森のかけら | 大五木材

今日のかけら056

シラカシ

白樫

ブナ科コナラ属・広葉樹・茨城産

学名:Quercus myrsinaefolia

別名:シロガシ、ホソバガシ、クロカシ

 英語名:Japanese white oak

気乾比重:0.74~1.02

 

炎の巨樫、コッコ・サンに立つ*

今日のかけら・♯056 【シラカシ/白樫】 ブナ科コナラ属・広葉樹・茨城産

以前に触りだけご紹介しましたが、土佐の〔炎の棟梁〕白土建築工房さんが、松山に絵本屋さんを出すという話。少し時期がずれましたが、いよいよ工事が始まりました。場所は、銘木まつりでお馴染みの、市内三津浜の久万銘木㈱さんの第一倉庫内です。社長の井部勇治君から、白土さんご本人がいらして施工されていると聞いたので、様子を拝見に伺いました。以前一緒にお酒を飲ませていただいた時に、大まかな構想のアウトラインは聞いていましたが、そこは人を驚かせるのが生き甲斐のお方のやる事ですから、普通に収まるはずがありません!やはり実際に見ておかねばという思いもありました。行って見ると、唖然・・・!炎のような趣きの巨木がドカンと立ち上がってありました。その雄々しい姿は、まさに天に向かって吹き上げある炎の如き佇まい。その重量感、質感は威風堂々として圧倒的!

実はこの巨木、先日の銘木まつりの際に展示会場で横に寝かせてあった『樫(カシ』の変木です。寝ていた時にもその存在感は抜群でしたが、こうして立ち上がると更にその異形が輝きを放ちます。中は洞(うろ)になっているところもありますが、これだけのサイズですから、動かすだけでも相当に大変です。白土さんがこれを点てられた時は生憎立ち会えませんでしたが、訊けば立ち上げるまで1日がかりだったとか・・・。それはそうでしょう、いくら古木とはいえ、樫ですからその重量は相当なものでしょう!

樫の気乾比重は0.74~0.83で、日本の木の中でも重量級のひとつです。ちなみに樫の中でも『ウバメガシ(姥芽樫』は、『イスノキ』や『オノオレカンバ』などと並んで、日本で最も重たい木の1つです。『ミズナラ』のような虎斑(トラフ)が現れることもありますが、縦長の筋状の斑点が出るのも樫の特徴です。樫の断面には牡丹柄の杢が現れて非常に面白いのですが、いまだ上手く活かしきれていないので、いつも勿体ないなあと思っています。これだけの老木になるとその表情も一変します。そこに在るだけで絵になる迫力が全身から溢れています。

さて、その傍らでは、炎の棟梁が腕を振るわれている姿が!高知から愛媛を往復されながらの大変な作業です。そうまでしてこの方を突き動かすエネルギーの源はどこから湧いてくるのでしょうか?樫という漢字の由来は、その材質が「堅い」事からきていますが、カシという呼び名も『雄偉(いかし』という意味で、その樹形の雄々しさを指したものであるようです。その材質から白樫(シラガシ)、赤樫(アカガシ)などに分けられます。その強く堅い意思を貫く、白土棟梁にはまさにピッタリのシンボルツリーです!

白土さんのお膝元の高知県は、全国的にも有数のアカガシの産出地と言われていますが、この老木はどちらかはっきりしないようです。一般的には、カシというと白樫を指す場合が多いようです。シラカシは、カシの仲間の中ではもっとも耐寒性があり、暴風林や屋敷林として植えられる事が多いようです。この倉庫の中に立ち上がった巨木の姿からは、屋敷を暴風から守る防風林というよりは、主の如き風格が漂います。まだ仮り立ての状態ですが、きちんと足元が固定されたらさぞ圧巻でしょう。ここからハイスピードで工事が進んでいく事だと思います。正式のオープン日も12月12日(日)に決まったようです。お店の名前は、『えほんの店 コッコ・サン松山店』。詳しい内容については、改めてご紹介させていただきます。2、3日に一度は久万銘木さんに行く用事があるのですが、これからは行く楽しみが1つ増えました。オープンが楽しみです!

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適材、適所あればこそ・・・*

新しい政権が出来た時の常套句として「適材適所」という言葉が使われますが、もともと建築の分野から出た言葉だというのはご存知の通り。硬くて強度があり耐久性のあるクリは土台に、耐湿性に優れて香りのよい青森ひばは水廻りにとか、材の特性を見極め、その特性を最大限に引き出す事が語源の由来です。発足した野田政権でも「適材適所」の人事に徹したという事でしたが、早速大臣が辞任し、任命責任を問われていますが、とりあえず仕事をしてもらったどうかと思うのですが・・・。

それにしてもメディアの腰の座らない浮き足立った報道姿勢はどうにかならないものでしょうか。移動している総理や大臣を捕まえて、車に乗り込もうとしている状況にも関わらず、一方的にマイクを向けて「何かひと言!」って、どれだけ失礼で品の無い事をしているのか自覚はないのでしょうか。しかもそこから都合のよい言葉だけを切り出して、その短いセンテンスでこれを堂々と報道とか、スクープとか言う事に疑問も感じないのでしょうか。メディアたる矜持を持っていただきたいと思います。

適材が適所で力を発揮できればよいのですが、世の中そううまくはいきません。木材の世界で言えば、適材を適所に遣うためには相当なハードルを乗り越えていかなければなりません。まず、昨今は材の特性を生かした家造りというよりも、プレカットのラインに適した癖のない、寸法精度の安定した材が選択される傾向にあり、むしろ個性の強い木は敬遠されます。なので弊社などは、構造材というよりも造作の分野で、材の個性を生かす提案をするようにしています。

特徴のある材を揃え、あとはその個性を発揮できる「適した場面」との出会いを待つばかり。いくら提案しても最終的には選んでいただく訳ですから、まな板の上の鯉の心境ですが、こちらがうまく魅力を伝えきれないと、折角巡ってきたチャンスを台無しにしては材たちに申し訳ない。変った材であればあるほどに、彼らが活躍できる場面は限られてきます。決して多くのチャンスが待っているわけではないですから、それを生かせるかどうかは私次第。施主さんは当然ながら、我が材たちにとっても運命の分かれ道。責任重大です。

一度そういう機会を逸すると、次は何年後。折角の晴れ舞台を台無しにしやがって!恨めしそうな材たちの声が聞こえてきます。しかし逆に、「こいうい材がどうしても欲しいんだけどない?」なんてリクエストがあって、うまくはまった場合には私も材たちに得意満面!長くこういう仕事をしていれば、そういう機会も増えてくるというだけの事ですが、そういう時って心底嬉しいものです。実は今日もわざわざ香川県から神事に使う「白樫」を探しに来て頂いて、丁度ご希望のサイズが揃える事が出来て、先方も私も大喜び。

4mもので乾燥した素性の良い樫なんてそうそうある物ではありません。しかし、樫でないといけないという場面があってこその樫であります。日本最重量級のひとつにして粘りも強度も併せ持つ白樫、こういうご注文でこそ光り輝くのです。何での木でもいいという注文はある意味楽ですがオモシロくない・・・。こんな材ある?今時そんなサイズの寸法があるわけ・・・いえ、いえ、それが実はあったりするんですよ~!は、は、は・・・だから材木屋は止められない!「適材適所」、いと難しく、いと楽し。

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嗚呼、野麦峠を越えて往く*

昨日に続いて、愛媛トヨペットさんで開催された『第六回夏休み親子環境教室』の話です。いろいろな形の木材素材を提供するので、自由に好きなものを作ってくださいという工作タイムあったのですが(多くの方の目当てはこれ!)、限られた時間の中で大物に挑む親子もいたり、短い時間でしたが皆さん汗にまみれて、慣れない鋸や金槌と格闘!主催がトヨペットさんだったからといううわけではないのでしょうが、丸い木を車輪に見立てて車を作る子供たちが沢山いました

丸い木と板と棒で作るモノといったら圧倒的に車を連想するほど車のフォルムは、子どもから大人に至るまで目に焼き付けられたデザインの完成形。『車と木材』は今でこそ縁遠く感じるかもしれませんが、その生い立ちにおいては密接な関係にあったのです。そもそもトヨタの前身は、豊田佐吉氏が創業した豊田自動織機製作所(現在の豊田自動織機)で、その後織機製作における鋳造や機械加工技術のノウハウを活かし「トヨタ自動車工業㈱」が設立されたのは有名な話。

氏が作った織機は「豊田式木製人力織機」と呼ばれ、当時の織機は木で作られていました。その織機が何の木で作られていたのか定かではありませんが、織機には粘りがあって堅牢な『シラカシ(白樫』がよく使われていたと言われていますので、シラカシアカガシなどカシ類の木がよく使われたものと思われます。弊社が昔購入したカシも愛知周辺から購入したものでしたが、織機に限らず昔は木製の木軸の素材としてカシの木は様々なものづくりの分野で大変重宝されてきました。

最近は滅多に「カシで~」という注文も来ませんし、弊社にも大きなカシは少なくなってきてもっぱら『モザイクボード』や【森のかけら】として扱うばかりですが、木軸から木型、農機具、柄、荷棒、漆器、鉋台、杵、運動器具など用途が広いのもカシの特徴です。さらに滑車、歯車、舵や櫂、荷車や水車など広く交通手段に関わるものの素材としても貴重な素材でした。ところで織機といえば、子どもの頃に観た映画『あゝ野麦峠』の印象があまりに強烈で悲しいイメージが定着してしまっています。

インプリンティング・・・最初に見たもの、感じたものでそのものの印象は大きく左右されます。私の場合は『機織(はたおり)=野麦峠=過酷で厳しい重労働』というイメージで刷り込まれてしまったので、最新鋭のコンピュータ制御のマシーンを見ても、大竹しのぶたち若き女工が雪原を越えていくシーンが脳裏に浮かんでくるのです。それを考えると、子どもたちが『木』ともどういうシーンで出会うのかによって、その後の人生における木との関係性も大きく変わるのだと思います。『木と幸福な出会いをした者は人生を豊かにする

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モッタイナイ神の気まぐれ・白樫*

ある時に突然ある樹種の端材がまとめて入ってきたり、同時期に各地から同じ材に注文が入ったりと、「端材世界」にも「モッタイナイ神の見えざる力(あるいは気まぐれ)」が働いているとしか思えない事がありますと言ったら大袈裟かもしれませんが、そう感じることがよくあります。「捨てる神あらば拾う神ある」と言われますが、誰かがいらない、売れないといったものが、ご縁があってうちに流れてきて、待ってましたと喜んで買っていただく方に巡り合ったりと世の中不思議なご縁でつながっています

出だしが多少大仰でしたが、先日弊社にやって来たのがこちらの『シラカシ(白樫)の端材』の梱包。まだ【森のかけら】にするぐらいのシラカシの端材は多少残っているものの、いずれ仕入れておかねばと考えていた私にとってはまさに僥倖!とりあえず市場でシラカシは仕入れているものの、生材なので使えるレベルに乾燥させるまでに数年かかり(乾燥機に入れると割れやねじれ出やすいので極力自然に乾かしたい)、在庫が無くなった時に谷間が出来そうで心配していたのです

シラカシという樹種特定の注文なんて、年に数件ぐらいではあるものの、弊社に声を掛けてこられるのは大概ホームページで検索されていろいろ探して辿り着かれた場合が多いのです。折角期待して声をかけていただいた時に「ありません」とは極力言いたくない。そもそもシラカシの場合は、建築材のような大きな用途ではなく、柄とか棒、器具などの小さな用途がほとんどなので、特に小さな注文に対しては「うちが何とかせねば!」と勝手に燃えてしまうのです。

という事で思いがけず手に入ったシラカシは、丁寧に1本ずつ加工して店頭とオンラインショップで販売していこうと思っています。端材ですので大きなものはなく、すべて長さも1m以内。幅もせいぜい ㎜、厚みも25~30㎜程度で、本当に『小さな出口』対応用です。太鼓の撥(バチ)や柄として時々まとまった見積もりが来るのですが、こちらに余裕があって注文が入って欲しい時には波静か。在庫が少なった頃に、それでは足りないぐらいの量の問い合わせ。これも材木屋を傲慢にさせないためにモッタイナイ神の見えざる力(あるいは気まぐれ)が働いているのか?

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思い込みシンクロニシティの多幸感④*

結構大きめの丸太があったとしても、「いくら大きくてもOOじゃあダメだわ」とか、「〇〇なんて買ってどうすんの?」などと悪態をつかれ、用材としてこの辺りでは必要以上に不遇な扱いを受けているのが、『シラカシ(白樫)』です。あまりにも不当な評価を聞くと気の毒に思えるほどなのですが、じゃあ本当に使いどころが無い木なのかというと全然そんな事はなくて、強靭なうえに粘りがあって摩耗性にも優れていることから大工さんが使う鉋や刃物や工具などの柄にも使われるなど、実は意外と馴染み深い木なのです

ではなぜそんな木が、まるで価値がないかのごとく不当な扱いを受けるのかというと、この木がとにかく重たくて乾燥が難しい事に起因していると思われます。個体差がかなりあって、中には思ったより軽いものもありますが、重たいものは気乾比重が1を超えるなど、国産の木の中では『イスノキ』などと並んで最重量の双璧ではないかと思います。まったく同じ大きさで、同じ形状の同じコンディションで比べた事がありませんが、私が持ち比べた感覚だとシラカシの板を動かす方が骨が折れる感じがします。足の指の上に落として内出血したこと数知れず・・・

そんな重たい木ですから山から出したり積んだりするのだってひと苦労。板ですら相当に重たいのに、伐採直後の丸太となるといかばかりか!いくら重たくともその重さが価値となるならお安いものなのでしょうが、この木の乾燥が難しい!乾いていく工程で小口からバックリと大きく割れてしまうのです。しかもメチャクチャ硬い木なのに、虫が入りやすい。心材と辺材の境も不明瞭なので、イブキみたいに辺材との境でキッチリと不可侵条約が締結されているわけでもなくて、心材への侵犯も多いのも厄介です。

重たい木ほど乾燥に時間を要するのですが、だからといって乾燥機にかけるとねじれたりバキバキに割れたりするので、材として仕上げるまでにはかなりの経験値が必要になるのです。しかもそれなりに時間がかかるうえに、汎用性があるとはいえ「出口」である鉋台や器具の柄を作っているところと結びついておくことが必須。松山などではそういう出口企業が身近に無い事もあって、材にするまでに手間暇かかり過ぎるシラカシは相手にされず評価が著しく低く引き取り手も少ないのです。しかし・・・明日に続く

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思い込みシンクロニシティの多幸感⑤*

こんなシラカシ、いくら大きくったって使い道なんかありませんよね~?40年以上も阪神タイガースひと筋に応援しているへそ曲がりの偏屈材木屋がそんな言葉をかけられて黙っておられようか~!『神が遣わしてた木の中に使えない木などあろうはずがない。誰も使えぬというのならならばわしが使ってしんぜよう!わしがやらずに誰がやる、いまやらずにいつ出来る!』いつもの展望無き無謀さに火がついてしまったのです・・・さすがに最近はその感情をどうにかコントロールできるような大人になってきましたが。

そういうわけで弊社の倉庫には、具体的には行くあてもないけど気概には溢れているカシたちが眠っています。あくまで天然乾燥で乾かそうと思っているので、彼らの出番はまだまだ先の事なのですが、先月その奥にある材を出す必要があったので、久々に表に出して持ってみましたが、全然乾いてない・・・。まだまだ時間がかかりそうです。勢いよく啖呵は切ったもののカシの出口には迷走していて、乾燥するまでに何か考えねばならないと思っていたら、またカシがご縁も引き寄せて来たみたいで・・・

それまで数年間もカシに声がかかることなどなかったのですが、それから数日の間にカシへの問い合わせがいくつかありました。まあ、たまたまの事なんでしょうが、その出口(用途)がちょっと面白かったので、同じ時期にカシの出口を考えているひとが集まったという事で強引にシンメトリィとしてまとめてみました。まず最初に声がかかたのは、カシならではの安定の出口『太鼓の撥(バチ』。これが全然関係の無い離れた地域から同時期に2個所。いずれも秋祭りに使う予定なのでまだ見積もり段階ですが、タイミングが一致。

音楽には疎いので材質の違いでどれぐらい音色が変わるのか分りませんが、太鼓の撥はについて「カシ」という材質指定で問い合わせが来ることが多いです。乾燥したカシだと厚みが30㎜前後の短かいシラカシを100枚前後はあるのでどうにか対応可能です。ただそれらはねじれや割れが多いので、せいぜい撥ぐらいにしか使えないのですが、さすがにそこまで撥の注文だけ待っていたのでは何年かかるか分らないので、撥以外の出口も考えねばと思っています。ここまではありがちなカシの出口の話でしたが・・・

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思い込みシンクロニシティの多幸感⑥*

火縄銃を直しているんだけど樫の木ってありますか?」ちょうどテレビで『麒麟がくる』を放送していたので、NHK関係者から?などと勘繰ってしまいましたが、全然関係なくて松山市内で火縄銃の補修作業をされている方からのお問合せでした。堅牢で耐久性があって粘りがあるので、銃床に使うと言われれば納得なのですが、不意に『火縄銃』という言葉が出て来たのでビックリしました。図鑑などにはその用途に書かれているのを見たことがありませんが、『火縄銃の銃床』というのも立派なカシの出口です。

よくよく訊いてみると、火縄銃の新品を作っているというわけではなくて、昔の火縄銃を修理されているとの事。東京の美術館とか愛蔵家から修理を頼まれるそうなのですが、今は銃刀法で管理が厳しく規制されていて、当時と同じ素材で修復しないといけないそうで、その方はカシの木を求められていたのです。いくらか在庫は持ったいたもののそれが心細くなってきたので、サイトで見つけた近場の弊社に声をかけていただいたのでした。火縄銃って、歴史の教科書で種子島から伝来しましたと習った遠い存在でしたが、まさかこういう形で邂逅するとは。

火縄銃というと昔の小柄な日本人が使っていたのだから小さな銃というイメージがあったのですが、実際は銃床がパーツになっていないので長さも1500㎜必要という事で弊社の在庫では対応できず。しかも柾目の素性のよいもので乾いていないと駄目ということで、九州の樫専門店さんから分けていただきました。銃床の場合は、意匠的に好まれる虎斑(とらふ)は強度が落ちるのでNGだそうです。また材種も仕様によって、アカガシ、シラカシ、アラガシなどを適材適所に使い分けられるみたいなのですが、今回はシラガシでした。

こういう風にその方たちにとっては昔から普通にカシの木を使っていた出口であったのに、その存在自体がマイナーな事から一般的に知られていない事も沢山あると思います。特にインターネットで全国と情報が繋がるようになった昨今では、今までは知らなったような出口と不意に繋がることがあって面白い。しかもその出口が案外身近なところにあったりすると、今まで知らなかった事がモッタイなく思えてしまう。さすがに火縄銃は今後広がっていく可能性は高くないでしょうが、その木ではなければならない出口は大切!

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思い込みシンクロニシティの多幸感⑦*

昔、ある雑誌で「無人島に1本だけ映画のDVDを持って行ったもいいとしたら何の作品を持って行くか?という企画があって、私より少し上の世代の1位は圧倒的に『燃えよドラゴン』でした。無人島に電気があるのかなどという野暮な事は言いっこなしで、あくまでも擦り切れるほどその作品を観続けたいという純粋な映画愛(偏執狂的な)を競うランキングです。それぐらい熱狂的なファンに支持されたのが『燃えよドラゴン』という作品で、主演の李小龍(ブルース・リー)はこの1作で一気にスーパースターとなったのです。

ブルース・リーが格闘の際に発する「アチョー」という独特の叫び声は「怪鳥音」(かいちょうおん)と呼ばれ、ブルース・リーの代名詞となりました。その怪鳥音と華麗なるヌンチャクさばきに魅せられた少年たちは誰もがそれを真似たものです。棒っきれを紐でつないで簡易ヌンチャクを作って、あちこちにぶつけながら自己流の奥義に酔いしれたあの日・・・。ヌンチャクは少年にとって絶対的な強さの象徴であったのです。そう、ヌンチャクさえ手にしてアチョーと叫びさえすれば誰もがリーになれたのです。

そんな遠い少年の日のヌンチャクが突然持ち込まれた来たのは数日前のこと。『燃えよドラゴン』でヌンチャクの存在を知ったので、てっきり香港か中国発祥の武器だとばっかり思っていましたが、実はこれ沖縄の琉球古武術などで用いられる武器だったのです。弊社に持ち込まれたのは、悪と戦うための武器としての売り込みではなくて、近くにある沖縄空手・古武術の道場の方が、補修というか長さの切断加工の依頼に持って来られたのでした。ヌンチャク以外にも木製の武具がズラリ。一見すると映画の撮影の小道具のようでした。

警察官が使う警棒が昔は木製(今は強化プラスチックなど)でカシが使われていたのは知っていましたが、ヌンチャクが何の木なのかについては考えたこともありませんでした。なぜだかヌンチャクはヌンチャクという事で完結していて、その素材まで考えた事もなかったので、その素材がカシと聞かされると、材の特性から考えればそれはもっともながら、改めてそういう出口もあった事を認識しました。一般的にはシラカシアカガシが使われているそうですが、使っているうちに先端が凹んだりささくれたりするので、少しだけカットして面を取って欲しいとのご依頼でした。

年末には同様の補修依頼で、餅つきの杵がよく持ち込まれるのですが、ヌンチャクは初めてでした。太鼓の撥(バチ)にもするぐらいですからヌンチャクなどの武具にも最適な素材なのでしょうが、一緒に持って来られた武具の中にはシラカシ以外のモノとしてはビワ(枇杷)がありました。高級なモノにはビワも使われるそうですが、大きなサイズのモノは相当に高額らしいです。現在準備中の【森のかけら400】にもビワを入れようと考えていたのですが、よもやこういう出会いがあるとは!シラカシ、ビワの出口にヌンチャクもしっかり覚えておきたいと思います。

今日のかけら016

イブキ

伊吹

ヒノキ科ビャクシン属・針葉樹・日本産

学名:Juniperus chinensis ‘Kaizuka’

別名:カイヅカイブキ(園芸種)

 英語名:Juniperus chinensis

気乾比重:0.65

 

イブキの息吹①*

今日のかけら・♯016【イブキ/伊吹(貝塚伊吹)】ヒノキ科ビャクシン属・針葉樹・岐阜産

本日、店舗の看板を探しに来られた方が、倉庫の中を探し回って見つけられたのが『カイヅカイブキ』の耳付き板です。この名前だけを聞くと、木の姿が思い浮かばない方もいるかもしれませんが、実はほぼ毎日見かけているといってもいいぐらい身近な木なのです。その名前に覚えはなくとも、街路樹、公園樹、生け垣として、天に向かって火炎状に勢いよく葉を茂らせた木の姿に見覚えはあるでしょう。それこそが、ヒノキ科ビャクシン属の常緑針葉樹『カイヅカイブキ』です。


漢字では『貝塚伊吹』と表わします。和名の『伊吹』は、滋賀と岐阜の県境にある伊吹山に産するビャクシン(柏槇)という意味だというのが定説ですが、伊吹山にだけこの名前が当てはまるのも考えれば妙な話しなので、何か深い理由があるのかもしれません。むしろここは、その音から類推して、古代に土器の底の穴にこの木の枝葉を敷いて食物を蒸したので、湯気を吹く木から、息吹き木(イブキギ)とされ、その後末尾のギは省略された語源説の方が説得力がありそうです。

先の『貝塚』という言葉についても、大阪の貝塚市に因んでいるという説もありますが、その貝塚市そのものからして地名の由来が明らかにされてないのでこれもまったく不思議。貝塚といえば本来は、食料などに使った貝殻の塚というのが一般的なのですが、いまだ当地においては貝塚遺跡も発見されてもいないという事で、地名の由来も謎なのです。貝は海の底にあるものですから、もしかしたら壮大で感動的な名前の由来物語が海の底で眠っているのかもしれませんが・・・。

さらに輪をかけてややこしいのが、「イブキ」と「ビャクシン」という2つの名前が浸透していること。江戸時代には別物の木とされて、それぞれに桧柏園柏という漢字が使われていたりとかなり混乱してます。柏という漢字は本来、コテノガシワという木の漢名なのですが、鱗片状の葉をつける木(ビャクシン類、ヒノキ類、コテノガシワ類、アスナロ類、イトスギ類)にも一般的に付けて使われてきた「伝統」があるので、扱いにくく、正直避けて通ってきた木の1つでもありました。明日に続く・・・

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イブキの息吹②*

昨日に続いて、『カイヅカイブキ』の話。名前そのものの由来は分かりづらくとも、その存在感はピカイチで、最初に私が材としてのイブキに出会ったのは10数年前のこと。市場で見かけたイチイのような赤身とその香りに引き寄せられました。先日『今日のかけら』でご紹介した『ネズミサシ(ヒムロ)』に似た特有のツンと鼻をつく香りがします。個人的にはこういうアロマのような香りのする木は好きなので、出会った時はその香りと物珍しさだけで仕入れてしまいました。

この『カイヅカイブキ』は、本種の『イブキ』の園芸品種として作られたものだそうで、成長すると高さ20数メートルにもなるイブキに比べると、 低木で直径も大きなものは稀です。弊社にあるものの長さはせいぜい1、7m前後で、幅も150〜200㎜といったサイズ。螺旋状にねじれて上に伸びる性質があるので、長い材も取れないのでしょう。ただし枝葉を広げるため、看板など装飾的に使うのには、耳の変化と赤白のコントラストがあって面白い材だと想います。

しばらく倉庫で眠っていたので、先日ひさびさに再会して何だか懐かしい気分。特有の香りは揮発していましたが、軽くサンダーで削ってやれば再びアロマのようなかぐわしい香りが広がります。経年変化でやや赤身部分が色褪せて見えるかもしれませんが、少し削れば鮮やかな紅色が蘇ってきます。系が小さいので当然節も多く含まれますし、安定供給なんて出来ない素材ではありますが、ご縁があって手に入ったものは出来る限り大切に扱わせていただきたいものです。

少し水で濡らすと紅色が濡れ色になって濃厚で味わい深い色合いになります。辺材の白身とのコントラストがより一層際立ってきます。この耳を活かして、このまま看板に使われるそうですが、長く倉庫で埃をかぶっていた材が手元から離れるのは嬉しいような寂しいような・・・。こういう特殊な木って次いつ出会えるかが分からないのでどうしてもそんな気分に陥りやすいのですが、いかんいかん!木との出会いも一期一会、さよならだけが人生と割り切らねば〜!!

ついでながら全国各地に存在する「伊吹」という町名の多くは、このイブキに由来したものが多いそうです。愛媛県でも四国中央市の下柏町宇和島市伊吹町には、イブキの国指定天然記念物があり、その地名もその大木に由来しているようです。下柏というのは、イブキの別名ビャクシンの漢字名「柏槇」からきていると思われます。同じように各地にイブキの巨木、あるいはイブキが群生があったことが地名に結びついたものと思われます。

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眠れる龍の息吹*

先日、コラボハウスさんの新築現場でモザイクボードのR加工のテーブルを作らせていただいた事例をご紹介させていただきました。こちらではこのモザイクテーブル以外にもいろいろな家具をご注文いただきました。本日はその中の1つをご紹介。それがこちらの『カイヅカイブキ』の飾り台。カイヅカイブキに関しては、以前に『今日のかけら』で取り上げさせていただきましたが、ヒノキ科ビャクシン属の針葉樹で、建築分野ではほとんど使われることのない木です。

そもそもカイヅカイブキは、本種の『イブキ』の園芸品種として作られたものなので、枝振りなど造形などが重要なのであって、「材」としてその利用まで考えられたものではありません。枝が多くねじれる事から、通直性を求める用途には適しませんが、その変化を活かせばこれはこれで非常にオモシロイ素材です。主にその用途としては看板などが挙げられますが、このように厚みのあるものについては、床の間で花などを生けて飾り台として使ってみても風情があります。

このカイヅカイブキは、かなり変形していて好みの分かれるところでしょうが、表面を削って磨きオイル塗装すれば赤身と白太のコントラストが一層引き立ちます。側面に沢山の突起がありますが、これがこの木の肝。普通皮を削る時はグラインダーを使うのですが、こういう場合は突起を傷つけないように水圧で皮を削り取っていきます。それでも取れない細かな部分は、歯ブラシで念入りに磨き上げます。 かなり凹凸のある木でしたので、かなり時間がかかったもののいい感じに仕上がりました!

削った面に突起の名残が点々の「端節はぶし)」として現われています。弊社にある残りのカイヅカイブキは、もっと厚みの薄いものばかりで、ここまで変化のあるものは少ないのですが、これぐらいボリュームがあるとそれなりの存在感と迫力があります。特に左右にうねった形状のバランスが秀逸で、それはあたかも龍のような造形!そう見れば見るほど、空を往く龍の姿のように見えてしかたがないのです。突起さえも龍の鱗のように思えてしまう・・・。

こういう木が活かされる活かされないも、こういうモノに共感していただくひととの出会いにかかっています。実はこの木も長らく弊社の倉庫の中で出会いを待っていましたが、今回ありがたいご縁があってこうして世に出ることが出来ました。倉庫の中にある時は、埃まみれで木味もよく分からなかったと思うのですが、ひと目見られた瞬間に決めていただきました。弊社の倉庫にはまだまだ「眠れる龍」が沢山、皆様との運命的な出会いを待ち望んでいます!

 

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思い込みシンクロニシティの多幸感①*

200種類以上の木を扱っていれば(あくまで種類というだけで量は微々たるものですが)、同じ日に全然違うところから同じ木に問い合わせが来るということも確率的にはなんら不思議な事でもないのでしょうが、『ムー世代』のロマンチスト材木屋としては、「こ、こ、これはシンクロニシティ!木の神の見えざる力が発動された~!」などと勝手に盛り上がって、その邂逅を授けていただいた「かけらの神」に手を合わせて感謝しています。今回の巡り合わせは『カイヅカイブキとシラカシとサッチーネ』です!

まずは、街路樹として御馴染みのヒノキ科ビャクシン属の木、『カイヅカイブキ(貝塚息吹』。普段からその立ち姿を見ることは多いのですが、通常木材市場に出材されることは稀なのと、貴重な出口であった「和室の意匠」もほぼ壊滅状態にあって、改めてこのブログを見直してみても、6年目に触れて以来まったく取り上げてもいませんでした。以前は床の間の落とし掛けとか、田舎の大きな家の玄関の飾りなどにも使われていたのですが、出番が無くなりずっと倉庫の奥の方に幽閉状態にあったのです。

それではいかんという気持ちから、この木を使って『森のりんご』も作ってみました。それがこの『イブキのりんご』です。削るとその木肌は淡いピンク色をしていて惚れ惚れするような美しさなのですが、経年変化でその美しさはみるみる失われていき、写真のようなくすんだ赤茶色に落ち着いてしまいます。色止めが出来ればなあと切望する木の1つです。このりんごだって、仕上がった当時はそれはそれは美しゅうございました。しかしこのうつろいやすさの中にこそ、本当の美があるのかもしれません。真実の美は儚さの中にありて目の見えぬものなり。

カイヅカイブキはその立ち姿からも分るようにかなりいびつな樹形をしているので、板に挽いても平面が得にくいので、使いどころに工夫が必要になります。それが「りんご」の曲面の中では、心材の赤身と辺材の白身が混ざり合って得も言われぬ表情を醸し出してくれます。遊び心のある人にはそこがたまらない木でもあり、通好みの木とも言えます。イブキは油分も多くて、「かけら」に加工しても持つと小口がねっとりとする事があります。昔はどうにかしなければとも考えましたが、歳とともにエイジングに寛容になってきました。明日に続く・・・

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思い込みシンクロニシティの多幸感②*

日々、いろいろな木が入って来るようになって、しかもそれが木材市場で仕入れるような大きなものばかりでなくて、街路樹や庭木、公園木、神社木などだったりすると、短かったり曲がっていたりすると、さあすぐに製材所に持って行って挽いてもらうというわけにはいかず、うちである程度「解体作業」するなど、仕分けをせねんばなりません。それが目先の作業に追われてついつい後回しになって、いつの間にかすっかり銀灰色になってしまい、何の木だったかすら分らなくなるほど放置してしまうこともしばしば。

場所も狭いので、そうして放置しておいた丸太が雨風に晒され朽ちてしまったり、虫の餌食になってしまい使い物にならなくなることもあり、先日も整理をしていたら、表面に無数の虫穴があいて樹皮がボロボロになっている丸太がありました。申し訳ない事をしたけど、このまま置いておいても虫たちの巣になると断腸の思いで処分するしかないかと鋸を入れたら、思わぬ手応え!そして中から一気に噴き出す芳香。昔にいただいたカイヅカイブキの丸太でした。白太は朽ちたり虫にやられておりましたが、赤身は健全そのもので艶やかですらあります。

赤身部分を触ると少しヤニっぽさがありますが、この赤身部分のタフさこそがカイヅカイブキの真骨頂!虫も腐朽菌も寄せ付けないこの赤身部分の逞しさ。出入りの多い樹形なのでいびつに広がった年輪に生命力が凝縮されています。この不規則な年輪幅が、『森のりんご』に加工した時には絶妙の杢となって現われるのです。これはそれほど大きな木ではありませんが、『森のりんご』や【森のかけら】を取るには充分な大きさ。ただ、それだけだと向こう何年分もの在庫となってしまいそうなので、何かしらカイヅカイブキの新しい出口も探りたいと考えています。

これでもう少し大きいものになれば、写真のように板に挽いて、床の間の落とし掛けにしたり、店舗の看板などにして、樹形の変化を意匠的に楽しむこともできます。一般的に材木屋で見かけるカイヅカイブキといったら、こういう姿だと思います。和室の減少に伴いすっかり出番がなくなり倉庫の奥で眠っていましたが、撮影も兼ねて前の方にまで引っ張り出していたら、この数年も話題にもならなかったカイヅカイブキになぜだか急に次々と声がかかるようになって・・・。もしかして引っ張り出した時に一緒になにかご縁も引き寄せたかしら?

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思い込みシンクロニシティの多幸感③*

自分でその存在も忘れてしまっていたほど、商売としては縁薄かったカイヅカイブキ(貝塚伊吹)だったのですが、写真を撮ろうと倉庫の正面に立て掛けてから数日の間に、急に事務所で「イブキ」という言葉が何度も交わされるようになりました。来店するとよく見える場所に置いていたこともあって、端材を買いに来られた方が「あの変わった形の木は何ですか?」と尋ねられるというのは、まあ分るのですが、HPにその事をアップしていたわけでもないのに、ネットからイブキに関する問い合わせが数件・・・

弊社がイブキに特化した店という事を打ち出しているわけでもないし(在庫だってわずかしか持ってもいませんし)、イブキに関するブログも過去に数回しかアップしていないし(しかもそれも数年間)、なぜ急に県外から問い合わせが相次いだのか?実はこういう事って時々あって、例えばテレビや雑誌などである木から作られた木製品が取り上げられたりすると、木工作家がネットで検索してたまたま上位に出てて弊社に辿り着くというパターンです。セドロとかチューリップウッドなどがそのパターンで謎の問い合わせ急増が起こります。

もしかしたらイブキについても何かもメディアで話題になったのかもしれませんが、問い合わせの用途はバラバラだった(地域も)ので、本当に倉庫の奥からご縁も引っ張り出したのかもしれません(笑)。その余波でオンラインショップにもアップしていない『イブキのりんご』にまでお声がかかったりしてありがたいことなのですが、本命はやはり材の方です。そのうちの1件は、イブキを意匠的なカウンターに使っていただくことになりました。この形に惚れ込んでいただき、機能性はほぼ無視(笑)して味わい優先の仕様です。片方は看板として使っていただく事になりました。

淡く見るのはまだ塗装をしていないからで、これにオイルを垂らすと艶のあるピンク色になります。日本の木でここまで色気のある妖しい雰囲気が出るのはイブキヤマザクラぐらい。しかし残念ながら時と共にその妖しさは失われて褐色になっていくのですが、それも味わい。施工後の塗装なので今はその妖しさも見えていませんが、この板だけを選びに来られたはずが、盛り上がり過ぎてしまい、帰りにはテーブルや椅子までご注文いただいたので、改めて納品に行かせたいただいた際にその晴れ姿も拝ませていただくつもりです。

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