森のかけら | 大五木材


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本日は「一枚板を見せていこう!」シリーズ第3段、北海道旭川産の『ミズナラ(水楢)』です。まずはその堂々たる体躯のご紹介。長さ2,400㎜、幅は最大で970㎜、厚みは57㎜。耳付きですが片方の耳には、伐採時にチェーンソーと格闘した向こう傷がガッツリ刻み込まれています。サイズこそ申し分ないのですが、中央部には大きな割れが入っていてテーブルの天板として使うにはかなり寛容な心が求められます。まあそれは普通の材木屋なら手を出さない木でしょうが、弊社では向こう傷は勲章的評価!

事実、このミズナラはもともと4兄弟でしたが他の3兄弟たちはとっくに巣立っていってこれが最後の一枚となっております。他の兄弟たちにもこれと同様に深い割れや傷が刻み込まれていましたが、それを個性と評価していただいた、選んだ木と同様に個性味溢れるお客様がお買い求めいただきました。この一枚が残ったのは割れや傷の深さというのではなく、これだけが他の兄弟と別れて倉庫のかなり奥深くな所に積み込んでしまっていて、なかなか土俵に上がれなかったためです。しかしさすがに古株になってしまったので最近引っ張り出して「化粧直し」を施しました。

実はこのミズナラ、私が30代半ばに仕入れたもので相当の古株なのです。今でこそこういう表面に傷のある「スカーフェイス」の板も個性として受け入れ、むしろそれを武器にするぐらい図太くなりましたが、仕入れた当時はかなり冒険でした。それでも振り返れば若い頃からこういう材を選んで買っていたわけですから、若い頃からキワモノ材木屋の素養はあったのだと思います(笑)。それまでは脈絡も無く樹種を増やすのが目的のように買い漁っていましたが、この頃から仕入れの傾向が固まってきました。

そういう意味でもこの割れ、傷のある「スカーフェイス・オーク」は思いで深い一枚で、ここまで経ったら妥協して買っていただくのではなく惚れ込んで望まれて買っていただきたい。冠名の「スカーファイス」はキューバからアメリカにやってきた青年トニー・モンタの暴力的で破滅的な生涯を油の乗り切ったアル・パチーノが演じた映画です。大学生時代に観て、精神的に不安定で常に危なっかしく刹那的な生き方がとても刺激的でした。映画の嗜好も木の嗜好根っこは同じようなとこにあるようで・・・。




前回、幅1m超えの『イエローポプラ』の一枚板をアップしたところ予想以上に反響がありまして、購入を考えているので他の板も見たいというリクエトまでいただきました。やはりこういうサイズの一枚板は気持ちがたかぶったまま見に行くと勢いで買ってしまいかねないので、落ち着いてよく検討したいという事で、弊社としては手の内を見透かされてしまっているのですが(笑)。いずれにせよしっかり納得してかっていただくのが一番なので、このシリーズはお見せできるビックサイズがある間は続けていくつもりです。

という事で本日ご紹介するのは『トチ(栃)』の耳付きの一枚板。形がなかなか個性的なのが共木で5枚揃っていたのと、サイズ感に惚れてまとめて買ってしまいました。木との出会いも一期一会ですので、見た瞬間にビビッときたものは、後から後悔しないように買うことにしてます。長さは2500㎜、形は極端なテーパーで狭いほうは900㎜前後ですが、広いほうは1200とか1300㎜あります。普通の感覚だと、こんなサイズのテーブル置く部屋なんかないわい!と思われるでしょうがそうでもないのです。

間仕切りの無い大きな空間を作って、そこに大きなテーブルをド~ンと置いて、食事だけでなく家族みんながそこに集まり、お父さんのパソコンからお母さんの裁縫から子どもの勉強から全部大きなテーブルを使ってやりたいという方が多いのです。そういう場合だとこれぐらいのサイズでちょうどいいのです。ただしあまりに高額なものは・・・勿論承知してます!生地が白黄色なので分かりにくいかもしれませんが、よく見ればこの栃には全身に小さな黒い点があります。これは、ピンホールといって小さな虫が穿孔した跡なのです。

更に辺材の白太部分には、腐朽菌によって出来た黒い筋状の模様(スポルテッドも見受けられます。普通の材木屋だと形やサイズはよくても、このコンディションだとスルーするような木なのでしょうが、私にはピンホールもスポルテッドも、この木が懸命に森で生きた履歴書に見えて愛おしくてたまりません!杢が整っていて無節で傷や虫穴ひとつ無い無欠点の『銘木』は、有名ブランドのオシャレな服のようで私などには似合わいもしないしどうにも窮屈で落ち着かない💦。そもそも弊社のような零細材木屋が扱うようなものではありません。

荒材の時には誰にも見向きもされなかった木を、ビシッと仕上げて皆が惚れ惚れすつような家具にして世に出したい。そう、いわばオードリー・ヘップバーンの名作映画「マイ・フェア・レディ(My Fair Lady)」の木材版です!下町生まれの粗野で下品な言葉遣いの花売り娘イライザ(オードリー)をレディに仕立て上げるかどうかをめぐって繰り広げられるロマンティック・コメディですが、この例えってもしかして若い人には伝わらないのかも・・・。まあ何はともあれこの栃の『森の履歴』に共感し、末永く愛でてくれる人との邂逅を気長に待ちます。




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