森のかけら | 大五木材

今日のかけら・#074 【唐鼠黐/トウネズミモチ】 モクセイ科イボタノキ属・広葉樹・愛媛産

  20130316 1

20130316 2思い出したように書いている『今日のかけら』ですが、なるべくなら【森のかけら】だけでなく、内容に適したその材の使用例とか、材が豊富に入荷した時などにタイミングを合わせて写真も撮影し、イメージだけでなく実像もお伝えしようと思っているのですが、240種もありますと、そう都合よく材の入手や現場工事が重なるわけではありません。それで、いろいろな雑誌や新聞、テレビ、ウェブなどの記事も収集して、ある程度たまったら特徴などの文章を添えて書くつもりが、なかなか・・・。

 

20130316 3出来ることならプラスの記事の時にご紹介したいところですが、うまい具合に明るいネタばかりでもありませんので、ちょっと残念な記事でのご紹介になりますが、タイミングいい時に書かないと気を逸するので、敢えて今回俎上に上げさせていただきました。一般の方には少し馴染みの薄い『トウネズミモチ』の木です。私も【森のかけら】を作り始めるまでこの木の事は知りませんでした。少し前の愛媛新聞に、松山城山公園のトウネズミモチの木が伐採された事が記事になっていました。

 

20130316 4それは、そのトウネズミモチが直径1mを越すような巨木であったとか、銘木のような価値のある木だったからだとか、大切な記念樹であったからだとか、そういうわけではありません。上の写真で、男性の人が手を添えているのが、伐採されたトウネズミモチの切り株ですが、見た目では直径はせいぜい300~400mm程度の楕円のようです。漢方では、このトウネズミモチの乾燥した果実を「女貞子(じょていし)」と呼び、強壮薬として利用されています。また生薬は腫物に塗布されたりもしています。

 

20130316 5このトウネズミモチという名前は、『ネズミモチ』に対する区別するためのもので、このトウネズミモチの方が葉が大きく、先が細長く尖っている事。その葉を日にかざすと葉脈が透けて見える事が区別点だと言われています。そもそもの『ネズミモチ』という不思議な名前は、熟したこの果実がネズミの糞によく似ていて、葉の形がモチノキに似ている事が由来だとされています。中国大陸中南部が原産で、唐(トウ)という言葉が頭についています。一方『ネズミモチ』は、ほぼ日本にしかない国産の準固有種です。

 

20130317 1大気汚染などにも強い逞しい木としても知られ、よく公園木や街路樹としても植えられているのですが、私は【森のかけら】を手掛けるまでその存在をよく知りませんでした。愛媛大学農学部の森林講座に参加した時にその生態について初めて教わりました。このトウネズミモチが日本に伝わったのは明治時代初期とされています。耐陰性、対排ガス性などに優れ、公害にも強い事から、当時から街路樹など緑化工事には広く採用され相当な数のトウネズミモチが植生されました。

 

20130317 2すると、そのずば抜けて強い発芽性のため(1本の木に7万とも8万とも言われるほど大量の種子をつけて、鳥達に食べさせて運ばせ広がる)一気に周辺を占有してしまったのです。その旺盛な繁殖力のため、在来種に対する影響が懸念されて、平成17年施行の外来生物法において「要注意外来生物」に指定されています。緑化樹としては、ニセアカシアも同じく指定されています。そのため最近では、在来種を保護する目的でトウネズミモチは駆除されたりもしています。

 

20130317 3今回の城山公園のトウネズミモチの伐採の記事では、堀の水面のせり出していたトウネズミモチを伐ってしまい、そこを子育てに使っていた翡翠(カワセミ)が居着かなくなるという事で、事情を知らなかった松山市の管理のずさんさを責める内容でしたが、トウネズミモチが「要注意外来生物」である事には一切触れていませんでした。市がどういう目的で伐採したのかは書いてなかったので、ただ景観を考えての事なのか、在来種保護のために駆除したのかは分かりません。

 

20130317 4感情論としては、折角カワセミが子育てに使っていたのだから伐らなくてもという思いも分かりますが、決して悪意で伐られたわけではないでしょう。一方で城山公園の生態系を保護管理するという観点であれば、伐採にも理はあります。ただそこにカワセミが居たという点が問題ですが、鳥も木も人間の思惑とは別に一生懸命に生きていることは事実です。こういう問題って通常は、大切な木を伐採してしまって!という観点でしか取り上げられないものですが、今回の件について言えば複雑な感があります。

 

20130317 5新聞記事でこの点にまったく触れていなかったのは、この木が「要注意外来生物」であるという事を知らなかったのか、論点が鈍るから敢えて「カワセミの子育ての木」としてのみ取り上げたのか定かではありませんが、生態系や環境というスタンスは、立ち位置によってまったく捉え方も変わるので難しいところです。もし記者の方が、この木が「要注意外来生物」の指定も受けているという事を知らなかったとするならば、伐られた木側の専門家からの意見も訊かれるべきだったのではないかと思いました。

 

20130317 6人間が勝手に持ち込んで、公害にも強いからと街路樹や公園木としてドンドン植えておいて、想定外に繁殖して、在来種に影響が出ると駆除しましょうという構図は、トウネズミモチに限らず、人間の都合で生態系に手を突っ込みすぎてそのバランスを崩して元も子もなくなってしまう典型です。繁殖した木にも、そこに棲む鳥や虫たちには無関係で迷惑な事でしょう。駆除すべき対象かもしれませんが、その木とて使い方次第で有用な資源になるのですから、最後まで植えた責任を果たすべきだと感じています。




Archive

Calendar

2017年12月
« 10月    
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031