★今日のかけら番外篇・E24 【アンゲリン】 Angelin マメ科・広葉樹・中南米産
昨日、海外の木の中にはその正体がよく分からないモノのあるという話をアップしましたが、かなり情報が出るようになった現在でも、「この木何?」という木にしばしば出会います。240種も木を扱っていてまだ知らない木があるの?なんて言われる事もあるのですが、勘違いしてはいけません。たったの240種です!一説によれば、世界中にはおよそ10万種の木があると推定されています。ちなみに植物は30万とも・・・気が遠くなる数字。
【森のかけら】は、端材を捨てるのがモッタイナイという母親と、世界中の木を見てみたい、触ってみたいという好奇心の父親という両親から生まれたというのがコンセプトですが、10万種となるとライフワークどころか一族としての使命?!さて、そんな初対面の木がこちらの『ダリナ(darina)』という木。木材市場で買ったのですが、見たのも初めてならその名前を聞くのも初めて。しかも情報はほとんどなくて分かっているのはその名前だけ。
仕入れた材を削って見たりして見る限り、印象はマメ科っぽい雰囲気で非常に木目が緻密。あれやこれやと文献を引っ張り出しては調べましたがなかなか正体がつかめず!探す事数日、僅かな手がかりを元にようやく辿り着いたのが1つに名前。メキシコの中部から南米の北部に至る地域に分布(一部は熱帯アフリカにも)しているマメ科の木、『アンゲリン(Angelin )』。これはイギリスでの呼称で、ブラジルでもこの名が使われています。
落葉性の木で通常は樹高が6~15m程度だそうですが、この木には小型から大型のものまで含めておよそ30種あって、中には直径が1~1.5m、樹高が30mにも及ぶ巨大なものもあるそうです。芯材の色は黄褐色から濃赤褐色までいろいろで、木理はかなり通直で肌目は粗く重くて堅い等の材の特徴から考えても、ダリナの正体がアンゲリンではないかと推測しました。ただこの樹種は分布が広く、各国で様々な呼び名があってダリナは確認出来ず・・・。更に明日へ
10万分の1の奇跡 ②アーモンド&鶉杢
2015年 3月 20日 金曜日 at 7:05 AM 1. 今日のかけら
昨日に続いて、『ダリナ』の捜索についての話です。ちなみにAngelin の名前で呼ばれているのはアメリカ、ブラジル、ペルー、イギリス。ブラジルでは他にもUchyranaとも呼ばれます。ホンジェラスではGuacamayo、スリナムではRode kabbe、コロンビアではCongo、プエルトリコとキューバ、メキシコではMoca、ギアナではKoraroという具合に呼称がバラバラ。ダリナというのがどの地域で使われている名称なのかどうしても辿り着けませんでした。
でも調べたお陰でいろいろな事が分かりました。エルサルバドルの呼称はAlmendra de rio(アーモンドリオ) 。春頃にバラ色~紫色の花が咲き、多肉の果実をつけるそうです。その実の事をAlmendraと呼ぶのだそうです。木の事を調べていて、突然別のキーワードで結びつくと嬉しくなるのです。遠い存在であったダリナの木が随分と近づいてきたような気がします。またイギリスではPartridge wood(パートリッジ・ウッド)とも呼ばれています。
パートリッジというのは、鳥のヤマウズラの事ですが、私の推測ですが恐らく名前の由来は鶉の複雑で美しい羽に似た木目からきているのではないでしょうか。その点からもますますダリナとアンゲリンの一致点があるように思えます。ちなみに日本でも『鶉杢(うずらもく)』という言葉が使われます。これは古くから使われてきた言い回しで、雅趣に溢れた美しい鶉の羽のような杢目に対する呼び名ですが主に屋久杉に対して使われています。
ダリナがアンゲリンだと断定できるわけではありませんが、そうだとすれば気乾比重は0.63でやや重くて堅い。ただし見た目から感じる重量感の割に乾燥は早いようで、在庫しているモノもかなり乾燥が進みました。切削や研削も問題ないようです。接地での耐久性は高く、産地では橋用材や杭、自転車、家具、ビリヤードのキュー、傘の柄、杖などに利用されています。今後更に調査を進めるので更なる情報が得られたらアップさせていただきます。