森のかけら | 大五木材

★今日のかけら 【ヒッコリー】 hickory クルミ科・広葉樹・北米産

とりわけ珍しいという木ではないのですが、なかなか縁がなく出会うことが出来ませんでした。私も所属している愛媛木材青年協議会で「『どうぞのいす』を子供達に贈る」という活動をしているのですが、その絵本がとても好きで子供が小さい頃はよく読んでやりました。香山美子先生の親しみのある語り口と柿本幸造先生の温かみのある絵が子供達にも大人気です。本が好きになるか、嫌いになるか、子供の頃の読み聞かせは本当に大事だと思います。

その両先生のコンビ作は多いのですが、「どうぞのいす」に続くお気に入りこそが、「ヒッコリーのきのみ」です。この本を子供に読んでからというもの、「ヒッコリーってどんな木?見てみたい」とせがまれます。しかし当時うちの会社にヒッコリーはなく、恥ずかしながら私もヒッコリーを扱ったことがありませんでした。木を見たことはありましたが、なにぶんヒッコリーでという注文が入りることももなく、またわざわざヒッコリーを勧める業者もいなく、そんなことでずーと縁がなかったのですが、実は子供に見せてやりたいという一身で探していました。

 

しかし出会いにくいという事は、あまり需要がないということでもあります。ヒッコリーの木はしなやかで弾力がありかつてはスキー板としてよく利用されていました。いまではほとんど見かけることはなくなったようですが・・・衝撃の吸収力が高く曲げにも強いよいう特徴があるので、スキー板のほかにもハンマーピック斧の柄にも最適だとされています。他にも釣竿とかドラムスティックゴルフクラブラクロスのラケット車輪のスポークはしごの踏み子など結構用途は広いのです。けれども国内で有名なのは材料よりも、肉の燻製用チップの方かもしれません。いい香りがつくようです。スーパーなどでも販売しているのでよく見かけることもあると思います。

植物学上トゥルーヒッコリーピーカンヒッコリーも分類されます。ピーカンヒッコリーの方が褐色なのですが材の性質そのものはほとんど変わらないようです。レッドヒッコリー、ホワイトヒッコリーと呼び分けることもありますが、これは心材に近い赤身か、辺材の白身かの違いだと思います。散孔材なので、肌目は結構ザラザラした感触ですが仕上がりは綺麗です。オイルを塗っても木目は明瞭ではありません。白太部分も淡い褐色で、ホワイトアッシュと比べても少しくすんだ印象です。クルミ科と聞くと軽いのではと思うかもしれませんが、比重の06~1でかなり重たいです。伸縮が出やすいのでよく乾燥した木を使う必要があります。

弊社ではヒッコリーの挽板と平板があります。挽板は長さ1.8m~2,4mで幅が127~279mm厚みが32mmで60枚ほどあります。倉庫の奥の方にしまっているので画像は後日アップします。耳を断っているので幅剥ぎの家具などに使うつもりです。これはよく乾いていますがやはりズシリとした重量感はあります。もうひとつの平板は長さ2,8m~3,0mで幅300~700mm厚み50~70mmの物が6,7本ありますが、これは・・・重いっ!かなりうちの倉庫で眠ることになりそうです。この木のクラックのひどい部分で『森のかけら』を作ったのですが、案の定乾燥が甘く縮んでしまいました!やはりあせっては駄目ですね。ちなみに値段は¥80,000~¥180,000/本です。挽板の方はご希望があれば見積り致します。

ヒッコリーの木はリスとある約束をしています。これこそ動物界の素晴らしい循環システムです。どんな約束か?知りたい方は是非「ヒッコリーのきのみ」を買って読んでみてください。

 

ブルーヒッコリー

3. 木の仕事

20100816 ブルーヒッコリー①お盆前にいつもお世話になっているイシムラトモコ建築設計石村智子氏が来社。今手掛けられている店舗(美容室)の内装で使う木をお求めに来られました。いつも大胆なセンスで木の新しい魅せ方を披露していただき、とてもありがたい木の友なのですが、毎度の事ながら時間はありません!決まり次第「即納」が基本です。それはこちらも重々承知です。それよりも、実際に倉庫に来て、膨大にある材の中から『閃(ひらめ)きの1枚』が探せるまで、蒸し風呂のような倉庫での木選びに延々と付き合ってくださる姿勢に感動すら覚えます。夏場の倉庫はかなり厳しい状態となっております。汗と埃との格闘です。今回彼女が持ってこられた「課題」がここちらのタイル。さすがです、この色を選び出すのが石村智子です!さあ、蒸し風呂の中でこのタイルに負けない木選びが始まりました!

 

20100816 ブルーヒッコリー②このお方の偉いところは、どんなに急いでいても決して妥協をしないところ。そもそも常人では思いつかないような用途や見せ方、色合いを求めて来るのですから、そんな思い通りの材がそう簡単に見つかる訳がありません。何十枚という材を引っくり返し、引っ張り出し見る、見る、見る!その全てに付き合うところが男らしい、いや素晴らしい!設計士の鑑です。とりあえず数枚の候補を絞り、実際に削ってみます。いつも調子のいい事を喋ってばかりいる口だけの男と思われているかもしれませんが、私もやる時にはやります!

 

20100816 ブルーヒッコリー③数ある材の中から、今回彼女のお眼鏡にかなったのがこの木、【ヒッコリー】です。以前にこのブログでは、木の実の絵本の話でご紹介しました。ヒッコリーは、肌目が粗いことから化粧材としてはあまり利用される事が少ない木です。軽軟で木目の華やかな木と同じようとで使っても仕方がないので、こういう材が活かせる用途を見つけれるかどうかだと思います。ヒッコリーはとても強靭な木ですが、辺材と芯材の色の差が顕著でところどころに褐色の縞模様も出たりして、色合いの調和を求める場面での出番は少ないですが、衝撃吸収力があることからドラムスティックや柄、釣り竿などに使われます。中でも有名なのがスキー板ですが、見た目よりも性能優先の用途に利用される事が多いようです。文字通り性能重視の最たるものとして『燻製(スモークチップ)』という用途があり、良い香りがつくことからアメリカでは根強い人気を誇っています。

 

20100816 ブルーヒッコリー④在庫に持っているヒッコリーは、長さが2m前後で幅が120~280㎜ぐらいで厚みが32㎜の平板挽き材ですが、無塗装だと実に淡白に見えます。その割りに比重は0.9ぐらいあってとても重たいので、家具には厳しいかなと悩んでいたのですが使い方次第では存在感も示せそうです。画像は全てサンダーで研磨後に植物性油を塗ったもので、褐色の濡れ色になっていますが、予想以上にいい雰囲気に仕上がりました。あら?選びに選び抜いた割には節があったり、筋が入ってると思われるかもしれませんが、敢えてこういう材を選んでいるのです。

 

20100816 ブルーヒッコリー⑤一般的には節がない、木目が中目で整っている、色合いが均質、というのが材を選ぶ基本と思われているかもしれませんが、彼女の選択基準は、材単体の良し悪しではなく、他の素材とのバランスです。先に樹種ありきではなく、互いをもっとも活かしあうマテリアルとしての素材感を大切にされています。ただの変わり者、などとは口が裂けても言いません。なぜなら私もそうだから!一般的ではない者同士だからこそ波長が合うのだと思うのです。勝手に断言してますが多分そうだと思うのですが・・・。 ですから、場合によっては激しい木目や強い癖、大きな節、赤味と白身の混在などのある物を敢えてぶつける場合があります(そういう場合に木を使う?)。それによって異素材が互いに個性を引き立てあうわけです。言葉で説明すると薄っぺら苦なりますが、多分ある日突然にイメージやカラーが降りてくるんでしょうね。

 

20100816 ブルーヒッコリー⑤

今回のインパクトのあるブルーなタイルを引き立てるためには、負けない力強さと存在感が必要との事で、褐色の縞模様がガツンと入って、節も適度にあって、木目がくズッシリしたヒッコリーが選ばれたわけです。彼女のご要望の説明がだいたい「シュッとした」とか「パンチのある」とか「バシッとした」などほとんどが擬音であるのですが、その翻訳も出来るようになり、自らも擬音で応えるようになりました!むしろ、その方がイメージが湧き易かったりして、気がつけば私も結構使っているなあ~。擬音の方が何だかそのものの印象がストレートに伝わるような気がするのですが、勝手な思い込みとボキャブラリー不足の言い訳です。相手には伝わっていないんでしょうけど・・・。どこかに翻訳家いないかしら。さて、現場でのブルーなタイルとの対峙が楽しみです。

 

 

 

マートンとオールドヒッコリー

2. 木のはなし

20100926 マートンとオールドヒッコリー①日本のプロ野球はセ・リーグもパ・リーグも最後の最後まで息が抜けない白熱したデッドヒートを繰り広げています。我が愛する阪神タイガースの日々の奮闘ぶりにも、毎日ハラハラドキドキさせていただいております。残り試合も少なくなっていよいよ厳しい戦いとなっておりますが、ひと昔前の暗黒時代を考えれば、この時期まで優勝争いに加わるような強豪チームに変貌してもらってファン冥利に尽きます!優勝するに越した事はありませんが、1試合に22点も取る試合があったりと、この時期にチーム打率が2割9分近くもあるなどというのは信じられない事です.打てない打てないと言い続けられてきた阪神打線のこの凄まじい打撃力は、それだけで多くのタイガース・ファンの溜飲を下げたのではないでしょうか。

20100926 マートンとオールドヒッコリー②遅ればせながら能美が復帰してくれてすぐに結果を出し、秋山のルーキー離れした活躍も拍手喝采、屈辱のブーイングを歓声に変えさせた久保田の豪腕も、若虎掛布のデビューを髣髴させる藤川俊介の颯爽も、いぶし銀の仕事師・平野の打って守っての八面六臂にも、涙が溢れ出そうになるほどの感動を覚えるのですが、もしもこれで優秀したらMVPはやっぱりマートンでしょう!来日1年目での200本安打も驚異ですが、ヒーローインタビューでいつも神に感謝を捧げる敬虔なクリスチャンで、野球に取り組む真摯な姿勢には人間性が現われています。

20100926 マートンとオールドヒッコリー③イチローの年間210本の記録も更新しそうなバットマンが、こだわっているのがアメリカから持ち込んできたバット。そのバットを使い始めてから、メジャー時代を通じて折れる回数が格段に減ったというのが、目の詰まったオールド・ヒッコリーのバットなのだそうです!ヒッコリーでスポーツといえば、スキー板が専売特許かと思っていたので意外ですた。200本を越えるヒットを積み重ねたのがヒッコリーだったとはなんだか嬉しくなります。ところがよく調べてみたらこれが意外な事に、「ヒッコリーの木」ではなかったのです!?

20100926 マートンとオールドヒッコリー④実は、オールドヒッコリーの名前の由来は「ヒッコリーの木」とは無関係で、材質はハードメープルなのです。ではなぜオールドヒッコリーというかというと、これはそのバットを作っている会社の社名で、そのオールドヒッコリー社は1999年創業のバット専業メーカーで、テネシー州のグッドレッツビルという場所にあります。そこのすぐ傍らにオールドヒッコリー湖という人造湖があり、その湖の名前にちなんで名づけられたのです。ヒッコリーの木とは直接関係がなかったのです。

20100926 マートンとオールドヒッコリー⑤オールドヒッコリー社のバットは、主にアパラチア山脈西側で採取された最高品質のハードメープルを使用しています。ハードメープルは、ボウリング場のレーンにも使われるほど堅牢で、反発力が高く、折れにくい事から最近では多くの大リーグ選手がこのバットを使っています。本物のヒッコリーの木もハードメープルに負けず劣らずタフな木で、昭和初期には実際にヒッコリーで作られたバットも輸入されていたという事ですから、「ヒッコリーの木のバッ」と「ヒッコリー社のバット」は実にまぎらわしい・・・。それでは今度はなぜその湖がオールドヒッコリーと呼ばれるのかという事が気になります。すると、これまたドラマチックな物語が潜んでいたのです!

 

オールドヒッコリー大統領

未分類

20100927 オールドヒッコリー大統領①阪神タイガースのマートンの1本のバットから壮大な話になるのですが・・・アメリカ合衆国の第7代大統領のアンドリュー・ジャクソン、その人が深く関わっているのです。A・ジャクソン大統領(1829-1837)は、サウスカロライナの未開拓森林地帯で生を受けました。現在のサウスカロライナは、建国期の雰囲気をそのまま残したような町並みが人気の観光地ですが、南部貴族が残した優雅な建物は、かつてこの地で行われていた黒人奴隷の貿易が犠牲となっていて、この町には歴史の影が深く刻み込まれているのです。奴隷解放を主張したA・リンカーンが大統領に就任が決まると、サウスカロライナ州は就任式を待たずに合衆国を独立しました。その後も幾つかの州が分離・独立し、それが南北戦争の引き金となるのです。

 

20100927 オールドヒッコリー大統領②サウスカロライナにはそういう歴史的な背景があるためか、同州出身のA・ジャクソン大統領も典型的な南部思考の持ち主だったようで、その政策も極端でした。彼の唱える民主主義はあくまで白人に限定としたもので、「黒人は私的財産だ」と発言して、奴隷解放運動を否定しました。また、インディアン強制移住法を提案して、先住者であった彼らの土地を取り上げ強制的に東部に移住させ、残った肥沃な南部の地に広大な綿花を植えたのです。そういう強行的な手法は、君主国になぞらえて「アンドリュー王一世」とも揶揄されたそうです。

20100927 オールドヒッコリー大統領③実はアンドリュー・ジャクソンは、初の貴族出身ではない大統領であり、正規の教育を受けていなかったとされています。肉親全てを南北戦争で失くし、自身も英国軍の捕虜になった経験があり、決して恵まれた環境にあったわけではありません。戦後の混乱期において自らの力だけで這い上がってきた彼にとっては、力こそ正義だという偏ったイデオロギーだけが拠り所だったのかもしれません。軍人時代には頭角をあらわし、大佐になって米英戦争では輝かしい戦歴をあげました。その時の戦果によって彼は後にアメリカ合衆国大統領にまで上り詰めるのです。活躍した米英戦争の主戦場が森林地帯であった事から、(きっとその地でたくさん生えていたのであろう)ヒッコリーになぞらえて、古いヒッコリーのように頑丈」(tough as old hickory) という意味の、「オールド・ヒッコリー」というニックネームが付けられたというのです。

 

20100927 オールドヒッコリー大統領④しかし、その強権的な手法には批判も多かったようで、史上唯一、議会から不信任決議をされた大統領でもあり、独立戦争や南北戦争という暗黒の時代の象徴として、その期間を「エイジ・オブ・ジャクソン」と呼ばれたりもしています。未遂に終わったものの暗殺の標的にもなるなど、問題の多かった大統領でした。、「オールド・ヒッコリー」という愛称にも、タフであるという意味と同時に、硬くてどうにもならないほど頑固という皮肉も込められているようにも思うのです。それではヒッコリーが可哀想ですが・・・。

 

20100927 オールドヒッコリー大統領⑤さて、アンドリュー・ジャクソンの愛称にも使われたほこのテネシー州からミシシッピ州、アラバマ州一帯は、19世紀以前には広大なヒッコリーの森が広がっていたといわれています。まだ本格的な伐採機械もない当時、ほぼ手付かずの原始林が延々と連なっていたのでしょう。それは人間の介入を拒むような鬱蒼とした森で、さぞ神々しいものだったと思います。それが何かの例えになるぐらいですから、当時の人々には畏敬の対象でもあったと思うのです。あくまでも私の推論ですが、物の木としても丈夫な高齢木のヒッコリーの木にちなんで、長く丈夫でありますようにとの思いも込めて人造湖に「オールド・ヒッコリー」の名前を冠したのではないでしょうか。 その思いは、湖からバット製造会社の社名へとつながっていくのでしょう。南北戦争からマートンのバットまで、ああ、果てしなき『木物語』!

 




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