★今日のかけら・#033 【アピトン】 Apitong フタバガキ科・広葉樹・東南アジア産


画像の原木は、フィリピンやマレーシアなど東南アジアに広く分布する【アピトン】の原木です。人間との比較から、その大きさが分かると思います。長さ約12m、直径1.1mに及ぶ巨大な物です!かつてアピトンは、輸入材の花形であった南洋材の主要原木のひとつでありました。ラワンの合板が全盛だった頃、大量のアピトンが輸入され製材されました。多くの南洋材は合板の材料となりましたが、時代の趨勢で、南洋材はその地位を滑り落ち、全国各地の南洋材専門店も次々に閉鎖・廃業していきました。
昔は決して珍しくなかったこういう光景もいまや貴重な物となってしまいました。アピトンも合板に使われる事もありましたが、ラワンに比べてかなり重たいので現場ではあまり好まれませんでした。それよりも、工場や倉庫などの土足で踏みしめる床材・フローリングとして人気がありました。アピトンは非常に重硬で丈夫な事から、トラックの車体や荷台の座板、受け木、桟木などに使われています。南洋材だけあって、硬木といえども虫穴(ピンホール)の被害を受ける事も多いのですが、見た目よりも耐久性を求める工場や倉庫などには最適な材でもありました。
それなら住宅の床材でもと、思われるかもしれませんが、アピトンのもうひとつの特徴である『脂分』を多く含んでいるという事から、加工後の材面にもヤニがプツプツと小さな玉上に吹き出てきます。ザラメのようにザラザラした粘っこいヤニは、素足で暮らす日本の住宅には不適なのです。
かつて、このアピトンのフローリングを大型工場や新設の倉庫などにはたくさん納品させていただきましたが、何しろ重い!使うときには数10束も使いますので運搬もかなりの労力でした。お陰で結構鍛えられました。また肩に担いで運ぶ時は、運が悪いとヤニがビッシリ付着する事もありました。それより以前は、原木が安かった事もあり、用途を限定せずに土台はもとより、垂木や間柱、胴縁に至るまで、強くて丈夫だろうという事で幅広く使われていたようですが、釘を打つのも一苦労の木ですから、さぞ大工さんは腕が痺れた事でしょう!
アピトンの土台といったら、4mの105角1本を持つのもやっと!懐かしい記憶です。今でも稀にアピトンの土台という注文が入る事がありますが、値段をいうと大概驚かれます。桧の価格が下がっているので、原木の輸入が減少したアピトンは相対的に高く感じられます。実際に値段も上がってきています。市場性を失った輸入木材はスケールメリットを失い、結果的に値上がりしていきます。そのため更に値が上がり、ますます需要がなくなっていきます。あれほど栄華を極めたラワンやアピトンが、どんどん姿を消していく現実には一抹の寂しさも感じます。
松山で南洋材を製材しているのも、この瀬村製材所さん1社となってしまいました。右が社長の瀬村要次郎さん。愛媛木材青年協議会の大先輩でもあり、私を勧誘していただいたのもこの方です。誰にも分け隔てなく親切で、皆から親しみを込めて「要次郎さん」と呼ばれています。木材業界だけでなく、地元三津浜でも頼りになる親父で、いろいろな要職を務められている人望の厚いお方です!今は、南洋材を専門に製材しているというわけではありませんが、この巨大な原木を挽くにはそれ相応のノウハウが必要で、大型工場なら挽けるというものではありません。長年の経験が物を言う世界です。要次郎さんとは、昔からいろいろ相談に乗っていただきました。この土場で夕方から立ち話をして、時間の経つのも忘れてお互いの顔が見えなくなるまで話し込んだ事も一度や二度ではありませんでした。私の『南洋材のお師匠さん』でもあります。【森のかけら】の南洋材の多くが、こちらから分けていただいたのは言うまでもありません。要次郎さん、いつもお世話になっております!
グッドタイミング、アピトン!
2011年 3月 21日 月曜日 at 11:14 PM 3. 木の仕事
最近、家の内装だけでなく外溝工事にも「木」を採用していただく事が多くなってきました。それは【森の出口】のひとつとしても大変ありがたい事なのですが、風雪や紫外線に晒される外部の場合は、材のセレクトをより慎重に考えねばなりません。内装であれば、一定の精度が担保され、しっかり乾燥していれば、ある程度色合いや木目の雰囲気、それぞれの木の「背景にある物語」までを比較検討の材料にする事も可能なのですが、外部となるとどうしても材が限定されます。
当然価格の問題は最重要課題ですので、そこを起点とせねばなりませんが、耐久性や対候性も重要な要素になります。いつもお世話になっているワンズ㈱さんでは、ウッドデッキと併せて外部の木製フェンスもよく採用していただいております。木製フェンスの1本のサイズは、50~60X30~35㎜程度なのですが、庭全体にフェンスを巡らせる場合、結構な数が必要になります。左は最近施工されたG様邸ですが、300本を越える数を使っていただきました。
こちらのフェンスは、東南アジア産の『アピトン』を使わせていただきました。原木の様子はこんな感じです。アピトンはトラックのボディーにも使われたりするほど強度の高い木で、価格も決して高くはないのですが、問題がひとつ。それは乾燥に時間が掛かる事です。人工乾燥すれば良いと思われるかもしれませんが、ヤニ分が多いため強制乾燥させるとヤニが吹き出てしまいます。それを避けるため、あらかじめ大きめに挽いた材を天然乾燥で長期間乾燥させたものを使わせていただきました。
その期間実に1年!アピトンは非常に重硬な材で、生材のままでは取り扱いもひと苦労です。更に生材では塗装のノリも悪いので、乾燥したものが必須なのですが、そう都合よく乾燥した材が蓄えてあるわけではありません。今回は、南洋材の師匠・瀬村製材所さんがたまたま挽き置きされていたものをグッドタイミングで供給していただいたのです。いろいろな材のエピソードをお伝えして、木の可能性や楽しみを味わっていただく事が私の仕事ですが、その川上には、山の木を伐採する人、それを集材・運搬する人、そしてそれを製材する工場、が切れることなく連鎖して繋がっています。どこがひとつ欠けても材は手元に届きません。今日そこに何気なくある材も、実はいろいろな方のアシストによってやって来たものです。そう考えれば、なるべく無駄を出さずに大切に使わせてもらわねば申し訳ありません。目には見えないところにもたくさんの思いが詰まっています。
★今日のかけら・プレミアム017 【ダオ】 Dao ウルシ科・広葉樹・パプアニューギニア産

この聞き慣れない名前の木は、PNG(パプアニューギニア)、フィリピンからインドネシア、フィジーなどに分布する高木の広葉樹です。直径2mに達する大径木になる物もありますが、辺材部が多いのが特徴です。辺材部は虫の害も受けやすく、見た目にもあまりパッとしませんが、その分心材部分の縞目模様の個性が際立ちます。【ゼブラウッド】や【ベリ】のような黒褐色の芸術的な杢目にはドキッとします。その色調が【ブラックウォールナット】に似ていることから、『ニューギニア・ウォールナット』の別名があります。
まあ物の印象というのはおおよそ主観的なもので、名前もそれぞれの思い込みや地域性、文化などに立脚する物なので異論を唱えるつもりはないのですが、私にはどうして『ニューギニア・ウォールナット』の名前が付いたのか解せません。どうしても縞模様の印象の方が、色調に勝ってしまいます。右の画像は加工前の荒材ですが大径木ではありません、小振りな材です。
本日は、この【ダオ】をカウンターに加工した物を納品させていただきました。左側の画が、加工して植物性塗装をした状態です。オイルを塗ると、全体的に濡れ色になって更に縞模様が強調されます。2枚の板の幅が狭かったので、壁に飲み込ませる部分に材を足して仕上げました。こうする事で材を無駄なく有効に使えます。この辺りではほとんど流通するこのない材ですが、地域によっては家具や建具などに使う事もあります。しかも着色して仕上げる事もあうようで、所変われば品変わるです。何がプレミアムかも、人によってそれぞれです。
柾目も上品な雰囲気があっていいのですが、杢目が激しく交錯した部分のダイナミックな木味は迫力があります。【ゼブラウッド】のような緻密な杢とは違って、縞模様に濃淡があって深みがあります。よく乾燥した材を仕入れることが出来たのですが、生材ですと乾燥時に反ったりねじれることもあるようなので注意が必要です。

左の画は長さ1m程度のサイズのカウンターです。端はRに加工しました。白太部分と赤身(黒味)のオイルの透水性が違うので、全く別の木を貼り合わせたように見えるのですが、こちらはこれで1枚板です。豊富に在庫を持っているわけではありませんが、ちょっと使っただけでもかなりインパクトがあるので、うまく使えば結構面白いと思います。この【ダオ】だけではなく、全般的にウルシ科の木は、個性的な表情を見せてくれます。使いすぎるとくどくなるかもしれませんので、何よりもバランスが大切だと思います。なお【ダオ】は、240種の通常のリストには含まれていません。地域によっては入手しやすい木であるかもしれませんが、私にとっては大切で貴重な【プレミアム36】の『限定かけら』です!