森のかけら | 大五木材


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私が大五木材の社長に就任した事務所の前に植えた平成20年に事務所の前に植えた『トチ(栃)』が落葉するようになると冬の訪れが近いことを教えてくれます。いまだに実はつきませんが、幹は年々大きくなって隣の差し掛けの屋根を追い越すぐらい上にも伸びました。実はなりませんが、名前の由来ともなったように『百も千もほどの葉』がたわわに繁って、それなりの大きさに成長してきました。いずれは、あの道路沿いに生えている大きなトチの木があるところです、なんてシンボルツリーになったりしないかなと淡い期待も。

トチの葉は大きなものになると大人の顔が隠れるほどのボリューム感があるのですが、この時期になるとその大きな葉が毎日ハラハラと落葉してくるわけです。すぐに落葉する諦めの早い奴もいれば、12月終盤ぐらいまで粘る根性ある奴もいて、落葉の掃除は長期戦となります。これが何かの商品に生まれ変わる錬金術があればいいのに・・・ということを毎年この頃に書いている気がします(笑)。今のところまだ雨が少ないので、道路にペッタリ貼りついたトチの葉を剥がすまでには至っていませんが、今朝の雨はやばそう・・・

ウチのトチに実がならない愚痴も毎年のように書いていますが、とあるスーパーでパッケージに魅せられて買ってしまったのがこちらの『とち餅』。もし実がなってもとち餅は作るのが両面倒くさいので無精者の私は絶対作らないと思うのですが・・・。ブログのネタとして一度はチャンレンジしてみるかもしれません。ご存知の方も多いとは思いますが、トチの実はアク抜きしないと食べられないのですがそれが非常に手間と時間がかかる作業なのです。収穫した実を2~3日水に浸してからカラカラになるまでおよそ一か月ほど天日干し。

それからやっと皮を剥くわけですがその方法は地域によってやり方がいろいろあるようです。まれでどうにかあく抜きが出来てここからようやく栃餅づくり。餅米とアク抜きした栃の実をそれぞれを一晩水に漬けておき、よく洗って餅米と一緒に蒸す。蒸しあがったら搗(つ)いてやっと完成。この食べ方に辿り着くまでにどれほどのトライ&エラーが繰り返されたことか!アクそのものは毒ではありませんが、サポニン、アロイン、タンニンなどが含まれてそのまま食べると口の中が痺れるそうです。




材質が非常に安定していて狂いや収縮が少なくて軽軟なことから、日本では昔から『イチイ(一位』の木が鉛筆の軸木に使われてきました。戦後は海外からの輸入材にその座を奪われ、その後は主に彫刻材や床廻りの装飾材、お盆や菓子皿などの器などに利用されてきました。市場に出てくる事は多くはありませんが、もともと枝が多い木なので節が多く、節をよけるというよりも節を活かした使い道、『出口』を考える方がイチイの木をうまく生かせそうだと思っています

イチイはアララギとかオンコ、アカギ、キャラボク、シャクシノキ、シャクギ、スオウ、など異名の多い木としても知られていますが、私の認識では木材業界で材としてみなす場合は主に『イチイ、明治時代に伊藤左千夫の手によって作られた短歌結社誌に冠されたように文学的に使われる場合は『アララギ』、染料として名高い蘇芳(すほう)に準じた染料として使われる場合は『スオウと呼び分けられていると思っています。

聖徳太子が持っている笏(しゃく)としても知られるイチイは、仁徳天皇がこの木で笏を作らせ正一位の位を授けたのが名前の由来であるというエピソードや漢名の『一位』とも相まって、非常に由緒正しい縁起がいい木として歓迎されますが、欧米では悪役とされていて印象は決してよくありません。ローマ神話の中ではイチイの木陰で眠ると死ぬとか、古代ギリシャでは死のシンボルとまでされています。ここでいうイチイは日本のイチイTaxus cuspidata)近縁のパシフィックユー(Taxas brevifolia)の事だと思います。

伊藤左千夫たちがどういう思いでタイトルに冠したのかは知りませんが、イチイの花言葉は『悲嘆』であり、欧米の文学界でもその扱いはダークなイメージ。とりわけその印象を悪くしているのはシェークスピアだと思います。リア王では王の耳にイチイの毒を注ぎ込んで毒殺しますし、マクベスの中では魔女が地獄の悪霊たちに飲ませる鍋の中に、ヒキガエル、コウモリ、ヘビ、イモリの目玉、犬の舌、トカゲの足などとともに墓地に生えていたイチイの小枝を投げ入れます!

鍋の中に投入される「具材」はこの他にもフクロウの翼、竜のうろこ、オオカミの牙、貪欲なサメの胃、魔女のミイラ、毒ニンジンの根、ヤビの胆嚢、ユダヤ人の肝臓、死んだ赤んぼうの指があるのですがさすがにグロい!こんなメンバーの中に加えられるのですからどれだけイチイが忌み嫌われているかが分かると思います。しかい一方では死と生は二元性があり死を司る木として協会に植えられたり、西洋医学ではガンの治療薬としても利用されてきた側面もあります。明日は打って変わって美味しいイチイの話。




昨日のブログで書いたように、弊社の特徴は多樹種少量の在庫があること。それぞれの樹種はわずかしかありませんが、とにかく種類だけはやたらとあります。なので特定樹種だけで造作から柱、カウンター、家具まで何もかも統一して揃えて欲しいと言われると対応が難しいのですが、いろいろなところにいろいろな木を少しずつ使いたいというリクエストはお手のもの。そんな感じに多樹種を用途に合わせて使いわける提案というのが弊社の雄一のストロングポイント。先日、まさにそれを地で行く現場がありこのたび無事に竣工されました。

松山市の旧北条市にある農産物用や雑貨用を中心とした軟包装資材のコンバーター企業のオフィスですが、オーナーが木が大好きという事で沢山の木を取り入れていただきました。施工は、センス溢れる商業店舗を手掛ける『すずかけ商会』さん。担当の犬伏君とは何度も入念な打ち合わせを繰り返し、あれでもないこれでもないと悩んで用途に合わせて樹種をピックアップ。最初、企業事務所と聞いていたので、ペンキ塗りの枠材ぐらいだろうと勝手に思い込んでいたのですが図面を見てビックリ!

その象徴ともいえるのが、2階のこの4m超のアフリカ産のパドックの耳付カウンター。弊社のとっておきの6m超えのバリバリに乾いたパドックのパドックを大胆にカットして使っていただきました。壁は石貼りで、どこかのオシャレなカフェかと見まがうばかり!長いカウンターが要るのって商業店舗ぐらいで、話もそんなに多いわけではないのですが、いざ話があった時には納期や乾燥も含めて在庫がないとどうにもならない。今回も在庫あったからこそ対応出来たのですが、無理に長さを切ったのではなくて、元の方だけが極端に膨らんでいたので、ちょうどそこでカットして有効めいいっぱいに使っていただき一切に無駄が出ていません。こういう使い方していただくと長年在庫していた「前の持ち主」としても非常に嬉しいのです。

ストリップ階段には、堅牢なヒッコリーを使っていただきました。多少の節や入皮はあるものの幅剥ぎせずにすべて一枚板の段板です。ヒッコリーはクルミ科なんですが、軽軟なクルミの仲間とは思えないほど重硬で、ストリップの階段など強度が求められる用途にはまさにうってつけな素材といえます。弊社ではあえて節や入皮があり、白太も含んだ板目・柾目込みの表情豊かなラスティックグレードのヒッコリーを仕入れています。ヒッコリーのような木はこれぐらいの荒々しい杢が出たり、白太が混ざってワイルドな雰囲気がある方が魅力が発揮される木だと思います。最近では日本への輸入量が少ないみたいで、しばらくの間弊社でも在庫を切らしていましたが、入荷してからはその癖の強い個性が人気となっています。

一方で室内の装飾のルーバーはスッキリ見せるために、節が少なくて年輪の詰まったロシア産のオウシュウアカマツを使っています。全部で100本以上使ってもらったのですが、これでほぼ弊社の在庫ゼロ。造作などに使える無節のオウシュウアカマツの平板も以前はよく入ってきていましたが、昨今はこちらも入荷が乏しく、さて次の現場に備えて何かしら集めておかないと。このほかにも枠材にはヒノキ、玄関カウンターにはダイオウショウ(大王松)、手洗いカウンターにはグランドファー(米樅)など用途に合わせて使い分けてもらいました。こういう現場が一番オモシロイのですが、こちらも手持ちのカードも種類こそあれ枚数が少ないので、量の見極めが重要で必要量と在庫量とのギリギリの駆け引き!そのスリル感にアドレナリン出まくりです!




グラインダーで表面を削って凸凹にして軽くサンダーで磨いたメタセコイアの一枚板の上に寝そべってみると、これが想像していた以上に気持ちがいい!粗目でスギのようにやわらかい質感とグラインダーによる凸凹感が相まってなんともいえない心地よさ。幅が650ほどある一枚板なので大人ひとり用の小ぶりなベッドとしては十分な大きさです。まさかメタセコイアアをそのままベッドに使おうなんて思いもつきませんでしたが、これは意外な出口になるかもしれません。

やわらかいという材質をついついネガティブに捉えがちなのですが、そのまままるごとベッドという使い方は目から鱗が落ちる思いでした。日頃からそれぞれの木の出口を考えるなんて偉そうなことを言っているくせに、私の思考が凝り固まっていて、過去の実績の枠を出られないでいたことを強く反省させられました。完成したのちに再び勇者来店。実際に寝てみて触感を確かめられてご満足の勇者。今までいろいろなお客様がご来店されましたが、いろいろな木に寝てみて感覚を確かめられる方は初めて!

これでOKとなったのですが、私としてはこれにもう一手加えて塗装までしたい。汚れを保護する意味があるのと、メザラザラした触感を特に好まれていたので、オイルを塗ることで針葉樹のメタセコイアは多少毛羽立ちます。それをサンダーで磨いて軽く押さえることで一層触感が増すという狙い。またメタセコイアの赤白の色のコントラストを鮮明にして、本来の木の色合いを堪能していただきたいという思い。それを勇者に伝えて目の前で実践したところ、色調の変化に更に驚き喜んでいただきました。

個体差もあると思うのですが、オイルを塗ると赤身部分はスギよりも濃い赤茶系に反応します。今回はグラインダーで削って意識的に凹凸をつけているので、カメラで撮ると見た目以上に陰影が出ていますが、スギとの違いが際立ちます。こうしてメタセコイアはまるごとベッドになって巣立っていきました。まあこれをベッドにしようと思う人が多いとは思えませんが、今まで欠点とすら思えたやわらかさも考え方次第で武器になる事を実感させられ、今後の出口方針の新たな指針となりました。




以前に『都市林業』で手に入れたイヌマキ(犬槙)。地元の民家の庭に植えられていたもので、それほど大きなサイズではありませんでしたが、表面の凸凹が特徴的だったので、丸太を半分に割って皮を剥き剥きしました。伐採直後だったので面白いようにツルンと剥けるものですから、楽しくなって次々に剥いていたら結局全部剥いてしまいました。樹皮の下から小さくて鋭利な棘が沢山現れてなんともいえない趣きがあって独り悦に入っていました。他人がどう思うかではなく私がいかに楽しむか(笑)。

それが1年半ぐらい前の話で、イヌマキもすっかり乾いて軽くなりましたが相変わらずあれからずっと棚の中。オブジェとかにでも使っていただけるもの好きでも現れないかと思っていたら、遂にもの好き登場!船の模型を飾りたいので、海の波に見立てた木を探されているというお方。実際に模型を見せてもらったのですが、ご自分が所有されている船を友人が手作りしてくれたというものですが、これが緻密で精巧な出来栄えでディティールまで忠実に再現されています。

なるほどこれだけのクオリティであれば、波を模して飾りたくなる気持ちも分かります。という事で、それから小一時間ほど「雰囲気のある波の木」探しが始まりました。耳付きの板やら流木のような木、小枝の丸太、いろいろ出しては並べてみるもどれもなかなかシックリいかず。その中で波っぽさがあったのが、皮剥きのイヌマキ。端の薄いところでしたが凸凹感が面白かったので丁寧に剥いていたもの。船を置いてみると、荒れる波を乗り越えて走航しているかのような趣き。

今まで海とか波という見立てはしていませんでしたが、こうやって船を飾れば、今まで見えていなかった海感・波感が出現!飾られる船に相当引っ張られていますが、それまで迷走していたイヌマキに舞台背景としての役目を与えていただきました。見方によっては波のようにも海底のようにも見えますが、すっかり日も落ちて携帯のライトで照らせば更に雰囲気が高まったとご満悦の我々。この後、大工さんの手により微妙な調整がなされることになるのですが、イヌマキはこうして濤(なみ)になりました。




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