★今日のかけら・#019【瓜膚楓/ウリハダカエデ】 カエデ科カエデ属・広葉樹・宮城産
瓜の木肌・ウリハダカエデ①
人生初の石鎚登山で、【森のかけら】にも含まれる数々の高山植物に出会い、ようやく『今日のかけら』で取り上げようとしていたものの、相次ぐイベントや家具納品などですっかり間が空いてしまいましたが、改めて石鎚山系で出会った木々について幾つかご紹介させていただきます。まずは、成就社駅ですぐに目に入ってきたカエデ科の『ウリハダカエデ』について。カエデの仲間、つまりカエデ科カエデ属の木は、北半球の温帯を主として、園芸種まで含めると200種類に及ぶ大一族です。
その中には、イタヤカエデをはじめハウチカエデ、ヒトツバカエデ、サトウカエデ、チドリノキ、メグスリノキなど様々な種類があって、それぞれの葉には微妙に違う特徴があり、植物図鑑などではその形状で木を見分ける事も出来ると書かれていますが、普通の材木屋にとってそれはあまり興味の対象になりません。なぜなら多くの一般的な木材市場においては、カエデはどんな種類であろうと単に『カエデ』としてひとまとめに扱われるためで、それ以上の詳しい出自は求められないからです。
また、伐採直後の葉が付いた状態ならば木を見分ける「情報」が残っているでしょうが、枝が落とされ原木市場に並べられ、更に製材され板になって「情報が喪失」してしまうと、そのカエデがどの種類のカエデなのかを特定する事はほぼ不可能なのではないでしょうか。それほどに板になってしまったカエデの仲間の特徴はとても似かよっています。そういう事もあって、正直カエデの分類についてはほとんど興味がありませんでした・・・【森のかけら】を作り始めるまでは。
【森のかけら】で、日本の木だけでも100種を越える木を揃えようという事になって、ようやく大家族を形成するカエデに関心が向いたのです。調べればまさにカエデは「種類の宝庫」!しかし問題はそれらのさまざまな種類のカエデをどうやって集める事が出来るのかという事です。木材市場に出てきた段階では、詳しい種類の特徴まで遡る事はまず無理ですので、木を見分ける事の出来る知識を持った伐採業者から直接分けていただくしかありません。この話、明日に続く・・・。
瓜の木肌・ウリハダカエデ②
これが何の木なのか?それを葉っぱ1枚で見分けられたらさぞ楽しいだろうとは思うものの、私の場合そこまで葉っぱフェチではないので、願わくば葉よりも材で見分ける能力を身に付けたいところすが、こればかりは日々の鍛練で培っていくしか道はなく、その道遥かなり・・・。ところで数あるカエデ一族ですが、その中で葉っぱよりも樹皮で見分けやすいカエデが、この『ウリハダカエデ』です。四国では標高500〜1200mで見かけられるとありますが、もっと低地でも出会えることがあります。
ウリハダカエデという名前で木材市場などにその材が出て来ることはまずありえないと思いますが、山に入ると結構大きな樹を見る事もあるので、もしかしたら今までカエデとして購入していた材の中に混じったいたのかも・・・。【森のかけら】を作り始めた頃は、それほど身近にあると思ってもいなかったので、東北の宮城県から分けていただきました。当時は、よくウリハダカエデなんて断定できるなあなんて感心していましたが、樹皮の特徴さえ知っていれば簡単に見分けられる樹だったのです。
その大きな特徴は、成長して幹が大きくなると濃緑色の樹皮に縦に浅い裂け目が入ってきて、その見た目や色合い縞柄などがマクワウリ(真桑瓜)の果皮のように見えます。それがこのウリハダカエデの名前の由来となっています。特徴の似た木に特徴もよく似た『ウリカエデ』という木もあってややこしいのですが、こちらは落葉中木で大きくなってもせいぜい8m前後。一方ウリハダカエデは大きいものになると20mにも成長するとか。葉は3〜5裂に分かれておとなの掌サイズ。
森の中で緑色の樹肌の木は少ないので、比較的見つけやすい木です。石鎚山に登った時にも標高が上るたびに次々と現われてきて、さぞ鮮やかであろう秋の紅葉の光景が脳裏に浮かびました。さて材としてのウリハダカエデですが、【森のかけら】に使うほどの材しか扱ったことがないため、判断できる材料が少な過ぎて実態がよく分かりませんが、かけらで見る限りは美白で目粗。愛媛県では、色合いが白くて軟質で弾力性があることから、昔この木で白箸を作ったこともあるそうです。
そのため、一部の地域では『シラハシ』とも呼ばれます。全国的にも箸やこけし細工などに利用される事が多いようです。他には、薄く削って経木(きょうぎ)にして笠や篭(かご)などをたり、天秤棒などが知られています。樹皮繊維も強靭で、縄や蓑を編むのにも使われたりします。実は身近に沢山存在する事が分かったウリハダカエデですが、次はどうやってその木を手に入れられるか。いくら山に沢山木があっても、伐る人、運ぶ人、製材する人など人の繋がりが機能しなければ「材」までたどり着きません。
★今日のかけら番外篇・E24 【アンゲリン】 Angelin マメ科・広葉樹・中南米産
昨日、海外の木の中にはその正体がよく分からないモノのあるという話をアップしましたが、かなり情報が出るようになった現在でも、「この木何?」という木にしばしば出会います。240種も木を扱っていてまだ知らない木があるの?なんて言われる事もあるのですが、勘違いしてはいけません。たったの240種です!一説によれば、世界中にはおよそ10万種の木があると推定されています。ちなみに植物は30万とも・・・気が遠くなる数字。
【森のかけら】は、端材を捨てるのがモッタイナイという母親と、世界中の木を見てみたい、触ってみたいという好奇心の父親という両親から生まれたというのがコンセプトですが、10万種となるとライフワークどころか一族としての使命?!さて、そんな初対面の木がこちらの『ダリナ(darina)』という木。木材市場で買ったのですが、見たのも初めてならその名前を聞くのも初めて。しかも情報はほとんどなくて分かっているのはその名前だけ。
仕入れた材を削って見たりして見る限り、印象はマメ科っぽい雰囲気で非常に木目が緻密。あれやこれやと文献を引っ張り出しては調べましたがなかなか正体がつかめず!探す事数日、僅かな手がかりを元にようやく辿り着いたのが1つに名前。メキシコの中部から南米の北部に至る地域に分布(一部は熱帯アフリカにも)しているマメ科の木、『アンゲリン(Angelin )』。これはイギリスでの呼称で、ブラジルでもこの名が使われています。
落葉性の木で通常は樹高が6~15m程度だそうですが、この木には小型から大型のものまで含めておよそ30種あって、中には直径が1~1.5m、樹高が30mにも及ぶ巨大なものもあるそうです。芯材の色は黄褐色から濃赤褐色までいろいろで、木理はかなり通直で肌目は粗く重くて堅い等の材の特徴から考えても、ダリナの正体がアンゲリンではないかと推測しました。ただこの樹種は分布が広く、各国で様々な呼び名があってダリナは確認出来ず・・・。更に明日へ
10万分の1の奇跡 ②アーモンド&鶉杢
昨日に続いて、『ダリナ』の捜索についての話です。ちなみにAngelin の名前で呼ばれているのはアメリカ、ブラジル、ペルー、イギリス。ブラジルでは他にもUchyranaとも呼ばれます。ホンジェラスではGuacamayo、スリナムではRode kabbe、コロンビアではCongo、プエルトリコとキューバ、メキシコではMoca、ギアナではKoraroという具合に呼称がバラバラ。ダリナというのがどの地域で使われている名称なのかどうしても辿り着けませんでした。
でも調べたお陰でいろいろな事が分かりました。エルサルバドルの呼称はAlmendra de rio(アーモンドリオ) 。春頃にバラ色~紫色の花が咲き、多肉の果実をつけるそうです。その実の事をAlmendraと呼ぶのだそうです。木の事を調べていて、突然別のキーワードで結びつくと嬉しくなるのです。遠い存在であったダリナの木が随分と近づいてきたような気がします。またイギリスではPartridge wood(パートリッジ・ウッド)とも呼ばれています。
パートリッジというのは、鳥のヤマウズラの事ですが、私の推測ですが恐らく名前の由来は鶉の複雑で美しい羽に似た木目からきているのではないでしょうか。その点からもますますダリナとアンゲリンの一致点があるように思えます。ちなみに日本でも『鶉杢(うずらもく)』という言葉が使われます。これは古くから使われてきた言い回しで、雅趣に溢れた美しい鶉の羽のような杢目に対する呼び名ですが主に屋久杉に対して使われています。
ダリナがアンゲリンだと断定できるわけではありませんが、そうだとすれば気乾比重は0.63でやや重くて堅い。ただし見た目から感じる重量感の割に乾燥は早いようで、在庫しているモノもかなり乾燥が進みました。切削や研削も問題ないようです。接地での耐久性は高く、産地では橋用材や杭、自転車、家具、ビリヤードのキュー、傘の柄、杖などに利用されています。今後更に調査を進めるので更なる情報が得られたらアップさせていただきます。



