森のかけら | 大五木材


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今日のかけら番外篇・E045ウダイカンバ/鵜松明樺】 カバノキ科・カバノキ属・広葉樹

昨日に続いて『カバ』の話です。北海道の市場でカバの木の種類の多さを実感して、その後なるべくそれぞれの木の出所についても訊いて仕入れるようになりました。現在【森のかけら】の追加版も企画しているので、もしかしたカバの仲間も少し増えるかもしれません。その候補の1つともいえるのが、この『ウダイカンバ』。日本固有の木で英語名では、『ジャパニーズレッドバーチ(Japanese Red birth)』。樹皮に特徴があってそこに惹かれて買ったのですが、この不思議な名前の由来もそこにあります。

この樹皮がリング状に剥げて火をつけるとよく燃えて、雨が降っても燃えにくいために鵜飼の時の松明(たいまつ)として利用されていたことが、名前の由来とされています。なので漢字では『鵜松明樺』と書いて『ウダイカンバ』と表わします。明るく火を灯すことから『トモシカンバ』の別名もあります。鵜飼といってもあまり実感が無いかもしれませんが、愛媛では夏の風物詩として親しまれています。愛媛県の大洲市肱川流域で行われる大洲の鵜飼は『日本三大鵜飼』のひとつに数えられるほど有名で、私も3,4度経験したことがあります。

 

その際に松明が使われているかどうか(ましてウダイカンバが)は記憶していませんが、こういうつながりが『森の5かけら』の大切な情報になります。松明にしようと思って仕入れたわけではないのですが、材そのものよりもその特徴的な樹皮が面白そうで、このまま何かのディスプレイや装飾などに使えるのではなかろうかという下心で仕入れてみました。とりあえずは乾燥させないといけないので、桟を積んで並べて乾かせていました。それから数か月が経過。夜中倉庫で残業していると闇に中から聞こえてくる不気味な音・・・

カリカリカリ・・・ええ、その正体は分っています。カミキリムシが樹皮を齧っている音です。仕方ないんです、彼らだって生きていかないといけないんですから。いわばこちらが彼らの終の棲家を奪ってきたんですから。それは諦めているのですが、できれば私の耳に入らないところで齧ってほしい。それならばこちらも見て見ぬふりをして自主退去するまで待たないこともないのです。しかし目の前でカリカリされて、木くずのピラミッドをいくつも建立されてしまっては、さすがに見て見ぬふりはできません。

ウダイカンバの個性的な樹皮を何かに使ってもらえないかと思って、これみよがしに倉庫の事務所の入口近くにも数枚立て掛けていましたが、女性スタッフからそこを通るたびに不気味な音が聞こえますと言われてしまっては、こちらとしてもお咎めなしとスルーするわけにもいかず。カリカリの音の響きからすると、自主退去はまだまだ先のようです。こちらとしても、何かに使えるはずだった樹皮を諦めるので、申し訳ないですが強制撤去していただくことに。こうしてウダイカンバの樹皮は焼却炉の灰となってしまったのです(涙)。

 




という事で昨日からの話を受けて、鳥の名前を持つ木、『パートリッジウッドPartridge wood』の話です。パートリッジとはヤマウズラ(山鶉)の事で、由来はその羽の模様を杢に見立てたものだと思われます。ケイトウ(鶏頭)ヒヨドリバナ(鵯花)、サギソウ(鷺草)など鳥の名前が冠せられた草花は結構多いのですが、鳥の名前が付く和名の木というと、カラスザンショウ(烏山椒)ぐらいしか思い浮かびませんでした。俗名や地方での方言名まで探せば個性的なものが見つかりそうではありますが。

樹木ではありませんが、ミヤマウズラ(深山鶉)という花があって、名前の由来はやはりその葉の斑紋がウズラの羽の模様に似ているためだそうです。しかしその印象はパートリッジウッドのそれとは随分違います。それで、よくあるパターンなのですが、同じ生物を示していても日本と海外では全然見た目や雰囲気が違うという事があるので、一応イギリスのヤマウズラで検索してみると・・・ウズラにもいろいろな種類がいるみたいで、これはあまりぬかるみにはまると『今日のかけら』が『今日の鳥』になってしまいそうなのでこのあたりで止めておきます。

いずれにしろウズラの羽が鮮やかで野趣溢れた美しさを持っているという感覚は洋の東西を問わないということは分かりました。蛇足ながらウズラといえば、私は蕎麦屋でザルソバ一緒に出てくる小さな卵を思い浮かべるのですが、最近蕎麦屋でそのウズラの卵を見かけなくなりました。あの小さな卵がうまく割れなくて殻がツユに入ったりして面倒だったのですが、無くなると妙に寂しい。それでちょっと気になって調べてみたら、ざるそばにウズラの卵がつくのは関西の文化らしく、関東ではつかないとの事。知りませんでした💦

なぜザルソバにウズラの卵がつかなくなったかというと、その生産農家が激減しているという話があるようです。これも調べて初めて知ったのですが、ウズラ卵の全国のシェアの約70%を占めているのが愛知県で、更にその85%を占めているのが豊橋市。かつて60件もあったその豊橋のウズラ農家が7戸にまで激減。飼料価格や物流費が高騰して経営を圧迫。ウズラは小さな体で卵を産むため、高タンパク高カロリーの高価な飼料が必要という事で、原料費の高騰は死活問題なのだそうです。更に後継者問題等もあり環境はかなり厳しいとのこと。

普通の卵に比べるとウズラの卵は嗜好性が強いので、高くなると途端に入れなくなるので価格転嫁が思うように進まないという事、小さな農家では大きな食品加工会社に対する交渉力が無い、供給不足が発生したとしても海外から安価な輸入卵が入って来て価格競争に勝てないなどなど、とても他人事とは思えません。それらの背景もあって蕎麦屋ではウズラの卵を出さなくなってしまったのかも。これは見捨ててはおけない。蕎麦屋が出さぬなら我が家ではウズラの卵を使おう!木も一緒だけどマニアックな嗜好性を育てるって大事。

 




木と虫」の話で書き足りなかった事をもう少し。先住者である虫に申し訳ないという思いを馳せながらも、現実には非常に残酷で非道な「強制退去」してもらっているわけで、いくら言葉を操ってもやっていることは言い訳の出来ない鬼の所業です。そこからは鬼側の論点ですが、住居から叩き出された虫たちはやがて力尽きて死んでしまう。ならばこいつらも無駄死にするよりは役に立つ方がよかろう(あくまで鬼視点💦)と、鳥たちの目につきやすそうな所に移動させておきます。それを見つけた鳥たちは虫を加えて巣へと運んでいくのです。これぞ命の循環

もうそれならいっそうのこと、うちの土場にキツツキ(啄木鳥)がやって来て、中に虫が潜んでいそうな樹皮の分厚い耳付きの木を探して、木をつついて中の虫を捕まくれないかしら(あ、言っちゃった💦)と思ったりもします。まあとにかく人間はじめ木に命を委ねている生き物は多くいますので、それなりの覚悟を持って付き合わねばならないという事です。さて話は変わりますが、3年前に『適材適所』に木と鳥の話を書いた時には、まだ実例がなくて書けなかった「鳥の名前を持つ木」がありますが、それがこちらの中南米産のマメ科の広葉樹『アンゲリン』です。

『アンゲリン』については、数年前にブログでも取り上げましたが、市場では『ダリナ』という名前で流通していて、自分でいろいろ調べてアンゲリンに辿り着きました。しかし誰かのお墨付きをもらったわけではないので間違っているのかもしれませんが、特徴は合致しているように思います。合ってるという前提で話すならば、この木はイギリスでは、Partridge wood(パートリッジ・ウッド)と呼ばれています。パートリッジとはヤマウズラ(山鶉)のこと。、私の推測だと名前の由来は鶉の複雑で美しい羽に似た木目からきているのではなかろうかと考えています。

荒材の時にはよく分かりませんでしたが、削ってオイルを塗ってやるとまさにウズラの羽のような雅趣溢れた木目が顔を現わします。世界中のいろいろな木が見たい、触りたい、知りたい私はことあるごとにニューフェイスの木を仕入れてきますが、愛媛の人は保守的な人が多くて、実例の少ない木や新しい材には進んで手を出したりしません。しかし、偏屈、変態性を売りにすること10数年、ようやく周辺の同類の嗜好を持つ方々がお集まりいただくようになり、キワモノや初物が歓迎され受け入れていただくようになってきました!変態性の循環。社会は多様な人間で出来ている

 




この数日間、木と鳥の話を書いてきましたのでその関連でもうひとつふたつ。木と鳥が絡む話、何か他にないかなあと思っていたら、そういえば数年前にも同じお題で悩んでいた事を思い出しました。そう思ってブログを検索したみたのですが見当たりませんでした。しかし確かに書いた覚えがあると思って記憶の糸を探っていたら、書いたのは『適材適所』の方でした。平成28年の鳥年に「鳥(酉)と木にまつわる話」というタイトルで定番のバーズアイメープル孔雀杢などの話を書いていました。早いものであれからもう3年・・・

他にも「キツツキ(啄木鳥)」の事にも触れていましたが、キツツキは鋭いクチバシで木の幹を叩いて穴を開けて虫を捕食します。動画ではその様子を見たことはあるのですが、実際にキツツキが木に穴を開けている姿やその音を聴いたことはありません。森の中に入れば、風の音や、枝が擦れ合おう音、動物たちの鳴き声など様々な音に溢れているので、もしかしたらキツツキの音も耳には入っているものの、それがそうなのだと気づいていたないだけなのかもしれませんが。キツツキは木を叩いて音の微妙な違いで中が空洞かどうかを見極めて虫を捕食しているそうです。

最近、丸太のままで愛媛産の広葉樹を仕入れる機会も増えてきたのですが、それに伴い丸太の中に住む「住人たち」と邂逅する機会も急激に増えています。耳付き板を得ようとすれば、硬い樹皮の裏の軟らかくて美味しい(だろう)部分をねぐらとする彼らと衝突するのは必然。むしろ穏やかに暮らしていた先住者の彼らにとって、後からやって来て住処を勝手に切り倒してねぐらを奪い追い出し抹殺させてしまう我々人間の行為は侵略そのもの。いつも申し訳ないという気持ちはあるのですが、こちらも家族を養わなければならない身。心を鬼にして彼らの正当性に耳を塞ぐしかない。

虫に限らず、鳥たちの終の棲家でもあったかもしれないわけで、木を伐るという事、木をなりわいにするという事は、罪深いことだとは自覚しています。だからこそ彼らから奪った木は、最後の最後まで決して無駄にすることなく有効に使わねばならないし、そうすることが自分にとっての免罪符なんですが、そんな事も彼らにとってはどうでもいい話なんでしょう。それを言い出したらそもそも生きている素材・木そのものの言い分はってことになりだしてしまうのですが・・・でもそんな事も日々考えるような材木屋でありたいです。

 




名作『』は、ダフニ・デュ・モーリエの原作を元にアルフレッド・ヒッチコックがメガホンを撮った動物パニック映画ですが、もしこれからこの映画を観るという人は、どこかで観たことがあると思うようなシーンやシチュエーションがいくつも登場すると思います。それらはすべてこの作品が元ネタとなっているのです。何の理由もなくある日突然、鳥たちが一斉に人間を襲い始めたり、ジャングルジムに無数にたかるカラスの黒い群れといった構図など、もはや紋切り型と呼ばれるほどに使いまわされていますがすべてここが原点なのです。

私がめてこの映画を観たのは小学生の頃でしたが、その時の衝撃は今でも忘れられません。ちょうどこの作品のヒットで、動物パニック映画が雨後の筍のようにバンバン製作された時期で、A級B級含めテレビでもよくその手の作品が放送されてよく観ていましたが、蜂やら蟻やらワニ、蛇、トカゲ、サメ、熊などなど。秘密実験で巨大化、狂暴化したり、アマゾンの奥地であったり、軍の秘密基地の近くであったりと、シチエーションが特別だったのですが、『鳥』はどこでも誰にでも起こりそうな話だったので、明日でもわが身に降りかかりそうな恐怖感が半端ではありませんでした。

ストーリーはいたってシンプルで、突然鳥が人を襲うというものですが、結局その理由は分からないというところが不気味なのです。普通ならば、製作サイドから理由が無くては観客が納得しないとNGが出されるところでしょうが、サスペンスの神様と呼ばれたヒッチコックは、切れ味抜群の演出で最後までひと時も飽きさせることはありません。テレビの放送時には『ヒッチコックの鳥』とその名前が冠せられるほどに、ヒッチコックといえば信頼のブランドだったのです。そんなヒッチコックが大好きな熱狂的なマニアの事を『ヒッチコキアン』と呼んでいました。

今では古典的名作で、その演出方法は映画の教科書にもなるほどで、映画関係者の中にもヒッチコキアンはいて、ブライアン・デ・パルマ監督や大林宣彦監督などはヒッチコキアンであることを自称しています。私はそこまで傾倒していないものの『裏窓』や『サイコ』、『北北西に進路を取れ』、『ダイヤルMを廻せ!』、『間違えられた男』、『ハリーの災難』などタイトルを聞くだけで印象深い場面が浮かんできます。映画に限らず小説や歌謡曲でも昔の作品を知らない(観ていない、読んでいない、聴いていない)若い人が増えていて、木の物語を語る際に引用するのにもひと苦労です。こちらが最新流行に疎いというのも問題だとは思うのですが、さまざまな分野の古典も知っておくと世界観がぐっと広がると思うのです。CGの無い時代にどうやって工夫したか、ひとの想像力は無限。

 




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