森のかけら | 大五木材


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これもたまたま兵庫県ですが、数年前に明石市の住空間設計Labo渡辺喜夫社長と一緒に『誕生木・12の樹の物語』を作った際にも、これからのモノづくりは即物的なモノだけでなく、エッセンスとしての物語が大事だと話し合いました。家やら木、家具やらと目に見えるものを作って来たふたりが、目には見えないけれど言葉の中や頭や心の中にあって、いろいろな事象に味付けできて、姿かたちを自由自在に変えながら存在できる物語(ストーリー)の骨格づくりに取り組みました

それまで形の無いものを売るなんて考えてみたことも無かった、という事は無くて、肩に跡が残るような重たい木材を運びながらも、いつかは木の話を本にして、こうやって木を売るのとは別のステージで木を売ってみたいとはずっと考えていました。そのひとつがこのブログであり、ライフワークと決めている『今日のかけら』をいつの日にか本にまとめたいと考えています。話が少しずれましたが、材木屋だからと言って目に見える木だけを売るのが仕事ではないと考えています

親父が生きていたら、きっと「何の戯言を言っているのか!」と怒られたというより呆れられたと思いますが、私がこの業界に入って約30年。材木屋の仕事は劇的に変化していますし、恐らくあと数年でこのままの業態としての材木屋は必要とされなくなると思います。そういう中で木が好きで多ならない材木馬鹿野郎達はどうやって生き残っていくか?こういう時代だからこそ輝けるのが変わり身の早い身軽な零細店の真骨頂!いよいよモノを売る店から物語を売る店への本格的転換期か!?

今、モノ生み出す工場見学が人気で賑わっています。勿論ビール工場の試飲などのお楽しみはありますが、何もそれは洗練された近代工場だからというわけではなく、モノづくりというドラマに興味を覚える人も多くいるのです。そのモノがどういうところで、どういう過程を経て、どうやって生まれていくのか。溢れるモノそのもの以上に、その背景やモノづくりに人の興味が移っているように感じます。地方の零細材木屋の倉庫の中には少しの木材しかありませんが、木の物語なら無限にある!

キリンビールのロゴには伝説上の聖獣・麒麟が描かれていますが、そんなところから物語は紡がれています。振り返ればわが倉庫にも物語のある木は多い!悠久の時代を生きた神代木、ルイ16世が愛した木、世界で一番重たい木、人の顔のようなものが現れる奇妙な杢を持つ木、森の精霊が住む木、戦艦大和の甲板にも使われた木、キリストが磔になった十字架の木、エトセトラ・・・。そうだ、材木屋の倉庫は大人の知的好奇心を揺さぶるワンダーランドなのだ~!




研修旅行の次の目的地は、『キリンビール神戸工場』。生来の貧乏性なので、こういう旅行に行く場合でも、折角遠くまで行くのなら何か持って帰りたい、何か知って帰りたいと、事前に自分なりにいろいろ調べたり、繋がりや木との関連性がないかと情報を集めたりしています。帰った後で、あそこにはこういう施設があったとか、こういう逸話があったなんて事を知るのが非常に悔しいので。常にそういう意識を持っていると、ご縁は向こうからやって来るというか、必ず何かの関連性は見えてくるもの。

今回も旅行の行程表をいただいた時にそういう関連性が感じられて楽しみにしていたのです。竹中大工道具館は本命なので勿論ですが、神戸海洋博物館では私の名前と同じ照国丸北前船、キリンビールではこのブログでもご紹介した、元キリンビールの代表取締役副社長田村潤さんがお書きになられた『キリンビール高知支店の奇跡』の話。武田鉄矢氏の朝のラジオで聞いて感銘を受けて読んだ一冊の本から、高知や愛媛など四国を舞台にしたビール戦争の醍醐味を堪能しました。

その後の姫路城はもう5度か6度目ですが、来るたびにいろいろと発見があって面白い。そうやってまるで『取材』のような気持で臨むと、あれもこれも見たい、聞きたい、撮りた、知りたいとなって時間がいくらあっても足りません。キリンビール神戸工場では、工場見学や試飲などもさせていただきました。我々はその日一番早くの見学でしたが、後から後から見学者が増えてみるみるうちに工場は観光客で溢れかえりました。モノ(ビール)を売るだけでなく、モノづくりという物語を売る。

業界は違えども、勉強になることばかり。そりゃあ天下のキリンビールさんと田舎の弱小零細材木店では比べようもありませんが、洗練された最新設備の工場にしか出来ないわけではないと思うのです。夏は蒸し風呂、冬は冷蔵庫のような過酷で埃まみれの材木屋の倉庫の中にだってモノづくりの矜持は潜んでいるはず!以前にも『おとなの社会勉強・謎の材木屋の倉庫巡り』というような企画を考えたことがありますが、世の中にはそんなキワモノ企画に飛びつきもの好きだって必ずいるはず!続く・・・




その知名度の低さをカバーするためか、最近は『アフリカン・チェリー』と呼ばれることも多いのですが、さすがにチェリーと呼ぶには違和感がある、と思っていました。竹中大工道具館の巨大なボセの一枚板を見るまでは!その木には何も表記が無かったので、これは一体なにかしらと思ってなめ回すように観察していたら、断片的に『ミズメザクラ』の面影も感じたので(あくまで個人的見解)、チェリーまんざらでもないかなんて思ったりもしたのです!まあこれは特別な一枚だとは思いますが。

心材と辺材の差が明瞭でその赤と白のコントラストもチェリーと例えられる一因かもしれません。この木の特徴として挙げられるのが、樹皮の小口より乳白色の濃いラテックス(油脂状のゴム)が滲出(しんしゅつ)することがある、少量であるもののシリカを含んでいるので刃物を痛めやすい、樹脂分が小さな染みを作りやすい、細かい木粉が皮膚あるいは粘膜に炎症を起こすことがあるなどがあります。自分で使った経験がほとんど無いので書いていても距離感を感じてしまうのが寂しいところ。

チェリーどころか海外ではホンジュラス・マホガニーによく似ているので、その代用材ともされるという事です。いまや希少材となったセドロや世界三大銘木のひとつでもあるホンジュラス・マホガニーの代用にもされると聞くとにわかにこの地味に思えたボセが途端に特別な輝きを持って見えてくるのですから人間身勝手なものです。今はまだほとんど盛り上がっていませんが、ケヤキの代替材としてトチが急激に人気が出て価格が高騰したように、もしかしたら次はボセの時代が来るかも!?

という事で今度少しボセの板も仕入れてみようかと考えています。やはりこういうものは実体験を踏まえて語らないと言葉に説得力も重みもありませんから。そしたらその場にいらした大先輩の成瀬製材所成瀬社長が、「ボセだったら数年前にミセスホームさんの近くのカフェに大きなボセの一枚板のカウンターを納品したことがある」と言われて、これは灯台下暗し!記憶が曖昧でしたがそれでもかなりの長さ、幅を有する上質材だったそうです。そもそも樹高30~46m、直径1.2mにもなるような巨木ですから、大きな板が取りやすい木なのですが、まさかそんな近くで、ボセの一枚板のカウンターに出会えようとは!なるべく早めにお店に伺おうと思っています。ボセのリポートはまたいずれ日を改めてご報告させていただきます。研修旅行はまだまだ続きます・・・




センダン科の広葉樹『ボセ(BOSSE)』は、アフリカのシエラレオネからコートジボアール、ナイジェリア、カメルーン、ガブン、コンゴ共和国などの西アフリカ及びウガンダに分布しています(あくまで私が調べて分かった範囲ですが)。業界では一般的には『ボセ』で名前が通っていると思っていましたが、地域によっては『ボス』、『ボッセ』あるいは、学名のGuareaから『グアレア』の名前で呼ばれることもあるようです。アフリカでBOSSEと呼ぶのは主にコートジボアール

英語では、シーダー(スギ)のような香りを持つことから、香りを意味するScentが頭に付けられ、Scented Guarea(センテッド・グレリア)とも呼ばれています。恐らく製材した時の芳香だと思うのですが、私が【森のかけら】用にとボセを挽いたのは何年も前の事で、その時にそんな匂いがしたかどうか覚えていません。その後は残念ながら、知名度が低いためか『森のかけら』でチョイスされる機会も少なく、大きなボセの一枚板を割るような事は無いため、香りを確かめることは出来ていません。

現地では、家具や装飾材、フローリング、ろくろ細工や、耐久性があってヒラタキクイムシやシロアリ対しても耐性があることからボート用材として利用されているそうですが、それ以外にもシガーボックス(葉巻煙草箱)としても重用されているようです。それはセドロと同様に広葉樹でありながらシーダーの香りがするという特性を活かした用途だと思われます。残念ながら煙草を吸わないため、ボセがどれほどシガーボックスに適しているのか検証は出来ませんが、好奇心の強い愛煙家の方いましたら是非お試し下さい。

しかし【森のかけら】サイズでボセを見てみると、ここにネームの無いサペリタリシポなんか並べられたら当てる自信は全くありません。それでも【森のかけら】用のボセを加工している時は、それなりに特徴も見えたりするんですが、他の樹種が混ざったらもう無理!外道材木屋としては本当はこういう樹種こそ『強く』、『詳しく』あるべきなのですが・・・。材木屋としての『臨床』は、その木を実際にどれだけ多く扱い、どれだけ深く関わったかといことだと思っているので、ボセにはまだまだ臨床経験不足。続く・・・




★今日のかけら #211【ボセBosse   センダン科・広葉樹・アフリカ産   

順番が前後しますが、ミセスホーム㈱さんの業者会・ミスター会の研修旅行で向かったのは神戸の竹中大工道具館。実は6,7年前にも個人的に行ったことがあったのですが、入館するまで移転していたことを知らなかったので、入口がふたつあったのかしら?増築でもしたのかしら?と思っていたら、移転してかなり大規模にスケールアップしていてビックリ!2014竹中年に開館30周年を記念して、新神戸駅そばの竹中工務店本社跡地に移転し、2014年10月から一般に公開されることになったそうです。

入館して目に飛び込んでくるのは耳付きの巨大な一枚板のパーテーション。果たしてこれが何の木なのかという事で、業者会の中でもざわついていたのですが、見たことはあるような気はするものの断定できず・・・無節で国産材ではありえないサイズ。とりあえず館内の案内順路に沿って動き出したものの、どうしても何の木なのかが気になって仕方が無いので、ひとり受付に戻ってスタッフの方に何の木なのか尋ねてみると、『ボセ』という返事。まさかこんなところでボセと出会おうとは?!

聞き慣れない名前かもしれませんが、熱帯アフリカ産のセンダン科の広葉樹ボセ』あるいは、『ボッセ』は丸太の直径が1mにもなる大木です。『森のかけら』にも含まれているものの、それまでは弊社でも取り扱ったことがありませんでした。アフリカ産のあまりメジャーでない木(メジャーかどうかはあくまでも愛媛に住む私の感覚)の場合、強く意識して仕入れるつもりでもないと、出会う機会すらないのが現状。材木屋でも扱った事が無い人が多い木ではないかと思います。

入口に一枚板でパーテーションに使われているぐらいですから、木目も整っていてほれぼれするような美しさ。近づいて見ると美しい虎斑が入っていて、私の知るボセとはまるで別物のように見えます。35㎜角の『森のかけら』になってしまうと、他のアフリカ産の広葉樹と見比べても分かりづらく、元のある程度の大きさの時の表情を知っていないと、正直35㎜のキューブの中で個体差を見出すのは容易ではありません。特にボセなんて切り取り方次第では、元の樹種すら想像できず・・・明日に続く




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