森のかけら | 大五木材

今日のかけら136

ウエスタンレッドシーダー

Western redcedar

ヒノキ科クロベ属・針葉樹・北米産

学名:Thuja plicata

別名:カヌーシダー、ジャイアントシダー

 シングルウッドアーボルビタ

 和名:ベイスギ(米杉)、 アメリカネズコ(亜米利加鼠子)

気乾比重:0.39

 

 

美しい色やねん中ノ島線*

今日のかけら・136【ウエスタンレッドシーダー/米杉Western redcedar ヒノキ科・針葉樹・北米産

2時間後キャンセル待ちのお知らせがあり、「1番から3番の方~」。ガックリ・・・キャンセル番号4、5番の哀れな二人は仕方なく陸路へ向かおうかと力なく立ち上がりました。その時、折れかかった二人の心を繋ぎとめたのは、「キャンセル番号4番5番の方~」という救いの神の声。神様はいる~!嬉々として飛行機に乗り込んだ隣の席には、偶然にも愛媛木青協OBの鶴居秀夫社長(鶴居産業)の姿が!「天候によっては引き返すかも」という不安を残しながらもどうにかこうにか飛行機は飛び立ちました。いやはや前途多難な船(空)出となりました。

心配も杞憂に終わり相当に揺れながらも無事に到着。久し振りの大阪で、久し振りに地下鉄に乗ってみると、美しい地下鉄の内装に出会って驚きました!改札を抜けた内装は渋い赤褐色の『ウエスタンレッドシーダー(ベイスギ)』が一面に貼られていました。かつては防災上の理由で地下にこれだけの無垢材を使用できませんでしたが、『不燃処理』をする事で可能となりました。チャネルオリジナルさんの『不燃木材・ウイルウォール』を使用されていましたが、圧巻!

これだけの圧倒的なボリュームも、いつもこの路線を利用されている地元の方にすれば、すっかり見慣れた光景で特別な感情もないかもしれませんが、今そこに在る木の存在感は気持ちを優しくしてくれるのではないでしょうか。さすがは「世界でもっとも美しい木」と形容されるウエスタンレッドシーダーだけの事はあります。ワインレッドの濃い紅褐色と淡い白身が混じり合って、重層的で深みのある中にも趣きのある空間となっていました。決して硬い木ではないのですが、この色合いとボリュームからどっしりと落ち着いたある種の安心感のような物が感じられました。全体的には柾目が多く目に付きましたが、所々に顔を見せる板目とのバランスも絶妙です。米杉で彩られた巨大な柱は、こういう場所でも木は使えてたっぷりと自己主張できるんだぞと語っているように感じられ、私にはとても美しく眩しく映りました。

この画像は中ノ島線の大江橋駅のものですが、中ノ島線の開通そのものが2008年10月という事ですから、綺麗なのも当然かも知れませんが、見る限り悪戯書きや傷や汚れも見当たらなかったです。触るとかなり硬さを感じましたので、何か特別な塗装をれているのかどうか分かりませんが、実に綺麗な状態が維持できていたように感じました。立ち止まってじっと壁を見つめ、カメラを向ける背広姿のおっさんの横を怪訝そうな顔をした人達が通り過ぎていきます。いいんです、どう思われても!

ずーっと眺めていたいほど、惚れ惚れする美しさ。木材の良さは個人の家に使ってこそ(なるべく身近な所で触れたり体感できるから)分かるというのが私の持論ではありますが、これだけのボリュームを見せられると公共施設における「使用量」という意義を肌で感じます。公共施設における木の使用量は今後ますます増加していくでしょう。当然そこには不燃や準不燃、難燃などの条件が付いていくでしょうが。どういう経緯で中ノ島線の駅構内の内装に米杉が決まったかは知りませんが、私はそれが『外材』であることに何の違和感も感じませんでした。県産材や地域材を使う意義や意図は充分理解できますが、ただ闇雲に県産材を使うことよりも、いかに木を美しくデザインし町に溶け込ませるかということが重要だと思うのです。そこに木が在る事に違和感を感じさせないのもデザインの力だと思います。

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世界でもっとも美しい木の裏側*

世界でもっとも美しい木」の1つとも称される『ウエスタン・レッドシーダー(米杉)』ですが、その魅力のひとつは、いい意味での『色むら』ではなかろうかと私は思っています。よく言えば『色のバリエーションが豊富』とか、『表情が多彩』ということでしょうが、その差がかなり顕著ですので好みの分かれるところかもしれません。赤みの深みによって、ワインレッドダークレッドなど呼び名が変わるほど色の幅が広く、一見すると違う種類の木を貼っているのではなかろうかと見紛うほどです。

こちらは、ジューサンケンチクセッケイさん設計、もみじ建築さん施工の住宅で玄関の壁面にお使いいただいた『ウエスタンレッドシーダー(以下WRCのパネリング』。色むらの究極、【モザイクボード】を作るような人間ですから私はこういう色のバラつきは大好きですし、ジューサンケンチクさんも「大好物」なので、施主さんともども喜々として楽しんで選ばれたのですが、中には「あまり色むらが激しいと困るので、なるべく色合いの揃ったものにしてもらえませんか」なんて無粋な事を仰る方もいらっしゃって驚かされます。

集成材や突板に馴れてしまっていて、無垢といえども色は揃っているべきなんて思いこまれているのかもしれませんが、それでは折角のWRCの魅力が台無し・・・。一応説明はするものの、とにかくサンプル、サンプルと、サンプル信者の設計士さん、工務店さんにはなかなか伝わりません。特にWRCのように色ムラの激しい木は、梱包によってもその差が顕著なので、小さなサンプルを数枚並べて見たぐらいでは、貼り上がりのイメージが掴みにくいと思われるので、ぜひ実物を自分の目でご覧いただきたいところです。

〇〇のメーカーのモノは前回はああだったから、とか言われることもありますが、人工の印刷物ではなくあくまで自然素材ですので、前回がそうだったから今回もそうだなんてあり得ないこと。とりわけWRCやブラック・ウォールナットなど色の濃淡が強い木の場合、図面には書き込んだもののイメージと違ったなんてこともよく聞く話。こちらも設計士さんの癖とか分かっている場合は何とか対応することも出来ますが、それも長い付き合いでお互いの根本的な理解があってのうえでのこと。

折角の個性がマイナスな方向に作用してしまってはモッタイナイというよりも逆効果ですので、こちらとしてももっとしっかり説明をせねばと気をつけています。今回みたいに、設計士さんや工務店さんに理解があれば、使い方の幅が広がったり、「遊び」も出来るのでこちらとしても施工後の写真を撮りに行くのも楽しくなります。そんな『世界一美しい木』ですが、馴染みだった専門製材工場が昨年店を閉められ、あの独特の匂いを嗅ぐ機会がかなり減ったしまったのはとっても残念です。という事で久々のWRCの話でした。

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サーモアッシュとアグレッシブな設計士①*

愛媛ではまだまだ認知度が低いサーモアッシュ。それはお前のPR不足だろうが、と言われれば仰る通りなのですが、言い訳がましく釈明させていただくならば、むやみやたらに広がる事への怖さもあります。外部に木を貼りたい、壁面に木を使いたい、という需要は相当ありまして、私も相当相談を受けます。そのたびに耐朽性や施工性、コストなどの問題をひとつずつ検証しながら説明していくわけですが、最終的な要望としては防腐剤を使わないで雨風に耐えて長持ちして、そこそこの価格で意匠性のあるもの・・・。

正直言って、私の知る限りそれらすべてを満たす外壁材はありません。どれかの条件を満たせばどれかが足りず。耐朽性も意匠性もあれど高価とか、価格はリーズナブルだけど供給量が不安定とか、防腐剤は使う必要があるとか、それぞれに一長一短。まあ、条件を完璧に満たすものがないから設計士さんも悩んでおられるところなんだと思います。材木屋としては木を使っていただけるというのはありがたい話なんですが、外部に使っていただく際に一番気になる部分は、『経年変化』に対する理解というところです。

例えば外部に適性のある木として知られる『ウエスタン・レッドシーダー(米杉)』ですが、油分も多くて耐湿性に優れ、高い意匠性を持っています。ワインレッドと称される濃い赤紫色は魅力的ですが、経年変化によって銀灰色になります。それを私は「ロマンスグレー」と呼んで愛でております。このウエスタン・レッドシーダーぐらいになれば施工実績も豊富で、ロマンスグレーに成長した生の現場やその姿は雑誌やSNSでもよく見受けられるので、施主さんへの説明もしやすいのだと思われます。

じゃあ外部はウエスタン・レッドシーダーでいいじゃないかというと、そこは人間の業というか、探求心というか・・・どんなに美味しい料理でもいつもいつも同じ料理ばかりでは飽きてしまうというやつで、ちょっと毛色の違ったテイストを、ということで偏屈材木屋にはそんな変な木もあるであろうと訪ねて来られるのです。うちだってウエスタン・レッドシーダーぐらい扱っているんです、いるんですが、そんな期待に応えるのも偏屈の腕の見せ所!ということで徐々にハードルは上がっていくことになるのです。明日に続く・・・




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