森のかけら | 大五木材

今日のかけら・#104 【無患子/ムクロジ】 ムクロジ科ムクロジ属・広葉樹・宮崎産

mukuroji no tobira

石鹸と羽根突と御釈迦様① 

1. 今日のかけら

mukuroji no kakera

 

 

 

 

 

 

20150121 1

季節モノの木』というものがあって、特定の季節になるとこぞってメディアが取り上げて脚光を浴びるものの、その季節が過ぎると悲しいほどに見向きもされなくなってしまう木、いわば旬ものの木というものがあって、そのうちの1つを毎年毎年この季節に紹介しようと思いながらいつもいつもタイミングを逃してきました。今年も既に1月も後半に差し掛かり旬ではなくなったものの、滑り込みで今年はご紹介させていただきます。

 

20150121 2それが、ムクロジ科ムクロジ属の『無患子(ムクロジ) 』。この少し変わった名前は、「患わ無い子」とも読み取れ、何だか縁起のよい名前のようにも思われますが、古来に中国大陸から渡来して、漢名の音読みが変化してこの名前になったとされています。その由来はいくつかの説があって、無患子(ムカンジ)がムクロジに変じたとか、同科のモクゲンジの漢名『木槵子』が誤って使われた説などありますがいずれにせよ字音に由来します。

 

20150121 3高さ20m程度の落葉高木で、寺社の境内などに植栽されていますが、山中ではほとんど見られることがないようです。果皮にサポニンを含んでいて、泡立つことから物資の少ない時代には石鹸の代用品として選択や洗髪にも利用されてきました。英語名は『ソープナッツツリー』で、海外でもエコロジカルな天然素材の石鹸として親しまれています。果実にはサポニンが多量に含まれているため、鳥や虫に食べられることもありません。

 

20150121 4

そのため農薬などを使わないで収穫出来る事からナチュラルな石鹸として人気もあるようです。ではなぜこの木が1月の季節モノの木なのかというと、秋に熟した20〜30㎜の球形の果実がつくのですが、それが正月の風物詩・羽子板の羽根の玉に使われてきたからです。まあ正月に羽子板というのも今やすっかり過去のもので、テレビの中で演じられる昔の正月遊びになってしまいましたが、そこには先人たちのある思いがあったのです・・・

 

石鹸と羽根突と御釈迦様②

1. 今日のかけら

20150122 1大きさや重さがちょうどよくて、身近に手に入った事から使われてきたのだと思うのですが、中国から伝わったムクロジが沢山植栽されていたのか、あるいは寺社などに立派な巨木があって充分な実の供給力があったのかもしれません。形もよかったのでしょうが、同時に『子が患わ無い』という事と、羽根の形が病気を運ぶ蚊を食べるトンボに似ている事からもで、無病息災の縁起物、お守りとして親しまれてきたという背景があります。

 

20150122 2今でも女の子が生まれると初正月には羽子板を贈るという習慣が残っている地域もあるそうですが、都会では羽根突をする場所すら確保するのが難しい状況で、季節の風物詩が姿を消していくのは寂しい事ですが、数年前に正月に家族で松山城に上った時に、羽子板や独楽(コマ)などの昔の正月の遊び道具が置いてあり、戯れに子どもと遊びましたが、伝統文化を残していく事にも並々なぬ努力がいるものです。

 

20150122 3羽子板の羽にムクロジの実を使うという事は知っていたものの、恥ずかしながら実際に立っているムクロジを見たことがありません。【森のかけら】に使っているムクロジは、製材した後の小さな部材なので、ちょっと肌目が粗くて黄色い木というぐらいの印象でしかありません。多くが植樹した木という事なので、大木はあっても伐採する事は少ないのでしょうし、木材市場で流通する事など滅多にないのではないかと思われます。

 

20150122 4国内の分布としては、茨城~新潟よりも西、四国や九州、沖縄などに植栽されているそうですが、【森のかけら】を作っていなかったら、私もムクロジに出会う事も無く、気にも留めなかったかもしれません。材はなかなか手に入らないモノの、実の方はよく利用されていて、数珠の原料としても重宝されています。その起源は、お釈迦様だそうで、自らムクロジの実を108個を繋いで数珠を作って弟子たちに配ったととか。

 

20150122 5その際に、御釈迦様は「もし、煩悩・業苦を滅し去ろうと欲するなら、ムクロジの実、百八個を貫き通して輪を作り、それを常に持って行住坐臥に渡って一心に佛法僧三宝の名を唱えてムクロジの実を一つ繰り、また唱えて実を一つ繰るということを繰り返しなさい。そうすれば煩悩・苦行が消滅し攻徳が得られるであろう」と仰いましたので、煩悩多き人間としたは材よりもまず実を集めねばならぬようです・・・。 




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