フレンチチェリーに吹く風

20100907 フレンチチェリーに吹く風①先日、新居のお引渡しがあり、その際にローテーブルを納品させていただきました。この仕事に就いてからもう数百回も新居に携わらせていただきましたが、お引渡しの瞬間の独特の緊張感と施主さんの晴れ晴れした表情を拝見するのは、何度経験してもいいものです。これから新たな人生が始まるという初々しい気持ちがこちらにも伝わってきて、妙に得したような気分にさせられます。実は我々のような木材業者は、今回のように家具という最後の最後に納品させていただくような商品がない場合は、こういう場面に出会える事はほとんどありません。弊社の場合、家具のご注文をいただくお陰で、よくこういう場面に立ち合わせていただく事があります。無垢の内装材などを納材させていただいても、全てのお施主さんと直接お話が出来るわけではありません。直接お会い出来て説明などさせていただける機会があるというのはありがたい事です。

 

20100907 フレンチチェリーに吹く風②さて、今回納品させていただいたのは、フレンチチェリーの幅剥ぎのローテーブルと椅子です。当日ご覧のような晴天で、太陽の光が室内にも降り注ぎ、実際よりもやや発色して赤味が強くなってしまいましたが、実際にはもう少し淡い色合いで、フローリングのラスティック・メープルともうまく合ったのではないでしょうか。フランス産のフレンチ・チェリーは、北米産のブラック・チェリーに比べると、やや色合いが淡く、日本の山桜に近い印象です。触感はブラック・チェリー同様にツルツルしていてとても滑らかです。結構幅のある材が取れる事から最近よく活躍してくれています。お陰でフレンチ・チェリーの【森のかけら】ばかりがたくさん出来過ぎる事態に陥っていますが・・・。このフレンチ・チェリーは荒材で55㎜ぐらいの厚みがあるので、脚材も1本物で取れるのが嬉しいところです。

 

20100907 フレンチチェリーに吹く風③やはり木にもブームというか流行り廃りがあるもので、以前はやや淡色系(メープルとかビーチとか)の家具が人気だった時期もありますが、最近は色合いのしっかりした濃い目の色合いの家具に人気があるようです。またそれも繰り返すのですが、そんな中でもこのフレンチチェリーブラック・ウオールナットは浮き沈みのない安定した人気を誇っています。長く使っても飽きがこない落ち着いた雰囲気が理由でしょうか。このローテーブルにも少し節が絡んでいますが、節の周辺にこそ木のエッセンスがより濃密に凝縮されますので、私は敢えて節も取り入れさせていただいております。節は枝の名残ですが、雪や風に耐えながらそれでも折れずに生きよう生きようとした木の格闘の歴史が刻み込まれています。これを使わない手はないでしょう。節については、年配の方よりも若い方の方が寛容であるように感じます。

 

20100907 フレンチチェリーに吹く風④節が入る事で アクセントが生まれますし、木によっても節の形状は異なるので、材の個性を引き立てるキャラクターマークの役割もあると思います。節を取り入れることで、材もより無駄なく使えるようになっています。そもそも広葉樹の長い材で無節の板なんて、そんなに無いのです。材の特性を知ってうまく活用するという事も大切だと思います。こちらのお宅では、床の間の地板にもフレンチチェリーを使っていただきました。床の間といえばかつては『』の独壇場でしたが最近はかなり変わりつつあります。

 

20100907 フレンチチェリーに吹く風⑤こちらの新居は、ワンズ㈱さんの設計・施工ですが、ワンズさんではほとんど地板はこうして無垢の幅剥ぎで作らせていただいています。多くの建設会社で標準的に使われているのが、欅の付き板貼りですから、かなり贅沢な仕様といえると思いますが、家全体の造りがシャープなので、和室とはいっても欅の突き板よりもチェリーブラック・ウオールナットなどの無垢の幅剥ぎの方が合っていると思います。ただ単にここだけ使ってみても浮いてしまいますので、全体のバランスを考えてセンス良く使っていただくのが一番。ワンズさんでは、女性のコーディネーターの井村多希子さんが抜群のセンスできっちりまとめられるので安心です。床にはラスティック・メープルといろいろな樹種も使っていただいているのですが、素材が喧嘩することなくうまく互いを活かし合うようなバランスで使っていただきました。新居に吹き抜けた爽やかな一陣の風に背中を押された気分になりました。

森の木々、間柱に至る

20100906 森の木々、間柱に至る①昨日の久万広域森林組合の父野川の工場の件ですが、折角なのでもう少し詳しく。実はこの見学の後、久万町内で懇親会を行い、夜はケビンというロッジ風の建物に家族で泊まり、翌日は朝から森を散策、その後竹森ガーデンでブドウ狩りを楽しんで、更に久万美術館にまで行ってから松山に戻り、夕方からお客様と商談という実に中身の濃い週末でして、結局その2日でまたデジカメで500枚以上もの撮影をしてしまいました!今回はバッテリーもフル充電して、撮っては見直したり撮影にもあまり時間を掛けなかったので最後まで無事に撮り終えましたが、やはり予備のバッテリーは常に携帯しておくべきですね。実は前日家内の都合で車2台に分乗してきて、翌日は車を入れ替えたのですが、家内の車が給油ランプ点灯状態で上がって来て、あわやガス欠になりかけました!備えあれば憂いなし、準備の大切さが身に染みました。

20100906 森の木々、間柱に至る②さて、久万広域の工場の話に戻りますが、いつも原木から製材された製品ばかり扱っている身としては、原木に対して強く惹かれます。一般の方からすると、材木屋さんといったら同じように思えるかもしれませんが、他の職種同様にかなり細分化されており、大きく分けると原木を挽く製材所とその挽いた製品を販売する問屋・小売店という形態になります。弊社は後者の小売店の中でも、かなり規模の小さな特殊な木も扱う変わった感じの店という事になります。こちらの工場は、前者の中でも超大型の製材工場です。

20100906 森の木々、間柱に至る③年間に約6万m3の原木を消費するという事ですが、単位が大き過ぎてよく分からないと思います。丸い原木から四角い物を作っていくわけですから、当然100%使える訳ではなく、製品として使えない部分が発生します。この工場では、身近な材でも繋ぎ合わせて「フィンガージョイント間柱」(短い材と材を合わせた部分尾の形が指と指を繋いだような形に見える事からこう呼びます)も生産しているのですが、それでも大量に製材するため全体の歩留まりは50%を切るようです。つまり6万m3の原木を消費して、3万m3程度の製品が出来るという事になります。

20100906 森の木々、間柱に至る④3万m3というと、3000X105X30㎜のもっとも基本的なサイズの間柱に換算すると315万本!余計に分からないかも知れません。家で換算すると、15~16,000棟分。09年の新設住宅着工戸数は約79万戸ですから、単純にいうとその2%程度という事になります。まあこれは大雑把な計算ですが、つまりそれぐらいの規模の製品がこの工場から日々生産されているという事になるのです。現在全国各地で同等、それ以上の規模の工場が乱立傾向にあります。もはや工場などという規模ではなくプラントとでも呼ぶべき規模の物です。 

20100906 森の木々、間柱に至る⑤ここでもラインの中を「木が飛んでいました」が、ほとんど無人の工場内を原木が流れて製材され、板になって出てくるのを見ていると、それはまさしくマテリアル。ほぼ無人の工場のラインの中を物凄いスピードで木が次の工程に送られていきます。これだけの設備を擁する工場でありながら、その命運はひたすら原木の集荷に左右されるのですが、現在愛媛の原木価格は出材の少なさから、かなり高値となっており厳しい経営環境が続いているようです。机上の計算通りにいかないところが天然素材の恐さであり、面白さでもあります。

20100906 森の木々、間柱に至る⑥木の色合い、目合い、肌艶、光沢、木味などという数値化されにくい感覚的なモノを武器に戦っている我々が旧石器時代の生き物のような錯覚に陥りますが、ひと足工場を出れば、製品となりうず高く積み上げられた製品の向こうに見える久万の山が、現実に引き戻してくれます。全ての原木がこの山から産出される物ではまかないきれず、他所の山からも集材されますが、この製品達の元の姿の一辺がまぎれもなくそこにあります。木材をただのマテリアルと考えてしてしまうと、木材という素材の本質を見誤ってしまうのではないかと思うのです。