森のかけら | 大五木材

★今日のかけら・#039 ックベリー】 Hackberry ニレ科エノキ属・針葉樹・北米産

20090205 ハックベリー

20090902 喰い炭11月の(遅めの)『適材適所・通信』でも取り上げさせていただきましたが、松山市内の居酒屋さんで無垢のテーブルを納品させていただきました。お店の名前は、『喰炭(くいたん』。オーナーの橋本君㊨は、ここでもよく登場する大成郁生君(サンシン機械・社長)のチェンソーアート仲間です。お店の入口には、オーナーがチェンソーを巧みに操って作り上げた木彫りの熊が出迎えてくれます。以前には、愛媛木材青年協議会主催の木工広場で、大成君と一緒にチェンソーアート実演で腕をふるってもらいました。最近は忙しくて、なかなかチェンソーを触る時間が少なくなったそうですが。数ヶ月前に、大成君の紹介で愛媛木青協の役員会の後の食事会で使わせていただいた事がきっかけで、それからしばらくして突然電話をいただきました。それまで合板だったテーブルを無垢で作り直したいという事でした。ありがたいご縁です。

 

DSC00767座敷コーナーの3台のテーブルを作らせていただくことになりましたが、まずは木選びからスタートです。ご夫婦でご来店いただき、無垢のテーブルに託される思いやお店の雰囲気、仕上がり具合などをお聞きします。ひと通り訊いた後で、今度は倉庫で実際にいろいろな木を見ていただきます。こういう場合、既に自分で樹種をイメージされている方と、ある程度こちらに任していただく方と大体半々です。今回は、壁なども貼りかえるという事で、全体のイメージが出来上がっていたので、まず色調とサイズを念頭に材を考えました。3台のテーブルを繋げて使う用途もあったので、サイズを合わせるために、幅剥ぎのテーブルに決まりました。そこから明るめの色合いという事で、数種の木を候補に選びましたが、ここからが材木屋としてもっとも楽しいところです。少しでもオーナーとかお店に由来するネタを探します。

 

20091220よく、そんなに都合よく由来するネタがありますか?と訊かれる事もありますが、木と人の関係は密接で、かつて我々の暮らしのほとんど多くは木製の物で賄われていたと言っても過言ではありません。ですから、根本を探れば何らかの由来や関連性は出てくるものです。折角ご縁があった物です、少しでも心に残る物を作らせていただきたいものです。ご希望の色合いは白系で、その中からオーナーの趣味であるチェンソーアートにちなんで、【ハックベリー】を選びました。【ハックベリー】は、北米中央東部に広く分布するニレ科エノキ属の広葉樹で、日本の【榎・エノキ】の仲間ですが、エノキよりもやや褐色です。

091130_1456~0001英語の『Hackberry』の『hack』という言葉には、『刻まれている』という意味もありますが、それはハックベリーの葉の縁が鋸歯状に刻まれていることに由来します。そこから、オーナーの趣味であるチェンソーアートに結び付けました。『ハックベリー』は、家具にも使われることは多いのですが、そのほとんどが茶や黒に着色されケヤキの代用として使われ、クリアーで使われることは少ないです。それは、板に挽くと濃い緑色の筋や条が現れるため、それを誤魔化す意味合いもあります。大きな家具を作るには不適な特徴も使い方次第です。

長くなりましたので、続きはまた明日。

 

1. 今日のかけら

DSCF0185ハックベリー』の挽き材では、カスリや筋状の茶褐色の模様の他に、大きな節も絡んできます。芯の中央部から芯割れする事も多く、その部分が大き目の家具などを作る場合に問題となります。長い材が必要な場合、厄介な物かもしれませんが、カットしてうまく使う方向で利用すれば問題ありません。そういう特徴も、マイナス要素として考えずに材の【個性】と捉えれば、急に愛おしさも湧いてこようというものです。否定する事からは始めては、いろいろな材に挑戦など到底出来ません。木と格闘する事で、材の本質も見えてくるのだと思います。

DSCF0184

効率を考えれば手間隙の掛かる材かもしれません。けれど弊社のような零細企業は、大量に物を作るわけではないので、どこをどうカットして繋ごうか、どれを活かそうかと悩みながら木取りする時間も楽しみの1つです。そういう意味では『ハックベリー』は楽しみ甲斐のある木です。芯割れした部位そのものは、テーブルの表面に使うのは難しいので、下面や内部に向けたり、それでも使いにくい物は更に細かく割り返して【森のかけら】などに加工します。細かく仕分けすれば、牛肉など同じように捨てる部位はほとんどありません。

DSCF0187縁があって手に入ったものは、なるべく無駄なく使いたいと思っています。まだ【森のかけら】を作っていなかった当時は、端材を活かす道を知らず、保管していた端材も結局山積になり、年末の大掃除で焼却炉の灰と消えていました。それが、【森のかけら】などを作り始めてからは、端材も有効に利用できるようになりました。それでも使えない物は、もっと薄く加工して【円い森】にするなど、更に『部位の仕分け』が進みました。大きな材は大きな物(建築や家具)に、小さな物は小さな物(クラフトや木工)に、もっと細かな物は象嵌細工や玩具などに・・・。丁寧に仕分けすれば本当に捨てるところはありません。

091130_1456~0001

照明の関係でなかなか材本来の色が伝わらないのが残念ですが、実際にはややくすんだ白灰色といった感じで、クリアー塗装すると濡れ色になってもう少し木目がくっきりします。『喰炭』さんでは、3台とも同じハックベリーで作らせていただきましたが、それでもそれぞれに個性は現れます。荒材で60㎜近い材を削って作ったので、結構厚みのある物に仕上がりました。脚材も全てハックベリーで揃える事が出来ました。中央部は掘り下げていて、3台のテーブルが自由に繋げられるように可動式になっています。

 

091216_2343~0001091130_1456~0003テーブル納品後お店に客として伺いました。関わったテーブルで食事が出来るのは無常の喜びです。この辺りではほとんど無名のハックベリーですが、お店の繁盛に少しでも貢献できて、材の良さが知れ渡れば嬉しいです。『喰炭』さんの益々の商売繁盛も祈念しております!




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