森のかけら | 大五木材

★今日のかけら・#042 【一位/イチイ イチイ科イチイ属・針葉樹・岐阜産

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今日、子供達の通う小学校で『新1年生のための体験入学』が開催されたそうです。うちの子供は、上が小5(長女)で下の双子が小2(次女と長男)なので、お姉ちゃんの方はホスト役を務めて、双子達はさっさと帰宅してきました。今の1年生が、「先輩」として新1年生のお手本役をするようです。早いもので、上の娘が入学する時の親としての心のときめきからはや6年目を迎えようとしています。うちの会社の前の道路も通学路になっているので、毎朝子供達が通っていきますが、昨春新1年生になった顔見知りの男の子がいて、通るたびに元気に挨拶をしてくれるのですが、大きなピカピカのランドセルに「背負われている」ように小走りに駆けて行く愛らしい姿に、わが子の数年前の姿がダブります。この辺りの班が、小学校から一番遠い距離なので、最初はかなり心配もしましたが子供は勝手にたくましく育っていくものです。

 

080408_0839~0001-0001そんなもうすぐ1年生の事を考えて、本日のかけらは【一位・イチイ】にしてみようと思います。なぜイチイかというと、1年生でイチイというのもありますが、そのココロは彼ら新1年生が手にする鉛筆がイチイだから・・・いや、だったからです。数年前に某雑誌に文章を掲載させていただいていた時にもこの話は書かせていただいたのですが、昔は筆記用といえば木製が当たり前でした。我々が子供の頃は、学校で確かシャーペン禁止令が出たような出なかったような・・・。とにかく鉛筆が筆記用具の主役で、鉛筆の軸木は木で作られています。新品の鉛筆を箱から出したり、削ってみると懐かしいような香りがしたという経験はあるでしょう。新1年生たちも前の夜は、きちんと鉛筆を削っているかを調べるのが日課となることでしょう。しかし、残念ながら彼らが手にする鉛筆は日本の木ではありません。かつては、日本の木が使われていました。

 

100218_0741~0001狂いが少なく軽軟で安定性が高く、加工も容易なイチイ】が、その役割を担っていたのです。そもそも、日本で初めて鉛筆の製造を始めたのは眞崎仁六(まさきにろく)〔㊦写真〕という方です。130年ほど前にパリの国際博覧会で外国製の鉛筆を見て、強く心を惹かれた眞崎氏は帰国後国産の鉛筆製造に取り組む事になるのです。何でも新しい事を興すというのは並大抵の事ではありません。鉛筆の軸木を選ぶのにもかなりの苦労があったようで、試行錯誤の連続の末、辿り着いたのがイチイ】ということなのです。

 

20100217 眞崎仁六眞崎氏は、1887年に東京において「眞崎鉛筆製造所」を立ち上げます。それが現在の「三菱鉛筆」です。当時は北海道産のイチイ】を使ったとされています。その後、第一次世界大戦が勃発するとアメリカからの外国製鉛筆の輸入が途絶え、本格的な国産鉛筆の生産が始まるのです。イチイ】の採れる海道には、多くの鉛筆工場が建てられ活気を呈したといわれています。こうなると、ただの鉛筆の今昔的な話ではなく、日本という国のものづくり物語のようにも思われます。先人達のものづくりの情熱は素晴らしいです!あらゆる事に貪欲で、たゆまぬ洞察力、一心に取り組む行動力、そういう時代のエネルギーはあったかもしれませんが、やはり個人個人に人間の資質も今よりは随分違っていたのだと思います。学ぶことばかりです。さて、その後鉛筆業界も当時の木を扱った多くの産業の辿った道を辿ることになるのです。

それは・・・。

筆が乗った(キーを叩く指が乗った)ので、明日に続きます!

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1. 今日のかけら

20100218 高度経済成長昨日の続きです・・・そうして、鉛筆業界も活況を呈したかと思ったのも束の間、やがて戦争が終わると輸入が再開され安価な材が入るようになり、次第に競争力を失くした【イチイ】は、市場から姿を消していってしまうのです。木材業界でも同様の事が起こり、今でも外材の輸入を悪事のように言う方もいますが、当時の高度経済成長のスピードに国内の林業の生産体制が追いついてなく、輸入材がなければ木以外の鉄とかアルミなどの代替材の研究が加速され木のシェアはもっと減っていたかもしれません。

CIMG5595極端に、〔外材=悪〕みたいな構図から入ってしまうと、現状との乖離から窮屈なことになってしまいがちです。国産材だけでやっていこうという動きを批判する気はありませんし、それが可能ならばそれはそれで素晴らしいことだと思います。ただ何事も過剰に反応してしまうと、盲目的になってイデオロギー論争のようになってしまうので、ほどほどのバランス感覚も必要だと思います。私は100年生の木は、日本の木でも世界の木でも同様の生命的な価値があると思っているので、あまり日本の木にだけにこだわっている訳ではありません。無垢の木にはこだわりたいですが!

20100218 知床博物館話は反れましたが、今では国産材の鉛筆というのは壊滅状態となり、北海道の知床博物館でわずかに「幻のイチイの鉛筆」を販売されていると聞きましたが、それも製造している訳ではなく、在庫のある限りということでしたが、今ではどうなっているのでしょうか。その後、北米産の【インセンスシーダー】という【イチイ】によく似たヒノキ科の針葉樹が大量に輸入されるようになりました。今ではほとんどの鉛筆の軸木がこの木で作られているようです。ときどき【米杉:ウエスタンレッドシーダー】産の物もありますが。

 

鉛筆はちびれば削りますから、ある程度の硬さがある一方でそこそこ削りやすい加工性も求められます。また部位によってムラがあっても使いにくいので、全体に均質なものが求めらます。【インセンスシーダー】はその条件を満たしているだけでなく、削ったときの匂いもかぐわしく、1本の【インセンスシーダー】の大木からは、約20万本もの鉛筆が取れるといわれていますが想像できにくい量です!

100218_1853~0001別名を【ペンシルシーダー】と言われるのは、その用途からでしょう。『森のかけら』の中にも、【ニヤトー】という木があり、この木も別名を【ペンシルシーダー】と言いますが、これは鉛筆に使われる木ではありません。シダーと付いているのに、アカテツ科の広葉樹なのです。木材の別名はその匂いや姿から、近くにある別の木に見立てられる事が多いので、かなり混乱しています。ニヤトーのペンシルシーダーという別名の由来も、多分そのあたりから来ているのではないかと思うのですが・・・。さて、本物のインセンス・シーダーですが、以前弊社にも板材がありました。削ってみると確かに鉛筆の匂いがしました。たまたま偶然手に入った物でしたが、当時あまり考えもなしに簡単に手放してしまいました・・・。あれから入手できていません。今、考えれば端材でも残しとけばよかった・・・

 

話がすっかり、インセンス・シーダーに行ってしまったので、明日もう1回だけ【イチイ】の話。

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1. 今日のかけら

100219_0654~0001イチイ】の用途は当然鉛筆ばかりではないのですが、国産材をもっと有効に活用しようという風潮ですから、日本のどこかでは既に『幻の国産材の鉛筆』が復活していて、幻でなくなっているのかもしれません。なければ作ってみたなるのですが、決して鉛筆というものづくりを軽んじているわけではなく、むしろその活用に敬意を払ったうえで改めて、木材の端材の活用が出来ないかと思います。当然、大量生産を考えると端材を使っていたのでは効率が悪いでしょうが、別次元で端材から鉛筆を作るという〔超家内工業〕的なものづくりが出来たら面白いと思います。

100219_0753~0001コンパクトな機械があれば【森のかけら鉛筆】出来ないかなあと、夢見たいな事を考えたりしてます。100数種類の木の鉛筆があったら面白いと思いませんか。私は考えるだけでワクワクしてきます。中には鉛筆に適さない木もあるでしょうが、それもいいんじゃないでしょうか。私は、最近でこそパソコンも使うようになりましたが、右手のひとさし指には『ペンだこ』があるほど、鉛筆には愛着があります。大切な文章を書くときはやっぱり鉛筆を使います。【適材適所】もずっと手書きにこだわっています。手書きで物を書くという所作は、とても美しい行為だと思います。

20100218 聖徳太子⑤さて、【イチイ】の木についてですが、そもそもこの変わった名前は昔の1万円札で聖徳太子が持っていた(しゃく)にその由来があります。昔、中国では衣冠束帯に象牙の笏を持つ慣習があり、日本でもそれに習って使うようになり、いろいろな木で試されたようです。その中で、岐阜県の位山(くらいやま)から伐り出された木で作った物の出来栄えが素晴らしく、それを宮中に献上したところ仁徳天皇がたいそう喜ばれ、その褒賞としてこの木に『正一位』という最高の爵位を授けられました。そこから、この木の事を【一位】と呼ぶようになりました。

今日のかけら・イチイその位山は、昔からイチイの良材の産地としても有名で、代々笏に使う木を伐採して天皇家にも献上してきた由緒深い山だという事です。ちなみに岐阜県の県木は【一位】です。この木は別名が多いことでも有名で【アララギ】とか【オンコ】、【アカギ】、【キャラボク】、【クネニ】など枚挙にいとまがないほど。その語源の多くは、アイヌ語に由来しているということですが、削ると美しい赤褐色をしています。【一位】には、タンニン質も含まれていて、削るといい香気がします。飛騨の匠の手による『一位の一刀彫』は惚れ惚れするような美しさがあります。

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1. 今日のかけら

久しぶりの『今日のかけら』で、気持ちも乗ってきたので、一位の話をもう少し。

20100218 ロングボウ日本では主に優れた彫材として名を馳せ、名前の由来となったいきさつや香気のかぐわしさから、気高く高貴な木として扱われるのですが、世界から見ると少しイメージが違うようです。この木の仲間は北半球に8種類ほどあり、中国東部からウスリー、サハリン、オホーツクなど寒冷地をはじめ、ヨーロッパなどに分布しています。特にイギリスでは、弓(ロングボウ)の材料として古来から高く評価されてきました。日本と同じく彫刻やろくろ細工は元より、伝統的なウィンザーチェアーの曲げ木としても利用されてきました。

100219_0815~0001英語では【Yew】〔ユー〕とか〔ユウ〕と呼ばれる品種がありますが、日本の【一位】に比べると赤味が深く、紫や橙褐色の混ざったような複雑な色合いをしていますが、全体的に色目は濃く、やや重いのではないでしょうか。それほどの大木になるような物は少なく、枝が多いことから、節や割れが多く大きな部材には取りにくいですが、重厚な力強さがあります。弊社にも在庫がありますが、かなり大きな割れがあり、何に使うかいまだ思案中です。左の画像は、倉庫の中に立ててあるものを撮ったので、暗く写っていますが削ると鮮やかな赤身が現れます。こちらは中国産のユーの1種です。巾が400mm程度で耳付きなのですが、白太は傷や虫穴も多く家具材などには使えません。といって、あまり小さな物に割ってしまうのも勿体無いし・・・そんな事ばかり考えているのでいつまで経っても使えません・・・貧乏性です。

 

20100218 シェイクスピア②その【ユー】ですが、欧米でも『長寿・永遠の象徴』として神格化されている一方で、間逆のイメージもあります。それは、葉っぱに有毒物質が含まれていることから、死のシンポルとされるようで、墓場に植えられることもあるようです。もっともこれは死が永遠の生とも結び付けられて、冥界への入り口に誘い込む役割を果たしているとも・・・。有名なところでは、シェークスピアの『ハムレット』で、【ユー】の葉から生成した毒を王様の耳に流し込んで毒殺する場面が登場したり、『マクベス』でも魔女が【ユー】の枝を折って鍋に放り込む場面があります。

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