森のかけら | 大五木材

★今日のかけら・#039 【樟/クスノキ クスノキ科クスノキ属・広葉樹・宮崎産

20100917 二本三景「飽きぬ宮島」・・・三景①

 

 

 

20100917 二本三景「飽きぬ宮島」・・・三景②厳島神社のシンボルともいえるこの大鳥居は、国の重要文化財に指定さえています。6時間周期の干潮によって、干潮の際には入り江と地続きになって、この大鳥居まで歩いて行く事が出来るのですが、今回は潮が満ち初めた時間帯で、海上にそびえるお姿を拝ませていただきました。是非次回は干潮の時に訪れてみたいものです。それにしても、そのお姿はまさに威風堂々!周囲の観光ツアーのガイドさんの説明に耳をこらしてお話を伺うと、大鳥居の高さは約16mで、横幅約23m、平安時代に建てられ、今までに8回建て直され、今あるのが約130年前(明治時代)に建った物だということでした。足元は埋め込んでいるのではなく、自重で立っており、屋根には7トンもの石がおもしとして入れられているとの事。干潮だったら、その足元の様子も伺えたのにと思うと残念ですが、この海上にそびえる荘厳な姿も素晴らしいです!

 

 

20100917 二本三景「飽きぬ宮島」・・・三景③遠くから眺めると分かりにくいかも知れませんが、この大鳥居の柱は天然の丸太がそのまま使われています。ですので根元が太く、丈夫に向かってテーパーになっています。アップで観てみるとかなり異様なお姿でもあります。コンクリートで造られたような人工造の鳥居とは一線を画します。その材のねじれたような木のリアルな質感が朱色のお化粧の上からもはっきりと見て取れ、何だか二本の足をぐいと海中の地面に踏ん張って仁王立ちする生き物のようにすら思えてくるのです。

 

 

20100917 二本三景「飽きぬ宮島」・・・三景④宮崎駿さんのアニメのように、足をズボンと抜いて7トンのおもしを乗せたまま歩き出すのではなかろうかなどと妄想してしまいます。観れば観るほど霊験あらたかなお姿には、どうしても「生き物」を感じずにはいられません。その素材が、森の精霊の宿る木『樟(くすのき』を使っている事が無関係ではないと思います。聞くところによるとこの大鳥居の樟は、樹齢400年の巨木を使ったという事ですが、約130年前に建てられたという事ですから、その命は実に530有余年も受け継がれている事になります。樟にとってはまさに修験者の荒行の如き心境でありましょうか。本殿の床板にもそれは巨大な樟の1枚板が数多く使われていました。 至る所に名誉の傷跡も見受けられ、補修の姿も痛々しいのですが、まあなんと立派な樟でしょうか!しゃがみ込んで、このアップ画像ばかりを撮っていたので、周囲の方にはさぞ変な人のように映ったかもしれませんが、誰もこの凄さには目を向けてもくれないのは寂しいところです。

 

 

 

20100917 二本三景「飽きぬ宮島」・・・三景⑤さて樟は、「」としても表わされますが、これは九州など南方に多い事に由来しているとされます。成長が早く、日本で最大の樟は、鹿児島県蒲生町の「蒲生の大楠」で、推定樹齢は1500年、幹の周囲で24m、地際でも幹周は約34mもあります。国の特別天然記念物にも指定されています。以前にこの近くを通過して、「蒲生の大楠」の看板まで見たのに立ち寄れなかった事が返す返すも残年です・・・。巨樹の調査によると、幹周のトップ10のうち実に7本が樟という事ですから、いかにこの木が大きく成長する木であるかという事が分かると思います。

 

 

 

耐えるクスノキの尊厳

1. 今日のかけら

耐えるクスノキの尊厳①となりのトトロ』も棲む木ですから大きくなくてはなりません。また、樟は天然の樟脳を含んでいて、防虫効果も高く、腐りにくい事から造船や彫刻などにも使われています。もし大鳥居が桧や杉であれば、樹齢400年といえどもすぐに朽ち果ててしまっていて事でしょう。また、英語ではカンファーツリーといいますが、カンファーとはカンフル剤の事で、強い刺激臭を持つ樟の枝や葉は、古来より聖なるものとして神様への捧げ物、供物などに使われてきたそうです。神社の境内などに樟が多いのもそのためです。腐朽に強い巨木で信仰の対象となる聖なる木であるということから、樟が大鳥居の材に選ばれたのでしょう。

 

 

20100918 耐えるクスノキの尊厳②宝物殿には、昭和26年に大補修された際に取り替えられた樟の旧根元材が展示されていました。これがどういう状況で水中に踏ん張ったいたのかも想像がつかないほど、壮絶な海との格闘の跡が至る所に刻み込まれています。なんだか大鳥居の足裏の角質をバリバリと剥ぎ取ったみたいなどといっては不謹慎でしょうか。近づいてよく観ると、フナ虫でしょうか無数の虫達の穿孔されています。象に群がる蟻の如き、寡黙にジッと耐える姿には尊厳すら感じられるです。

 

 

20100918 耐えるクスノキの尊厳③ これだけの厳しい環境ですから、また数10年先には建て替えられる事になるのでしょうが、現在これだけの樟の巨木が手に入るものなのでしょうか。あの清水寺も400年後の立替のために、今から植林を始めているという話を伺った事があります。400年大切に育てて、その木を使うというのです。壮大なプロジェクトです!もうそうなると建築用材などという軽々しい物ではなく、神の宿り場を人が何世代も受け継ぎながらお守りするというような感覚なんでしょうね。ここでも樟の植林が始められているようです。

 

 

untitledこれも気の長い話でありますが、結局今も昔も本物を得ようとすれば時間を掛けるしかないのです。人間などの力ではどうする事もできない、その紡がれていく時間というものが文化とか伝統を形成していくのでしょう。これから恒常化していくとみられる異常気象の中、巨大な台風や集中豪雨などの水害、降り注ぐ強い紫外線等、大鳥居も神殿も平清盛の時代には想像もしなかったであろう壮絶な環境を耐えてゆかなければなりません。しかもそれが技術の粋を集めた近代建築ではなく、ひたすらに時を刻んだ無垢の樟に託されているわけです。自然との闘いでもっとも順応し、耐え抜くのはやっぱり自然のものなんだろうと教えられます。人間の思いなどとは関係なく、樟はただ己の運命に従うばかり。その無言の佇まいこそが、すでに尊い教えのように感じられるのです。

 

 

樟脳香、復活の日

3. 木の仕事

20100919 樟脳香、復活の日①この数日厳島神社の大鳥居に使われた樟の素晴らしさをご紹介しましたが、本日はもっと身近で現実的な樟のお話。以前にブログでワンズ㈱さんで建設中のH様のトイレのカウンターに、樟の耳付板を使っていただいた事をアップさせていただきましたが、その続きの話です。耳に凹凸の変化のある板を使っていただいたのですが、少し長めに仕上げて現場でコブの位置を調整していただきました。ですので、ボウルの穴は板が壁に取り付いてから現場で開けます。さあ、満を持して現場に乗り込みます!

 

20100919 樟脳香、復活の日②加工していただくのは、このカウンターを加工してもらった家具職人・ウッドワークかずと池内一豊君。今回は、別に困っているわけではありませんが、「現場で困った時の池内頼み」という諺があるように、私にとっての大変ありがたい懐刀であります。今回は特別問題もありません。事前にボウルの正確な位置を出していただいているので、池内君がそれに合わせて木型を作ってきてくれてます。それを固定してまずはルーターで溝を切っていきます。

 

20100919 樟脳香、復活の日③5mm程度の深さで徐々に深く掘っていき、最後はジグソーで丁寧に切り落とします。この間およそ30分ほどですが、現場工事は何といっても事前の準備に尽きます。池内君なら任せて安心、いつもいろいろな状況を想定して準備万端で臨んでくれるので、現場で戸惑う事がありません。工場から遠く離れた現場では、工場に道具を取りに戻る余裕はありませんから、現場にあるもの、揃えたもので対応するしかないのですが、こういう時は積み重ねた経験が物を言います。今回は何のトラブルもなく予定通り完成!私には何の技術もなく、ただ付いて行ってお掃除や準備のお手伝いをするしか出来ないのですが、いつも高度に収斂を重ねた職人さんの技には圧倒されます。何度寸法をチェックしても、現場に取り付いている木に穴を開けたり、削ったりする時の立会いは緊張します。

 

20100919 樟脳香、復活の日④無事に想定通りの穴が開きました。先日、樟脳が含まれている話をアップしましたが、このカウンターは水廻りという事で、事前に弊社で全面ポリプレマー塗装をして固めています。ですので樟といえども全く匂いがしなくなっています。樟脳の香りも閉じ込めてしまいました。ところが、ルーターの刃先が入った瞬間、室内に物凄い樟脳香が噴き出しました!ポリプレマーで閉じ込められていた樟脳香が猛り狂ったかのように、狭い空間に一気に充満します。

 

20100919 樟脳香、復活の日⑤池内君は全身にの大鋸粉を浴びながら立ち向かいます。隣にいる私の鼻腔にも強烈な樟脳香が入ってきます。鼻がツーンと痛くなるほどの強烈な匂いです。箪笥に入れておく防虫剤を濃縮させたような匂いなのですが、これはもう体感していただくしかありません。この匂いこそがが虫に嫌われ、水湿にもよく耐え、長持ちする理由です。いくらポリプレマーで固めているとはいえ、こういう設定では素材そのものがなるべく水に耐えるような材をお薦めるようにしています。選ばれる方は、性質よりもサイズや形状、色合いを優先されますが、その際にも適性の低い木の場合はお薦めしません。材の適性を無視して使って、後で後悔することになってしまっては申し訳ありませんから。水廻りでなければ結構冒険もするのですが、さすがに水廻りは慎重にならざるを得ません。

20100919 樟脳香、復活の日⑥先人達の「適材適所の教え」を尊重し、なるべくTPOに合った材をご提案させていただこうと思うのです。厳島神社の大鳥居は別格ですが、樟は成長が早く大きな材でも割合手頃な値段で手に入ります。ただ「」とも表わされるように、南方に多く成育し、東日本では手に入りにくいかもしれません。こちら㊧は余った材で豊川棟梁が気を利かして作られた子供さんのための机。手前はボウルをくり抜いた板。材を無駄なく使っていただきとても嬉しいです。こういう細部に造り手の思いが宿ります。




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