森のかけら | 大五木材

すっかり材としての説明ではなく、新商品開発の決意表明のようになってしまいましたので、改めて材としてのメープルについて。弊社では北米産広葉樹などの平板(挽き板)に関しては、厚みが30~33㎜で仕上げる方が主流なので、基本的には厚みが6/4inch(約38㎜)のものを購入しています。ただしハードメープルに関しては、家具というよりは造作に使っていただくケースが多くて、それに対応するため少し厚めの8/4inch (役51㎜)のものを仕入れています。ただでさえ北米産広葉樹の中では重たい木なのですが・・・

しかし重たい木を動かしていると、「俺、今働いてる~!という実感があって、自己満足の世界観に浸ることができます。こうして梱包された板材が入荷すると、弊社はみぎひだりで卸すような会社ではないので、すべて梱包をさばいて1枚ずつ倉庫に立て掛けます。その際に、幅で分けたり、検品も兼ねて行って、現在どういう材を在庫しているのかということを頭と体に叩き込みます。ハードメープルは重たいものの(8/4なので猶更)肌触りが滑らかなのと、そげらも少なくて担ぎやすい木のひとつです

4,5年前までは無垢の白っぽいフローリングというとメープル(チャイニーズ・メープル)が主流でしたので、それに伴う玄関の框(かまち)もメープルで作らせていただいていました。今はフローリングも茶系から黒系が主流になっているので、出番としては枠材敷居鴨居、額縁、カウンターなどに加工させていただいています。チャイニーズ・メープルに比べると、俗に『カスリ』と呼ばれる緑~黒の筋が出にくいのと、木そのものが大きいので挽き割っても挽き反りしにくく、弊社においてはロスが少ない木です。

ハードメープルの魅力は、ツルツルした滑るようななめらかさと、美しく多彩な杢の表情です。中でも、1万本に1本現れるとも言われる『鳥眼杢(バーズアイメープル)』はその代表格で、まさに銘木の風格(プレミア36の1つです)。また、緩やかに流れるようなカーリー杢や小さな波状の縮み杢(キルテッドメープル)をはじめ、杢が鱗状になったり玉状になったりと、芸術的な表情を見せてくれます。梱包をさばいていて不意にそんな杢が現れたりすると、途端に肩に乗せた材が軽く感じてしまうのです。この項完了。




その日も重たいハードメープルをあっちこっちに動かしたり担いだり、短くカットしたり削りしながらも頭の中で考えていたのは、言葉としてのメープル、イメージとしてもメープル、物語としてのメープルをいかにして商品化して売ろうかという事ばかり。昨日、『カタチなきモノ』と表現しましたが、例えばカナダの国旗のメープルのようにデザイニングされたものであれば、実際にはデータとしてやり取りされるものに対価が発生するわけで、そこには材としてのメープルは存在しないモノの、メープルは存在しています。  


そういうのはデザイナーやアーティストの仕事で、材木屋の仕事ではないと言われるかもしれませんが、リアルな材を売るにあたってもそういう付加価値につけ方が重要であり、住宅部材の絞り込みが一層強くなり、価格の決定権がこちら側の手に無くなっていくことを考えれば、そういう形で『モノ+物語性』を付加したものでなければ差別化も図れず勝負が出来なくなると思っています。例えばその1つとして、兵庫県の住空間設計Laboさんと共同で『誕生木(たんじょうもく)』という物語を考え出しました。

ただこちらは一般の方にも馴染みのあるようなメジャーどころの日本の木で1年12ヶ月にその季節の行事などに当てはまるような木を選んで作っているので、外材は含まれていません。私は日本の木でも外国の木でも同じように好きなので、外国産の木にもこういうような物語性を付加してみたいと考えています。以前、外国の方から「誕生木の外国版は無いのか?」と訊かれたこともあありましたが、誕生月以外の構想もあります。世界の木となると、色合いもカラフルになるし物語の幅もかなり広げられます。


まあ弊社の場合は、100発撃って1発仕留められるぐらいの商品開発精度なので、いつ形に出来るか分かりませんが、そのためにもせっせと端材をストックしておかねばなりません。そんな事を妄想していると、つい顔がにやけてしまって気持ち悪いのですが、そういう発想も主体たる材があってこその話。割合こそ高くなっていくだろうと思いつつも、肩にズシリと食い込む長尺のハードメープルの重さこそが弊社の本道であり商売のネタ。そこのところをはき違えないようにと今日もまた木を担ぐのです。続く・・・




★今日のかけら・#188 【ハードメープル Hard maple カエデ科・広葉樹・北米産

本日はハードメープルの木取り。ブラック・ウォールナットブラック・チェリーホワイトオークホワイトアッシュとなどと並んで弊社の有力な北米産広葉樹の主力商品で、今までに何度もこのブログでも登場してきたと思うのですが、気がつけば未だに『今日のかけら』には取り上げていませんでした。今更ながらですが、ここでハードメープルをご紹介。あまたある外材の中でも、名前だけならもっともポピュラーな木のひとつではないでしょうか。用材としてだけではなく、デザインや食材としても人気があります。


カエデ科の木は、世界中(主に北半球の温帯)におよそ150種も分布していて、園芸品種まで加えると200種にも及ぶ多品種ですが、その中でも用材としてもっとも多く使われているのがこのハードメープルではないでしょうか。堅牢で衝撃性にも優れているのと触感が滑らかで表情も多彩なことから、住宅の床材(フローリング)としても人気がありますが、体育館やダンスホールの床やボーリング場のレーンなどにも使われているのは有名な話。野球のバットドラムの胴などにも使われたりとその用途も広いです。

むしろ一般の方がメープルと聞いて思い浮かべるのは床材ではなくこちらのメープルシロップの方かもしれません。樹液からはほのかに甘い香りのメープルシロップが採取できます。そのため『シュガーメープル』とも呼ばれます。日本語では『サトウカエデ』。日本の『イタヤカエデ』に比べるとハードメープルの方が白っぽい(淡いクリーム色?)です。データとしての気乾比重はどちらも同じくらいですが、弊社にあるイタヤカエデは耳が変形しているものが多く、持ちにくいこともあってイタヤカエデの方が重い印象。

メープルシロップと同様に認知度が高いのがその葉のデザイン。もっともメジャーどころとしてはカナダ国旗ですが、その国旗を見るたびに、フローリングや造作材、テーブルなどの『材として売る』ことも重要ですが、『デザインとして売る、ストーリーとして売る』ことの大切さも考えさせられるのです。材木屋としては今まで目の前の『カタチあるモノ』をいかに加工するとか、いかに適材適所のタイミングで売るかということばかり考えてきましたが、『カタチなきモノ』を売れるかというのがこれからの命題。続く・・・




トウヒ(唐桧)の話の続きです。某日、朝から掌にベッタリとヤニが付いてテンションが下がりつつも、これも『木の個性、自己主張』なんだと自分に言い聞かせ、他のトウヒはどうかと数枚めくってみると3、4枚に自己主張の証がありました。とりあえずヤニの出ているものと出ていないものとに仕分けをして、しっかり手を洗って気持ちを落ち着けました。朝からこういう事があると、その日のうちにもう一度くらい『脂の洗礼』を受けるものなので注意せねばなりません。

脂壺はどれもそれほど深くはなかったようです。脂壺が深くてその部分を切り落とせない場合は、脂壺部分だけを削り取るという外科手術を施さねばならない事もあって、以前はよく「米松(ダグラスファー)の化粧梁にヤニが出たんだけど何とかして~!」という相談があって、自己流で覚えた切除手術の腕を振るったものですが、最近は材の乾燥化に伴いほとんどそういう機会もなくなりました。このままだと近いうちに建築業界では『ヤニ(脂)』という言葉が死語になってしまうのかも・・・

さて、トウヒですが具体的どういう形で活用しているかというと、こちらの「ままごとキッチン」がトウヒ製です。造られたのは、「おもちゃ病院」の伊藤さん。コンロ部分にはスギの赤身を使われていますがその他の部材はすべてトウヒです。そもそもトウヒはエゾマツの変種で、地域によっては『白栂(シロツガ』とも呼ばれるので、一見するとモミ(樅)スプルースのようにも見えます。弊社で在庫しているトウヒはそれほど目が詰まっているわけではないので、用途によって柾目で年輪の詰まったスプルースと使い分けしています。

昔は白系の軽い木というともっぱらヒノキかスプルースしか選択肢がなかったので、まずはその存在を知っていただくことが先決なのですが、超保守的な地域性のため、大工さんや工務店は使い慣れていない材にはなかなか手が伸びません。むしろ一般の方やセミプロの方はチャレンジャーが多いので、お試し価格で使っていただいています。しかし足が遅い材の宿命で、認知されたころに在庫が切れてしまうという皮肉。そしてそういう時に限って仕入れが出来なかったりと世の中うまくはいかないもの。




★今日のかけら番外篇・E030トウヒ/唐桧】 マツ科トウヒ属・針葉樹・岐阜産

なかなか巡り合わせが悪くて、決して珍しいというわけでもないのになかなか手に入らないというかご縁が無い木というのがあって、この『トウヒ(唐桧)』もそのひとつです。マツ科トウヒ属の木で、印象としては目の粗いスプルースといったところ。軽軟で白身のスッキリした針葉樹なので、どうしてもこの木でなけらばならないという必然性もないため、意識して探してこなかったということもあり、長い間『私の中での幻の木』あるいは、『今後もご縁の無い木』リストの1つに入っていました。


それが数年前に意識したわけでもないのにふとしたことでまとめて手に入り(ご縁がある時はそんなもの)今ではクラフト材などに時々利用しています。トウヒは漢字で『唐桧』と書くことから、唐(中国)の木だと思われている方も多いのですが、れっきとした国産材です。本州、四国、九州の亜高山帯というかなり限られた地域の分布する木です。唐桧という漢字の由来は、「唐風のヒノキ」を意味する説もありますが定かではないようです。同じような由来を持つ木としてはカラマツ(唐松)があります。

カラマツは、漢字では『落葉松』とか『唐松』と表されますが、中国の絵画(唐絵)に描かれる松に似ているという事から『唐松』と書かれるようになったと言われています。話が少し脱線しますが、『唐』の漢字で言えば、『紫檀・黒檀・鉄刀木』などで知られる『唐木』があります。こちらも中国産ではないのですが、これらの銘木や高級家具・工芸品などが日本に輸入された当初は、中国からのルートに限られていました。当時は唐が統治していたことから、『唐から来た木』という意味合いで唐木と呼ばれるようになりました

話はトウヒに戻ります。白身で軽軟な事から一般の方もクラフト細工用でお求めになるのですが、先日も朝からお問い合わせがあり、倉庫に立て掛けてある20数枚の在庫のトウヒの中からご希望サイズを探していると、掌に嫌な感触が・・・!「嗚呼、朝からやってしまった」と掌をみると脂(ヤニ)がベッタリ。白っぽい木なので油断していましたが、やはりマツ科の木。検品した際にはあまり気にならなかったのですが、手にしていた板の側面を見ると黄金色のヤニが噴き出ていました。これもマツ科の木を扱う者の宿命・・・




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