理するのですが、虫穴が漆黒の黒味の中に点在しているので、これをうまく処理しないと折角の墨流しの図柄が生きてきません。またキッチンで使うという事で耐水性にも注意しなければならなりません。それで今回選んだのが、デンマーク製のリペアスティック

長さ30㎜、直径12㎜の円柱状になっていて、専用の伝熱ガンに差し込んで押し出しながら熱を加えるとそれが溶解して、節や割れ、虫穴などに注入出来ます。直後にクリーニングアイロンや鉄などを押し当て冷却させると一瞬で硬化します。硬化したらカッターなどで余剰部分を切り落とします。最後はサンダーで表面を滑らかに整えたら完成です。いつもはストックしてあるいろいろな木粉の中から色を選んで、瞬間接着剤でかためて節や虫穴を補修していくのですが、接着剤が浸透していくので面がゾロになるまで何度も同じ作業を繰り返さなければなりません。

それで固まっても経年変化で補修部分が痩せていくこともあったりして後で手直ししたりする必要もあったりしたのですが、解説文によれば、リペアスティックは硬化後の収縮がなく、木材に追従して変形することもありません。更に硬化後にその上からオイル塗装やサンダー掛けも可能だし、耐水性もあり、紫外線による変質もなし。VOCや毒性もゼロで、安全性も高く作業効率の高い補修材という事。パンフレットを見て以前から関心はあったものの使った事はありませんでした。

やはり慣れた方法の方が間違いが無いという臆病さから手を出していなかったのですが、今回は虫穴の数が圧倒的に多くて耐水性や作業効率も求められるという状況でしたので、思い切って使ってみることにしました。確かに溶解して注入して鉄を当てると一瞬で硬化して固まります。強力な瞬間接着剤が指先に付着して皮膚が剥けるようなこともありませんが、馴れるには少し経験が必要。虫穴が多かったお陰で作業が終わるころにはすっかり慣れて、随分早く出来るようになりました。そして完成した姿がこちら!更に明日に続く・・・

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黒縞の美学・JAPAN PREMIUM 黒柿⑤*

パンフレットにあるように作業効率は圧倒的によくて、仕上げについても馴れれさえすればスムーズ。変形した虫穴にうまく充填出来るようにさえなれば、かなり役立つと実感しました。色もパインからブラック・ウォールナットや黒まで20種類近くバリエーションがあるのも心強いです。特に今回は相手がクロガキだったという事もあり、木粉ではいかに同じ木を削って採集した木粉を使ったとしても、墨汁のような漆黒の黒色を作り出すことが出来ずに、その部分だけ妙に浮いた仕上がりになってしまいます。

その点ではクロガキの自然の漆黒に負けない「黒点」で埋めることが出来ました。角欠けにも有効でしたが、硬化後にサンダーをかける際、ベルトサンダーを使うと回転の摩擦熱で再び軟化したりと、まあこういうものは実戦をこなして体で感覚を覚えることが大事。それでもこのリペアスティックのお陰で想像よりはるかに早く仕上がることが出来ました。裾広がりの形状だったのも幸いして、シンメトリーのクロガキというかなりレアなカウンターが仕上がりました。

後から現場でL型のカウンターと繋いで完成ですが、現場が新居浜市という事もあって完成後の写真は取り損ねましたが、普通見ることのない個性的なカウンターとなってお客様にも喜んでいただけました。同時期に仕入れたクロガキがあと数枚残っていますが、これだけ全身に黒味が現れて、柄が整ったものはありません。以前は関東の木工所などからも何度かお問い合わせをいただいて画像を送ったりしたものの、やはりこういうものは実物をご自分の目でご覧いただかないと不安。

特に高齢木や老木になると、部分的に脆くなっているところあったりして、それがその人にとっての許容なのかどうなのか、また虫穴や染み、傷、割れ、節など、言葉や写真ではどうしても伝わらないことがあって、後から互いが嫌な思いをしないですむように、そういう材については極力ご来店いただき実物を見て、触っていただくようにしています。カワリモノを扱う店にとって、必要なのはカワリモノを面白いと愛でてくれる変わり者の客。カワリモノ(木も店も)は変わり者に愛される!

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サルカニ合戦の8かけら*

昨日からご紹介しているクロガキを加工してもらったのは、いつものZEN FURNITURE』の善家雅智君。彼の工場からクロガキの板を運ぶ際に思いがけない組み合わせが実現。弊社の3トン車の荷台の上に並んでいるのは、クロガキ(右)とクリ(左)。クリは函館産のクリの一枚板をフローリングに加工したもの。こちらは木工所で加工されたもので、この後弊社で検品して長さをカットして整えます。それぞれ別のお客様さからの注文だったのですが、この組み合わせに注目!これも「チーム・フルーツウッド」!

一体何を興奮しているのかというと、クリとカキ。フルーツウッドなどキワモノ木材を扱う弊社とて、【森のかけら】以外で同じタイミングでこういう組み合わせの仕事が入るのは珍しいのです。そう、ここにあといくつかの木が揃えば、日本人なら誰もが知っているあの昔語の登場人物(キャラクター)が揃うのです。後のメンバーは、『モンキーポッド』。カキ、クリ、サルといえば、もうそれだけでもピンとくると思います。そう、『サルカニ合戦』です!

今更ストーリーを説明するまでもありませんが、話によっては登場人物(キャラクター)が省略されている事もあるので、整理しておきます。主役はサル(モンキーポッドカニ。事件が起こるのがカキの木()。親ガニを殺したサルを懲らしめるのが、石臼、牛の糞、蜂、畳針、クリ(栗)。とりあえあずカキ、クリ、サルだけでも何となくサルカ二合戦はイメージできるとは思いますが、ここは強引な力技で『森の5かけら』を作り出す「かけら職人」のメンツにかけて後もどうにか木に例えたい!

どうにか木と関連付けてみると、まず牛の糞は、バッコウヤナギ。文字通り、ベコ(牛)が好んで食むヤナギがその由来。石臼は、石つながりで「イシゲヤキ」の別名を持つ『ニレ』。畳針は、針つながりで「ハリエンジュ」。かなり苦しいですが・・・。問題はカニとハチ。蟹という言葉で木材でイメージするものといえば、蟹の甲羅のように見える蟹杢。その蟹杢が現れるのがツガ。弊社の在庫で蟹杢があるのは『キリシマツガ』、最後のハチですが、これがどうあがいても繋がりないので誕生木(8月)でケヤキ。かなり苦しいこじつけではありますがこれにて『サルカニ合戦の8かけら』完成!

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クロガキのかけら*

長々と『クロガキ(黒柿』について書いてきましたが、【森のかけら】においては、プレミアム36の中の「日本代表」として送り込んでしまったので、このブログでも滅多に登場することがありません。材としてもかなりレアなのと、高級銘木にはあまり縁のない弊社としては、わずかしか在庫していないため、よっぽど倉庫の奥にまで侵入しようとするチャレンジャーでなければ、クロガキの板を目にすることもありません。端材までキッチリ使い切るので、『ちょこっと端材』コーナーに並ぶことすらもありません。

大きめの板が数枚あれば、その端っこで『かけら』ぐらいは十分カバーできるので、左の写真ぐらいのサイズがあれば5~6年は心配いりません。これは先日から書いているブログに登場する板の、三枚に割る前の姿で8年ぐらい前に撮ったものです。クロガキの大きさが分かるように、板の横に座って写真に写ってくれないと頼んだら、喜んで手伝いしてくれた娘(次女)ももう高校二年生。今ではモデルなんてとんでもない話。三人の子供たちの誰がモデルになる~ともめていた頃が懐かしい・・・そんな頃からこのクロガキも弊社にあったということか。

『カキのかけら』の場合は、かけらサイズに加工して、植物性オイルを塗って完全に仕上げてから黒味がよく表れているものを『クロガキ』として分類しています。右の写真はまだ塗装前なので、黒味をぼんやりととぼけた色合いですが塗ると下の写真のように黒味がグッと濃くなって見た目も引き締まって見えるようになります。最近は近所からもカキの木を分けていただく機会も増えてはきたのですが、なにせ虫に喰われやすく、加工してみても『かけら』としてすら使える部分もわずかという事になってしまいます。

さすがに虫もタンニンは美味しくないのか、黒味が喰われている事は少ないのですが、折角カキの丸太をいただいても、伐り時が悪いとあっという間に虫の餌食。今回は寒伐りしていたのと、保管状況が良かったようで、かなりの数のカキが揃いました。この中から一部は『クロガキ』としてプレミアムチームに選抜。ちなみに隣に写っているのは『スモモ(李)』です。どちらともこの周辺の農家の方の庭に生えていたものを分けていただきました。狙ったわけではないものの、柿と李のフルーツウッド並びでした!(※ビーバー雑木隊解釈ではカキもフルーツウッドです)

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3枚におろされるボーダーライン*

クロガキ』で随分引っ張っていますが、ずっと温めていたネタでしたのでもう一日だけお付き合いください。シンメトリーに幅剥ぎしたカウンターテーブルの板は、もともと100㎜ぐらい厚みがあったものを3枚におろしたと説明しましたが、こちらが3枚におろす前の状態。もともとこのサイズで仕入れたので、当初はこのまま売るつもりでいたのですが、さすがに厚みがネックとなりなかなか商売が成立しませんでした。そうやって何度も倉庫から出しては並べて、売れずにまた元に戻してを繰り返していたある日・・・

たまたま寝かせていたカキの木を小口から見ていたら、小口に広がる黒い模様。ずって見ていたらその中身が気になりだしたのです。この厚みのままで売れれば手間はかからないものの、この厚みの中を見る機会を逸することになる。果たしてこの板を割った見たらどなんな「景色」が見えるのだろうか?!今までに私が手にした中で最大のクロガキ、たぶんこれを逃したらきっとこれほどのクロガキを自由にあれこれ出来るチャンスは二度となにのではないだろうか。そんな事を考えていたら、この中身が無性に見たくなった!

どちらにせよ、厚みが100㎜もあってはさすがに売るにくいという事もあるので、3枚ぐらいにおろした方が都合がいいのだから(決して自分の好奇心だけで割るわけではないんだぞと、自分に言い聞かせながら・・・)という事で3枚におろしたのです。そして結果的にそのうちの2枚がシンメトリーのカウンターテーブルになりました。木はひと皮削れば全然違う表情を見せることがありますので、もしかしたら数㎜下にはとんでもない杢が潜んでいるのではなかろうか!なんて思いだしたら確かめたくなってどうしようもない。

だからといって、全部コンマ数ミリに薄~くスライスしてしまおうとは思わないのです。このあたりが偏屈材木屋の身勝手さ。薄くしたところで無垢であることに違いはないものの、ある程度の厚み(30㎜前後)が自分の中のボーダーラインで、それぐらいになれば表に見えるものとその中身の表情に大きな差がないと思い込んでいるのか、もうそれを割ろうとは思わなくなるんです。どの厚みまでが許容できるかはひとそれぞれだと思いますが、私の場合はこのあたりで『もっと中身が見たい症候群』は落ち着くのです。

 

今日のかけらプレミアム004

オリーブウッド

 Olive wood 

モクセイ科オリーブ属・広葉樹・スペイン産

学名:Olea europaea

別名:ヨーロピアンオリーブEuropean olive

気乾比重:0.80

小豆島のオリーブ物語② 選ばれし島*

★今日のかけら プレミアム004【オリーブOlive wood モクセイ科・広葉樹・スペイン産

さて本日は昨日に続いてオリーブの話ですが、ちなみに【森のかけらプレミアム36】に入っているオリーブはスペイン産のものですが、ここでお話しするのは小豆島で育った国産オリーブの話です。まずは小豆島とオリーブの歴史について。四国に来られたことのない方には小豆島がどこにあるのか分かりづらいかもしれませんが、瀬戸内海・播磨灘にある島で、香川県小豆郡に属し、小豆島町、土庄町の2町からなり、人口は3万弱。淡路島に次いで2番目に大きな島です。

こ の島がなぜオリーブの産地になったかというと、今から100年と少し前の明治41年(1908年)に、当時の農商務省がアメリカから輸入したオリーブの苗木の試作をするために日本で3か所が選定されました。なぜそれらの場所が選ばれたのかというと、オリーブの原産地のイタリア、スペイン、ギリシャなど地中海地方に似た温暖な気候の場所であるということと、小豆島については当時沢山獲れたニシン(鰊)をオイル漬けにして輸出する狙いもあったとか。小豆島以外の2ヶ所は鹿児島と三重。

その後、小豆島以外の地域ではオリーブがうまく育たず栽培を断念。小豆島の環境にはうまく適応したようで、順調に生育し、大正時代の初めの頃には搾油ができるほどに地域に定着したのだそうです。栽培農家の努力もあって、その後栽培面積も増えて、昭和29年には県花、昭和42年には県木にも指定されています。しかし昭和34年の農産物自由化以降は、スペインなど海外から安価なオリーブ製品が輸入されるようになって厳しい価格競争の波に飲み込まれることに。

当初考えていたニシンのオイル漬けも、漁獲環境が一変して激減します。ちなみに明治30年には国内の鰊の漁獲量はおよそ100万トンもあって、海藻なども含めたあらゆる漁業の総漁獲量が174万トンだったので、全体のおよそ6割をニシンが占めていた計算になります。個体数で換算すると、約30~40億匹という天文学的な数字!しかしその後ニシンは急速に獲れなくなり、「あれからニシンは どこへ行ったやら ~♪」と石狩挽歌で歌われたように激減の一途を辿ります。

 

小豆島のオリーブ物語③ 鰊は何処へ?*

オリーブの話からニシン(鰊)の話へ脱線。かつての100万トンから平成26年の全国の鰊の漁獲量合計は4600トンと、見る影もありません。なので小豆島におけるオリーブも新たな出口を求められるようになります。その結果、現在ではオリーブオイルだけでなく、オリーブの実を使った塩蔵や化粧品、オリーブの木を使ったクラフト、苗木など様々な用途に利用されています。しかし、子供だった私には北原ミレイ八代亜紀が「あれからニシンは どこへ行ったやら ~♪」と歌っているのを聞いても、鰊漁の哀感など分かろうはずもなく、おどろどろしい暗い歌としか思っていませんでした。

しかし今改めて、作詞のなかにし礼の幼少期の鰊漁にまつわる一家離散の実体験がベースになっていたことや、木材業界よりも更に激しい鰊漁の波乱万丈の変遷などを知るにつけ、その歌詞ひとことひとことに込められた思い、北海道の過酷な漁場の様子までもが浮かんでくるような、叙情溢れる言葉が心に染み入ります。このブログを書きながら何度も何度も石狩挽歌を聞き直し、北原ミレイ八代亜紀、石川さゆりなどの情感溢れる歌い方も相まって、聞いているうちに涙が溢れそうになるほど・・・。

昭和の歌って作詞者って、ひとつひとつの言葉や情景描写を大切にする人が多くて、1曲にちゃんと物語が出来上がっていて、歌謡曲がそのまま映画になることだって珍しくなかったほどでした。作詞者の人生観とかが込められていて、歌い手もそれを自分なりに表現しようとする凄みがあって、高いレベルでプロフェッショナル同士の技の凌ぎあいがあったんだと思います。そういえば、石狩挽歌は鰊漁の哀愁を歌っていますが、歌謡曲で魚の種類まで特定する歌も最近ではあまり聞きません。

それは樹についても同様で、サクラのように単なる樹種を超えて、言葉自体がいろいろなイメージを膨らませるようなケースは別にして、昨今の歌謡曲の中で特定樹種の名前が出る歌って、私が知らないだけかもしれませんがほとんど無いように思います。それって日常生活の中で樹の名前を使い分けて話す機会が減ったからということでしょうか。オリーブの事を書くつもりで話は脱線しましたが、1本の木は地下茎で多くの事象や世界と繋がっているという事の証明。明日こそオリーブの話。

小豆島のオリーブ物語④ 島だが縞は無し*

さて今日は本題である小豆島産オリーブの話に戻します。今では島全体で5万本ものオリーブが栽培されているほど、生育に適した環境だった小豆島ですが、材木屋である私にとって気になるのは、オイルの品質や実の味よりも材質のこと。今回いただいたのは、小豆島で育てられた正真正銘の国産オリーブの小枝と割とやや広めの板。オリーブは年輪が非常に分かりづらいので識別しにくいのですが、小枝でも20年、板は50年を越えているのではなかろうかとの見立て。

弊社で【森のかけら・プレミア36】に使っているオリーブはスペインから輸入されたもの。また最近、ピザのお店などでトレイや食器などに使われているのは、主にアフリカのチュニジア産のもの。それらの海外産のオリーブには、特徴的な不規則な縞柄が現われ、オリーブの特徴を形成しています。弊社でも依然に購入したチュニジア産のオリーブのスプーンにも魅力的な縞柄が入っていました。実はチュニジアは、世界第5位のオリーブオイルの生産国なのです。

それに対して小豆島産のオリーブは、根本的に生育の歴史が100年ちょっとなので、そこまで大きな材が得れないという事情もありますが、地中海産のオリーブなどにみられる独創的な縞柄があまり見られません。いただいた耳付きの板の端にわずかに縞柄が見えていますが、その方も小豆島産でガッツリ縞柄が出ているものは見かけないと仰っておられました。生育に適した環境であったとはいえ、土壌の性質なども違うので、国産オリーブでは縞柄は求めにくいものなのかもしれません。

それならそれで、ないものねだりをしても仕方がないので、縞柄の出ない小径木の国産オリーブの枝から何が作れるのかを考えることが大事。いただいた枝と板を眺めながら私なりの出口を探ってみたいと思っています。最近観賞用のオリーブはあちこちに植えられています。同じ1本のオリーブの木を見ても、その姿を愛でる人、その実を食すことを考える人、その実からオイルを摂ることを考える人、その木を加工して使おうと考える人。入口はひとつでも出口は多し。

たまたまの偶然ですが、今朝の愛媛新聞に小豆島のオリーブ農家が作ったオリーブオイルの一面広告がありました。たぶん今までにも何度か広告を出されていたと思うのですが、気に留めることもありませんでしたが、さすがにこのタイミングだったのでガッツリ広告を読み込んでしまいました。こういうのって日常的にはよくあることなのに、こちらが一方的に運命を感じてしまうタイプなので、オリーブの風が吹いていると勝手に自分の都合のいいように解釈しておきたいと思います。

小豆島のオリーブ物語⑤ かももと新漬け*

小豆島からやってきたオリーブの木ですが、実は私の子供たちの通っている地元の鴨川中学校の校歌・校章にもオリーブが(校歌の2番:清き香もオリーブの徽章に見ゆる真善美♪)。学校の校庭にはオリーブの木も植えてあります。オリーブの花言葉は、「平和」、「知恵」であることから、多くの学校でも校歌や校章に取り入れられているところが多いようです。鴨中には『かもも』という独自のゆるキャラがいますがその頭にもしっかりオリーブの葉が!

そのようにイメージの広がりと認知度いう点では非常に優れた木であるオリーブですが、国産のオリーブとなると通直な材が採りにくく、径級も小さいため、クラフト材としても、小さめのコースターや器、皿、スプーンなどに限定されています。なので私としては、得意の『物語の付加』という観点から出口を考えてみるつもりです。こうやって当初の目的であったニシンのオイル漬けから、ニシン漁の変遷などを調べてみるのも、物語を構築するために必要不可欠なこと。

今回オリーブの小枝と板と一緒に小豆島産の新漬けのオリーブもいただいたのですが、新漬けのオリーブって実は初めて食べたのです。新漬けオリーブは、オリーブ果実を収穫後に脱渋し、塩水に漬けこんだもので、化学調味料、防腐剤などは使用されていません。ビタミン、ミネラル、抗酸化作用のあるポリフェノールも含んでいるという特徴があります。鮮度抜群の新漬けオリーブですが、秋に収穫した時期限定のもので、賞味期間も開封前の状態で製造後90日という大変貴重なものなのです

塩っけが効いていてビールのつまみには最高でなかなかの美味でした。私の中ではオリーブというと、まず素材としての「材」、次にオリーブ畑の視覚的な「樹」、シンボルとして描かれることも多い「葉」、料理やアロマとしてのオリーブの「オイル」、そして最後に食用の「実」という位置づけでしたが、今回新漬けオリーブをいただいたことで多少順位の変動もありそうです。頭で考えてばかりいては見えないものが沢山あります。目にも口にもとってもありがたいご縁でした。

私にとっては小豆島産のオリーブも大切ながら、いま在庫しているスペイン産のオリーブの方も気になるところなのです。現在のところ、こちらのオリーブの方にも【森のかけらプレミア36】という出口しか作れていません(サイズの関係で、今の材だと『森のりんご』が取れません)ので、スペイン&小豆島産併せて出口を考えてみるつもりです。『かもも』に『新漬けオリーブ』と、材木屋の小さな視点で見ていては見えないことばかり。酉年だけに鳥瞰の視点でモノ語り造りに励みたいと思います!

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