森のかけら | 大五木材


当ブログに記載の商品の料金、デザインは掲載当時のものであり、
予告無く変更になる場合がございます。
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読売新聞を購読している読者に向けて、毎月YC(読売新聞販売店)から無料でお届けしている「読売ライフ」という生活情報誌がありますが、そのの四国版12月号に掲載していただきました。『いいね愛媛』というコーナーに見開きで『モザイクボード』や『森のかけら』の個別商品のことや『木のもの屋・森羅』や裏の小屋での活動のことなど。取材を受けたのはだいぶ前の事でしたので半袖姿ですが、12月号ということで先日配布されてブログでの紹介も解禁となりました。

最近はSDGsという事で、いろいろな媒体から取材を受けることが多くて(弊社としてはSDGsなんて意識したことは無くて、ずっと前から同じことをし続けているだけなのですが、それはよしとして)、弊社の事を取り上げていただけるのは、宣伝広告費も出せない弱小零細材木屋としては非常にありがたい事です。ただ、年々やっている事の幅が増えてきていて、会社の説明をする時にどの切り口で話せばいいのかよく分からなくなってきています。そもそも一般的な材木屋と呼べるのどうかも怪しい(笑)。

取材の目的をお聞きして、それに応えるような切り口で説明を始めるものの、これを話したらあれの話もしとかないと流れが分からないとか、それを始めるためのきっかけになったあのエピソードも話さないと意味が通じない、なんていってたら1時間でも足りない。要点を端的に話せない性格なので話も脱線してまとまりもなくなり、わずかな掲載スペースなのに膨大な取材時間を擁してしまうのが常。だって何がその人の琴線に触れるか分からないからあれもこれも紹介しておきたい、根っからの貧乏性。

自分が『今日のかけら』で個別の樹種の事を書く際にも、アフリカとか東南アジアのマイナーな木については、特徴やエピソードが乏しいことが多くて苦労することが多いので、少しでも小ネタが多い方が話が膨らませやすいのではなかろうかという親切心(笑)もありますが、本心はただ喋りたいだけ。それでいつも取材される方を困惑させますが、今回も上手く引き出しを整理していただき感謝です。紙媒体は丁寧に読み込んでいただく方が多く、その効果は結構長く続く事があります。

別の情報誌に掲載していただいた時には、掲載から数年経っていましたがその冊子をお持ちになってご来店された方もいらっしゃいました。やっぱり紙の印刷物って取っておきたくなるものです。世の中急速にペーパーレスが進んでいますが、昭和生まれとしては紙媒体の印刷物を所有したいという欲望が捨てきれません。ページをめくる紙の質感、ページの間から漂うインクの匂い、新書に折り目を付けたり、ラインマーカーで線を引いたり、付箋を貼るときのささやかな背徳感、本棚に並べた背表紙を眺める時の支配感、そして読み続けてペラペラになった姿から生まれる連帯感、それらすべてが紙媒体の作品だけに与えられる特権であり作品の質とは別次元の魅力でもあります。という事で、読売新聞の購読者で四国にお住いの方にだけ配布される情報誌ですが、どこかで目にする機会がありましたらぜひご覧になってください。




昨日のブログで、欧米において『イチイ』は死をイメージしていたり、有毒であることから恐れられていると紹介しました。古代ギリシャやローマ神話にも登場しますが、ウェールズのキリスト教の戒律においても「聖なるイチイ」を倒した賠償には60頭の羊が求められるとあります。イチイはもともと再生能力が高い木でその特徴を利用して生垣などに用いられていますが、そのスピードは遅く高齢木になると幹の中心部分が朽ちているものもあります。ヨーロッパには樹齢が2000年を超える長寿のイチイもあるのだとか。

枝も多くて巨木になったその姿はどこかおどろおどろしくもあります。そこに有毒ではあるが手に取りたくなるような美しく赤い実、とくればますます神秘性が増すというもの。そのあたりからイチイが死をも超越した特別な存在となっているのかもしれません。日本人には馴染みにくい感覚ですが、欧米においては長寿の木が宗教と結びついて特別な存在になる事は、クリスマスツリーの例をはじめ少なくありません。赤い実を包んでいる仮種皮以外すべての部分が有毒で、葉を食べた牛や馬が中毒を起こしたり、実を食べた人が死亡した例もあるぐらい危険です。

そんなイチイですが、先日家内と東予方面に出かけていて帰りに夕飯の食材を買おうと立ち寄った店でたまたま見つけたのがこちらの和菓子、『今治市銘菓 一位木(あららぎ)』。今治市常盤町にある明治12年(1879年)創業の老舗・ムロヤ菓舗さんが作られています。地元では有名なかなり有名なはずですが、恥ずかしながら私は今回初めて知りまして、見つけた瞬間に「パッケージ買い」しました。甘さ控えまな黄味色の餡をシナモン風味の皮で包んだひと口サイズの素朴な風味の焼き饅頭。

SNSでムロヤ菓舗さんを検索すると、店舗にはイチイで出来た看板を設えられていて、そこに「今治銘菓 一位木」の文字が描かれていて、この和菓子への強い思い入れがうかがえます。イチイは有毒成分を持っていてネガティブなイメージが強いのですが、この和菓子がイチイの何かしらの部分を利用しているとしたら凄い!と思って買ってみましたが、原料にイチイの成分が使われているというわけではなくて、生命力があって長寿で高貴な(聖徳太子の持つ笏)イメージから命名されたようです。

赤い実を包む仮種皮は食べることが出来るらしいので、もしかしたらそのあたりが皮とかに伝統の秘技で練り込まれているのかもしれませんが、私が調べた範囲ではそういう情報は出てきませんでした。しかし、もし何らかの形でイチイを使っているのならば知られざる出口として再度取り上げさせていただきたいです。その皮以外の種や木や葉すべてにタキシンという毒性成分が含まれているイチイをわざわざ使う必要があるのかと思いますが、もしそこまでの危険を冒してイチイを食材に使っているとしたら凄いことです!なにせ石川県の白山市にはフグの卵巣を塩漬け後に塩抜きし、ぬかに漬け1年~2年漬けして毒抜きして食するという日本人の食への執念が結実した食材がありますから、誰かがどこかでイチイの毒も克服しているのかも!?




気がつけばすっかり秋も深まり、夕焼けがやけに美しい。天気のいい時には事務所の裏から夕焼けを眺めて感傷に浸るのが最近のルーティンとなっていました。そんなある日の日曜日に、家内が「今日は夕焼けが綺麗に見えそうだから近くの山に行かない?」と誘いがあり、二人で夕焼けの時間に合わせて山に行くことに。山と言っても標高わずか200mの低い山。会社から車で北に15分ぐらい走った距離にある宅並山という山です。家内は友人からその山の存在を知って2度ほど登った経験があります。

決して高い山ではないけれど、そこから北条の海が一望出来て、海に沈む夕焼けが見える隠れスポットとのこと。夏に娘が姫路の大学から帰省していた時にも二人で登ってきました。車で15分ぐらいの距離で気軽に行けるということと、標高200mの低い山という事で、最近運動不足だったこともあり軽い気持ちで行くことにしました。仕事をしていたら出かけるのが少し遅くなって日没までギリギリっぽくなったので急いで事務所を出発。到着してみて標高差160mを600mの山道で登るという現実に愕然

頂上まで600mと聞くと、すぐそこやないかと思われるかもしれませんが、標高差160mを細い山道で一気に登り切るのでその角度たるや相当に急峻!別段有名とか由緒がある山というわけではないのですが、地元の方々が大切に管理されていて、道に沿って花が植えられていたり、途中に案内板が建てられていたり、頂上にはベンチなどが置かれていたりします。しかし急峻な参道は雨風で削られ思っていた以上に険しい(あくまで私視点)。看板が見えてきたのでかなり登ったかと思ったら、まだわずか100m!既に私の呼吸は乱れ、大粒の汗が額から滴り落ちる・・・。

今回が3度目の家内は軽快に先を行くのですが、この先どれほどの急こう配が待っているのか分からない私は不安と息の乱れで足もおぼつかない。しかし私の体力不足を太陽は待ってくれない。急がねば日が沈んでしまう!急がねば!そう思うのですが、情けないことに足が動かない・・・頂上に近づくほどに道は荒々しく急峻になり(私の脳では45度の壁のように感じられました)、家内に励まされながらどうにかこうにか日没までに頂上に到着。今まさに太陽が海に沈もうかというところでした。

息切れしながらでも上るだけの価値がある絶景です。家内とふたりで美しい日没を堪能するとそそくさと下山準備。山道には灯りもないので、暗くなってしまうと足元も不安定で非常に危険。まだ足元が明るいうちに下山しなければならないのです。これがまた降りる時の方が膝への負担が半端ない!絶対にダイエットしようと誓わせてくれます。後から知ったのですが、ここには中世伊予の有力者だった河野氏が城(砦)を築いて、河野氏が滅亡する天正13年(1585)まで、道後湯築城の前線基地として防衛の要だったようです。決して大きな山ではないのですが急峻な斜面を利用した軍事基地であったとは驚きでした。かつては重い鎧をつけたもののふたちも息を切らしてこの山道を登り、美しい夕焼けに平和の安寧を願ったのかもしれません。もう少し体力をつけてから、次は昔のもののふに思いを馳せて再チャレンジしてみます!




またまた本日も愛媛県歯科医師会館の『愛媛県産広葉樹のモザイクボード』の話なのですが、書き残しておきたい事がいっぱいありまして3日連続となりました。今回建物の設計を担当された矢野青山建築設計事務所矢野寿洋さん、青山えり子さん、から最初にお話をいただいたのは、今年6月頃のことでした。その段階で家具の納品は9月末頃ということでしたので、およそ3ヶ月半ぐらいは期間がありました。こんなに納期に余裕があることは珍しく、だいたいが「なぜもっと早く発注してくれなかったんですか~!」という事が多いのですが、余裕のある発注は本当にありがたい!

しかし実際は余裕があり過ぎると油断したり、その間に他の急ぐ仕事を入れ込んだりして結局最後は慌ただしくなるのはなるのですが(笑)、それでも事前に余裕を持って準備が出来たり、作り方を検討できる時間があるというのは非常に助かります。今回のソファーは完成した姿を見るとシンプルな箱型に見えますが、座面部分はすべてスノコになってして調湿効果を得られるようにデザインされています。スノコにも愛媛県産のヒノキを使うという徹底ぶりです。更に脚部分にはこちらも愛媛県産のクスノキ

クスノキにはタンニンが含まれ耐湿性にも優れている木です。そういい見えない分部にもこだわって材料を選ばせていただきました。また今回はソファーという事で、布地部分の制作はTOWER(タワー)室愛彦さんにお願いしました。室さんにはいつもは家具の木材を買っていただいているのですが、今回はソファー制作の過程も知れて勉強になりました。弊社の場合は家具を作っているといっても、材料の供給とプロデューサー的な役割で実際には善家君や室さんたち職人さんが作っていただいています。

それでも従来の、木材市場から仕入れてきた材を現場に持って行くだけの流通仕事に比べると、毎回悩んだり考えたりすることばかりで大変ではありますがとてもやり甲斐を感じます。私自身はモノ作りはできませんが、選ぶ木材に意味を持たせたり、名前の由来や特徴などの木の背景を織り込んでモノガタリ作りという側面から家具作りに関わりたいと思っています。最近では、門前の小僧習わぬ経を読むスタイルで、ごくシンプルなものであれば弊社でも製作するようになりましたが、やっぱり作るって楽しい!




本日は昨日に続いて愛媛県歯科医師会館が作らせていただいた愛媛県産広葉樹モザイクボードの家具、応接室の大きなテーブルについてです。このテーブルのサイズは2000☓1200㎜で、中央部に愛媛県産のトチ(栃)の板を挟んでいます。こちらも矢野青山建築設計事務所矢野寿洋さん、青山えり子さんによるデザインですが、すべてモザイクでなく無垢板を一枚挟むことで全体的に落ち着いた印象になりました。自分でデザインするとついついモザイクボードを目立たせねば~と、過剰に露出させようとしてしまい使い過ぎる事が多いので勉強になります。

間に挟む木の種類は一任していただきましたので、私の判断でトチ(栃)にさせていただきました。モザイクとの色のバランスを考えて落ち着いた色合いの木ということも在りましたが、何よりも考えたのはこの建て替えられた会館の「地域の方々や県民の方々に開かれた活動をしていく」というコンセプト。そこで選んだ木がトチ(栃)。今までにも何度か紹介させてもらいましたが、トチは大きな葉や実が沢山つくことから、「十(とう)も百も千(せん)も葉や実が付く縁起の良い木」とされています。それで昔は十千と書いてトチと呼んでいました。

そこから十☓千(10×1,000)=万(10,000)で、木偏に万を付けて「栃」になったとされています。多くの実がつくことから縁起の良い木としても知られ、白星を招くという意味でも大相撲のしこ名にも使われるなどしています。より多くの市民・県民に親しまれる建物になってもらえばという思いも込めてトチの木を使わせていただきました。そもそもトチは大きく成長する木ですのでテーブルなどの一枚板としても人気があり、広めの材が得やすいという物理的な理由もあります。誰にも分っていただかくてもいいのです、自分が納得する理由が欲しいだけなのです。

こういう大きなテーブルを作るにあたってはモザイクボードの特徴を最大限に活かせます。今回は長さが2,000で、間に板を挟んだ事でその必要はありませんでしたが、もしもこれがすべてモザイクボードだけで作ったとしても、500幅なり600幅の規格サイズを幅剥ぎすれば問題なくワイドサイズのテーブルが作れます。製造能力の問題で、現場ごとのフルオーダーというのはまだ難しいのですが、幅方向については対応力のある商品だと考えています。そういう事もこういう事例を経験させていただきながら考えるところ。明日はその「見えざる部分」について。




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