森のかけら | 大五木材

★今日のかけら・#044 【ホワイトオーク】 White oak  ブナ・広葉樹・北米産

今日のかけら・ホワイトオーク

20100418 くろうまホワイトオーク3ミスター会の研修旅行の続きですが、私は何を見ても重箱の隅をつつくように『木』との関わりを探す人間なので(そうでなければ『森の5かけら』のネタなど浮かんできません!)、見るもの訪ねるもの何にでも興味津々です。周囲からはそざ奇異の目で見られそうですが、もう既にそういう人なんだと思われているので全然平気で我が道を行きます!そんな私に2つの意味でとてもありがたい場所がコースに取り入れられていました。宮崎県高千穂の『くろうま神楽酒造・トンネルの駅』です。ここは元々JR(旧国鉄)が実際に路線として使うつもりで作ったトンネルだったのですが、計画変更で結局使われることのなかった廃トンネルを神楽酒造さんが焼酎を醸造させる貯蔵庫として再利用されています。トンネルの長さは1,115mにも及び、中に入ると奥に行くほどに空気がヒヤリと冷たく感じられます。棚一面には樽が整然と並べられています。

20100418 くろうまホワイトオーク2トンネル内は1年を通じて湿度が70%、温度が17度という環境で、焼酎の保存庫としては最適ということです。この樽ひとつで、麦焼酎45度の原酒が440リットルも入っているという事です。ウィスキーといえばホワイトオークの樽は必須ですが、焼酎もホワイトオークの樽を使うのは知りませんでした。全部で約5,000樽ほどあるという事です。見学できるのはトンネルの入り口から10数メートルまでですが、トンネルの奥に向かって延々と続いています。どの種類の焼酎でも好いという訳ではなく、クセの少ない麦焼酎がこの貯蔵法に適しているようです。

20100418 くろうまホワイトオーク4店内で試飲させていただけるのですが、長期貯蔵されたためでしょうかウイスキーのようなまろやかさと香りがありました。ついつい、これもあれもとたっぷり試飲させていただきました!試飲だけでは申し訳ないので礼儀としてちゃんと1本購入させていただきました。ホワイトオークにはチロースという成分が含まれていて、他のオーク類と比べても非透水性が高く、樽材としての特性を備えています。長期蒸留している間に、ホワイトオークの抽出成分が溶け出し、あの琥珀の色合いと独特の香りを生み出すといわれています。焼酎にも同様の事がいえるのでしょう。大変まろやかな焼酎でございました。

20100418 くろうまホワイトオーク7

ホワイトオークと相性の良い真鍮の金具で留められしっかりした造りです。樽の小口には製造日などが書いてあり、その上に左のようなプレートが貼ってありました。人間がホワイトオークを一生懸命に曲げているキッチュなデザインと『ARIAKE YODAL』の文字が。『ヨーダル』?北アメリカ産のホワイトオークのイメージから、樽も現地からの輸入品かと思っていましたが、『洋樽』=『ヨーダル』でした。つまり『有明洋樽』という会社のローマ字表記でした。いかにもアメリカ人が描きそうなデザインでしたが洒落ています。

20100418 くろうまホワイトオークこのトンネルの記事がたくさんネットにもアップされていましたが、『オーク樽=樫(かし)樽』と誤って表記されている方も多く見かけました。オークが始めて日本に輸入されたときに、樫と誤訳された事が未だに尾を引きずっているからです。今でも多くの辞書で、『オーク=樫』となったままの物も多いですから。一般的には楢でも樫でも変わりがないように思われるのでしょう。特に白樫の場合だと、通常扱いのないプロの材木屋では、端材を見て見分けるのは難しいかもしれません。持ってみれば比重の違いで、重たい方が樫だと分かります。ちなみに白樫は、南九州に多く分布する『柞木(イスノキ)』と1,2を競う国内最重量級の木です。とはいえ、やはり日常触れてないものを見分けるのは難しいかも知れません。特に加工とか塗装されてしまうと尚更です。この樽でも予備知識がないと焼酎=ホワイトオークとは発想しにくいですから。

20100418 くろうまホワイトオーク5

お店を出る間際に見たことのある物を発見。おおっ、これは以前にパルスデザインの大内さんが東京で出会った『面白そうなモノ』の中にあった『焼酎こんぺいとう』ではないですか!ここで作っておられたんですね・・・こういう事が人やモノをつなげていきます。デザインも愛らしく値段もお手頃です。そこまで思いながらも、焼酎飴は苦手だったので結局購入せず!やはり焼酎は嘗めるよりも飲むほうが・・・。

 

ハマーハウスの選択・・・1

3. 木の仕事

20110120 ハマーハウスの選択・・・1①昨年の事になりますが、また1軒素敵な家が完成しました。以前から少しずつご紹介させていただいていた、ワンズ㈱さん設計・施工のH様邸です。まだお若いHさんご夫婦と始めてお会いしたのは数ヶ月前。どなたが来られようとも、いつも通りの木の話しか出来ません。家造りの真髄に触れるような立派な話も出来ません。木の好きな材木屋の他愛もないお話ばかりですが、それでもご夫婦とも熱心に聴いていただきました。家造りでもっとも大切なのは信頼関係です。形も何もない所からモノを生み出す仕事です、信頼関係がなければこれほど恐い事もありません。しかしこういうものって相性も大事です。ありがたい事に、ハマーさん(H様のハンドルネーム)ファミリーとの相性はバッチリでした!既に楽しい家造りの予感がありました。完成した新居の前で家族の記念撮影。

 

 

20110120 ハマーハウスの選択・・・1②今回もたくさんの樹種の無垢材を使っていただきました。あまりに多くて1度では紹介し切れませんので、数回に分けてご紹介させていただきます。まずは、ハマーさん家族も悩みに悩まれていたフローリングから。こちらが塗装前の状態。ウクライナ産の150㎜の幅広のホワイトオークです。ホワイトオークについては、以前に【今日のかけら】でご紹介しましたが、その時は研修旅行で行った焼酎工場の樽の話になってしまい、材の特徴などに触れていなかったように思うので、改めてホワイトオークについて。

 

20110120 ハマーハウスの選択・・・1③上の画像は施工直後で、まだ塗装していませんのでやや茶褐色に見えますが、植物性オイルを塗装するとこんな感じに仕上がります。カメラで撮ると、照明の種類にもよりますが、かなり暖かみの感じられる色合いになります。この商品は、ラスティック・グレードという選別で、全体的に色ムラがあり、柾目・板目込み、小さな端節(はぶし)、カスリも込みというかなりワイルドな貼り上がりになります。そもそもオークは、「キング・オブ・フォレスト」とも呼ばれるぐらいですから、男性的イメージの強い雄雄しい材ではあります。

 

20110120 ハマーハウスの選択・・・1④オイルを塗ると、水分を吸収してやや毛羽立ちがありますが、先日の『オニグルミ』の時にも言ったように、私はやや荒めで触った時にしっかりと『木』を確認出来る肌触りが好きです。フローリングにおける節は、そこにかつて枝があった名残です。床板がまだ森林の一部であった頃、は風や雪、雨などと烈しく格闘し、なんとか折れずに生き延びようと木がもがき苦しみ、そこに木のエッセンスが凝縮され、板に削ると『縮み』や『変杢』が現われ、人はそれを己の人生に重ねたりして特別な思いで愛でます。人生にも節目節目があるように、木にも生きた証しが残っています。節の具合からその木が森で立っていた時の姿を思い巡らせし、自然素材を使う事の醍醐味と喜びを感じられます。材を選ぶときには、その人の人生感も知らず知らずのうちに反映されてくるのだと思います。威風堂々、ホワイトオークの力強さはハマーさんの心意気!

 

20110120 ハマーハウスの選択・・・1⑤見た目だけで選んだという人だって、潜在的にその材と同調する感覚的なものがあったはずです。住まい手の中に抽象的にあったものを工務店さんなり設計士さんが具象化し、棟梁たちが作り上げていくのが家造りですが、おおもとの「設計図」は住まい手の頭と心の中にあります。「こう建てたい」ではなく、「こう住みたい」が家の雰囲気や匂い、質感、たたずまいなどとして現われてきます。「家族でこう暮らしていきたい」と願うハマーさん一家の強い思いが隅々にまで反映されています。そのご夫婦の思いを、しっかりと子ども達も肌で感じていて、子どもたちなりに楽しんでいるのも素晴らしい。何度も足をお運びいただき、打ち合わせをさせていただきましたが、深刻にならずに真剣に家造りを楽しんでいらっしゃる様子がよく伝わりました。選ばれた一つ一つの部材から、ハマーさんご夫婦の信念と覚悟が見えてくるのです。




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