森のかけら | 大五木材

『ヒポクラテスの木の受難①〜③』

2014年 3月 21日 金曜日

★今日のかけら・#065 【鈴懸の木/スズカケノキ(プラタナス) スズカケノキ科スズカケノキ属・広葉樹・愛媛産

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Exif_JPEG_PICTUREこの時期に街路樹を見て痛々しくなることがあります。それがこちらの『プラタナス』の姿。和名は『スズカケノキ(鈴懸の木)』ですが、名前の由来は文字通り垂れ下がる実の姿が、山伏の着る「篠懸(すずかけ)」に付いている房の形に似ている事からきているとされています。ただし現在は「鈴懸」という漢字の方が一般的に使われています。ちなみに英名のプラタナスは、その葉がとても大きい事から、ギリシャ語で広いという意味のplatysからきています。

 

 

Exif_JPEG_PICTUREそのプラタナスは大気汚染にも強く、日陰を作り温度上昇を抑えるという本来の街路樹の目的に合致した木であったことから、日本だけでなく世界的にもよく街路樹として植えられています。ちなみに並木・街路樹の効用の項目には、「燃えにくい木を植えることで、地震のときの防火効果をはたしたり、根のはりが深い種を防雪・防風林として利用したりしている。」との記述があります。ところが皮肉にも、そのプラタナスの成長の速さが受難になるのです。

 

 

Exif_JPEG_PICTUREプラタナスは、主に夏季と冬季に大掛かりな剪定をされるのですが、昔はなぜこれほどまでに痛々しいほどの丸刈りにしてしまうのだろうと不思議に思っていました。その理由はいくつかあって、大きな葉が落ち葉となって排水溝などを詰まらせる。またはその落ち葉が原因でスリップ事故などが発生することと、その散乱した落ち葉の清掃。あまりに葉が大きくなり過ぎて、信号機などが見えなくなったり、通行の支障になる。害虫の産卵場所となってしまう。

 

 

Exif_JPEG_PICTUREなどなどの理由により、早め早めの剪定が実施されているとのこと。風情がある程度ならいいのですが、その落ち葉が原因で事故などがあったのでは本末転倒です。激しい排気ガスをものともせず、グングン成長するプラタナスの生命力が我々人間の想定外だったということでしょうか。相手も命のあるもの、人間の思うようにはコントロール出来ません。ガードレールだって食っちゃいます!愛媛大学周辺では腹ペコのプラタナスを沢山見かけることが出来ます。

 

 

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さて本日もプラタナスの木についてですが、この名前の方に馴染みがあるためここではあえて『スズカケノキ』ではなく、プラタナスで通したいと思います。プラタナスにも幾つかの種類があって、アメリカスズカケノキ、モミジバスズカケノキなどもあるようで、日本の街路樹でもっとも多いのはモミジバスズカケノキらしいのですが、ここではザックリとプラタナスとしてひとくくりにさせていただきます。街路樹って案外手に入りそうで入らないものです。

 

 

20140321 2たまたま庭にプラタナスを植えられている方が伐採された木を譲り受けた事もありますが、私の出会うほとんどが街路樹としての存在です。街路樹を勝手に伐採するわけにはいきませんので、道路工事などで伐採された街路樹を業者の方から分けていただく事が主な入手ルートになるわけなので、あまり細かく分類していては材が揃わないので大まかに1つにまとめてプラタナスとさせていただいております。海外ではかなり巨大に成長した街路樹もあるとか・・・。

 

 

20140321 3このプラタナスですが、いろいろ別名も多いのですが、その1つに『ヒポクラテスの木』というのがあります。ヒポクラテスというのは、医療の祖として有名ですが、彼がこの木の下で弟子たちに医学の道を説いた事に由来しているそうです。私がその名前を覚えたのは、1980年に公開されたATGの映画『ヒポクラテスたち』。大森一樹監督の作品の中で、今でも一番好きな映画です。医大に通う医大生たちの青春群像を少し後年になってビデオで観ました。

 

 

20140321 4見るからに神経質が服を着ているような主人公の古尾谷雅人、同じ医大生の柄本明、伊藤蘭、寮仲間の小倉一郎、阿藤海、本作が映画デビューの内藤剛志、 斉藤洋介などなど実に個性的な面々が揃っていて、しかも皆さん若い。初めて観たのが高校生の頃だったのですが、医大生の実態というよりも、桶持って銭湯に行き、殴り合うほどに熱く議論する「古き昭和」の大学生活に何だか憧れのようなものを感じていました。いつか自分もそんな青春を送るのかと・・・

 

20140321 5まあ実際の大学生活は映画のそれとは随分違うものでしたが、70年代のフォークソング、例えばかぐや姫などの歌のシチュエーションや学生運動などに対して非常にシンパシーを感じる部分があって(もう少し早く生まれていたらどっぷりと染まっていたかもしれないと思うとゾッとしますが・・・)こういう70年から80年代の青春群像劇が大好きなのです。プラタナスの皮が剥げ落ちていくように、青春時代も傍から見るとどこか痛々しいものかもしれません。

 


20140322 1話がプラタナスから逸れてしまいましたので話を戻します。そのプラタナスですが、市場で流通することはほとんど無いので、入手するには特別なネットワークが必要になります。手に入らないときは相当探し回っても縁遠かったのに、手に入りだすと数か所から同時に話が舞い込んできたりと、ご縁は不思議なものですが、やはり常に手を挙げてアピールしておくことが大切だと感じます。このプラタナス、材として活用されることは決して多くはないと思われます。

 

Exif_JPEG_PICTUREところが、削ってみて分かったのですが、このプラタナスという木材は実に精緻で滑らかなのです。かなり細かなレース柄のような雰囲気があります。同じスズカケノキ科の仲間には『ホワイトシカモア』があります。決して通直とは言えない木なので、長さのあるものや大きなものは取れないので、出来るものは限られてはおりますが、この妙味の存在を知ってしまって使わないなんてモッタイナイ!弊社では今のところ『森のりんご』と『森のたまご』を製作。

 

 

Exif_JPEG_PICTUREただし用材として市場に流通しているわけではないので、材の保管状況には注意しなければなりません。青染みが入りやすいので、乾燥にも気を配らねばなりません。しかしその伐採の理由が、老木になったから邪魔になるので伐採するとか、虫害の被害を受けたからとか、病気になったからという事も多く、そもそもがベストコンディションというわけではないことが多いのですが、街路樹の二次利用という点を考えれば贅沢は言えません。あるものを活かす、です!

 

Exif_JPEG_PICTUREそれにしてもよく見ると、板目と柾目の特徴がレースウッドのような木柄で大胆にして繊細!【森のかけら】については植物性オイルを塗布しているのですが、腐朽菌の影響を受けている部分も多く、オイルを塗ると濡れ色になって杢目は鮮明になるものの、同時に青染みもより顕著になるので個人的には無塗装の時の表情の方が好きです。『森のたまご』に関しては、『北信越地区〔森のかけら〕特命大使』である村本さんから分けていただいたものです

 

 

Exif_JPEG_PICTUREこのプラタナス、安定的に供給があるようであればかなり面白い素材だとは思うのです。全国的にみても街路樹としてかなりの量の植えられていて、年間相当数の大掛かりな剪定・伐採によって、「産業廃棄物」という名前に変わり灰となっていることと思われます。こういうものこそ、ある意味『眠れる地域資源』と呼ぶべきものではないいでしょうか。排気ガスに耐えた次の舞台は、焼却炉の中ではなく、ひとの手に包まれるものになれればいいなと思うのです。

 

 




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