森のかけら | 大五木材

★今日のかけら・#137 【ウェンジWenge  マメ科・広葉樹・アフリカ産

WENGE NO TOBIRA

1. 今日のかけら

20150903 1随分前の話になりますが、東京からお電話で「ベンゲはないのか?」との問い合わせがありました。その当時は何の木の事を指しているのかよく分からなかったのですが、実はそれがアフリカ産のマメ科の重硬な広葉樹『ウェンジ(Wenge)』のフランス語読みだった事を知ったのは、かなり後になってのことでした。その頃はまだインターネットも普及してなくて、そういう事は木材図鑑などの文献で調べるか、よく知っている先輩に尋ねるかしかなかった時代でした。

20150905 2当時でもウェンジの在庫は少しだけ持っていたものの、ウェンジに対する知識も情報もほとんど持ち合せていませんでした。では、そのウェンジについてご紹介します。アフリカ中央部のコンゴ共和国、カメルーン、ガブンなどが有名な主産地で、モザンビークでは『Dikela』の名前で輸出されていたりもします。ザイールでは、Wenge以外にもMokonge、カメルーンではAwongの名前でも呼ばれたりするそうですが、日本国内ではウェンジの名前でほぼ統一されて流通してるようです。

 

 

20150703 3

この木の特徴については言葉で説明するよりも、見てもらえば一目瞭然ですが、暗褐色の地の上にそれよりも淡色の縞が不規則に現れた非常に個性を持った木です。この木によく似た木としては、モザンビークで産する『パンガパンガ(Panga Panga)』があります。【森のかけら・プレミア36】の中にある木ですが、確かに非常によく似ています。初めてパンガパンガという木の事を知った時には、ウェンジの別名だと思っていたほどでした。それぐらい外観も構造も類似。

 

 

 

20150905 4見分け方としては、ウェンジの方が材が通直なので柾目が突き板にも利用される事と、暗褐色とやや淡色の縞の模様で区別するという事らしいですが、荒材レベルでは判別はほぼ不可能にも思えます。加工してオイルを塗れば確かに縞柄のコントラストに差が見えて来るものの、何も知らずにこれを見分けるには至難の技でしょう。実際にはかけらサイズの用途で使われる事はないのでしょうが、むしろ現在ではパンガパンガの方が入手困難なのではないかと思われます。明日に続く・・・

 

 


ブラックビューティー、ウェンジの黒い縞②

1. 今日のかけら

本日もウェンジの話です。私は個人的にこの木に『ブラック・ビューティー』というキャッチコピーを与えていますが、漆黒の中に現れる幾何学的な美しい縞柄はそう呼ぶずにはいられないのです。昨日、このウェンジに特徴がよく似た木として、同じアフリカ産のパンガパンガという木の事をご紹介しましたが、他にも唐木の中でも三大銘木とされる『紫檀・黒檀・鉄刀木(タガヤサン)』のタガヤサンがこのウェンジと雰囲気がよく似ています。共に同じマメ科の木です。

 

 

 タガヤサンは、主にタイ、ミャンマー、インドシナなどの東南アジアに分布している木ですが、ウェンジに比べると日本では圧倒的に人気が高くて、木の事をよく知ら無い方でも『紫檀・黒檀・鉄刀木』という言葉だけは知っている方も多く、その名前がつけばそれだけで価値が高くなるほど、銘木界の中ではネームバリューがあります。それで、ウェンジを漂白し退色させてからタガヤサンと称して、床柱や仏壇、家具などに使って高値で販売する悪徳業者もいるほど

 

 

さて、ウェンジに話を戻しますが、現在のコンゴ共和国がまだザイール共和国と呼ばれていた頃(1991年から1997年まで用いられていた国名)に、ザイールから日本に輸入されたウェンジを原木買いしたことがあって、その後地元で板材に製材して天然乾燥でずっと乾かせてきました。なにしろ気乾比重が0.8〜0.95という事なので、とにかく重たい!割れは出にくいのですが、しっかり乾かせないと収縮が大きいので、とにかく寝かせることに。さすがにもう充分!

 

 

 20150906 4

長さ3mで、直径はおよそ900㎜程度の原木でしたので、45~50㎜低度の厚みの板に挽きましたが、今までに数枚は家具として販売しました。そのうちの1枚がこちらの。もう充分乾燥しているので、倉庫のよく見えるところに置いておけば、沢山の人に観てもらえるのにと思うのですが、その重さゆえなかなか簡単に動かせず・・・。それでも思い切ってそのうちの1枚を倉庫に立て掛けて展示する事に。続く・・・

 


ブラックビューティー、ウェンジの黒い縞③

1. 今日のかけら

20150905 1ウェンジの原木を挽いた当時は、鉄のように重くて動かすこともままならない状態でしたが、天然乾燥といえども10年以上も経過すればさすがに水分もすっかり抜けてしまったようで、このサイズを独りで担げるように。まあそれでも肩に食い込むズシリ感はさすがですが・・・。その後、各地の木材市場で何度かウェンジの板も購入しましたが、自分の中ではこの初めて買った丸太のウェンジから挽いた板に対して特別の思い入れがあります。ではこの板を削ってみます。

 

 

20150905 2写真の手前側を見ると、板目と反対方向に横筋のようなものが見えると思いますが、これは製材した時の鋸目の後。そこをベントサンダーで粗く磨いたのが端の方ですが、手前のぼけた黒い砂塵のようなベールの下から、白と黒のメリハリの効いた美しすぎる杢目が飛び出してきました。想像は出来ていたものの自分でもちょっと感動!あくまでも杢の美しさを確認していただくために削ったもので、粗削りですがそれでも充分にブラック・ビューティーの一端を伺える事ができます。

 

 

20150905 3鶉杢のように緻密で雅趣に溢れた杢を見ながら、嗚呼やっぱり自分はこういうテイストの木が好きなんだなあと再確認。ゼブラウッド然り、ベリ然り、ボコーテ然り・・・。やや黒味が赤褐色を帯びているように思われると思いますが、恐らく照明の具合や、削りたてのためで、この後やや落ち着いてしっかりした黒味になっていきます。観て分かる通り、板幅に比べて杢の割合は少ないので、この板を使う場合はなるべくこの板幅のまま使っていただく事をお薦めします。

 

一方で柾目部分は規則正しく年輪幅が均一に整然と並んでいます。これはこれでウェンジという木の上品さを物語っています。あまりに目が細かいためある程度大きな面積で材を堪能していただきたい。こういう木の端材が少し入るだけでも、雰囲気が随分変わるので『モザイクボード』には加えたいのですが、なかなか端材が発生せず。さすがにこの板の端っこをカットしておこぼれをいただくという勇気はありませんのでウェンジの端材、慢性的不足状態。続く・・・

 


ブラックビューティー、ウェンジの黒い縞④

1. 今日のかけら

本日もウェンジの話です。これほど個性の光る木ですが、その強すぎる個性ゆえ一般住宅の現場ではまずお目にかかる事はありません。『床の間が家の顔のように思われていた時代』、床柱框、建具壺、置物などの調度品として床の間を飾り付ける彩りのひとつとして重宝されたものです。このウェンジという木は小さくなってもそれなりに強烈な印象を残し、重量感を与える事から木の好事家には愛用されたのですが、そういう場面も昨今ではドンドン少なくなってきたように感じます。

 

 

 

Exif_JPEG_PICTUREそれでもこうして改めてご紹介すると、クラフト作家さんや木工趣味の方から「ウェンジの端材が欲しいのですが・・・」というお問い合わせを多数いただきます。ウェンジの端材、お分けするどころか私だって欲しい!ウェンジの板そのものは幾らか在庫あります。そのほとんどが、2〜3mのテーブルサイズ。加工のご注文でもあれば、カットした端材も発生しますが、上述したように床の間が家の主役の座を明け渡して以後、ウェンジの出番はほとんどテーブルなどの家具に。

 

 

 

20150906 2しかも強烈にインパクトのある黒い家具ですから、相当マニアックなチャレンジャーでなければ手を出さない事でしょう。また、使われる場合でも、端っこまでしっかり自己主張の行き届いた木ですから、なるべく材料を無駄にすることなくいっぱいいっぱいの大きさで木取りするとか、残った材も棚板などに活用される場合がほとんど。ウェンジを家具に使おうなどと思われる方こそウェンジ魅了されているわけですから、その一片にも愛情を持っていらっしゃるわけです

 

 

 

そんな事でウェンジの板はあれども端材はなかなか発生せず。【森のかけら】にしても『森のりんご』にしても『モザイクボード』にしてもウェンジの端材待ちは多数行列を作っている状態。ネットで販売待ちのお方にまで行き届くのはいつになるやら・・・。ところで端をカットする場合、辺材とかがよく対象となりやすいのですがウェンジは、辺材が極端に脆くて虫害も受けやすいためほとんど使い物になりませんので、白太が絡んだ端材すら期待できないのであります。更に明日へ・・・

 

 


ブラックビューティー、ウェンジの黒い縞⑤

1. 今日のかけら

20150907 1衝撃にも強く弾性もあることから、海外ではヒッコリー代替材としてスキーなどの運動器具にも使われるという事ですが、日本においてはもっぱら家具材(主にテーブルや座卓)として利用されています。この美しい縞柄は大きな面積で使ってこそ映えます。見た目ほどに作業性は悪くなくて、鉋削性もよく滑らかな手触りが得られます。一部フローリングにも利用されていますが、角などが案外脆くて欠けたりすると、そげらは非常に鋭利で刺さるととんでもなく痛いのでご注意。

 

 

20150907 2乾燥は充分とはいえ重硬な木であることに違いはありません。白太(辺材)部分は脆いので、心材部分だけを使われるのがいいと思いますが、重たいテーブルが苦にならない方、是非ダイニングテーブルにいかがでしょうか。ただ残念なのは、仕上げにオイルとか塗ってしまうと折角の縞柄のコントラストが埋没してしまうので、装飾的には圧倒的に無塗装がお薦めなのですが、メンテナス等を考えるとオイルの必要もありと・・・それだけがブラックビューティーの悩ましいところ。

 

 

 

こちらがウェンジで作った『森のりんご』。ほとんどの木が、オイルを塗る事によって、それまで木の中に眠っていた本来の色合いが現われてくる中で、ウェンジに関しては折角の縞模様のコントラストが失われてしまう事に・・・。美しいものに棘があるではありませんが、この黒い縞模様を留めるためにはソープフィニッシュのような塗装をするしかないのでは。『モザイクボード』など多様な木の中にあってもひと際存在感を示すウェンジですが、その存在はやはり特異。

 

 

 

20150907 4そんなウェンジの木を使ったオリジナル商品も幾つか作っていますが、ちなみにウェンジの『森のりんご』は、¥5,000(税別)森のたまご』は¥2,500(税別)。先に書いたように本来は、ある程度の大きさで見てもらう方がウェンジの黒い縞柄が堪能できるとは思うのですが、まずは実際にブラックビューティーを手に取って身近で見ていただきたいという思いで、こういう商品も作っています。是非、実物をご覧になって下さい。これにて黒の魅惑・ウェンジの項、完。

★今日のかけら・#124 【アパ/リングワ Apa/Lingue  マメ科・広葉樹・アフリカ産

apa no tobira

アフリカの欅?!ナイジェリアのアパ①

1. 今日のかけら

APA NO KAKERA

 

 

 

 

 

 

20150607 1昨日に続いてい一枚板の話ですが、まずはいろいろとまわりくどい話もさせていただきながら、好みや家の造り、バランス、色あい、雰囲気などを絞り、候補となる木に見当をつけて実際に木を見ていただくわけです。倉庫の狭い弊社の場合、普段滅多にお声のかからないような大物については倉庫の奥の方にお眠りいただいており、その都度覚醒していただき陽の当たる場所へと導き出すわけです。そこで何枚か実物をご覧いただき、残念ながらご縁のなかったモノは再び眠りについていただきます。

 

20150607 2その作業が今月はやたらと多く、滅多に見る事のない顔ぶれによく出会うことになっています。まあ、自社で在庫している板を見て「懐かしい~」なんて感じるのはどんなものなのかとは思いますが、それも弊社らしくていいかと。さて前置きがすっかり長くなりましたが、その作業の繰り返しの中で最近見かける事の多い木の1つが、アフリカ産の『アパ』。在庫しているのはほとんど一枚板ばかりなので普段は滅多に目にしないのですが、【森のかけら】のチョイスでは常連さんです。

 

カメルーン、ナイジェリアなどの熱帯西アフリカに分布する「アフゼリア属」の傘下のすべての近縁の樹種を含んだ総称として、『アパ(Apa)』と呼んでいますが、これはナイジェリアでの呼称。コートジボアールでは『リングワ(Lingue)』、カメルーンでは『ドウシエ(Doussie) 』、モザンビークでは『チャンフータ(Chamfuta) 』、あるいは学名の『アフゼリア(Afzelia) 』などの名称で木材市場で流通しています。一族の名称として含んでいる樹種も多いことから材質にはバラつきがありますが見た目の印象は似ています。

 

心材部分は明るいオレンジ~赤褐色ですが、気乾比重は0.7〜1.0と数値の幅が広く、個体差が顕著です。アパの呼称で流通している材のどれがアフリカのどこの国のどういう種なのかまで調べることもできないため、あくまでも自分が過去に扱ってきた印象に基づくのですが、私の中でのアパのイメージは「とにかく重たくて硬い」というもの。そもそも大きなテーブルサイズの耳付きの一枚板のアパしか扱った事がないため、そういう印象を抱いてしまうのかもしれませんが・・・続く。


アフリカの欅?!ナイジェリアのアパ②

1. 今日のかけら

20150608 1昨日、アフゼリア属傘下につけられた総称としてアパ、リングワ、ドウシエ、チャンフータなど産出国ごとに違う名前で呼ばれている事をご紹介しましたが、日本の市場でも『アフリカケヤキ』の名前で呼ばれたりしています。それは木目や雰囲気がケヤキに似ているからというよりも、耐久性や耐水性が高く、白蟻に対する耐性も極めて良い事から重構造材や門など屋外施設に利用されるという材の特徴が、ケヤキの代替材として適性があるという事から命名されたのかも

 

20150608 2実物は見たことがないのですが、アパの果実は大きな木質の莢(さや)で腎臓のような形をしていて、基部に写真のように鮮やかな色のついた仮種皮を持つ粒状の種子を持っているとか。何だか巨大な蛍のように見えなくもないですが、こういうカラフルな種を見ていると、純粋にコレクションとして種だけでも集めてみたくなります。マメ科の木は果実が莢をなすことに特色があるのですが、その種の形にもそれぞれ個性があって非常に惹かれます。ちなみにアパはジャケツイバラ亜科

 

20150608 3実際、アパを使う用途の多くは寺社仏閣などの大きな部材が必要とされる現場や耐久性や保存性を求められるカースが多いようです。最近ではウッドデッキなどにも使われているそうですが、私は大きな一枚板でアパと出会った経緯もあって、アパといえばテーブル材という一種の刷り込みのようなものがあります。〔大きな一枚板=重い、硬い=アパ〕という刷り込みから、ついついアパについては消極的になっていて(最終的には完成品を自分が運ぶわけですから)、仕入れも控え目でした。

 

20150608 4また昔は既存の出口以外の用途に目を向けられるだけの精神的な余裕もありませんでしたので、アパへの私の認識は随分長い間そのままだったのです。そういう事もあって仕入れてはみたもののあまり触らず長らく眠らせてしまっていたのですが、それが幸いしたのかどうかは分かりませんが、このアパという木は乾燥させるのに長い時間がかかるものの、乾燥するとかなり軽くなるんだという事を実感して驚き!あれほど重たかったアパがすっかり乾いて相当軽くなっていました

 

20150607 4まあ前述したように一族の数種を含んだグループであるため個体差もあり、すべてのアパが同じ特徴ではないでしょうが、おおむね乾燥後の安定性は高いようです乾いた材を削ると皮革のような匂いがする知られていますが、実際に削ってみてもそこまで強い匂いは感じませんでした。また、材によっては刃先を鈍化させたり、ビスや釘などの加工を割れを生じやすく、乾燥が甘いとビスや釘の金属を侵してしまうので使用を控えたほうがよさそうです。右の写真はオイル塗装後。

 

20150607 5かつては大きな和太鼓はケヤキで作られていましたが、ケヤキの大径木が少なくなってくるとアフリカ産のブビンガが代替材として使われました。そのブビンガも次第に大物の入荷が難しくなり、『アフリカケヤキ』の名を持つアパに注目が集まってきているようです。樹高15~20m、直径1mを越す丸太も珍しくないといわれるアパですが、この木の本来の魅力はマホガニーに似た柾目にあって、『ポッドマホガニー』や『マホガニービーン』という米国における別名がそれを物語っています。乾燥後の軽量化も実感できたことなので、今更ながら再び手を出してみようかなと思うのですが、乾燥を経て使えるようになるに何年かかるか・・・しかし、大径木についてはこれぐらいの長期スタンスで臨んだぐらいで丁度いいのでは。

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