★今日のかけら・#043 【カキ/柿】 カキノキ科カキノキ属・広葉樹・愛媛産
本日は、ドラゴンハウスの2日目の見学会なのですが、父の法事と重なり遠く野村の空から盛会を祈念しておりました。さて、それではドラゴンハウスの『木』のご紹介。まずは玄関先からですが、ウエスタンレッドシーダーの重厚感溢れる扉を開けると現れるのが、左側の壁から飛び出した変な形の耳付板。一見して何の木か当てられる方はそうはいないと思います。宮崎県産の『柿』の1枚板。柿といえばほとんどの方が食料の柿の実を想像されるでしょうが、材としても趣きのあるものは床の間や家具材などにも珍重されてきた立派な用材でもあるのです。
そもそも柿は、カキノキ科カキノキ属の落葉広葉樹で、学名もDiospyos kakiで「カキ」の名前がついています。英語名でも「カキ」あるいは「カキ・フルーツ」で通用するほど世界にも浸透しています。同属の植物はアジア、アフリカを中心におよそ500種類が分布しているとされ、日本では全国各地でさまざまな品種の改良が進められ、全国で甘柿、渋柿ともに4~600種類もの品種が栽培されているということです。高級なゴルフのクラブヘッドにも使われる北米産の『パーシモン』も日本のカキと同種です。大きく割れたりねじれたりして、うまく乾燥させるのが非常に難しい木ですが、きちんと乾燥させるととても硬質になり、衝撃に対する反発力にも優れた性質を有することから、ゴルフのヘッドに利用されるようです。私が小さな頃は、柿の木は折れやすいので登ってはいけないと言われていましたので、木材屋としてカキの材を扱うようになってそのギャップに妙な違和感を覚えました。
まあ庭に植えられている柿の木は子供が両手で抱えられるぐらいのもので、先端の枝ともなれば細く、古木になると洞(うろ)や腐りもあり実際に危険だったのでしょう。建築で使われるような大径木の銘木とは一緒にしてはいけないのですが、それほど大きなカキがあると知って、実際に見たのは材木屋になってだいぶ先のことでしたから。他にもその特徴を生かし囲炉裏の炉縁や框に使われたりしてきました。俗に『柿の木は火に強い』と口伝で受け継がれてきているのですが、実際に本当なのでしょうか?黒味の部分は確かに強いとは思うのですが・・・。個人的な推察ですが、昔から『柿は竈(かまど)の煙の当たるところを好む』といわれてきたのは、天井から柿を吊るして、囲炉裏の煙で『蒸し柿』を作っていた伝統に由来していて、そこから柿の材も煙で時間をかけていぶし乾かすと硬くなるという事から、煙=火との関連で『火にも強い』とされたのではないかと想像するのですが。
高齢木の柿の木になると、体内の成分と土中から吸収した成分とが反応して深い黒味が出ることがあります。まるで墨絵のような漆黒で、後からつくったかのような色合いです。これが全身に出て、孔雀の羽のような杢目になったものを『孔雀杢』と呼んだりして、高級家具や指物などに珍重されますが、どうしてこの黒柿が生まれるのかその詳しいメカニズムは解明されていないのです。同じ土壌に植えた柿の木でも出るものと出ないものがあり、木目の美しい黒柿になると、一説には千本に一本とも万本に一本とも言われているほど価値の高いものなのです。 左の画像は、熊本県の『神城文化の森』内の市房杉記念館の中に展示されてあった見事な黒柿の飾り棚です。恐らくほとんどが共木で作られていると思われますが、最高級の縞柄の黒柿です。
そんな高級銘木には及びませんが、ドラゴンハウスの玄関にも漆黒の黒味の出た柿の木を使わせていただきました。立派な柿の一番外側にあたる部分で、変形の耳が付いていますがそこがまた面白いところでもあります。甘い実のなる柿は虫の害も受けやすく、白太には無数の虫穴がありましたが、これも古木ならでは。ドラゴンマスターも快く受け入れていただき、丁寧に虫穴を磨いて仕上げさせていただきました。なんともいえない侘び寂びの風情がありますぞ。ドラゴンハウスを象徴するような味わいのある1枚です!