森のかけら | 大五木材

奇杢はシルクの輝き・レースウッド①*

★今日のかけら・♯236【レースウッドLace wood  ヤマモガシ科・広葉樹・北米産

全国材木屋対抗珍木選手権』という大会があって、それぞれの材木屋が自社の手持ちの在庫の中から、これは!と思うレアな珍木を出し合って勝敗を競うというものですが、弊社が愛媛代表としてその大会に出場することが決まり、何の木を出すかを迷った時に、数日眠れぬ日々を過ごして迷いに迷った挙句に選びだしたのが、この『レースウッド』!この木の凄さは、1万本の中に1本現れるというバーズアイメープルのように、存在そのものがレアというのではなく、そのどれもが奇杢だという事。

杢の形や妙味に違いはあれど、この木からはすべて野趣溢れた独創的な杢が現れ、見る者の心を奪わずにはおられません。冒頭の大会の話は勿論私が日々頭の中で繰り広げられている妄想ですが、この杢は本物。ナラ(楢)を柾目挽きしたときに現れる虎斑(とらふ)』よりも派手で、虎斑を大きく引き伸ばしたような水滴状の独特の杢。まるで霜降りの高級肉のようにも見えることから『ビーフウッド』の別名もあります。かなり個性的な木なので、好き嫌いは意見の分かれるところでしょう。

それでもこの木が特異な木であることは疑いようがありません。この木が面白いのは、それぞれまったく表情の違う柾目と板目で、その呼び名に違いがあって、それで商業名として通用しているという点。そもそも『レースウッド』という名前は、板目部分に現れるレースを編んだようなレース模様のような柄が名前の由来とされ、それはそれで実に上品で幾何学模様のような規則性があります。私は昔、この名前で最初にこの木と出会ったので、レースウッドとしてインプットされてきました。

この杢は日本語では『斑紋杢はんもんもく』とも呼ばれます。一般的にこのような杢のある木の事を総称して『レースウッド(レース柄のある木という意味)』とも呼ぶので、いろいろな木に対してこの名前が付けられています。有名なところでは、ヨーロッパの『ロンドンプラタナス(ロンドン・プレインツリー)』。アメリカでは『シカモア』と呼ばれる木です。この木にも緻密で装飾的なレース模様が現れるため、レースウッドとも呼ばれています。この奇妙な杢を持つ木の話は明日に続く・・・

奇杢はシルクの輝き・レースウッド②*

奇杢の極み『レースウッド』の話の続き。昨日は、板目部分に現れ『レースウッド』の名前の由来ともなったレース模様の話をしましたが、一方柾目部分には昨日触れた虎斑(とらふ)のような杢が連続して不規則に現れ、アートのようでもあるユニークにして不可思議な表情を作り出します。そのことから『ビーフウッド』という美味しそうな名前がついていますが、決して食べられるわけではありません。この木は、図鑑などではよく『シルキーオーク』という名前で紹介されています。

虎斑に似たような杢が帯状に現れることから、虎斑柄として有名な『オーク』に似ている木として『シルキーオーク』と呼ばれるようです。ただ、オークの意味は理解できるものの、シルキーとはどういう事なのか?いろいろな文献などを読んでみても、その根拠が書かれていないのですが、推察してみると「シルキー(Silky」ですから、シルク(絹)のような艶やかさや手触りからきているのでしょうか。しかし実際に触ってみると、これだけの杢なので表面は微妙に凸凹しています。

柾目を分断する杢の中は確かにツルツルしたような触感があり、その艶やかで滑らかな手触りからシルクを連想させたのかも?日本人と欧米人では触感の表現も随分違うかもしれないので、文字通りその手触りからきているのかもしれませんが、もしかするとその存在そのものが高級なシルクのように価値があるとされたのかもしれません。まあいずれにせよ、このシルキーオークという名前もオーストラリア及びニュージーランドに生育するさまざまな属、種の木に対して使われています。

もともとは、オーストラリアのクインーズランド南部およびサウスウェールズに自生するGrevillea robusta(グレビアナ・ロブスタ)という木に付けられていたものが、クイーンズランド北部に生育するCardwellia sublimisも同じような特徴を有していることから、そちらも『シルキーオーク』、あるいは『ノーザンシルキーオーク』と呼ばれるようになったそうです。それらを総称して『オーストラリアン・シルキーオーク』と呼ばれることもあります。現在では温暖地帯の各地で植林されています

 

奇杢はシルクの輝き・レースウッド③*

成長すると高さは40m近くにもなり、胸高直径で1.2mにもなる巨木です。オーストラリアなどでは、建築用資材にも使われるそうですが、気乾比重は0.54~0.62密度に関する強度は高くありません。用途としては、その装飾性を生かして家具や内装材、羽目板、化粧用合板などが多いようです。このレアな木、日本にどれぐらい入ってきてどの程度流通しているのか?私は10数年前にたまたま某所から偶然入手して以降、この材に出会ったことは僅かに一度しかありません。

オーストラリアではこの種の仲間は250種もあるそうで、杢に似て不思議な花や葉の形を持ついくつかの種が、日本にも観葉植物として伝わり販売もされています。花や葉の形を見れば、この花(葉)にしてこの杢あり、と思わせるほどに独創的。園芸用品種としては、グレビレア(Grevillea)と呼ばれているそうですが、それは英国の王立園芸協会の創始者であったC.F.Grevilleにちなんでつけられた名前だそうです。改めてルーツを辿ればいろいろな発見があります。

和名では、『ハゴロモノキ』とか『キヌガシワ』、『シノブノキ』など情緒的な名前もつけられていますが、ずっと昔に自分で仕入れておいて言うのも何ですが長らく持て余していたというか、この個性を生かせる出口を見つけられずにいました。持っていたサイズが、少し薄目(25mm前後)だったということもあって、造作材には厚みが物足らず、家具にも挑戦してみたものの、あまりにキャラが立ちすぎて馴染まず。だからといえ、これだけのレアな木を安売り気など毛頭無し!

その後、『モザイクボード』など端材が活用できる商品も開発したものの、その厚みがネックとなって(モザイクボードには荒で35㎜程度の厚みが必要)なかなか用途が定まらず、いつの間にかほとんど我が倉庫から出ることもなく月日は流れ現在に至ったのです。本当は素材で売るよりも、この杢を使った商品を開発したいのですが、今のところ妙案が浮かばないので、オンラインショップオープンを記念して、少しずつは素材でも販売していこうと思った次第ですのご興味のある方、是非どうぞ~!

★今日のかけら・#165 【スプルースSpruce    マツ科トウヒ属・針葉樹・北米産

 全画面キャプチャ 20160415 222459.bmp

 

シカト出来ないスプルース①

1. 今日のかけら, 2. 木のはなし・森のはなし
SPRUCE NO KAKERA

 

 

 

 

 

 

20160111 1私がこの仕事に就いた頃、どういう理由だったのかよく分かりませんでしたが、弊社からよくスプルースの材を建築現場や大工さんの作業場に運んでいました。当時は、周辺の製材環境の事や、流通の事も理解出来ずに、ただ言われるがまま(注文のあるがままに)材を右左に動かしていただけなので、特別弊社がスプルースに力を入れていたというわけでもなかったのですが、たまたまスプルースの需要が重なったりしただけで、その印象が強かっただけなのかもしれません。

 

20160111 2なにしろそれまでは取り扱う材といったら、ヒノキかスギか米松(ダグラスファー米栂(ウエスタンヘムロック、たまに米ヒバ(イエローシーダー)というぐらいメジャーな汎用材に偏っていて、このままだったら何十年材木屋をしても取り扱い樹種が10種類を越えることも無いのではなかろうかと呆然とした不安を抱いていた時期だったので、(当時の私としては)変わった名前の木を扱うのが無邪気に嬉しかったので、強い印象として残っているのかもしれません。

 

20160111 3運んでいたのは、別注で挽いてもらったスプルースの造作材で、当時(今から25年前頃)はまだ『乾燥材』という強い概念が無くて、原木から挽いた直後の生材でもOKという時代でしたので(結局、大工さんが早めに注文して自分のところの作業場や現場で乾かして、頃合いを見計らって使っていたのです)、材を持つとまだしっとりしていて、掌が湿っぽくなったのを覚えています。スプルースって軽軟な木ですが、生材だと輪をかけて軟らかくて取り扱いにも注意が必要

 

20160111 4そんな事すらも知らずに現場に届けた際に、脚立か何かにもたらせかけて置いたら、「そんな置き方したらすぐに凹んでしまうだろうが~!」と大工さんに怒られた事も覚えています。私が入社したのと入れ替えで、それまで仕事を回していた専務や営業の方が辞めて別会社を作られたので、木の事を教えてくれる人がいなくて、ほとんどの事は現場で棟梁や監督さんからそれはそれは優しく(!)教えていただき、頭に体に叩きこまれました。スプルースを見るといつもその事を思い出します。

 

シカト出来ないスプルース②

1. 今日のかけら, 2. 木のはなし・森のはなし

20160112 1さてスプルースの本題に入ります。取り扱いにも細心な注意が必要なほどに軟らかいスプルースですが、しっかり乾燥してしまいさえすれば、米栂(ウエスタン・ヘムロック)と同等程度の硬さはあると思います。最近、すっかり気持ちが広葉樹にいってしまっているので、久し振りの針葉樹になりますが、スプルースは米松(ダグラスファー)米栂(ウエスタンヘムロック)、米杉(ウエスタンレッドシーダーなどと並んで北米大陸を代表する重要な針葉樹の1つです。

 

20160112 2スプルースは『トウヒ』と訳されるのですが、トウヒ属は世界中に40数種類の仲間があるのですが、その多くが似たような特徴を持っていて、色合いも全体的に黄白色で雰囲気もよく似ていて、小さな部材になってしまうと区別するのさえ難しいほどです。【森のかけら】は、加工段階で樹種を絞り込んで区別しているのですが、稀に似た特徴の材が混じってしまうことがあるのですが、さすがにこのサイズになるとトウヒ類の仲間は容易には見分けがつかなくなってしまいます。

 

20160112 3木を見分けるポイントは木目、触感、匂い、重さ、質感等いくつかありますが、イチョウやクスノキなどのように極端に匂いに特徴があるとか、黒檀などのように見た目だけですぐに判別できるものばかりではありません。中でも特に難しいのは、東南アジアのラワン系とトウヒに代表される白黄色の針葉樹。そもそも色合いも重さも質感も似ている木なので、わずか35mm角の世界の中に混じってしまうとこれを見分けるのは、ルーペを使って識別するにしても至難の業!

 

20160112 4スプルースがトウヒと訳されるため、混乱もあって、北米大陸を代表するスプルースも『ベイトウヒ米唐桧』とも呼ばれます。ヨーロッパにもスプルースは分布していて、ヨーロッパスプルース、あるいはオウシュウトウヒ(欧州唐桧)、ドイツトウヒ(独唐桧など呼び方もいろいろあるうえに、たまたま弊社周辺では取扱量も少なかったことから、馴染みが薄くて私自身もスプルースに対しては知識も実体験も乏しいので、『今日のかけら』で取り上げるのも今頃になりました。

 

シカト出来ないスプルース③

1. 今日のかけら, 2. 木のはなし・森のはなし

20160113 2先日の続き。そんな苦手なスプルースなのですが、避けて通るわけにもいかず、取り上げるタイミングを見計らっていたのですが、そしたら先日たまたま近くの製材所でスプルースの原木の賃挽きしていて再開したことから今回俎上に。世界に多々あるスプルースの中で、ここで取り上げるのは北米産の『シトカスプルース』(米唐桧)。昔はこの名前を聞いても何の違和感も感じず、『シトカ』って何だ?と疑問を感じるようになったのは恥ずかしながらかなり後になってからの事。

 

20160113 1シトカというのはアラスカ南東部にあるシトカ島という地名で、この島でこの木が発見されたことに由来しています。シトカスプルースは寒冷地や厳しい環境でも逞しく育つ木なので、極寒のアラスカでも群生しているらしいのですが、『アラスカ桧』という商業名でも流通していることもあります。なので一層混乱してしまうのですが、スプルースはマツ科トウヒ属なので、アラスカ桧と桧の名を関していてもヒノキの仲間ではありません。書いていてもややこしい・・・

 

20160113 3アラスカからカナダ、ワシントン州~カリフォルニア州まで広く植林されていて、大きなものになると樹高は60m、直径2m~3mにもなる通直な常緑樹で、加工も容易で仕上がり面も滑らかなことから、現地でも建築分野で広く利用されています。日本でも同様ですが、加工直後は艶やかで美しい木肌も時間が経つと、やや褐色になってくすんだようななるので、それを嫌う大工さんもいます。また、そうなってしまうと削ったりしないと何のなのか見分けるのも困難。

 

20160113 4また、建築分野以外でも製紙用パルプや航空機用の合板などでも利用されていますが、それ以上に有名な用途に楽器があります。私自身は音楽への知識が無いのでよく分からないのですが、スプルースには高い共鳴性と優れた音響特性があることからアコースティック・ギターやハープ、グランドピアノ、バイオリンの饗版などに利用されています。微妙な音色の違いから様々な種類のスプルースが使い分けられていて、アディロンダック・スプールスなどは最適だとも言われます。

 

シカト出来ないスプルース④

1. 今日のかけら, 2. 木のはなし・森のはなし

20160114 1さて、スプルースの話もこれで最後ですが、こちらはたまたま見かけた製材中のスプルースの画像。先日、その代表的な用途としてアコースティック・ギターなどの楽器をご紹介しましたが、製材されていたのは建具用材。楽器用材となると、徹底した乾燥や品質管理も含め、特別なルートで流通されるため、このあたりで目にすることはほとんどありません。個人的な趣味で作られるというような場合は別ですが、私の周辺で流通しているのは主に造作用、建具用材です。

 

20160114 2同じ建築の中でも、建具分野となるとこれまた特殊で、一般的に木工所とか家具屋の看板を掲げていても、家具と建具は分かれていて(どちらも手掛けられるところもありますが)、更にその中でも無垢材と合板専門など細分化されていたりと、専業化が進んでいる業界です。大手ともなれば部門制に分かれていて総合的に受注されるのでしょうが、私がお付き合いしているのはほとんど個人の職人さんなのでほぼ仕事内容が特化されていて、昔からほとんど建具屋さんはいません。

 

20160114 4建具の場合は、肌目が精で寸法精度の安定した針葉樹が好まれるためスプルースやノーブルなどの材が好まれるのですが、建具屋さんとご縁のなかった弊社としては、建具材としての取り扱いはありませんでした。建具にはいろいろなサイズがあるので、節があってもカットして使えることから、その多くは原木を板挽きされるケースが多く(材の色目や杢目も揃うこともあって)、私の周辺では製材所から直で建具屋さんに材を収められるケースが多く見受けられました。

 

20160114 3なので、久し振りに製材直後のスプルースの耳付き板を見たのですが、昔ほどに食指が動かなかったのは、立ち位置がかなり広葉樹に寄っているからでしょうか。失礼ながら柾目の通直な木に対してあまり興味が湧かなくなってきているというには、相当に根性も性格もひん曲がってきているからなのかも・・・。多少まとまな感覚も持っておくためにも、たまにはこういう素性のよい木も扱って微調整、修正もしておかないと、心の中にも『アテ(陽疾』が出来てしまいそう。

 

スプルースのあれこれ

1. 今日のかけら, 2. 木のはなし・森のはなし

20160115 1本日はスプルースの補足で、数あるスプルースの種類の簡単な説明。実際に取り扱った事があるわけではないのですが、樹種としての特徴は似たり寄ったりなので、ここでは情報として名前の由来などをご披露します。まずは、シトカスプルースと並んでメジャーな、『エンゲルマンスプルース(Engelmann Spruce)』。これは、ドイツの植物学者で、ロッキー山脈など北アメリカ西部の植物を研究したジョージ・エンゲルマン(George Engelmann)の名前にちなんでいます。

 

20160115 2アコースティック・ギターの最高品質材ともいわれる『アディロンダック・スプルース(Adirondack spruce)』。これは、北米のアパラチア山脈から出材される、いわゆるレッドスプルース(Red spruce)種の中の1つのブランドで、ニューヨーク州の北部にあるアディロンダック山地で採れる良質なスプルースを指しています。かつては飛行機の合板の素材にもなりましたが、とりわけ響音特性に優れていることからギター用材として注目され、価格も高騰しています

 

20160115 3また主たる産出地域が北米大陸の北東部に位置することから、『イースタンレッドスプルース(Eastern red spruce)』とも呼ばれることもあります。次に北米大陸以外で生育している代表格に、ヨーロッパに分布する『ヨーロッピアンスプルース(European spruce)』があります。この種は、他にもオウシュウトウヒ(欧州唐桧)、ドイツトウヒ(独唐桧)、ジャーマンスプルースなどその呼び名も多彩。ドイツと名前がついていはいるもののドイツ産というわけではなく、広く欧州一帯を指しています。

 

20160115 4更に日本に目を向ければ、トウヒ属の中には北海道を代表する木のひとつである『エゾマツ(蝦夷松)』もありますし、中国には『雲杉』と、北半球の各地で勢力を拡大し、その有用さは人間の暮らしを支えてきました。ゆえにその名前も多彩で、私もきちんと整理できていません。【森のかけら】でトウヒの仲間を絞り込み時にも、あまりに似た特徴であることもあって相当に頭を悩ませました。いずれ実物を含めてきちんと整理できた時に改めてトウヒの仲間についてはご紹介したいと思います。

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