森のかけら | 大五木材

★今日のかけら・#020 魚柳瀬杉/ヤナセスギ】 スギ科スギ・針樹・日本産(高知産)

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久し振りに【今日のかけら】です。少し前の話ですが、久万銘木㈱さんの銘木祭りで、西条の伊藤住建さんが【魚梁瀬杉】の巨大な耳付板をご購入されました。画像を見ていただければ分かると思いますがかなりの大きさです。広角レンズで手元が歪んで広がって見える訳ではありません。右下の画像の手前の方が、立っている木でいうと根元の部分に当たります。俗に『元口』と呼ばれます。立木を想像してもらえば分かりますが、木の足元は根が大きく張り出した形になっています。小さな木だと上から下までずん胴な物もありますが、これだけの大きな木になると、自重を支えるためにも根元は大きくうねるように張り出し極端なテーパーになります。

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 この材料を、画像右の池内一豊(ウッドワークかずとよ)仕上ました。伊藤住建さんは、愛媛県西条市を中心にかなりこだわった天然素材の家造りをされています。以前にも、【】のフローリングを使った新築のお宅でも【魚梁瀬杉】の座卓を納品させていただきました。木材の知識も豊富ですが、遊び心たっぷりで普通の人がやらないような事でも、自分に確信があればどんどん取り入れられるタイプです。元請だから出来る訳ですが、ひと昔前にはこういう大工さんがいっぱいいて、今度は何を使うか相談しながら決めるのも楽しみでした。今となっては、伊藤住建さんのようなタイプの工務店さんはとても貴重な存在です。

今更言うまでもなく【】は、全国各地に成育するもっとも日本人に馴染みのある木のひとつで、『秋田杉』や『吉野杉』、『屋久杉』など各地域の名前を冠した『ブランド杉』も多く存在しています。中でも『屋久杉』など一部の物には顕著な特徴はあるものの、【杉】そのものはそれほど特徴が際立っているわけではありません。実際にネームの入っていない【森のかけら】の各地の【杉】をズラリと並べて、産地を言い当てることはほぼ不可能だと思います。【杉】そのものの特徴が曖昧なうえに、同一地域でも個体差にバラつきがあるからです。

スギやヒノキなどメジャーな木ほど説明は難しいものです。それにまつわるエピソードや解説も至る所に出ており、今更それをアップしてもという気持ちもあります。かといって、基本的な話もナシに専門的な話をしても本質が分かりにくいだろうし・・・。エピソードや現場も多いので、またいずれ何度も取り上げる機会があると思うので今回は、世に数ある【杉】の中でも何故【魚梁瀬杉】を選んだのかという理由について、という切り口でお話させていただきます。詳しい話の内容は明日・・・。

 

1. 今日のかけら

昨日の続きです。

魚梁瀬杉】というのは、主に高知県の東部、魚梁瀬地域一帯に生育する杉の中で、樹脂分をたっぷり含み鮮やかな赤から漆黒に近い黒まで多彩な色合いを含んだ良質な天然杉の総称です。その地域一帯の物を【魚梁瀬杉】と呼ぶ人もいますが、私としては四国を代表するひとつのブランドだと思っていますので、どの気にでも軽々しくは使っていただきたくないと思っています。特に緻密な笹杢は野趣に溢れ、高知のいごっそうを思わせる趣があります。ちなみに、高知県の県木でもあります。

20090529e38080e9ad9ae6a281e780ace69d89efbc92昨日アップした大きな板のような物だと、【魚梁瀬杉】の特徴も分かりやすいのですが、【森のかけら】サイズになると正直特徴は見えてきにくいです。しかし、それでもあえて240種の中に加えたのは、私なりの私情があったからです。大五木材に入社した当時、今まで会社を支えてくれた専務が退社したこともあり、当時の社長(つまり私の父親)は、地域の材木店と差別化を図る意味でも、直接高知の市場に仕入れに行くようになりました。若かった私にいろいろ情報や知識を与える意味もあったと思います。

今から20年以上前のことですが、当時の高知県の木材市場は隆盛を極め、西日本一帯、大阪や名古屋などからも有名な材木屋が来て、先を競うように材を競り落としていました。テレビで見るような、手札の競りが行われていて、素人の私の入る隙など微塵もありません。高下駄を履いた競り子が、大きな鐘をならし移動していき、ベテランの材木屋の社長連中が豪快な仕入を繰り広げていました。「自分もいつかはあんな風になれるのだろうか・・・」羨望の眼差しで、「男の死仕事」を眺めていました。

そこでの「競りの主役」は、【魚梁瀬杉】でした。まだ住宅業界は旺盛で、高級材もガンガン売れていました。まだ市場に『格』があり、高値さえつければ誰でも仕入れが出来る訳ではありませんでした。ベテラン親父達の『顔』が市場を支配していました。『顔』がなければ買えない時代で、ものひとつ買うにも毅然としたルールがありました。●●さんが手を挙げたら手を引くとか、決してこれ以上の値段で競り合わないとか暗黙の掟を守ることが、市場で物を買う人間の『資格』でした。決して嫌な時代だったとは思いません。そういう掟や煙草に煙る独特の『大人の雰囲気』が、大学を出たばかりの私にはとても眩しく映ったものです。

販売能力もなっかた当時、【魚梁瀬杉】は手の出ない商品でした。よく目が詰まっていて、高知の『鰹』のようにしっかり脂の乗った【魚梁瀬杉】は、憧れも対象でした。その後、【魚梁瀬杉】も仕入れるようになりましたが、経済が疲弊していく中、高価な材は徐々から脚離れが起きるようになりました。かつての主役も、「高い」という理由で敬遠されがちですが、決して【魚梁瀬杉】が高価な訳ではなく、相対的な価値として居所が高くなってしまったというだけです。本来の価値が正当に評価されにくくなってしまいました。

ただ時代が変わったなどと責任転嫁する気はありません。しかし、【魚梁瀬杉】が受け入れにくくなったのは確かです。こういう目込みの大きな1枚板は、それなりに大きく使わなければなりません。この板を小さく刻んで使うなどというのは、まさしく愚の骨頂です!やはり座卓とかテーブル、カウンターなどに豪快に使っていただいてこその【魚梁瀬杉】です。そういう現場がなければ、本来の輝きを放つことも出来ません。かつては手も出なかった木が、持て余されるようになってしまうのは悲しいことです。【魚梁瀬杉】の奔放な魅力を再認識してもらう気持ちも込めて、【森のかけら】に加えさせていただきました。

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今弊社に在庫としてあるのは、画像の4200x1050x60㎜サイズなど7,8枚ほどです。ちなみに値段は¥450,000~/枚。多少テーパーですが結構な大きさです。お行儀悪く天板の上に座っているのがうちの子供ですが、かなり前の写真です。今や彼らも小学2年生ですから、この【魚梁瀬杉】がいかに長く倉庫番をしているかが分かっていただけると思います。乾燥し過ぎです。前置きばかりが長くなり、材そのものの特長にまで辿り付けませんでしたので、それはまたいずれ改めて・・・

 

これが『龍馬の5かけら』ぜよ!

森の5かけら

091203_1844~0003こちらも早いうちにアップしようと思っていてすっかり遅くなってしまったのですが、【龍馬の5かけら】。今、このタイミングでどうかな~と思いますが、折角作ったのでPRも兼ねてご紹介させていただきます。『商品紹介』の中の『森の5かけら』コーナーの更新が滞ってしまっていますが、実は着々と新しい5かけらも作っていて、『えひめイズム』さんの方ではほとんどフルメンバーを展示販売していただいております。その中にはきっちり【龍馬の5かけら】も、【坂の上の5かけら】の隣に並べて置いていただいているのですが・・・。遅ればせながらご紹介。

R0014786これが【龍馬の5かけら】です。まずは『土佐栂』。全国的にも幻となりつつある地栂ですが、魚梁瀬地域に成育する雅で美しい木です。かつては桧普請よりも格上とされた栂普請は、武家などにしか許されなかったようです。知る人ぞ知るマニアックな木ですが、高知といえば土佐栂を外すわけにはいかんぜよ!続いて高知県の県木にして銘木『魚梁瀬杉(やなせすぎ)』。樹脂分をたっぷり含み、独特の笹杢が特徴の色気のある艶が魅力なのですが、残念ながらいまひとつ全国的に知名度が低いのは不可解。高知商人気質でしょうか?詳しくは【今日のかけら】をどうぞ!

20100402 龍馬高知産ではないのですが、『』は幼少の頃から龍馬が愛した、高知県の名所・桂浜にちなんで。幼少の頃から、何かあると桂浜に行っては世界へと続く太平洋を眺めていてというのはどこまで実話かは分かりませんが、今はしっかりと銅像が太平洋を眺めておりますから!『龍馬の5かけら』をノーヒントで手渡しても、この桂から「龍馬」と発想される方が多いのは意外でした。ところが多くの方が『桂小五郎』を連想されるようで、まあそれもありという事で・・・。俗に『桂男』というのは美男子の代名詞とされてきました。今放送中の福山雅治なんかまさにそれでしょう。しかしこれからの若い世代は、龍馬といえば福山雅治のイメージが植え付けられるのでしょうね。テレビの影響恐るべし!こちらも詳しくは【今日のかけら】をどうぞ!

 

 

20100402 坂本龍馬ここから少し難しくなります。『薩摩欅(さつまけやき)』。正式には『栴檀』(せんだん)の木ですが、材としては見た目がとても欅に似ていて、着色して欅の代用品として使われる事もあり、九州ではこう呼ばれます。松山の周辺でも街路樹や河川敷によく植えられています。なにゆえに薩摩かというと、龍馬こそが薩長同盟の立役者であった事に由来しております!薩摩と長州から薩摩欅とつながるのです。最後が『』ですが、これはかなりの難関。実は楽器のは、そもそも中国が起源で、龍の姿をイメージされたものです。部位によって「龍頭」とか「龍尾」とか呼ばれるのはその名残です。その琴の材料となるのが桐なのです。もってまわったこじつけではありますが、そこから桐=龍(龍馬)とさせていただきました。我々の生活の中に木がしっかり根付いていた事の証として、【森の5かけら・偉人シリーズ第1弾/坂本龍馬】をお楽しみ下さい。第2弾出るのか?

 

 

日本の隠された財産・スギ

1. 今日のかけら

 ★今日のかけら・#064 【杉/スギ スギ科スギ属・針葉樹・愛媛産

20101102 日本の隠された財産・スギ①

 

 

 

 

 

 

20101102 日本の隠された財産・スギ②さすがに11月に入って、早朝は肌寒くなってきました。朝は6時30分過ぎには事務所の鍵を開けているのですが、一歩家を出ると身震いしそうになる日も増えてきました。まあ、これぐらいで大袈裟な事を言っていると、北日本の方々に笑われますが・・・。寒くなって空気も乾燥し、空が澄んで見える日が多くなりました。朝、見上げる雲の形も楽しみのひとつです。少し前の雲ですが、空一面の鱗雲!でっかい青地のキャンパスに描かれた、銘木さながら造形美です。すぐに消え去る運命ですが、銘木雲と名づけたいほどの美しさにほれぼれしました。

20101102 日本の隠された財産・スギ③乾燥が進むと、花粉症の季節到来という事でしょうが、私は幸いにも今まで40数年花粉症にかかった事がないので、その苦しみが分かりませんが、今年は更に大量の杉花粉が飛散するとか。先日、銘木まつりの打ち上げをした時に、久万銘木㈱井部勇治君が20数年前に花粉症と診断されたが、当時まだ花粉症という言葉があまり知られておらず、「木の仕事をしている人間がそんな病気になるか!」と一喝された話をしていました。花粉症の方にとっては、空気が澄んで空が綺麗などと呑気な事を言っているどころではないでしょう。

20101102 日本の隠された財産・スギ④この時期になると悪名のそしりを受けてしまう【ですが、その学名『クリプトメリア・ヤポニカ』は、訳すると「日本の隠れた財産、宝物」の意味があります。杉は日本固有の木で、スギ科スギ属ではただ1種しかないという珍しいケースです。ただ杉は1種といっても、北は秋田杉から天竜杉、吉野杉、春日杉、北山杉、智頭杉、魚梁瀬杉、そして南の日田杉、飫肥杉、屋久杉まで、地域を代表するブランド杉があります。産地によってその性質もさまざまで、ひとつのカテゴリーで括るには無理があるように思えるほど個性に溢れています。

20101102 日本の隠された財産・スギ⑤森のかけら】に杉を加える際にも相当に悩みました。35㎜角の小さな宇宙に、その材の特徴が出るようにしたいという思いがあるので、余程材の特徴が際立っていないと、小さくなると判別がつかなくなり、面白みも失せます。しかし、地域を代表するような杉は、コレクション的な意味合いからも外せれません。そこで、日本三大美林のひとつである『秋田杉』と、四国を代表する『魚梁瀬杉』、世界遺産で知られる『屋久杉』を選択。更に、別のモノに変化した木の化石『神代杉』と、愛媛発のモノ造りですからやはり愛媛産(久万高原町)の『』。

20101102 日本の隠された財産・スギ⑥それぞれに異論はあるでしょうが、私の独断と偏見でその5つの杉をセレクトしました。これが出来るのも製作者の特権です!については、『今日のかけら』でもなかなか取り上げず、あれだけメジャーな木なのに何故?という質問をよく受けましたが、あまりにメジャー過ぎて語り代(しろ)が大過ぎて、一体どこから手をつけていいのか困っていたというのが真相です。その存在がメジャーゆえに、用途もほぼ出尽くした感があって、それを私が取り上げるのも今更何やらおこがましいという気持ちもありました。しかし、いつかは通らねばならない道・・・であれば、一度に全てを語ろうなどと無理に詰め込まずに、様々な切り口で小出しにしていこうと考えを改めました。後から後からデータを補足できるのがブログの良いところ。メジャーなありふれた使い方も含めて、『日本の隠された財産』の真骨頂を今後いろいろとご紹介させていただきます。




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