森のかけら | 大五木材

クリスマス・チェリー②美と文化

1. 今日のかけら

★今日のかけら・#038 【ブラックチェリー】 Black cherry ニバラ科サクラ属・広葉樹・北米産

DSCF0196今回作らせていただいたのが、こちらのブラックチェリーの勉強机と本棚です。素材の持ち味を活かすために、あくまでもシンプルなデザインです。ブラックチェリーは、家具材としてブラックウォールナットと並んでもっとも人気のある材です。北米から中南米に広く分布する木ですが、とても素性の良い台径木の『山桜』をイメージしてもらうと分かり易いと思います。男女どちらにも根強い人気を誇るブラックウォールナットに比べれば、赤身が差して艶っぽさがあり、比較的女性の方に人気が高いのがブラックチェリーの特徴です。

 

20091225 クリスマス・チェリー⑤名前に『ブラック』と付くので、名前だけ聞くと「黒いのですか?」と訊ねられる事もありますが、名前の由来は赤黒い実の色から来ています。『ワイルドチェリー』の別名もあり、チェリー酒などの原料にも使われます。実に対して、材の方は何の塗装もしていなければ淡い紅色ですが、画像のように植物性油を塗れば赤褐色になります。杢目がくっきり際立ち、触感は山桜に似てとても滑らかです。きちんと乾燥させれば、安定した強固な材質になり、もあることから家具以外にも内装材やクラフト細工としても用途は広いのですが、その美しい木目は家具の天板など大きな物に使用することで、より輝きを増します。

 

DSCF0195本棚の天板は分離しますが、並べると杢目は繋がります。ブラックチェリーの気乾比重は0.55ですが、さすがにこれだけ使うとかなりの重さになります。自重もあるので、本棚は置くだけで安定します。分離して、用途に合わせて机の反対側に置く事も出来ます。ラフ(加工する前の荒材の段階)で厚みが38㎜もある材を使ったので、全体的に表面に赤身を使うことが出来ました。この単純でない豪快さと上品さとを合わせ持つ、奥深さのある濃淡に妖しげな美を感じる方も多いのでないでしょうか。

 

DSCF0191

数年前に私の娘(長女)にもブラックチェリーで勉強机を作ってやりました。子供にそんな高級材を、という方もいらっしゃるかもしれませんが、大人になってもずっと使い続けていく事を考えれば決して高いものではないと思います。安価な家具を買って、短期間で壊れて破棄する方が余程もったいない事だと思います。材の価値を教えてやれば、子供なりに大切に使うものです。使い込むほどに赤身は光沢を増し、味わいが生まれます。良質な物を長い年月にわたり使い続ける事から『文化』が生まれるのだと思うのです。

 

グッドチェリーのプラス連鎖

3. 木の仕事

20130708 1弊社では国内外のいろいろな樹種の無垢のフローリングを扱わせていただいています。個人的な興興味もあって今までに多数の樹種に挑戦してきましたが、試行錯誤を繰り返してこの数年でほぼレギュラーメンバーが固定化されてきました。わがままな、いやいや研究熱心な設計さんが多くて、気に入って標準化して使っていただいていたフローリングも数年も経つと飽きてこられるようで・・・定期的にモデルチェンジのご提案もさせていただいております。

 

20130708 2ただし商品在庫の兼ね合いもありますので弊社としてもなんでもかんでも無責任にお勧めする事も出来ません。ご提案した以上は供給責任も生まれますので、緊急事態に備えてある程度の在庫も持たねばなりません。そうなると弊社のような零細企業にとっては在庫分の仕入れ資金も馬鹿になりませんので、そのあたりの絶妙なバランスの見極めが非常に大事になります。それでも少々無理をしてでも先行仕入れして、お勧めしたい商品もあります。それがこの『ブラックチェリー』。

 

20130708 3家具材としても同じ北米産のブラックウォールナットと人気を二分するブラック・チェリーですが、数年前から安定的な供給が見込めるようになり、自分が惚れ込んで仕入れしています。名前に『ブラック』と付いていますが、決して材質が黒いわけではありません。以前にもご説明しましたが、これは赤黒い実の色に由来しています。材の色合いは淡い紅褐色で、植物性オイルなどで塗装すると濡れ色になって深みが増します。日本の山桜に比べると明るくさっぱりした印象です。

 

20130708 4山桜よりも原木が遙かに大きく通直なので、整った素直な木目が揃い白身をわずかです。山桜の重厚で渋みのある雰囲気が好きな方にとっては物足りなく感じるかもしれませんが、国産材の山桜のフローリングというものが現実的に相当に難しさを伴う中(資材の安定供給、製品の歩留まり、価格等々)、山桜の代用品としてではなく、1つの別の『個性』としてサクラ愛好家の方にお勧めしています。120㎜の巾でほとんど節もなく、上品で和洋を問わず使えます。

 

20130708 5今回採用いただいたのは、いつもお世話になっているオーユーコーポレーションさん(大原 朗良代表)。広いリビングのリフォームに使っていただきました。照明の具合でかなり淡く見えますが、実際にはもう少し赤身を実感出来ます。大原さんは無垢への関心も高く、出来る限り無垢材を取り入れていただきます。また、私からの提案にも熱心に耳を傾けていただくので非常に提案し甲斐があります。材を決める時にいろいろな根拠があるります。品質、色合い、形状、産地、納期、価格等々・・・しかし最終的には、相対の信頼関係だと思うのです。あなたが勧めるなら、あなたがそう言うなら、あなたに任せる。信頼の連鎖が続いていくと、プラスの循環になっていくと思います。いつもニコニコと笑顔の絶えない大原さんからお勧めされると、お客さんにも本来の商品以上の何かが届いているように感じるのです、以心伝心。




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