森のかけら | 大五木材

今日のかけら050

サワラ

ヒノキ科ヒノキ属・針葉樹・埼玉産

学名:Chamaecyparis pisifera

別名:*****

 英語名:Sawara cypress

気乾比重:0.28~0.40

椹と鰆*

★今日のかけら・#051【椹/サワラ】ヒノキ科/ヒノキ属・針葉樹・埼玉産

木を求めて全国いろいろなところに足を運びましたが、通過したぐらいはあるものの、その地に降り立ったことがない県があと数県ありまして、そのうちのひとつが埼玉県。私の中では埼玉というと大都会の消費地で、山がある県というようなイメージはありませんでした。そのイメージが覆ったのは、全国の素材を求めて各地のブランドを調べていて、「西川材」の存在を知ってからです。ただ四国までは西川材は流通していなかったのでその存在は知っても実物を見たことはありませんでした。実際に埼玉県の木を手にしたのは、流通大手の木材市場に出材されていた『サワラの壁材に触れて。

初めてサワラに触れた印象は、ヒノキによく似ているけれどやや赤味がオレンジ色っぽいという感じ。もう少し特徴があるかと思っていたのですが、これだとヒノキの製品の中に混じっていてもなかなか区別がつきにくいと感じました。その後、長野県産のサワラのパネリングなどをいくらか扱わせていただきましたが、自分の中では少し持て余していました。というのも、ものの本によれば、サワラは四国には分布していないことになっていたので、このあたりでサワラというと、魚のサワラ(鰆)の事で木材としてのサワラの認知度はほぼありません。

私自身も実際に山の中に立っているサワラの姿を見たことがなかったので、ましてそれが埼玉県の都会と結びつかず、なかなかサワラのイメージを広げられませんでした。その印象が変わったのは、たまたまテレビで見たある番組を観てから。それはもう絶滅したと思われていたニホンオオカミが秩父の山奥で目撃されたので、それを探そうというドキュメント番組。そこで映し出されたのは、幻の二ホンオオカミが生き残っていそうな雰囲気がただよう鬱蒼とした山深い秩父の森。改めて地図を広げれば埼玉北東部には広大な秩父多摩甲斐国立公園が広がっていました。

結局番組内では二ホンオオカミは見つかりませんでいたが(こういうものは見つからない方がロマンがあっていいのです)、私の中の埼玉とサワラのイメージは大きく変わりました。それでもまだパネリングとしてもサワラの特徴をいまひとつ見出し切れていなかったのですが、ある日【森のかけら】を整理していた時のこと。何気にサワラを掴むと指にねたつく触感が!見てみるとサワラのかけらの小口面に油分がジワッと滲み出していました。たまたまそういうのもあるんだろうと思ったら、残りも全部同じように油分が!明日に続く・・・

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容疑者Ⅹの献身的成長* 

なにしろ『サワラ(椹)』を取り扱った経験値が絶対的に少ないので、それがサワラ自体の特徴なのか、たまたまそういう個体だったのか定かではありませんが、時期を置いてから取ったサワラも同様に小口が少しねたつきました。油分が多く含まれていて、植物性オイルを塗装して保管していると成分と反応してねとつくのかもしれません。あるいは弊社の保管方法に問題があるのかもしれません。考えてみれば、サワラは、飯台飯櫃、水桶、タライ、風呂桶など水質に耐える場面で使われることが多いので油分が多く含まれているのはもっともな話

その割には材質は淡泊というかサッパリしていて、見た目はヒノキとよく似ていますが、艶や光沢という点では、過乾燥させすぎてしまったヒノキという雰囲気にも見えます。丸太をよく見たことがないのであくまでも製材されて時間が経過した材での印象なのですが。四国には分布していないとはいえ、植栽されているところもあるだろうからいつかサワラの立ち木と出会える機会もあるだろうと思ったら、まさに灯台下暗し!我が家の庭にサワラがあった事を思い出しました。今から25年ほど前に松山の百貨店で苗木を購入して庭に植えていたもの。

結婚した間もない頃、まだ【森のかけら】も作っていなかったものの、全国各地のいろいろな木を見たい、手に入れたいという気持ちだけはあって、全国の特産物などが並ぶ催事などにはよく出かけていました。その時に東北から木工職人とか家具屋さんも来ていて、そこで興味深くまじまじと商品を見ていたら、そんなに興味があるならたまたま青森ヒバの苗木があるけど買う?ってことになり即買いしました。それを持ち帰って庭の一角に植えました。その時には青森ヒバを見たこともなかったので、それが青森ヒバの苗木だと信じて。

うまく土が合ったみたいでそこに根付きました。しばらくはその成長が楽しみでしたが、やがて子どもも生まれたりすると次第に関心が薄れその後しばらく放置していました。最初は高さ300㎜足らずの小さなポットに収まっていた苗木もすっかり大きくなって、私の背丈をはるかに越える大きさに成長。その頃には青森ヒバの商品も扱うようになっていたのですが、どうにもその木からは青森ヒバ独特の匂いがしないし、見た目はどう見てもヒノキ。それで何気に葉の裏を見てみると、ヒノキの証明のYではなく、サワラの証明であるXの記号が!明日に続く・・・

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材木屋のサワラの木知らず*

青森ヒバだと信じて買って植えたこの木はなんとサワラだったのです!どこで取り間違えたのか、そもそも最初からサワラだったのか、あるいは店の親父がだましたのか?もしや親父が私を試すために仕掛けた長いフリで、「青森ヒバじゃなかったぞ!」の連絡を首を長くして待っているとしたら?!まあそれはともあれ、サワラで間違いないようなので、思わぬ形で立ち木のサワラを見ることになったのです。まあ正確に言えば、それがサワラの木だと思わずに毎日サワラの木を見続けてきたわけですが。これぞ材木屋の立木知らず、お恥ずかしい

現場で木を扱う人間ですからこうやって恥をかきながら経験を重ねていくしかないのです。身近なところに無い木とか、海外のマイナーな木って、情報はあれども実際に自分で触って加工して肌感覚で体感してみないと、その特徴などをまた聞きとか他人の言葉でしか伝えられません。なるべく紋切り型ではない、材木屋ならではの言葉で伝えたいと思っているものの、どの木にも『クスノキ』のように匂いを嗅げばすぐ分るような強い特徴があるわけではありません。特に白系の常緑針葉樹って特徴もよく似ています。

それをさらに35㎜のキューブにして、多数の樹種名の書いていないキューブの中に混ぜたとしたら、その中からこれがサワラ!なんて特定するのは至難の技。いったん混ざってしまったらどうしようもないと思っていたら、怪我の功名というか、小口の油分の滲出によってサワラが特定できそう。オイルを塗ってない状態のものでは油分の滲出が見られなかったので、オイルを塗ったことが原因っぽいです。まあそれも木の個性ですからだからダメだなんて否定したりなんかしません。木は人間のために生まれてきたわけではない。

そしたら先日たまたま、サワラが水によく耐えるという特徴を活かした現場に偶然遭遇。何気なく入ったうどん屋さんのうどん桶が、洗うためにひっくり返されていたのですがその底には「200年サワラ」の刻印が!今まで何度も通った店ですが、そうかこれもサワラだったか!身の回りのモノの多くに木が使われていますなんて言いながら、庭のサワラといい、うどん桶といい、日々何度も見ていながら見えていなかった。あまりに馴染みすぎていて無意識になっていたと反省『森の出口』は何も新たに作らなくとも身近に沢山溢れています。強い自戒の念を込めて見逃し注意!

 




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