森のかけら | 大五木材

今日のかけら158

サッチーネ

Satine

クワ科・広葉樹・ブラジル産

学名:Brosimum paraense

別名:ブラッドウッド(Bloodwood/イギリス)

ムイラピランガ (Muirapiranaga/ブラジル

カーディナルウッド (Cardinal wood/イギリス)

ブラジルレッドウッドBrasil redwood/イギリス

サティーネ、サティン

気乾比重:1.01

 

砂と風とサッチーネの島*

★今日のかけら・#158 【サッチーネSatine  クワ科・広葉樹・ブラジル産

数日前の『世界遺産』というテレビ番組で、オーストラリアの東の方に位置し『世界最大の砂の島』と呼ばれるフレーザー島の事を取り上げていました。この島は、1992年に世界遺産に登録された島ですが、詳しくは知りませんでした。何気なしに観ていると、番組の中盤で大きな木が写りました。テロップでは『サティネー』と出てましたが、我々の木材業界で言う『サッチーネ』です。業界でも『サティーネ』とか『サティン』とか表示はバラバラです。現地の発音を無理やりカタカナで表記するのですから、果たしてどれも正しいのかどうかも怪しいですが。

高さ70mにもなる巨木が、森の中で凛とそびえ立っていました。「サッチーネはとても硬い木として知られ、かつてスエズ運河やロンドン波止場の資材にも使われました」と説明がされていました。弊社では、ウッドデッキ用に4方面取り加工された105x30㎜などのサイズを仕入れさせていただいています。サッチーネは、別名『ブラッドウッド』とも呼ばれますが、その鮮やかな色合いは強烈です!ブラッド、つまり血のように赤いという事です。帯鋸やプレーナーで加工すると、まるで鮮血で染まった殺人現場のような凄まじい状況になります。

原色でここまで深紅の物はそうはないのではないでしょうか。材も鋼のように硬く優れた耐久性を持っています。俗に『アイアンウッド』と呼ばれる他の硬木と比べても、なんら遜色ありません。仕入れるボリュームにもよりますが、ジャラやイペよりはやや高価です。ただ値段の問題ではなく、この鮮やかな木がただのウッドデッキに収まってしまうのは何か釈然としない気持ちになってしまいます。もっと陽の目を浴びて欲しいし、この木の価値はもっと高いところにあるような気がしてなりません。デッキという用途が良い悪いではなく、もっとこの木にしか出来ない、この木ではなければならない何かがあるように思えてなりません。一度実際にこの木を見てもらえれば感じるところがあると思います。

この番組では、他にも島に生育する『カーテンフィグツリー』という寄生植物も取り上げていました。寄生した木を絞め殺して養分を吸い取り成長する別名『絞め殺しの木』です。恐ろしい~!他にもユーカリ系の木が群生しジャングルのような森がありました。世界中にはいろいろな木があるものです。バージョンアップした『森のかけら』でも、新しくオーストラリア産の樹種を幾つか取り入れました。勿論『サッチーネ』は含まれています。残念ながら『絞め殺しの木』は、他の木が絞め殺されるとまずいので含んでいませんが!

このフレーザー島は、砂と風の作った美しい島で、不思議なことに砂だけの島なのに森があります。砂は、雨をたっぷり溜め込み森を育てているのですが、同時に森を殺してもいたのです。島のあちこちで『風と砂の格闘』が見られました。強烈な風によって大量の砂が移動していくので、時には10mの木が一日で砂に飲み込まれてしまうこともあるそうです。ほとんど砂に埋まった木の姿もありました。砂が森を侵食していく空撮が映りましたが、丁度砂の広がっている形が、人の手の形のようで、まさに砂の手が森を掴もうとしているように見えました!

また島には多くの湖があるのですが、それぞれの湖が地質などの影響で色が違います。透明な湖もあれば、青い色、中には嗚赤い色の湖もありました。木に含まれる『タンニン』が染み出し、湖に流れ込み赤く染まっていたのです。画像で見る限りは、赤というよりは鉄が錆びて溶け出したような色合いでした。番組は、『砂と風が生んだ大いなる小宇宙は、砂で始まり砂で終わる』というような言葉で締めくくられていました。『サッチーネ』はその色合いだけで充分個性的な木なのですが、輸入量も限られていて木材人の中でも知らない人の方が多いような、いまいちマイナーな木だと思います。

今回たまたま偶然テレビで『サッチーネ』に出会いましたが、このブログを始めてからいろいろな事に注意深く関心を持つようになったので、今まで以上に普通の生活の中で『木』に出会うようになりました。考えてみれば私達の周りの物の多くは木で出来ています。塗装や加工で、『木』その物の姿が強調されなくなっているので、見逃していることが多いだけで、私達の生活は『木』とは切り離せない関係にあります。このブログで改めてその事に気づかされました。

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サッチーネ、魚のもとへ・・・*


先日、ワンズ㈱さんの完成現場見学会の様子をアップさせていただきましたが、その中で個性的なブラック・ウォールナットのラスティック・フローリングの事をご紹介しました。ひとつひとつのパーツ(部材)が結集して家全体の雰囲気を醸し出していきのだと思いますが、O様邸でもうひとつ異彩を放ったのが、階段の笠木に使っていた『サッチーネ』。それ単独で見ると相当に癖の強い木なのですが、ブラック・ウォールナットの個性に押されてここでは影が薄く感じられるほど。以前にもご紹介しましたが、別名が「ブラッド・ウッド」というだけあって、加工切削すると作業場は殺人現場のような光景になります。磨いた時の滑らかさも格別で、異樹種を組み合わせて作った『ミックス・カラー・ボード』にも使いましたが、その部分だけ触感が圧倒的に違います。文字で現わすならばツルン、ツルン、キュキュという感じ。

その滑らかさと、およそ自然界の物とは思えない色合いから、ワンズさんではよく階段の笠木として部屋のアクセントに使っていただきます。初めて使っていただいた時には、「おおっ~!」という歓声まで上がったほどでしたが、馴れとは恐ろしいもので今ややこれぐらい強烈な色合いですらも違和感なくごく普通に受け入れていただいています。刺激の強い物を食べ続けているとドンドン強い刺激を求めていくようなものでしょうか。しかし、それは更により強烈な樹種をも受け入れれる下地が出来たという事ですから大歓迎でもあります。誰でも初めて使う樹種に対してかなりの警戒感をお持ちです。それを和らげたり、取り除くのは容易な事ではありません。もしもの時のリスクを心配されて、新しい樹種に手を出す事に二の足を踏む気持ちも分かります。しかし、そこで一歩踏み出せば今まで知らなかった新しい木の世界や可能性を知る事になります。

さて、この『サッチーネ』ですが、その強靭で鮮やかな色合いは他業種からも魅力的なものです。以前に北海道でハンドメイドのランディングネットに使用するフレーム材、グリップ材などを取り扱われるお店から、ランディングネットのフレーム材として使うという事でご注文をいただきました。私自身は釣りはしませんので(情けないんですが魚の触感が駄目なので・・・)、それがどういう風に加工されてどう使われるのかよく分からないのですが、そちらの業界では『サッチーネ』に対するニーズも多いようです。

AKASAKA WOODWORKS』という名前のお店で、『サッチーネ』の他にも個性的な樹種を多数取り扱われていらっしゃいますので、釣りにご興味のある方は是非ご覧下さい。左の画像は、花梨のバール部分を使って仕上げられたランディングネットですが、美しい~!釣り道具の域を越えて、工芸品のようですらあります。私の知らない『森の出口』まだまだたくさんあって何だか嬉しくなりますね~。素材に甘えることなく、その使い方も日々研鑽していかなければ世界は広がりません。さあ明日からギフトショーです!

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草木も染まるブラッドウッド*

ホームページにオンラインショップを開設して以来、全国各地から沢山ご注文をいただいているのですが、その中にさまざまな端材を販売する『ちょこっと端材』というコーナーがあります。それとは別に、ちょっとレアな木材については『ちょこっと銘木端材』というコーナーがあって、そこではレースウッドゼブラウッド、バーズアイメープル、パープルハート、サッチーネなどの端材を販売しています。その中でも特に人気の高いのが、人工的に作ったのではないかと思うほどに強烈な色合いのサッチーネ!

材の特徴については『今日のかけら』で紹介していますが、『ブラッドウッド(血の木』という別名を持つほどに真っ赤っかで、製材でもすれば製材機周辺は惨劇の現場に変貌。左の写真は、そのサッチーネを削った際に出た大鋸屑ですが、写真で撮る目視で感じるブラッド感は伝わりにくいかもしれませんが、結構な赤身。弊社に入っているのは、サッチーネを板に挽いたものや加工したものだけなので、サッチーネの丸太を見たことがないのでどれぐらい白太が含まれているのか分かりません。

板やデッキサイズに加工したものは全身赤身なので、挽いたり削ったりしても大鋸屑もサンダーの削り粉もすべて真っ赤っか!通常、濃い赤身の木でも少しは白太部分が混ざっているものなので、挽いたり削ったりすれ赤い大鋸粉の中に多少は白い大鋸粉が混ざるものですが、サッチーネの場合は全身赤身ですので大鋸屑とて貴重。ということで、この真っ赤な大鋸屑も草木染めの原料として販売することにしました。とりあえず現在準備中で、サッチーネだけでなく色合いの強い木の粉を集めているところ。

いずれオンラインショップでも販売するつもりです。今は大鋸屑や大鋸粉でなく材のみの販売ですが、最近特に人気が出ていています。販売しているのは小さなサイズなので、恐らくその色合いを生かしてクラフトや寄木細工や柄、器具などに使われているのだと思いますが、この木を入手した10数年前には「こんな色の強い木は建築では使いきれないか売れない」と相手にもされなかったことを思うと、時代は徐々に変わってきているのか、ようやくそういうステージに辿り着いたのか、いずれにしてもこれから増々人気の出る木です!

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