森のかけら | 大五木材

カグマ製作所と頼もしき仲間たち

2015/06/09

20150609 1何らかのつながりがあるとか、誰かが誰かを引っ張ってきたというわけでもないのに、不思議とこの数年で木工職人、家具職人、木工作家など木でモノを作る事を生業(なりわい)としたいという若者(まあ中には若者と呼ぶには少しとうがたった方もいますが)が私の周辺で急増2、3年で7、8人ものクラフトマンが看板を掲げて木の仕事に就かれています。地元愛媛出身で、県外で修行してから戻ってきた人や、これらか木の仕事で飯を食っていこうと一念発起して業界に飛び込んだ人。

 

世代も環境も背景もそれぞれですが、愛媛、特に松山周辺で家具や木工の仕事をするとなると、繋がる糸はおのずと限られてくるので、そのうちに多くの人が弊社に足を運んでいただき、どうしてこの仕事を始めようと思ったのか、これから何を作っていくのか、仕入や販売はどうするつもりなのか、等々いろいろな話しをさせていただきました。目的や目指す方向に多少の相違ははあれ、木を生業として木で生きて行こうとする仲間が身近でひとりでも多く増えるというのはありがたい事です!

 

まあ道は決して平坦ではないと思うものの、予測不能でだからこそオモシロイとも言えるわけでは、「今の時代大変だけど・・・」なんて言うつもりはありありません。商売敵が増えたなんて了見の狭い考え方ではなく、木のモノを愛媛で供給できる窓口が増えたと考えて、いい繋がりで保てればいいと思います。そんな中で堅実に開業の道筋を歩んできた人もいます。それが、池内一豊君のウッドワークかずとよを弟子抜けしてこのたび今治市玉川町に自分に工房をオープンさせた馬越崇永君。

 

20150609 4先日、師匠の池内君をはじめ職人仲間(ZEN FURNITURE善家雅智君、Wood Studio YUU土居勇真君、前田清幸さん、K’crafts川上陽介君)と私の6人で、馬越君の工房にお邪魔しました。松山市内から車でおよそ40~50分と、結構な距離があり、かなり山中に奥行った人気の感じられない寂しいところなのですが、遅くまで機械が大きな音を立てる加工場の宿命。むしろ加工場としては望ましい環境です。工房の名前は、家具と自分の名前の馬越が合体した『カグマ製作所』。

 

20150609 5職人同士ってプライドが高い人が多くて、案外横のつながりがないことが多いのですが、このメンバーは前田さんを別格として年齢が近い事もあり、互いの仕事を尊重しないながら非常に良好な連携が出来ています。馬越君は椅子などを中心に家具などの制作を手掛けていくという事で、弊社もいずれ無垢の椅子の加工をお願いしたいと思っています。まだ完全に機械などの設置が終わっているわけではないようですが、そのうちこの工房からも賑やかに木を削る音が聞こえてくることでしょう。ガンバレ馬ちゃん!

家具職人・善家雅智の看板(しるし)

2012/05/31

20120531 1このブログでも何度も登場していただきましたが、弊社の無垢の家具製作を一手に引き受けてくれている『ZEN FURNITURE』の善家雅智君。弊社の仕事だけではなく、他にも友人・知人や工務店さんなどの家具の仕事もこなしているのですが、昨年末に独立してからほとんど休み無しで精力的に仕事をこなしています。身長も高く若くて元気もあるので、こういう大きな1枚板の仕事を頼むにも安心感があります。そんな彼の工房にこのたびようやく看板が付く事になりました。

 

20120531 2奥さんがデザイン関係の仕事もされていたとかで奥さんがデザインされたサインプレートが仕上がっていました。工房の背景の山から朝日が昇るデザインは、工房の勢いを示しているかのようです。以前に比べると弊社に家具のご相談を受ける件数も随分増えました。それも、今まで善家君たちに作ってもらった家具の出来が良かったからこそだと思います。善家君はそれまで『ウッドワークかずとよ』の池内君の所で仕事をしていましたが、家具の品質はしっかり受け継いでいただいております。

 

20120531 3家具だけではなく、玄関の天框や床の間の地板、キッチンのカウンターや棚板、出窓、階段などありとあらゆる加工をしてもらっています。それらの部材をいろいろな樹種で作るわけですから、短期間でも多樹種の加工経験は豊富。普通だと特定の樹種(せいぜい10種程度)ばかりを加工する事になるのでしょうが、移り気な材木屋と付き合う事になったために多様な樹種と日々格闘することになってしまいました。とにかくいろいろな樹種に触れたい渡しとしては、チャレンジ精神大歓迎!

 

20120531 4正直、初めて家具に使うような樹種の場合は、こちらも試行錯誤。すべてが経験則だけで対応できるわけではありませんから、善家君とあれこれ相談しながら手探りの家具製作の道です。材木屋としてこの先あとどれくらいの樹種を扱えるのか分かりませんが、若く情熱ある家具職人との出会いは、その思いに一層拍車をかけてくれる事だけは間違いありません。さあ、来月も沢山面白い仕事を承っております。善家君、日の出の勢いそのままに、腕によりをかけてよろしくお願いしますぞ!

ZEN FURNITURE始動せよ!

2011/11/10

20111110 1毎日【森のかけら】の事ばかりアップしているけど、本業の方はどうなんですか?とご心配してくださる方もいらっしゃいます。何が本業なのかもよく分からなくなってきてはおりますが・・・。お陰さまで何とか忙しく仕事させていただいておりますたまにはそちらの方にも触れておきます。このブログで何度も登場している家具職人ウッドワークかずとよ池内君のところで働いていた善家雅智君がこのたび独立。新しい加工場も整いました。製材所、材木屋同様に家具職人も後継者問題が深刻な中、前向きな若手の独立は嬉しい事です。

20111110 2工房の名前は『ZEN FURNITURE(ゼン・ファニチャー)』。家具職人で生きていこうという気持ちが前面に出た社名です。その志や良し!木工所の看板は掲げていても、合板仕様の家具専門で、無垢材はちょっと・・・という店も多い中にあって、実に頼もしい限りです。作る人あってこその家具です。早速開店1号の本格的な仕事を依頼。大きめなのベンチです。素材は『ホワイト・オークウィスキー樽の素材として有名な重硬な木です

 

20111110 3今回は、依頼主さんからデザインのご要望があったので、微調整しながら作って行きます。私も本格的な家具の勉強をしてきたわけではなく、まったくの独学ですから家具専門の方からすれば驚かれるようなアナログ感ですが、木に関してはプロですので、足りないところは家具職人さんたちのお知恵を借りながらの家具製作です。材木屋の手掛ける家具ですので、素材感重視で作らせていただいております。実際にどれぐらいの大きさになるのか、善家君にベンチの実寸をベニヤに描いてもらいました。これだけでは大きさが分からないので・・・

20111110 4善家君にエアーベンチをしてもらいました。ふむふむ、なるほど、結構な大きさになりますな!このベンチでどれぐらいの材があればいいのか、大体木取り計算して材を持ち込みます。どの材をどう使うかは、長い付き合いですからお互い阿吽(あうん)の呼吸。施主さんには私が立体的なスケッチで描いて見ていただきますが、当然設計士さんのような本格的な図面は描けません。しかし素人の方には、平面・断面図面よりも、イラストのような家具の絵の方が分かりやすいのは、自分の体験で実証済み。

 

20111110 5これで実際にどういうものが出来上がってくるかというと・・・こちらが完成品!これで長さ2400㎜X厚み32㎜のホワイトオークの板材を13、14枚使用しています。なので結構な重さ!おとな二人でないと持てません。普通は軽量化を考えて合板やベニヤを使うところですが、弊社の場合はすべて無垢材仕様ですので、重くなるのは必然。そもそも軽くするという事を前提にしていませんので(!)「重たい」という事は受け入れていただかねばなりません。無垢材が合板に歩み寄る事も無いし、それが持ち味です。さあ、次は塗装をしてみましょう!

溶け込むビーチ、ホワイト&イエロー

2011/07/11

20110711 溶け込むビーチ、ホワイト&イエロー①最新の『適材適所NO.157』で(こういう言い方をしないと、最近翌月にずれ込むのが確信犯的になっているので、O月号が最新なのか分からくなりそうなので・・・)、『赤橅(レッドビーチ)、降臨(きたりて)』というタイトルで「赤身の強いグルジア産のビーチ」について書かせていただきました。いずれ完成したらアップさせていただくつもりですが、このレッド・ビーチを店舗の床材として大量に使っていただいております。こちらが入荷したレッドビーチの挽き板です。

 

20110711 溶け込むビーチ、ホワイト&イエロー②今まで弊社で扱わせていただいた白身の強い『白橅(ホワイトビーチ』に比べたら、やや癖はありますが、その分個性があるとも言えます。これからTPOに合わせてうまく使い分けていただきたいと思っています。この2つのビーチは、それぞれが違う種類の木ではなくて、ビーチの色合いの濃淡で呼び分けているだけです。これも地域性や扱い商品のルートの問題で、どちらの色合いのビーチが主流かで主役の座が決まってしまうのだと思います。弊社でも今まではほとんどが淡白な白橅(ホワイトビーチでした。

20110711 溶け込むビーチ、ホワイト&イエロー③とはいえ、ビーチはクリア塗装すると(植物製オイルでも)少し黄身色っぽい色合いに変化するので、その時点で純粋な意味での「雪化粧のような白美」は損なわれてしまうのですが・・・。それでも美白を求められる方には、石鹸成分のソープフイ二ッシュがお勧めです。しかし、そういう捉え方も人それぞれで、少し黄色身が差すことで経年変化のような味わいを利用できる事もあります。本日、『白橅(ホワイトビーチ』の本棚を収めさせていただたお宅は、数年前に建てられたお家で、本棚を設置する部屋の周辺の桧の柱は、経年変化でいい感じに日焼けしていました。そこに真新しい色合いの本棚が付くと、妙に浮き上がってしまうのですが、植物性オイルを塗ったお陰で、黄身色を帯びたビーチは、うまく桧の経年変化に溶け込みました。まるで何年もそこに佇んでいて、時間の衣を身にまとったかのようにすっかり馴染んだ感があります。恐らくいい感じに馴染むと想像していたのですが、予想以上にうまく収まりました。

20110711 溶け込むビーチ、ホワイト&イエロー④施工はいつものウッドワークかずとよさんから、善家君と馬越君の若手ふたりが来てくれました。歳は若くても、今までこなしてきた無垢材の種類はかなり豊富で、その仕事ぶりにも安心感が出てきました。職人さんの中には過去に使った事のない樹種には極力手を出さない方針の方もいらっしゃいますが、弊社の場合は否応無しに多品種を加工していただく事になりますので、自然と樹種数の経験は増えていくこととなります。

 

20110711 溶け込むビーチ、ホワイト&イエロー⑤私としては自分に技術があるわけではないので実際に木を加工していただく、職人さん達により多くの樹種を触れて、その性質や特徴を身を持って感じていただきたいのです。その経験は、私が施主さんに提案する時の大きな指針になります。この木だと水廻りには不適だとか、逆目が出やすいからサンダー仕上げが向いているとか、乾燥していても収縮の可能性が強いとか、結局木とうまく付き合うには自らの体験しかないと思います。若くともそういう体験や修羅場をくぐってきているふたりのお陰で、今回もきっちり収まりました。幅木から天井一杯まで一分の隙も無く綺麗に収まると、それは本棚というよりは壁面収納。壁面の雰囲気もガラリと変わります。本棚とビーチとの相性が良いのは、美白の色合いだけではないのです。実はこの組み合わせには深いドラマがあるのですが、この話はまた明日・・・。

木の声の聴ける人へ

2011/04/22

20110422 木の声の聴ける人へ①昨日少し触れたビーチ(ブナ)のキャビネットですが、折角なのでもう少し詳しくご紹介させていただきます。このキャビネットを作る以前は、二階のショールームに展示してあるのはすべて座卓かテーブルでした。それらについては、今までに100台以上は作らせていただいたので、その経験から大体の仕組みや材との相性は理解した(つもり)なので、在庫にある材の何をどう木取りしてどれくらいのサイズの物を作っておけば売れやすいかおおよその見当がつきます。新築の場合、座卓かテーブルは必需品ですが、以前使っていた物を持ってくる方よりも、この機会に買い直すという方の方が圧倒的に多いようです。ショールームで内装材の打ち合わせ中に、(否でも目に入るように)展示してある家具が視界に入り、「じゃあついでに・・・」と決心していただく方も多いです。それを期待して展示させていただいているのですが、なかなか・・・。

 

20110422 木の声の聴ける人へ②無垢の家具の場合は実際に触れて、掌がその温もりを感じ取ってはじめて、理解できるものがあると思います。映画「アバター」の中で、彼らが尻尾を使い交信する場面を観た時、大胆な解釈だと思いましたが、我々だって木の良さを語る時に、掌で愛おしく木をさすってその温もりを体感しているのだから、それが更に進化して、木と会話が出来るようになったアレンジだと思えば納得。しかしそれって楽しそうに思える反面、物言わぬ忍耐の塊「木」の声を聴くのは少し怖いような・・・。

 

20110422 木の声の聴ける人へ③またまた話が逸れましたが、サイズもほぼ一定で、新居に求められやすい座卓やテーブルに対して、商品の出来以上に、部屋のどこに置いて何を入れるかというスペースや用途が重視されるキャビネットなどはちょっと手を出しにくいジャンルでもありました。オーダーの場合は何ら問題は無いのですが、在庫で作っておいて奇跡の相性を待ち続けるには少しリスクが高過ぎるかと思い、在庫の製作には二の足を踏んでおりました。しかし、【森のかけら】の売れ行きに伴い、在庫の樹種もドンドン増えていきます。

 

20110422 木の声の聴ける人へ④決して高価な材が増えているわけではないのですが、私にとってはお宝の山!それに比例して【森のかけら】には使えない薄い板(荒材で35㎜以下)もたくさんストックされます。仕様部材がシンプルな座卓やテーブルだけではどうしても使いきれない材がたまってくるようになると、やはりこの『出口』も考えなければなりません。キャビネットの場合、仕様部材が多く、短尺材も有効に活用できます。ならばもはや手を出さずにはおられまいっ!という手前の理屈で作り始めました。あ、何だか昨日のデジャブのような・・・。それで最初に作ろうと思ったのがこのキャビネットです。丁度ヨーロッパビーチの短材がたくさんたまっていたので、乳白色の色合いを生かしてちょっとメルヘンチックなものに挑みました。製作はウッドワークかずとよの池内君。当然総無垢ですから、二階に上げるにもひと苦労しましたが、その出来栄えに自分としては大満足!

 

20110422 木の声の聴ける人へ⑤ビーチは無塗装では本当にホワイトクリームのような乳白色で、胡麻塩を振ったような木柄が特徴なのですが、植物性油を塗ると透して少し黄身がかった色合いに変化します。更に時間が経つとやや薄く赤身も帯びてきたりします。大体色目の淡い白系の木は軽い物ですが、ビーチは例外的に重たい~!私の感覚では国産のブナよりもやや重いと思います。久し振りに階段から降ろしましたが、上げた時より随分軽くなっていたように思うのは『天使の取り分』でしょう。

 

20110422 木の声の聴ける人へ⑥大きさを比較するような物を写してないので分かりにくいかもしれませんが、これで高さが1680、奥行き410、幅760㎜です。もっと大きなサイズになると2階には上げられなくなりますので、この辺りが在庫にするサイズとしては限界です。大家族用には物足りないサイズかもしれませんが、機能性よりもちょっと控えめなぐらいな方が座りがよろしいかと。引き出しの内部に桐を使った以外は、枠も背板も中棚も全てビーチの無垢材を使いました。棚まで無垢なので多少反りもありますが、リバーシブル仕様の可動式にしているので、反ったらひっくり返して使っていただければと。ちなみにこの仕様でお値段は220,000円(税別)。世の中には安価な物は星の数ほどあるのでそこを目指すつもりはありません。木の声まで聴いてやろうという物好きなお方達と和やかに楽しく商売が出来ればありがたいです。このキャビネットもそんな木の愛好家の方の元で終の棲家を見つけられて何よりの幸福でした。

 

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