森のかけら | 大五木材


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以前にこのブログで書きましたが、弊社のある場所が「宮内伊予柑発祥の地」ということで、会社の周辺では柑橘の栽培が盛んです。そのお陰で、ミカンをはじめ剪定したいろいろな果樹の樹を分けていただいています。時には果実のなりが悪くなって根元から伐採した大物が手に入ることもあって、これぞまさに地の利!先日も近所の農家の方から声がかかり、スモモ(李)の大きめの幹を分けていただきました。直径およそ300㎜オーバー、二股に分かれていたり、伐採の理由となった腐りはあるものの、使いどころはたっぷりあります!

スモモの中でも『大石早生』という種類で、以前にも別の農家の方から『大石早生』と『サンタローザ』を分けていただきました。その時のスモモがつい最近やっと【森のかけら】として世にデビューしたばかり。建築用材と違ってこれらの木は人工乾燥機に入れるわけにはいきませんので(木が小さくて曲がりくねっているので、急激に乾燥させると暴れたり割れたりして使い物にならなくなる)、時間をかけてジワジワと天乾させるしかないので、モノになるのは相当の時間が必要になります。なのでこのスモモも世に出るのは数年後。

農家の方から伐採したから取りにおいでとお声をかけていただいたものの、仕事が忙しくて4,5日の間取りに行くことが出来なかったのですが、そしたらその間に伐採したスモモの幹に花が咲いていました!通常であればそのまま置いておくと芯割れが進むのでさっさと割るのですが、樹木としてはその生を終えるはずの幹の枝からいじらしく咲いたスモモの花を見ていると、さすがに花もろとも製材する気にはならず、しばらくの間放置することに。端材まで細かく仕分けしていると金の亡者のように思われますが、私とて人の子。

ささやかな一輪の花に震える心も持ち合わせているのです(笑)。その一方で、スモモの精霊がその様子を見ていて、「心優しき材木屋よ。その花を救ったお前の優しさに免じて、果実種の幹をお前に授けよう!」なんて事が起きないかなあと、腹黒い事も妄想していたりしているのですが、そのせいかどうか、昔に一度だけたまたま手に入ったので、バリエーションのひとつとして【森のかけら】に加えてみたものの、一時は欠品後に入手する方法すら分からず困っていた果実種ですが、いつの間にか自然に集まってくるように・・・




先日、塗装後乾燥中のズラリと並んだ【森のかけら】の姿をお見せしましたが、その中でも異彩を放つのがカキスモモの並びではないでしょうか。私の大のお気に入りでもあります。向かって左の、白いかけらに墨汁が飛び散ったように見えるのがカキ。左側の赤白の年輪がハッキリしているのがスモモ。いわゆる『フルーツウッド』ですが、いずれもこの近くの山から産されたもの。カキは、黒い染みが見えるものの、銘木の誉れ高い『クロガキ』というわけではありません。大小の黒染みはよくあります。

これが全身に現れると、別名『墨流し』とも呼ばれる高級銘木となるわけです。実はそのメカニズムは完全に解読されているわけではないものの、およそ以下のようなもの。鉄分を多く含んだ土地に生育するカキは、成長とともに導管に鉄分が溜まり、それがカキ内部のタンニンという成分と反応して黒い模様となる。そういう状態になったものの中でもとりわけ模様の美しいものをクロガキと呼んで珍重するわけで、カキと別の種類があるというわけではないのです。あくまでもカキの極上ものの意。

弊社ではそんな高級銘木とは縁遠いのですが、手持ちの中ではもっともクロが出たのがこちら。ただし虫穴も多く、かなり喰われてしまっているものの、それを差し引いても水墨画のような美しさは惚れ惚れします。そもそもカキやスモモ、ナシなど甘い果実がなる木は材の食害も半端ではなく、大抵どこかは喰われているもの。そんな食害を潜り抜けたごく一部が高級銘木として取引されるのでしょうが、私自身はそれほど高級銘木に対して愛着はありません。これら脛に傷のあるような木に惹かれます。

一方のスモモは、近所の柑橘生産農家の方から分けていただいたものです。かなりの量をいただいたので、【森のかけら】で当面はスモモで困ることはありません。ただしスモモ低木でねじれたり枝が多いので、丸太の量から想定するほど良質の材は多くは得られません。かけらサイズ以外のモノの出口も試案中です。何か作ろうにもまずは素材ですが、フルーツウッドの素材もほぼ乾燥が出来たので、今年こそは「フルーツウッド版森のりんご、森のこだま」に着手します。遂に禁断のリンゴのりんご!




昨日はナシはナシでも山梨県の話でしたが、そもそもという言葉の語源については諸説あるものの、その果実を切ると果肉が白いことから「中が白い」→「中白(なかしろ)」が転化してナシになったというのが有力とされています。他にも中身が白くて「色がない」→ナシ説や、風があると実のつきが悪いことから「風無し」→ナシ説、また江戸時代の学者・新井白石によると中心部ほど酸味が強いことから「中酸(なす)」からナシになったという説もあるようですが、いずれもナシの見た目や味に根拠があるようです。

梨といえば思い起こされるのは、梨園という言葉。歌舞伎界を指す言葉として知られていますが、もともとは演劇界を指す言葉。唐の玄宗皇帝は、音楽や舞踏の愛好家で、宮中の梨園に指定や宮女を集めて舞楽などを教えていたため、そこで音楽や舞踏を学ぶ者のことを「梨園の弟子」と呼んでいました。それが転じて演劇界の事を指すようになったのですが、日本では歌舞伎が生まれたころから梨園という言葉を使っていたため、『歌舞伎界=梨』という言葉が定着したということのようです。

さて、そんな梨ですが、材としてのナシを見たことのある人は多くないと思われます。普通の材木屋にはまず置いていません。フルーツウッドを愛するビーバー隊にとっては、こういうマニアックな材を活かして世に出して人々にその魅力を知らしめることこそが使命なのであります。ナシは材質が緻密で驚くほど滑らかです。だだ大きな材が得にくいため、どうしてもスプーンや木の器などの小物としてしか利用されることがないので、材としての知名度は他のフルーツウッドと比べてもかなり低いのが実情。

フルーツウッドに関しては私自身もまだまだ経験が浅く、加工手段や乾燥方法なども試行錯誤で、まだまだ出口にまで辿り着けていませんが、もしナシがヤマザクラなどと同じくらいの供給力あらば、もっと陽の当たるステージに立てていたはず。ナシやリンゴ、ミカンなど甘い果実のつく材は、虫の害を受けやすく、乾燥とともに材面が褐色にくすんでいくので、伐り旬や乾燥、加工にも独特のノウハウが必要です。今まで材の確保に苦心していましたが、どうやらこれでその心配もなくなったようです。

一層、ナシの出口開発に力を入れたいと思います。ナシに力を入れる理由のひとつに、その名前ゆえにナシが言われなき汚名を着せられている事があります。それはナシが無しに通じるということから、忌み嫌われ「有りの実」などと反語で呼ばれたり、縁起が悪いからと庭などに植えるのを避けられてきたこと。そんな汚名を晴らすべく、ビーバー隊としてナシの素敵な出口を見つけたい、見つけなければならない!決してその決意が『妄想話』→『妄想は無し(梨)』なんてことに終わらぬように!




しばらく間が空きましたが気を取り直して、ビーバーハウス紀行の続き。ビーバーハウスの製材土場にはいろいろな木がところ狭しと置いてあって、木の丸太の写真を撮るには絶好の機会!製材機を持たない弊社の場合、板になってやって来ることが多くて、板の材面や加工後の写真はいくらでも撮れるものの、その前の姿・丸太の状態や樹皮の様子などをカメラに収める機会が少ないため、こういう場面に出くわすと一気にテンションが上がってしまうのです。次のターゲットは『ヤマナシ(山梨)』の丸太。

4年ほど前に家族で岡山に遊びに行ったときに、町の天然記念物である推定樹齢500年生のヤマナシ(山梨)の木に出会った話をアップしました。普段よく口にするナシですが、材としてのナシに遭遇する機会はなかなか無くて、【森のかけら】でもしばしば欠品する木のひとつです。ナシについては、食用として品種改良が進み、有名なところでは二十世紀や長十郎など多くの品種がありますが、【森のかけら】ではあまり細かな分類はせずに、食用に栽培しているものと山に自生するもの含めて『ナシ』とさせてもらってます。

実際に製材・加工してみると栽培されたものと自生しているものでは、色合いなどに違いが見られるものの、供給が安定しないこともあって、とりあえあず外国産の『西洋梨/ラ・フランス』とは区別しています。弊社の近くは愛媛でも有名な柑橘栽培の産地なのですが、ナシは少なくて稀に剪定するという話をいただくものの、思っていた以上に入手しにくく材の確保には苦労しています。中四国では鳥取県の二十世紀が有名で、その栽培面積は全国1位で、全国の収穫量でみても約8%を占めて第5位です。

日本梨の収穫量でみると、千葉、茨木、栃木などの関東地方が上位を占めているようです。ちなみにビーバー隊長のところにあった梨は三重県産で、三重は全国で20位前後の収穫量があるようです。そこで気になるのが梨の名前を冠する『山梨県』の事。県名の由来は、ヤマナシが沢山採れていたことのようですが、不思議と現在では梨の産地というわけでもない。奈良時代には既に「山梨郡」という地名もあったようです。その説植物以外にも、山の無い平らな土地が多かったという「山無し」説もあるようです。

いずれにしても県木もカエデ、県花もフジザクラでどうも梨の影が薄い。調べてみると、山梨県下の市町でもナシを市木、町木に指定しているところは無いようで、収穫高も全国40位前後と愛媛よりも下位。折角県名に木の名前を冠していながらも、それを活かしていないのは勿体ない話のように思いますが、振り返ればわが松山市も同じことか・・・。中にいると普段は気にしていない事も外から見れば冷静にいろいろ見えてくるのはいずこも同じ。明日はもう少し木としてもナシについて。




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