森のかけら | 大五木材


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今日のかけら 番外篇・E054  シゾメリア】  Schizomeria   クノニア科・広葉樹

シゾメリア』、その名を持つに木に久しぶりに再会しました。パプア・ニューギニアやモルッカ、クイーンズランドなどに分布している南洋材で18種がこのシゾメリア属に含まれています。シゾメリアの丸太が入ったと聞き迷いなく買い付けしました。シゾメリハはやや赤みを帯びていてその質感は非常に滑らか。私が若い頃、お付き合いをしていた県外の木材加工会社がよくこの木を使っていてその存在は身近なものでした。サクラで注文したけど、サクラを切らしているのでシゾメリアでいいですか?

そういう感覚でシゾメリが入って来ていたので、私の中の感覚では決して高価な木という印象はありませんでしたし、いつでも手に入る木の1つだと思っていました。なので【森のかけら】を作ろうと思った時にも当然リストアップしていましたが、作り始める少し前に「在庫のシゾメリアが無くなってしまいました」との非情宣告。弊社に残っているのもその当時の細い端材があるばかり。嗚呼、あの頃沢山あったシゾメリアを少しでも残しておけばと後悔先に立たず・・・

それで【森のかけら】に入れるのは断念。その後もシゾメリアとはご縁が無くて、ほとんど諦めかけていた中で今回丸太の入荷情報が入ったのはまさに僥倖!早速丸太を挽いてもらいました。丸太自体は小さかったのですが柾目に挽いてもらいました。製材直後なので材面はまだ水分を含んで濡れ色ですが、赤身を帯びた材面にキラキラと浮かび上がる虎斑模様。まさにこれが懐かしいシゾメリアの御姿!素材は決して高価な材というわけではないのですが、私の周辺ではなぜかその名を聞くことがありませんでした。

用途としては主に家具材(ソファーの肘掛や脚材など)に使われることが多いようです。木材加工会社が持っていたのは昔の在庫の残りだったので、カラカラに乾いていて、癖も少なくて寸法安定性も高そうに思えたのですが乾燥工程でどう変化するかなど、もしかしたらあまり市場に流通したいない理由があるのかもしれませんが、そこは自分で「育てて」みて検証してみようと思います。とりあえあずここから桟積みして自然乾燥させていきますので、経過報告はまたいずれ改めて。




読売新聞を購読している読者に向けて、毎月YC(読売新聞販売店)から無料でお届けしている「読売ライフ」という生活情報誌がありますが、そのの四国版12月号に掲載していただきました。『いいね愛媛』というコーナーに見開きで『モザイクボード』や『森のかけら』の個別商品のことや『木のもの屋・森羅』や裏の小屋での活動のことなど。取材を受けたのはだいぶ前の事でしたので半袖姿ですが、12月号ということで先日配布されてブログでの紹介も解禁となりました。

最近はSDGsという事で、いろいろな媒体から取材を受けることが多くて(弊社としてはSDGsなんて意識したことは無くて、ずっと前から同じことをし続けているだけなのですが、それはよしとして)、弊社の事を取り上げていただけるのは、宣伝広告費も出せない弱小零細材木屋としては非常にありがたい事です。ただ、年々やっている事の幅が増えてきていて、会社の説明をする時にどの切り口で話せばいいのかよく分からなくなってきています。そもそも一般的な材木屋と呼べるのどうかも怪しい(笑)。

取材の目的をお聞きして、それに応えるような切り口で説明を始めるものの、これを話したらあれの話もしとかないと流れが分からないとか、それを始めるためのきっかけになったあのエピソードも話さないと意味が通じない、なんていってたら1時間でも足りない。要点を端的に話せない性格なので話も脱線してまとまりもなくなり、わずかな掲載スペースなのに膨大な取材時間を擁してしまうのが常。だって何がその人の琴線に触れるか分からないからあれもこれも紹介しておきたい、根っからの貧乏性。

自分が『今日のかけら』で個別の樹種の事を書く際にも、アフリカとか東南アジアのマイナーな木については、特徴やエピソードが乏しいことが多くて苦労することが多いので、少しでも小ネタが多い方が話が膨らませやすいのではなかろうかという親切心(笑)もありますが、本心はただ喋りたいだけ。それでいつも取材される方を困惑させますが、今回も上手く引き出しを整理していただき感謝です。紙媒体は丁寧に読み込んでいただく方が多く、その効果は結構長く続く事があります。

別の情報誌に掲載していただいた時には、掲載から数年経っていましたがその冊子をお持ちになってご来店された方もいらっしゃいました。やっぱり紙の印刷物って取っておきたくなるものです。世の中急速にペーパーレスが進んでいますが、昭和生まれとしては紙媒体の印刷物を所有したいという欲望が捨てきれません。ページをめくる紙の質感、ページの間から漂うインクの匂い、新書に折り目を付けたり、ラインマーカーで線を引いたり、付箋を貼るときのささやかな背徳感、本棚に並べた背表紙を眺める時の支配感、そして読み続けてペラペラになった姿から生まれる連帯感、それらすべてが紙媒体の作品だけに与えられる特権であり作品の質とは別次元の魅力でもあります。という事で、読売新聞の購読者で四国にお住いの方にだけ配布される情報誌ですが、どこかで目にする機会がありましたらぜひご覧になってください。




 

私が大五木材の社長に就任した事務所の前に植えた平成20年に事務所の前に植えた『トチ(栃)』が落葉するようになると冬の訪れが近いことを教えてくれます。いまだに実はつきませんが、幹は年々大きくなって隣の差し掛けの屋根を追い越すぐらい上にも伸びました。実はなりませんが、名前の由来ともなったように『百も千もほどの葉』がたわわに繁って、それなりの大きさに成長してきました。いずれは、あの道路沿いに生えている大きなトチの木があるところです、なんてシンボルツリーになったりしないかなと淡い期待も。

トチの葉は大きなものになると大人の顔が隠れるほどのボリューム感があるのですが、この時期になるとその大きな葉が毎日ハラハラと落葉してくるわけです。すぐに落葉する諦めの早い奴もいれば、12月終盤ぐらいまで粘る根性ある奴もいて、落葉の掃除は長期戦となります。これが何かの商品に生まれ変わる錬金術があればいいのに・・・ということを毎年この頃に書いている気がします(笑)。今のところまだ雨が少ないので、道路にペッタリ貼りついたトチの葉を剥がすまでには至っていませんが、今朝の雨はやばそう・・・

ウチのトチに実がならない愚痴も毎年のように書いていますが、とあるスーパーでパッケージに魅せられて買ってしまったのがこちらの『とち餅』。もし実がなってもとち餅は作るのが両面倒くさいので無精者の私は絶対作らないと思うのですが・・・。ブログのネタとして一度はチャンレンジしてみるかもしれません。ご存知の方も多いとは思いますが、トチの実はアク抜きしないと食べられないのですがそれが非常に手間と時間がかかる作業なのです。収穫した実を2~3日水に浸してからカラカラになるまでおよそ一か月ほど天日干し。

それからやっと皮を剥くわけですがその方法は地域によってやり方がいろいろあるようです。まれでどうにかあく抜きが出来てここからようやく栃餅づくり。餅米とアク抜きした栃の実をそれぞれを一晩水に漬けておき、よく洗って餅米と一緒に蒸す。蒸しあがったら搗(つ)いてやっと完成。この食べ方に辿り着くまでにどれほどのトライ&エラーが繰り返されたことか!アクそのものは毒ではありませんが、サポニン、アロイン、タンニンなどが含まれてそのまま食べると口の中が痺れるそうです。




昨日のブログで、欧米において『イチイ』は死をイメージしていたり、有毒であることから恐れられていると紹介しました。古代ギリシャやローマ神話にも登場しますが、ウェールズのキリスト教の戒律においても「聖なるイチイ」を倒した賠償には60頭の羊が求められるとあります。イチイはもともと再生能力が高い木でその特徴を利用して生垣などに用いられていますが、そのスピードは遅く高齢木になると幹の中心部分が朽ちているものもあります。ヨーロッパには樹齢が2000年を超える長寿のイチイもあるのだとか。

枝も多くて巨木になったその姿はどこかおどろおどろしくもあります。そこに有毒ではあるが手に取りたくなるような美しく赤い実、とくればますます神秘性が増すというもの。そのあたりからイチイが死をも超越した特別な存在となっているのかもしれません。日本人には馴染みにくい感覚ですが、欧米においては長寿の木が宗教と結びついて特別な存在になる事は、クリスマスツリーの例をはじめ少なくありません。赤い実を包んでいる仮種皮以外すべての部分が有毒で、葉を食べた牛や馬が中毒を起こしたり、実を食べた人が死亡した例もあるぐらい危険です。

そんなイチイですが、先日家内と東予方面に出かけていて帰りに夕飯の食材を買おうと立ち寄った店でたまたま見つけたのがこちらの和菓子、『今治市銘菓 一位木(あららぎ)』。今治市常盤町にある明治12年(1879年)創業の老舗・ムロヤ菓舗さんが作られています。地元では有名なかなり有名なはずですが、恥ずかしながら私は今回初めて知りまして、見つけた瞬間に「パッケージ買い」しました。甘さ控えまな黄味色の餡をシナモン風味の皮で包んだひと口サイズの素朴な風味の焼き饅頭。

SNSでムロヤ菓舗さんを検索すると、店舗にはイチイで出来た看板を設えられていて、そこに「今治銘菓 一位木」の文字が描かれていて、この和菓子への強い思い入れがうかがえます。イチイは有毒成分を持っていてネガティブなイメージが強いのですが、この和菓子がイチイの何かしらの部分を利用しているとしたら凄い!と思って買ってみましたが、原料にイチイの成分が使われているというわけではなくて、生命力があって長寿で高貴な(聖徳太子の持つ笏)イメージから命名されたようです。

赤い実を包む仮種皮は食べることが出来るらしいので、もしかしたらそのあたりが皮とかに伝統の秘技で練り込まれているのかもしれませんが、私が調べた範囲ではそういう情報は出てきませんでした。しかし、もし何らかの形でイチイを使っているのならば知られざる出口として再度取り上げさせていただきたいです。その皮以外の種や木や葉すべてにタキシンという毒性成分が含まれているイチイをわざわざ使う必要があるのかと思いますが、もしそこまでの危険を冒してイチイを食材に使っているとしたら凄いことです!なにせ石川県の白山市にはフグの卵巣を塩漬け後に塩抜きし、ぬかに漬け1年~2年漬けして毒抜きして食するという日本人の食への執念が結実した食材がありますから、誰かがどこかでイチイの毒も克服しているのかも!?




材質が非常に安定していて狂いや収縮が少なくて軽軟なことから、日本では昔から『イチイ(一位』の木が鉛筆の軸木に使われてきました。戦後は海外からの輸入材にその座を奪われ、その後は主に彫刻材や床廻りの装飾材、お盆や菓子皿などの器などに利用されてきました。市場に出てくる事は多くはありませんが、もともと枝が多い木なので節が多く、節をよけるというよりも節を活かした使い道、『出口』を考える方がイチイの木をうまく生かせそうだと思っています

イチイはアララギとかオンコ、アカギ、キャラボク、シャクシノキ、シャクギ、スオウ、など異名の多い木としても知られていますが、私の認識では木材業界で材としてみなす場合は主に『イチイ、明治時代に伊藤左千夫の手によって作られた短歌結社誌に冠されたように文学的に使われる場合は『アララギ』、染料として名高い蘇芳(すほう)に準じた染料として使われる場合は『スオウと呼び分けられていると思っています。

聖徳太子が持っている笏(しゃく)としても知られるイチイは、仁徳天皇がこの木で笏を作らせ正一位の位を授けたのが名前の由来であるというエピソードや漢名の『一位』とも相まって、非常に由緒正しい縁起がいい木として歓迎されますが、欧米では悪役とされていて印象は決してよくありません。ローマ神話の中ではイチイの木陰で眠ると死ぬとか、古代ギリシャでは死のシンボルとまでされています。ここでいうイチイは日本のイチイTaxus cuspidata)近縁のパシフィックユー(Taxas brevifolia)の事だと思います。

伊藤左千夫たちがどういう思いでタイトルに冠したのかは知りませんが、イチイの花言葉は『悲嘆』であり、欧米の文学界でもその扱いはダークなイメージ。とりわけその印象を悪くしているのはシェークスピアだと思います。リア王では王の耳にイチイの毒を注ぎ込んで毒殺しますし、マクベスの中では魔女が地獄の悪霊たちに飲ませる鍋の中に、ヒキガエル、コウモリ、ヘビ、イモリの目玉、犬の舌、トカゲの足などとともに墓地に生えていたイチイの小枝を投げ入れます!

鍋の中に投入される「具材」はこの他にもフクロウの翼、竜のうろこ、オオカミの牙、貪欲なサメの胃、魔女のミイラ、毒ニンジンの根、ヤビの胆嚢、ユダヤ人の肝臓、死んだ赤んぼうの指があるのですがさすがにグロい!こんなメンバーの中に加えられるのですからどれだけイチイが忌み嫌われているかが分かると思います。しかい一方では死と生は二元性があり死を司る木として協会に植えられたり、西洋医学ではガンの治療薬としても利用されてきた側面もあります。明日は打って変わって美味しいイチイの話。




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