11月の誕生木が出来るまで・序章*
誕生木・12の樹の物語 | 2013/12/27 PM11:58
がっつり月遅れで恐縮なのですが・・・ようやく11月の誕生木『イチョウ』の出口商品が完成しました。以前にその断片だけもったいぶった書き方でご紹介させていただきましたが、本日はその材料の事も含めて2回に分けて詳しくご説明させていただきます。まずはその材料の木取りから。今回使用するのはこちらの愛媛県産のイチョウ。大きな節が出来る事は前回ご紹介しましたが、さすがにこれだけ大きな節があると、切り分けて使うしかありません。そこで、節を避けて短めにカットしていきます。
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大きな節のところでカットして切り分けするとこんな形になります。今回は『誕生木の出口商品』を作るという大前提がありますので、どのサイズもすべて1つの商品のために使いますが、通常はこの段階で森のかけら用、森のりんご用、森のたまご用、モザイクボード用にと、そのサイズに合わせて細かく用途毎に分類します。これだけ大きな節があっても、節を避けて細かく分割することで、用途は広がります。 |
こちらはカット中に発生したイチョウの木粉。強烈な匂いがするのは材だけではなく、木粉とて十分に刺激的。まだその木粉の使い道は定まっていないもののそのまま捨ててしまうのはあまりにもったいないので、とりあえずビニール袋に集めていますが、その袋も実はかなり溜まっているのです。そうやってどんどん素材が溜まってきて、そのまま置いとけばゴミとして処分されかねないなどという瀬戸際にならないと、アイデアが降りてこない性分で・・・。 |
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まあ今回の狙いは、その木粉ではなくブロック状に切り分けられた切り身の方ですので、木粉にはもう少しの間眠っていてもらうことに。しかしこうやって並べてみると、本当に大魚や肉を切り分けたようにも見えて、さてどの肉をどう料理しようかとイマジネーションが刺激されるのです。節の少ないイチョウもあるにはあるのですが、オリジナル商品開発という事であえて、普通では使いにくい部位を使ってみることにしました。さて、これがどう料理されたかというと? |
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11月の誕生木・ダックエンド①*
誕生木・12の樹の物語 | 2013/12/28 PM10:34
材料が限定された中で、材の特徴を出来る限り活かして、その用途(なるべく身近なところで使ってもらいたい)や価格(12か月のそれぞれの商品にあまり開きがないように)などを考えながら毎月新作を作るというのは、私にとってはかなりの負荷のかかる命題なのですが、こういう事でもないと1つ1つの樹種に対して改めて掘り下げて考えることもないので、今となってはこの商品開発がいい機会だと考えています。 |
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さて、『11月の誕生木・イチョウ』についてですが、その木言葉は「長寿」であり、秋の野山を鮮やかな錦繍に染める「黄葉」する木の代表格です。その絶対的な特徴は独特の匂いです。ギンナンの実を踏み潰した時の匂いは決して爽やかで清々しいものではないでしょうが、個人的には木そのものの存在をはっきりと認識させてくれるその自己主張は決して嫌いではありません。では、その特徴的な匂いを活かす方法はないものか? |
今回の商品開発にはその匂いが大きな足かせとなりました。自分の中で、匂いを活かした商品を作るという大前提を先に掲げてしまった事で、思いもよらぬ時間を費やしてしまいました。その匂いそのものが決して歓迎されるものではないのですから、匂いを全面に出すことがアダとなってしまうのです。そこでまずは原点に返って、イチョウという名前の由来についてもう一度振り返ってみることにしました。 |
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ほとんどの植物を死に追いやった過酷な氷河期を耐え抜いて、中国大陸から日本に伝来した貴重な植物なのですが、その名前について面白い逸話があります。葉が1枚であることから一葉(イチヨウ⇒イチョウ)に転化したという説もありますが、私が支持したいのは次の話。昔、中国ではイチョウの葉の形が、鳥の鴨の足の形に似ていることから、鴨脚を意味する「ヤーチャオ」と呼ばれていました。 |
鎌倉時代から南北朝時代に日本の多く僧侶が大陸へ渡ったのですが、彼らがその言葉を「イーチャウ」と聞き覚えた事から、帰国後に周辺に聞き伝えたものが後にイチョウに転化したという説。つまり、イチョウの葉の形が鴨の脚に似ていたことから、鴨の脚を表す言葉がその名前となったというのです。そこから名前の由来となる鴨のキャラクターが決まりました。次はそこにイチョウの材としての特徴を重ねる作業。 |
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11月の誕生木・ダックエンド②*
誕生木・12の樹の物語| 2013/12/29 PM11:28
人間にとって好ましくない匂いも、この世に存在する以上は、自然界において何らかの意味があるという事。そこで、木の匂いが心地よいという先入観を外して、その匂いの効果について再考してみました。この匂いを嫌っているのは人間以外で誰がいるのか?そこで思い浮かんだのが「シミ」の存在。古い書物などを開くと、手足の長い虫がササッと逃げるのを見たことはないでしょうか。それがシミという名前の虫です。 |
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原始的な特徴を持った昆虫シミは、本を食べる虫として知られています。そのため漢字では「紙魚」と表されます。この紙魚がイチョウの匂いを嫌いことはよく知られていて、先人たちは大切な本を守るためにイチョウで作った栞を本に挟んでいました。鴨と紙魚から思いついたのが、鴨をデザイン化したブックエンド。本の中に潜んでいた紙魚を退治してきた、あるいは守っている鴨の親子という構図なのです。 |
キャラクターデザインは、勿論パルスデザインさん。立体造形は、こちらも誕生木の出口商品の定番JUNE STUDIOの佐伯勇樹さん。懐刀でもある秘密工場(!)の技術力も含めて、自分の中で思い描いたものよりも数倍もいい出来栄えに仕上がったと満足しています。これだと、大きな材は必要なく、切り分けたブロック状の材料でも作ることが出来ます。また、その強烈な匂いが商品特性としても意味が出てきました。
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デザインは、親鴨1匹(A)、親子2匹(B)、親子4匹(C)の3パターンがあります。親子4匹になると、本体170㎜+金物70〜90㎜と結構大柄なのですが、イチョウそのものは非常に軽いので取り扱いは容易です。独特の匂いを活かすため、今回はあえて無塗装としています。「匂い」で苦労したものの、最後はその「匂い」が助けてくれました。やはりこの世に存在するものに意味のないものなどはない!
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イチョウの名前の由来である鴨(ダック)と匂いの効果から生まれたブックエンドですので、商品名は『ダックエンド』。英語的には問題があるのかもしれませんが、もうこの組み合わせしか思い浮かばなかったのでこれに決めました。とりあえずは完成したものの、細かな調整作業が残っておりますので、個別の価格などにつきましては、作業が終わり次第『誕生木』のコーナーにてアップさせていただく予定です。さて次は急いで12月の誕生木!! |
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紙魚は本当にイチョウが嫌いなのか!?*
4. 草と虫と鳥と獣と人と | 2014/01/05 PM9:19
先月、「11月の誕生木/イチョウ」の項で、イチョウの匂いを嫌う紙魚(シミ)の事を取り上げましたが、作業をしていると木の間からその紙魚の姿が!とてもすばすっこい虫なので、見つけてもすぐに逃げ隠れてしまうのですが、その時は大きなチークの板の上だったので、捕獲に挑戦。広い平面の上だったことが幸いして、『森のたまご』や『森のりんご』に使う透明のケースで見事に捕獲成功。どれぐらイチョウが苦手なのか実験してみました。 |
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こういう時のために取っておいたわけではありませんが、イチョウの木粉は沢山ストックしてますので早速、ケースの中にイチョウの木粉を投入。どれぐらいの量が適量(?)なのか分からなかったのでちょっと量が多すぎたかもしれませんが、イチョウの粉に埋もれた紙魚は活動停止。匂いに過剰反応して死んでしまったのか?!あるいは量の圧力で動けなくなったのか?!微妙でしたが、しばらくするとモソモソと木粉の中から抜け出してきました。
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木の上で動いていた時に比べると明らかに動きがスローリーになっていましたが、ケースそのものが小さいので必然的に動きが制限されているだけなのか、イチョウの匂いが効いているのか定かではありません。まあ木粉が好きでなければ好んで木粉の中にいるというわけではないでしょうから、もっと広い平面で実験すればよかったのかもしれません。まあそれでも、伝承や逸話として伝わる木にまつわる話を自らの手で実践してみるという事は大切。 |
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その検証方法は未熟で拙いものの、実際に検証して自分の手や目で確かめるという姿勢は持ち続けなければならないと思うのです。私の場合、森において木として立っている時の話しや、苗木の時のエピソードについてはなかなか体験できにくいものの、材となってからは材木屋として触れた体感の感覚と経験を基に木を語ってきたつもりです。机の前に座っていてもネットから情報は得れるものの、自ら体験してこそ得られるものは尊い、経験は情報よりも強し! |
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無垢三昧、海土魯(かいどろ)開店・・・②*
3. 木の仕事, 8. 気になるお店 | 2014/11/26 PM11:21
同じ町内在住の向井正和君がオープンさせた和食のお店『海土魯(かいどろ)』に、無垢でテーブルなどの作らせていただく事になりました。銀杏(イチョウ) 、樅(モミ) 、霧島栂(キリシマツガ)の3種の耳付き板で、テーブル2台と座卓2台を木取り。モミは4m超あるので、1枚で座卓2台を取ります。イチョウは写真のように元がグッと張り出した形をしているものをそのまま木なりに使う事に。耳付き板を使う場合、こちらが木の形に合わせる事になるので、希望通りのサイズに巡り合えるかどうかも『ご縁』。
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幸いにも今回はほぼ希望通りの材に巡り合えました!木にこだわって希望を胸に弊社にお越しいただいても、なかなかご要望の木に巡り合えず何時間も、時には何日も探しても出会えない方もいれば(そういう時に限って、ご希望サイズの材が数日前に売れたとか、あと数センチあれば長さが足りるのにとか、大事な部分に大きな節があるとか・・・)、すぐに希望通りの材が見つかる人もいらして、つくづく木との相性の良い悪いはあると思います。なにせ相手も生き物、画に描いたように人の思い通りにはなりません。 |
そんな中、幸運にもご希望の材に巡り合えた向井君、お店の洋々たる前途を予感させますぞ!さて、テーブルと一緒にお店で使うビッグサイズのまな板もご注文いただきました。和食屋さんで使うまな板という事で、見た目の印象も考慮してイチョウで作らせていただく事に。イチョウは、まな板御三家の一角で、弾力があることから復元力が強いのと、油分が多く含まれているため水にも強く、刃当たりが良くて刃物との相性もいいのですが、メスのイチョウには独特の匂いがありますので注意しないと料理に移ります。
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イチョウは雌雄異株で、ギンナンの実がつく方がメスですが、一端製材してしまうとオス・メスをハッキリ見分けられる特徴がないため、匂いで嗅ぎ分けるしかありません(何か見分ける秘伝があるのかもしれませんが・・・)。それで、なるべく『芽節(葉っぱが生えていた跡)』の少なそうなものの中から、赤身が張って木目の整った材を選び、端を削っては匂いを嗅いで、匂いの弱いものを探し出しました。そうして完成したイチョウのまな板を抱え、店主もご満悦のご様子!明日は、いよいよ耳付き1枚板のテーブルの話! |
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寛政の森を喰らふ紙魚①*
2. 木のはなし・森のはなし, 4. 草と虫と鳥と獣と人と, 愛媛のこと| 2016/01/24 PM5:00
『Waiwaiwaiカフェ』のカウンターには、久万高原町産の『イチョウ(銀杏)』の木が使われています。通常、カフェやショットバーなどの長いカウンターの場合、長い1枚板でいくか、長さ方向に材を足すか、幅を足してレンガ積みするかのですが、こちらでは横に並べて使うという意趣溢れる使い方をされています。立ち木の時の姿も見ているとのことで、それがオスのイチョウだと分かっています。そのためイチョウ独特の鼻をつく匂いもかなり薄目。 |
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その久万高原町産のオスのイチョウの一部は弊社にもおすそ分けをいただきました。最近、テーブルやカウンターとしてもイチョウが人気のようですが、昔ならありえない話でした。たまたま幅広のイチョウを手に入れて、テーブルなどに提案しても、「そんな柔らかくて臭い木が使えるか~!」とベテランの大工さんには相手にもしてもらえませんでした。ヒノキの柔らかさには異常なほどに寛容なのに、なぜだか不思議でした。 |
ところで、そんな香りに特徴のあるイチョウですが11月の誕生木です(ちなみに木言葉は長寿)。その出口商品を考える際に頭に浮かんだのは、栞(しおり)でした。なぜ栞なのかというと、原始的な特徴を持ち、古い本などが大好物の『紙魚(シミ)』という昆虫がいますが、そのシミが苦手なのがイチョウの匂いで、それを知っていた昔の人々は、イチョウの葉っぱを栞として本に挟み、シミが寄り付かないようにしていたのです。 |
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井部君のお店に立ち寄った時に、ちょうど事務所の2階の物置を整理していて、かなり古い会社の資料が出てきましたよというので拝見させてもらったのですが、それは久万町がまだ菅生村と呼ばれていた頃の昔の昔の町政などの記録。健太郎君のご先祖がそういう仕事をされていたということで、保存されていたことのようですが本人も初見のもの多数で、表紙には寛政年間のものも!寛政年間といえば、今から200年以上昔!明日に続く・・・ |
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えひめのあるうれしいまな板①*
おとなの部活動, 木のものづくり+α, 森の出口, 異業種&産官学| 2017/01/05 PM10:21
以前にご紹介した『おとなの部活動』のステージⅡ『えひめのあるうれしい日』で、弊社が作らせていただいたコラボ商品を少しずつ紹介させていただきます。それぞれの道のプロフェッショナルがおのおのの視点で、作って欲しいもの、作りたいもの、作れるもの、売れるものについて話し合った結果いくつかのコラボ商品が開発されました。今回から、作り手に売り手が加わったことで、実務的な販売の話まで見えてきたので、作る方にもおのずと力が入ります。
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相性のよさそうな素材や面白そうな組み合わせが、縦横無尽に繋がっていくのですが、素材だけでなく人間の掛け合わせも魅力。現場の先端の人間同士の話し合いなので、とにかく話が早い!そこはもっとこうすれば、こんなやり方もあるとか、具体的な提案が五月雨式に降り注ぎ着地点が決まると、その後は信じられない速さで話がまとまっていきます。弊社もいくつかの商品を開発するようになったのですが、その1つがまな板で、完成品がこちら。
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何の変哲も無い、ただの『丸いまな板』。最初にその話を聞いたとき、そんなありふれたシンプルなものを今更・・・という感覚でしたが、よくよく聞いてみれば、丸いまな板って案外無いらしく、あったとしても余計なロゴが入っていたり、過剰な細工が施されていたりと、ただ丸いだけでロゴも何もないお手頃のまな板って欲しくても手に入らないとの事。これが私がどこかから仕入れた情報なら眉唾ものですがセンスのよい商品を扱われる方々の意見なので間違いなしっ! |
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という事で、丸いだけのシンプルな無印のまな板を作ることになったのですが、まな板といえば素材はやはりイチョウ、ホオ、ヤナギの御三家。ただし希望のサイズが、直径300㎜で、厚み30㎜という事だったので、手持ちのヤナギでは小さ過ぎるため、今回はイチョウとホオに絞り込みました。イチョウに関しては匂いの強くないオスの木を使うのが基本なのですが、匂いも個性だし、洗って使うので匂いもいずれ揮発するだろうからとの理解もいただき、メスの木で作りました。続く・・・ |
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えひめのあるうれしいまな板②*
3. 木の仕事, おとなの部活動, 木のものづくり+α, 異業種&産官学| 2017/01/06 AM7:03
イチョウは成長が早いことから大木になり、板材としても大きな材が比較的容易に入手可能な木のひとつです。まな板の大量受注を狙ってというわけではありませんでしたが、たまたま値段が手頃でよく乾燥したイチョウの大盤が結構ありまして、今回300㎜サイズのまな板を木取りするにも手を焼くことがありませんでした。板になると材質からオスメスを見分けることは困難で、私はもっぱらその匂いで判断しているのですが、葉(端)節の多さも見分けのポイント。 |
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どこまで科学的根拠があるのか分かりませんが、木材業界では葉節の多いイチョウはメスと言われています。小さな黒い点のように見えるのが葉節ですが、節の赤ちゃんのようなもので、イチョウでは特に多く見られます。これがいずれ大きくなって枝になるのだが、メスは実をつけようと沢山の枝を延ばすので、葉節が多いのはメスだ、と業界の先輩方からは教わってきたので、盲信しています。まあ匂いの方を判断基準とはしているものの、こちらも参考にしています。
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実際は根拠の無いことなのかもしれませんが、先輩たちが口伝で語りついでいるものって、何かしらの根拠はあるはずなのでまんざら見当違いでもないとは思うのです。葉節があったとしても使うのには支障は無いのですが、やはり見た目のこともあるので、極力葉節を外した木取りをしているのですが、どうしても多少は絡んでしまいます。それも木の個性ですので全面的に否定はしません。それでこんな感じに、耳付きの板からこんな丸いまな板が出来上がりました。
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今回はイチョウとホオの種類としたので、ホオも作りました。残念ながらホオの方は作業工程の写真を撮り忘れたので完成品のみですが、写真だとかなり青く映ってしまい驚かれたりすることがあるのですが、実物はここまで青くはありません。匂いについては乾燥するとほぼ無臭なのですが、調理後にまな板に完成した料理を乗せて、インスタグラムなどにアップするため撮影するような方にとっては、青っぽく映ってしまうホオの色目が少し気になるところだとか・・・。続く |
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えひめのあるうれしいまな板③*
3. 木の仕事, おとなの部活動, 木のものづくり+α, 異業種&産官学| 2017/01/07 AM6:48
自分で料理を作ったりすることが少ないのと、ましてやその写真を撮ってSNSにアップしようという気も無いので、料理が乗った時に料理が映える木の色まで考えが及びませんでした。というか、それよりも直接的な木の特性や質感などの方を重要だという頭になっていました。やはり餅は餅屋。作るひと、広める人(売る人)は車の両輪。今回このまな板はアイデアを提案していただいた感度の高い女子チームのお店で販売していただくことになりました。とりあえずどうにか納期ギリギリで20数枚完成。
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道後公園前に店を構えられる生活雑貨のお店BRIDGEさんに出来上がったまな板を届けに伺いましたが、置かれているひとつひとつにセンスの良さを感じます。つい材木屋という自分の職業を意識しすぎて、木の存在感を押し付けすぎているなあ~、商品が重たくなりすぎているなあ~と反省(だからといって方向転換する気もサラサラないのですが)。店内を見回すと、まな板にロゴや過剰な細工も要らないと言われた気持ちがよく分かります。
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三重で開催された『えひめのあるうれしい日』のイベントにも持って行っていただいたのですが、その後も評判が良くて結構な勢いで売れているとの事。丸くてシンプルな無垢のまな板が欲しい人が多いという、店主の大塚加奈子さん㊨の眼力もさることながら、圧倒的な『伝える力』に感服。ご来店されるお客さんが加奈子さんのセレクトする商品に惚れているファンの方なので、この人が薦めるモノであればというカリスマ力に拠るところ大。ウチでは到底こんなに売ることはできません。 |
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作り手と売り手を分けて正解でした。この商品に関しては、下手に材木屋のくどくて重たい講釈がない方がスマートでいいのだと思います。そして販売していただく、もうひとりのカリスマが、四国中央市の四国のおいしいもののセレクトショップ・まなべ商店の真鍋久美さん。この二人の女傑に丸いまな板の運命を託します。ご興味のある方はいらっしゃいましたら、上記2店のいずれかにお問い合わせ下さい。
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イチョウの匂いについては自分でも気になっていたので、事務所と自宅でも試しに使ってみました(加工中に節の出てしまったB品を使用)。最初こそイチョウ独特に強烈な匂いが鼻についたものの、数回使うとかなり匂いも軽減。イチョウのまな板はオスにするべし!という業界の暗黙の戒律に盲目的に縛られていたのかも・・・。かつて、戦場のメリークリスマスを撮るずっと昔の大島渚は言いました。情報もよかろう。しかし、生の体験は強い。 語るに落ちるなかれ、材木屋(自戒の念を込めて)。 |
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今日の都市林業・イチョウ篇*
都市林業とビーバー雑木隊 | 2021/04/10 AM7:30
今回の都市林業は愛媛県今治市玉川町産のイチョウです。某工房の敷地に生えていたイチョウを伐採することになり、その一部をもらい受けました。直径は600㎜前後で、イチョウとしては大きなサイズではありませんが、思っていた以上に重たくて製材所と現場を4トン車で2往復。あんまり葉っぱが落ちて掃除が大変なので庭のイチョウを伐ったんですが引き取ってもらえたりしますか、という話はよくあるのですが、庭木のイチョウって大木にならない割に枝が多くて用材としてはなかなか用途を見つけにく事が多いのです。 |
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あまり期待せずに製材してみたら予想以上にいいものが取れました!都市林業で手に入る木って、大木や通直な木は少なく、こちらも『森のかけら』などのレアな種類をカバーしたいという思惑があるので、材そのものに大きな期待はしていないので、思わずいいものが挽けるとテンションが上がります。イチョウは収縮が少なく割れにくいうえに比較的乾燥も早いので、この材の出番も早そうです。これで全体のおよそ半分ぐらいですから、当分は『愛媛県産イチョウ』で困る事はなさそう。 |
今回は、伐採してすぐに引き取り製材しましたが、4月になってだんだん暖かくなってきましたのでこれからはスピード感が大事になってきます。雨の多くなってくるので、伐採後速やかに引き取り製材しないと、虫や腐朽菌のご馳走になってしまいます。今回は理想的な速さで挽き終えたのでまだ水分をたっぷり含み瑞々しく、樹皮も簡単に剥げます。うまくいけば長いままツルンと剥けて、可愛いエクボとご対面。綺麗に剥けると次々やってしまいなかなか終われない。気がつけば足元に剥かれた樹皮の山。 |
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弊社では基本的に40㎜とか45㎜に厚みを決めて、すべて耳付きの板に挽くのですが、最初と最後にはこんなものが残ります。普通ならチップ行きなのでしょうが、うちではこれだってしっかり木として生かします。樹皮を剥がしてしまえば、木肌が白くて形が面白いので看板やオブジェにも使えます。最近ではいろいろなバリエーションのものづくり人がご来店されるようになってきたので、従来の用途以外の出口が広がってきていて、こちらで用途想定するのも意味が無くなってきています。さあ、ご自由に料理ください! |