森のかけら | 大五木材

 

燃えない木・イロコのいろいろ②*

categories 1. 今日のかけら | datetime 2021/09/29 PM11:00

★今日のかけら・#134【イロコIroko クワ科・広葉樹・アフリカ産

世界三大銘木』の1つとしても名高いチーク(Teak)に対する人気は高く、よくチークの問い合わせを受けるのですが、最大のネックはかなり価格が高騰していること。良質なミャンマー産のチークは入手も容易ではなく価格が高くなるのも仕方ないのですが、それでもチークへのあこがれは強くて、「チークがダメならせめてチークに似たような木」という要望は尽きません。そういう時に提案しているのがアフリカ産のクワ科の広葉樹『イロコ(Iroko)』です。

勘違いしてもらうと困るのですが、イロコはチークの仲間というわけではありません。チークはシソ科(ちなみにしいAGP植物分類体系では、クマツヅラ科の多くがシソ科に移動になったようで、チークもシソ科に分類されているようです)。なので植物学的に近縁というわけではなくて、質感がよく似ているという事です。そのためイロコは産地にちなんで「アフリカンチーク」とか「ナイジェリアンチーク」などの別名で市場取引されることもあり、本名のイロコよりも有名なほど。

一般的には『イロコ』ですが、各地でさまざまな呼び名があって、ガーナや象牙海岸ではオドム(Odum)中央アフリカ、コンゴではカンバラ(kambala)、東アフリカではムブル(Mvule)イロコの名前はガボン、カメルーン、ナイジェリアなどで使われています。オドム(Odum)の名前はガーナ語で「燃えない木」という意味があって、チークと同じく油脂分をたっぷり含んでいて耐火性、耐水性に優れているところが名前の由来となっています。その特性から船舶やボート、橋梁などチークと同様の用途に利用されています。

削るとまさに見た目はチークのような質感ですが、触感も油脂感があって表面が日焼けでもしていればチークと見まがうほど。材中にストーンと呼ばれる炭酸石灰の硬い推石物を含んでいる事があり、その影響で刃先を痛めやすいという特徴もチークに似ています。また導管にはホワイトオークと同じチロースという成分が含まれていたり、ゴムの原料となる天然のラテックスの成分が含まれていたりもします。そんな特徴を持つイロコですが、在庫としては数枚しか持っていなかったのですが、ご縁があって大量に入手しました。

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燃えない木・イロコのいろいろ②*

categories 1. 今日のかけら, 2. 木のはなし・森のはなし | datetime 2021/09/30 PM11:12

今回入荷した『イロコ』は、長さは3m以内で幅は込み込みで厚みが50~75㎜程度の厚物の平板。耳の無いストレートで、ほぼ白身はありません。心材部はシロアリやヒラタキクイムシなどに対して強い抵抗性を持つ一方で、辺材部の白太は抵抗性が劣り虫害を受けやすいというのは身を持って経験しました。辺材の脆弱性はイロコに限ったことではないのですが、それでもイロコやモンキーポッドなどのように心材と辺材の色調にコントラストがある木は白太も使ってしまいたくなるものです。

白太があることで心材の色合いがより引き立つという側面もあります、実際イロコの心材部の赤身だけで写真を撮っても、いまひとつ魅力的には見えないのと、チーク感があまり感じられないのではないでしょうか。それが辺材部まで含めて写真を撮ると、その対比で黄茶色の色合いが際立ちます。見る角度によってはチークのような黄金色に見えたりして、なるほどチークの代用品として求められるのも納得。ただし見る角度によってはチークとはまったく異質のように見えたりもする不思議な木。

今回入荷したものは材木屋が長期間在庫していたもので、よく乾燥していて表面はすっかり退色してはいますが、表面をひと削りすれば新鮮な表情が現れます。触ると独特の脂質感があります。チークに似ているといっても、インドネシアなどの植林チークではなくて、ミャンマーの天然チークに近いような趣きがあります。チークの代用品として仕入れたわけではないので、『アフリカンチーク』なんて借り物の名前でなくて、堂々と『イロコ』として売っていくつもりです。そういえば市場でも「イロコ」として売られているのあまり聞かないです。

商業名って材の特徴を端的に言い表していることが多く、頭ごなしに全否定する気はありません。ただし、その際には本名もきちんと伝えて欲しいと思います。本家のチークに比べると価格的にはかなり安いのですが、供給の安定性に不安があるので、家具や小物向けで少量ずつ販売していく予定。問題は、品質に比べると圧倒的に知名度が低いこと。高ければ高いで文句を言われますが、安ければ安いで何か問題があるのではと疑われ。知名度が無い木を売るのは難しい。この機会に名前だけでも憶えて下さい。アフリカ生まれの『イロコ』!




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