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そう、『サルノコシカケ』!実際に現物を見たことが無い人でもその存在を知らない人はほとんどいないでしょう。実際にそこでサルが腰かけることもあるようですが(!)、誰が名づけたかウイットに溢れ、惚れ惚れするような素晴らしいネーミングです!このサルノコシカケに関わらず、先人たちがお付けになられた植物の名前というのは、長い年月の間をかけて多くの人の口を通して『濾過』され『精製』され、余計なものを削ぎ落とし、シンプルで分かりやすく『成長』すると思います。
個人的には、地獄の釜の蓋(ジゴクノカマノフタ)、キツネノカミソリ、サルスベリ、龍舌蘭(リュウゼツラン)、サルトリイバラ 、狐茄子㊧(キツネナス)などなど。数あるユニークな植物名の中でも、やはりサルノコシカケは言葉から浮かぶ画の面白さといい、言葉の響きといい秀逸です。このサルノコシカケとは、きのこの一種で枯れた木や、倒木などに発生したりします。今まで気にしたこともなかったのですが、サクラやウメ、ブナ、クヌギなどによく出来るとか。
サルノコシカケにもいろいろな種類があるそうですが、漢方では『霊芝』とも呼ばれ、万病に効果のある最高の上薬ともされています。整備されていない田舎の林道を歩くとよく見かけていましたがあまり興味もなく見過ごしてきました。それが昨年の春に帰省した時に、森で見つけたサルスベリは結構な大きさで形もよかったので収穫する事にしました。なるべく形を壊さないように慎重に慎重に切り離します。かなりしっかりくっついていて、そう簡単には剥がれません。
そしてどうにか綺麗に取り外せました。漢方薬にでも使おうなどと思って採集したわけではないのですが、木の事をいろいろお話する時に写真よりも実物が今そこにある説得力は桁違いですから、森の話のツールとさせていただきます。サルノコシカケだけにとどまらず、本当はいろいろな種類のどんぐりや樹皮だって現物を見て、触っていただきたいし、木材だって『森のかけら』だけでなく実物に触れてもらうのがいいのだけれども、いちいち民族大移動みたいな事になるので・・・
とりあえずみんなに触ってもらってもいいように、小ぎれいに水洗いしたのが誤りのもと・・・純白のように真っ白だった裏面(表面?)を軽くこすっただけだったのに無数の傷がついてしまい、一瞬で傷跡が黒ずんでしまいました。嗚呼、サルノコシカケがこれほどデリケートでナイーブだったとは思いませんでした!今までこれほど新鮮なものに触れたことがなかったのですが、自ら手を汚して『森のめぐみ』を享受せねば分からないことだらけ。書に頼らず森に行かねば!
この2日間、森についての厳しい現実に触れましたが、一方で森は潤沢なめぐみも与えてくれます。建築・家具資材としての『材』としてもさることながら、我々の口に入る『食料』としても、人類とは永いお付き合いです。ちょうど実りの秋を迎えようとする森からは、そのめぐみの断片があちこちに。相続した山は杉・桧林ですが、そこに行くまでの山々にはクヌギやナラ、クリなどの広葉樹が自生していて、道路のあちこちにタイヤで踏みつぶされた残骸が・・・。うう、モッタイナイ・・・。
初めて自分の山に行ったのですが、そこに辿りつく道中もかなり狭小かつ複雑で、あまりの細道ゆえGPSも機能を果たせず。私、相当の方向音痴でして、何度来た道でも迷ってしまうぐらいなのに、初めて山道などとなるとさっぱり。いくら地図とGPSがあるとはいえ、独りで来たのは無謀だったかと思ってウロウロしていると、たまたま通りかかった親切な地元の方が近くまで案内していただきました。人の優しさが心に染みます。目指す山はこの流れの先。ここを越えて行かねばなりません!
こういう障壁があると、小さな密林探検隊の気分。この辺りは水も綺麗で、近くではアマゴの養殖もされていました。折角ですので、お昼は『川のめぐみ』アマゴの塩焼きをいただきました。思わず日本酒を頼みたくなる味わい。よく『森が海を作る』といいますが、。その源流たる川の源流に近づくと、森と川が混然一体になっていて、川の流れは母なる森の中に溶け込んでいる事が実感できます。そういう意味では、このアマゴも『森のめぐみ』です。キッチリと頭から丸かぶりで、程好い苦味とめぐみをしかと受け止めました。
麓では『クヌギ』の原木に種菌を植え付けた椎茸のホダ木が、整然と互い違いに並べて立て掛けられています。かつては原木椎茸が主流でしたが、最近では「菌床栽培」も多くなってきました。私にとっては子供の頃から見慣れた光景ですが、原木椎茸のの場合、最低でも2年ぐらい経たないと収穫は出来ません。また、あまり大きな原木だとホダ木としては不適だそうで森との契約履行も楽ではありません。紅葉にはまだ少し早いものの、頬を打つ風に確実に山頂からその気配が降りてきているのを感じました。
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