森のかけら | 大五木材

今日のかけら239

ロシアンラーチ

Russian larch

マツ科カラマツ属・針葉樹・ロシア産

学名:Larix sibirica

別名:シべリアカラマツ、ロシアカラマツ

気乾比重:0.68

ロシア材より愛をこめて・・・③*

★今日のかけら・#239【ロシアンラーチRussian larch マツ科・針葉樹・ロシア産

今日はロシア・シリーズの第3弾。シベリア産の有用な材としては、カラマツ、アカマツ、ベニマツなどがありますが、その中で『カラマツ』について触れてみます。ロシアに限らず、マツには多くの種類があります。アカマツ、クロマツ、トドマツ、エゾマツ、ヒメコマツ、ラジアータマツ、サザンイエローパイン、ポンデロッサパインなどなど、思いつくまま名前を挙げてもこんなに種類があります。なにしろ、マツ属に含まれる樹種は世界中で約90種もあるのです。それぞれに特徴がありますが、それらの多くは、学術的には【マツ科マツ属】に分類されます。英語で表記する場合は、『pine(パイン』という事になります。しかし、パインなどの名称がついていても、マツ属には含まれない木もあります。そのひとつがカラマツです。マツの代表とさえ思われがちなカラマツですが、分類としては『マツ科カラマツ属』になります。英語表記では『larch(ラーチ』となります。

案外知らない方も多いので、【森のかけら】では区別する意味で、『ロシアマツ』とせずにあえて『ロシアンラーチ』というシールを貼り、『ラーチ』を強調することにしました。実際にも、日本の『カラマツ』とは雰囲気も結構違います。カラマツそのものは寒冷地を好む木なので、ロシアでいえばシベリア、日本では北海道や東北、長野などが有名な産地です。極寒の地・シベリアで育つロシアンラーチは、異常なまでに目が詰まっています。つまり、あまりに寒いので少しずつしか成長が 出来ないということです。

国産でも、植林のカラマツに対して天然物の目込みの高齢木を『テンカラ』、つまり『天然カラマツ』と呼びます。これは見事な木目と、目のつまり具合です。以前に長野で100年生のテンカラを見せていただきましたが、これは立派な物です。刻んだり加工するのが惜しくなるほどです。国産のテンカラはとても希少で、おいそれとは手に入りません。それに対してロシアンラーチは、(恐らくその全てが天然だと思うのですが)国産の上を行く時間を刻んでいる物がゴロゴロあります。全体に占める目込みの頻度が比較にはなりません。ビッシリ目が詰まっています。少し詰まりすぎというぐらい!


個人的には、あまりにも目が詰まる過ぎていて、少しヘビーな印象があり、正直言うと少し目の粗い素朴な日本のカラマツの方が自分の相性には合います。これは、その木が良いとか、悪いではなく個人的な嗜好ですので、念のため。使い方を考えれば、ロシアンラーチは、その魅力を充分発揮してくれます。カラマツはもともと、油脂分を多く含んでいます。このマツヤニが、野球のバットの滑り止めやロージンバックになるのです。ロシアンラーチは更に目が詰まっていますので、外部の板塀などに使うと効果があります。

水にもよく耐える性質があります。ただしねじれやすい性質なので、釘やビスなどでしっかり施工 する必要があります。また、薄い壁板でも手に持てばズシリと重みを感じるほど、重量はあります。いつもその重みに、遠く北の極寒の地で厳しく過酷な環境に生きたロシアンラーチの『時間』というものを感じずにはいられません。深くしっかりと刻み込まれた年輪に畏敬の念を抱きながら、ロシア特集を終わらせていただきます。ロシア材よ、永遠なれ!そしてその素晴らしいロシア材と共に生きる富山の木材業者の皆さん、頑張ってください!

 

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ロシアカラマツは遠くになりにけり②*

野縁などの羽柄材として四国でも流通していたロシア産のカラマツですが、今から10年ほど前にロシア政府による伐採規制や関税の不条理ともいえる極端な引き上げなどもあり、富山の北洋材製材は急速に縮小することになりました。ロシアカラマツに限った事ではありませんが、人気を博していた木も手に入らなくなると市場はひと時の混乱はあるものの、すぐに代替材が現れて、しばらくすると何事もなかったかのように落ち着きを取り戻します。流通における「復元能力」は、元の材が嫉妬してしまうぐらいに逞しいのです。

北洋材の供給基地であった富山から物流、情報ともに遠く離れたいたこともあり、ロシアの関税引き上げの話は伝わっていたものの、それほど大した事にならないのではと高をくくったいた部分がありました。じわじわと単価が上がって、多少は供給量が減るのでは、ぐらいの楽観的な見通しでいたのですが、現実はロシア材製材工場がロシア材から全面撤退するという厳しいものでした。ロシア材の入荷がストップしても少しは市場にストックがあったものの、やがてその波紋は愛媛にまで伝わり、ひとつの樹種の「終焉」をはからずも体験することとなったのです。

その後、ロシアカラマツに代わる樹種が登場して市場は何事も無かったかのように落ち着きを取り戻したのは上述した通りですが、私にとっては大きな心配が残りました。【森のかけら】の『ロシアンラーチ』が入手出来なくなるのでは?!それでもわずか35㎜の角材の事ですから、4mの40×40㎜材が1本でもあればそれだけで100個ぐらいは取れますので、いくら何でもそれぐらいならどうにかなるかと思っていたのが甘かった!ロシア材から撤退した時にある程度まとめてもらっておけばよかったのですが、その時にはまだかけらのストックが多少あったので油断してしまいました。

それからしばらく経って、弊社のロシアンラーチのかけらが底を尽きそうになったので、富山に連絡してみると、北洋材基地からロシアカラマツはすっかり消えてしまったと!造作材や銘木的なモノであれば、入荷が途絶えたとしてもむしろ在庫として持っておく方が価値が高まるぐらいで、供給が減ったといってもあるところにはあるものなんです。ところがロシアのカラマツは、汎用性の高いいわゆる羽柄材(野縁など)であったため、あえてストックする意味もなく、むしろ品質が劣化しないうちに売り切ってしまえという事になったのだと思います。続く・・・

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ロシアカラマツは遠くになりにけり③*

そこから、まだ持っていそう製材所や問屋さんに手当たり次第連絡したもののどこにも無い!そして遂に弊社の『ロシアンラーチのかけら』も底を尽き、それから今日まで長い期間にわたって再会することがなかったのです。そしたら数か月前のこと、金沢の㈱ムラモトの営業の水野斉から、もしかしたらあるかもとの連絡がありました。さすがは業界有数の変態さん、マニアックなネットワークをお持ちです。水野君のお陰で数年ぶりにロシアのカラマツと感動の再会を果たすこととなりました。いや、正確に言えば、「数年ぶりにロシアのカラマツの野縁と感動の再会をした」のです。

というのも、ロシアカラマツロスト期間中もロシアカラマツのフローリングやパネリングなどは通常通り入荷していました。それを見ながら、あと数センチ厚ければと臍を噛んだものです。それはともかくこうして再会できたのは水野君のお陰。持つべきは変態友!入手できたとはいえ、生材ですのでこれからじっくり乾燥させてから加工しますので、【森のかけら】にロシアンラーチが復活するのにはもう少し時間がかかります。しかしこれからは第二、第三のロシアンラーチが出てくるのは間違いない。そこで頼りになるのは水野君のような変態仲間。【森のかけら】の半分は、マニアックな材木仲間の思いやりで出来ています

カラマツという木そのものについて言うと、数年前に初めて愛媛にもカラマツが生えているのを知ったぐらいで自生していることを知ったぐらいで、愛媛においてはカラマツはほぼ認知されていない木でした。10数年前に木童さんと出会い、長野県産のカラマツに出会い、経年変化で飴色に変化していく姿に魅了されました。それから5,6年ぐらいしてからフリーリングやパネリングとしてロシア産のカラマツを知ることになります。調べてみると、北洋材の基地と呼ばれた富山県では、昭和和30年に初めて北洋材を輸入されたようです。もっとも早くロシア材(当時はソ連)を輸入したのは静岡県の清水港

最初の富山の入荷量は約4千m3。その後、富山新港が新たに整備されたことなどから、ロシア材の輸入量は大幅に増加して、昭和48年には180万m3を越えるほどになったようです。なので東日本においては昔から馴染みがあった樹種だと思いますが、運賃の問題もあって、瀬戸内海が橋で繋がるまでは四国にはほとんど入って来ませんでした。初めてカラマツを見た時は、節の大きさこそ小さいモノの、どんだけ節のある木やねん!って印象でした。それはお客さんも同様で、カラマツを認知してもらうまでに随分時間がかかりました。今でも初めてカラマツを使っていただいた現場の事は経緯も含めてよく覚えています。

何はともあれ、しばらくの間「欠品」していたロシアンラーチのかけらが補充された事はありがたい。ときどき、【森のかけら】をコンプリートしたいという猛者が現れるのですが、そのたびに「申し訳ないのですが、ロシアンラーチだけは入荷見込みが無くて・・・」とお断りを入れるのが辛かったのですが、ようやくそれからも解放されます。世界の240種はこれで、供給不安のある木はあと数本になりました。いずれそんな木たちにも、「あなたが失った木はこれではないですか?」なんて樹神(水野君?)が湖から現れるのではないかと妄想の日々。

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