森のかけら | 大五木材

新しい木材図鑑が出るとついつい買ってしまいます。メジャーな木材については、ほぼ語り尽くされた感があって、なかなか新しい発見は少ないものの、【森のかけら240】に含まれていない(おとなの事情で含めれなかった)あまり一般的ではない樹種などについては、その特徴や名前の由来を読むだけでもワクワクしてきます。例えそれが手元になかったり、入手の見込みがなくとも!そんな木の1つが、本日俎上に上るヤナギ科ヤマナラシ属の落葉高木『ヤマナラシ』!

 

20140724 2ヤマナラシという変わった木の名前の由来は、その葉柄が長く扁平であるため、少しの風でもすぐに横揺れし、隣り合う葉が互いに擦れ合ってカサカサと葉音を立てることが、あたかも山が鳴っているように聞こえるというので『山鳴らし』という名前がついたということです。この特徴は広く国外でもこの木の仲間の由来となっているようで、中国産のヤマナラシは葉の擦れる音から「風響樹」という趣きのある名前が付けられていますし、学名も「震える」という語彙が語源となっているそうです。

20140724 3またヤマナラシには、『ハコヤナギ』の別名もありますが、それはこの木の木肌が白い事から京都などで扇箱や箱材に利用されたためだとされています。その他にも、同じような特徴を持つドロヤナギと共に、マッチの軸木、箸、パルプ材、包装箱、まな板、下駄、爪楊枝、経木、パーティクルボード、火薬用木炭など、材が低評価な割にはさまざまな用途に使われています。また英語ではドロヤナギの事を『ポプラ/Poplar』、ヤマナラシの事を『アスペン/Aspen』と呼び分けています。

 

20140724 5山が鳴る」という響きから私が連想するのは、黒澤明監督の名作『蜘蛛巣城』。シェイクスピアの有名な戯曲「マクベス」を題材にし、1957年に黒澤明がメガホンを取った映画です。ストーリーはほぼ忠実に原作を踏襲していて、舞台が戦国時代にそのまま置き換わっています。モノクロの映画ですが、老婆のメイクなどあまりに迫真に迫りおどろおどろしさも半端ではありません。物語りの見せ場は、老婆の予言どおりに「森が動き出すシーン」。眼前に迫る森におろのき逃げ惑う戦国武将。

 

20140724 4これは敵対する武将の作戦で(このシーンの演出は円谷〔ウルトラマン〕英二の手によるもの)、逃げ惑う武将に向けて数十本の矢が降り注ぎます。逃げる武将を追うようにこれでもかと執拗に矢が飛んでくるのですが、何とこれ特撮でもワイヤー操演でもなく、実際に弓矢の名人が本物の矢を放っていたのです!逃げる武将を演じたのは名優・三船敏郎。三船が「俺を殺す気か!」と激昂したというのは有名な話ですが、その形相はまさに本物の死を感じた恐怖!私のヤマナラシのイメージの断片でした。




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