森のかけら | 大五木材

★今日のかけら・227 【モアビ】 Moabi   アカテツ科・広葉樹・アフリカ産

20100616 不屈のライオンとモアビ

20100615 不屈のライオンの国木2002年の日韓ワールドカップでは、大分県中津江村にキャンプした「不屈のライオン」ことカメルーン・チームは残念ながら1次リーグで敗退したものの、村長や村民との心温まる交流のエピソードは一服の清涼剤のごとき爽やかな話題をふりまきました。大会終了後、チームはアフリカに帰国するのですが、それからしばらくして中津江村に1つの国際郵便が届きました。それは、カメルーンのサッカーチームからの物で、箱の中には1本の小さな苗木が入っていました。そこには手紙が添えられていて、母国カメルーンの木を友情の証として贈るので、中津江村に植えて欲しいという物でした。その苗木が『モアビ』だったのです。この事を始めて知った時鳥肌が立つような興奮を覚えました。この話は随分昔にテレビでも報道されたのですが、その苗木がモアビであるという事には全くスポットは当たっていませんでした。

 

20100616 不屈のライオン2ただ簡単にモアビという木でしたとしか触れられていませんでした(当然でしょう)。しかし、私はそれを聞き漏らしませんでした。「何、モアビだって?!」それまで漠然とモアビといえばアフリカの木としか考えたこともありませんでしたが、それがカメルーンにたくさん分布する木であったという事、カメルーンの人たちが友情の証に母国の木を選んだこと、そしてそれが慣れ親しんだモアビであった事などが一気に交錯して、それまで特別な思い入れもなかったモアビに特別な感情が生まれたのです。

20100616  moabi実は、この辺りではモアビはよく使われていて、私が入社した当時から敷居といえばモアビが定番でした。和風の家であればでしたが、桧は柔らかく磨耗しやすいので、硬めの木という事でモアビが使われていました。磨耗に強く硬くて、最大樹高が60mにも達する大径木なので、長尺ものや幅の広い材が容易に取れるという点が好まれたのでしょう。大工さんの間では『南洋桜』という愛称で取引されていました。このモアビ、硬い分だけ重たくて、よく運んでいる時に指を挟んだり、足に落として痛い思いもしました。

R0019337磨耗に強いという特徴を活かして、一時期は桧の集成材の敷居の溝に埋めて敷居すべりにも利用されていました。桧造りの白っぽい空間の足元にポツンと赤褐色の木が入る光景が松山周辺では当たり前のものでした。最近では原木が入手しにくくなった事や価格の事もあって、敷居すべりももっと色目の薄い硬木(ニヤトーなど)に変わってきましたが。この『南洋桜』という言い回しも何とも言えませんが、原木が入荷した当時馴染みのないこの木を何とか売ろうという材木屋の意気込みと工夫は感じられます。更に明日に続く。

 




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