先日、市内某所で伐採された『メタセコイア』の幹と枝を幾つか分けていただきました。よく混同されがちですが、メタセコイアは『世界一高い木』ではありません。アメリカのセコイア国立公園にあって、世界で一番高い木の一族と呼ばれているのは『セコイア』であって、『メタセコイア』ではありません。高い木のランキングの上位を独占する『セコイア』は商取引では『レッドウッド』とも呼ばれています。ちなみに現在世界で一番高いとされているセコイアは高さ115.61mの巨人・ビッグツリーです。
セコイアはスギ科セコイア属で学名は、Sequoia sempervirens(セコイア・センペルビレンズ)。一方メタセコイアはスギ科メタセコイア属で学名は、Metasequoia glyptostroboides(メタセコイア・グリプトストロボイデズ)。セコイアは今から2億年以上も前に地球上に現れたとされている最長老一族でもあります。恐竜時代を生き延びたセコイア一族は、その巨躯で世界一の称号を得て華やかなスポットライトを浴びる一方、メタセコイアは遥か昔に絶滅された種と考えられ、ふたつの種族の立場は大きく明暗が分かれました。
メタセコイアは、1939年に日本の関西地方の第三紀層で、常緑種のセコイアに似た落葉種の化石が発見され、発見者の三木茂博士によりセコイアに『メタセコイア』と命名されました。メタ(meta-)とは、「高次な」とか「超」、「変わった」などの意味を持つ接頭語で、それまでに発見されていたセコイアやヌマスギとは異なる種類ということで『メタセコイア属』が新たに設けらそこに分類されました。化石として発見されたため、メタセコイアは古代に絶滅した木として認知されていました。
ところが1945年に中国の四川省で現存していた『水杉(スイサ)』と呼ばれていた木がメタセコイアと同種とされ、晴れてメタセコイアは『生きている化石』として市民権を得たのです。カナダ北部やシベリア、グリーンランドなど北半球の寒冷な北極周辺に広く分布していたため、耐寒性、耐湿性は非常に高く、病虫害も少ないのが特徴です。日本には1949年に国と皇室が種子や苗木を譲り受けました。その後は成長が早いという特性を活かして全国の公園や学校、街路樹などに大量に植林されてきました。明日に続く・・・