森のかけら | 大五木材

今日のかけら036

キリ

キリ(ゴマノハグサ)科キリ属・広葉樹・日本産

学名:Paulownia tomentosa

別名:ニホンギリ

 英語名:Paulownia (パウロニア)

気乾比重:0.19~0.40

 

目に青葉、山ムラサキ、桐の花*

今日のかけら・♯017【キリ/桐】キリ(ゴマノハグサ)・広樹・愛媛産

いままさに山は若葉が茂り目に眩しい季節。最近、たまたま遠方での現場が続き、松山市内から離れた場所に配達や打ち合わせに行く事が多いのですが、その所どころで『山の姿』が気になります。ちょうどこの季節は、若葉が芽吹き山の様子がよく分かります。ブログにも何度もアップしている久万高原町の山は、圧倒的な植林の山なので、殆どを樹形の真っ直ぐなツンツンした針葉樹のスギヒノキが占有していて、山全体の形も鋭い三角形です。またどちらも、年中葉を絶やさない常緑樹なので、いつ見ても深い緑色です。

典型的な『林業のために作られた山』で、そこには人工的な作為が感じられますが、つまりは、厳しいとはいえきちんと林業に取り組んでいるという証です。今までは材としての『キリ』にしか興味がなかったのですが、花とか葉、樹形なども知れば知るほど奥が深く面白いです。自分で本を調べるだけでは意味も分からない事も多かったのですが、数年前から愛媛大学農学部の「樹木博士講座」に参加させていただいて、互生とか対生とか根本的な基礎を教えていただいてからは、より興味が湧くようになりました。改めてきちんと基礎を学びたいという衝動はあるのですが・・・基礎のかじりだけでも充分に楽しめます。対して、連休中に帰省していた西予市の更に奥のほうの山は、驚くほど色彩豊かです!まるで『山の絨毯(じゅうたん)』と思うほどに華やか!

シイ、クヌギ、ミズナラ、クスノキなど多くの広葉樹が混ざり合い、深緑、薄緑、黄緑、白色、いろいろな色彩を形成しています。しかしこれだけ広葉樹の樹勢がいいということは、林業としては手入れが充分に出来てないという事でしょう・・・例外もあるでしょうが、彩り鮮やかな山ほど、人の手が入っていないというのは皮肉なことです。何もしなければ自然は充分に美しいということです。【キリ】は材としても有用な木で、用途は実に広く多くの分野で使われています。

すぐに思い浮かぶのは、下駄でしょうが、最近下駄履きの方は見かけなくなりました。国内の産地としては福島県の会津地方ですが、以前に会津に行ったときにも林業関係者の方が、いまや大径木の良質なキリはかなり激減したと仰っていました。価格優先で中国産などに市場を奪われました。しかし中国産のキリは経年変化で黒ずんできてキリ本来の光沢は望めません。キラキラ輝くような独特の光沢は国産のキリならではです。『キリには多くのエピソードがあるのですが、あまりにも多いのでエピソード部分はまた改めて。

*******************************************

エコマテリアル『大五桐』*

全国各地で猛暑が続いておりますが、ロシアでも100数年ぶりに記録更新する暑さだとかで、もはや異常気象とは呼べないほど恒常化しつつある世界の気候です。これから生まれてくる子供たちにとっては、これが当たり前の世界になっていくのだと思うと背筋が寒くなる思いですが、「常識」とか「普通」という概念は、気候だけでなく人間の内部からも随分変化してきているような気がします。そんな思いも無関係に、弊社事務所の前の『』の木は、酷暑何するものぞとばかりにグイグイ伸びています。以前にもブログでアップしましたが、この桐は植えたわけではなくて、飛来した種か、鳥の糞に紛れ込んだ種がちゃっかり根付いたものです。異常なほど樹勢が盛んなので、毎年伸びすぎて電線に引っかかりそうになるので、可哀想ですが毎年根元から伐らざるを得ません。しかし、可哀想に思っていたのも最初の1年だけでした・・・。

なぜなら、根元からバッサリ伐っても、半年もすれば元も姿に復元してしまうのです!「嘘~!」と思うほどの生命力です。しかも特別に水を与えているわけではないのですが、これがよく出来たもので、外の水道の排水口の傍に生えているので、別の用事で水を使うたびにちゃっかり自然と水を補給できているのです。まあそういう環境だからこそこの場所に根付いたのでしょう。大きく育てようと懸命に水を与える木は思うように大きくならず、ほったらかしの桐はたくましく大きくなる。何かの暗示であるような・・・。

それが実は偶然にも、桐の特性と見事に合致していたのです。桐は排水の良い肥えた土地を好み、風当たりが弱く、日当りはよい方を好むが西日は嫌うという性質で、これはまさに弊社の桐の生えている場所そのままです!そして、腐りやすいので剪定は必要ないのですが、苗木を植えた翌年、翌々年に根元から伐ると、新芽が出て枝下の長い良材が育つという、手入れのイロハをたまたま実践していたのです。偶然が重なり、桐が加速度的に成長していたとは・・・!また、桐の和名の「キリ」も、木を伐るとすぐに芽を出し早く成長する事に由来するといわれていますが、名は体をあらわしますな~。

そういう欲の皮の突っ張った人間を諌めるためかどうか、桐は生長が早い分だけ寿命は、せいぜい30~50年と短いのです。短く太い人(樹)生です。葉っぱは対生で、葉縁に鋸歯はありませんが、左の画像のように葉先が3~5裂するものが多いようです。何気なく取った下の方に生えていた桐の葉っぱで、この大きさ!特別に大きな葉っぱではありません。寝ている息子の横において大きさの比較ですが、あまりの大きさに何かCGのような違和感を感じるかもしれませんがまぎれない真実です。さて、そんな桐の葉っぱはデカイ!異様なほどデカイです。この道路沿いでも、会社の庭先に桐が育っている所が散見できますので、元々は同じ仲間かもしれませんが、うちの葉っぱが一番大きいような・・・

別に競っているわけではないのですが、水分たっぷり、やや日陰、(1年間は)放置される、と生育条件が揃っているのでしょうか。いっそのこと今年からは伐採は止めて、数年サイクルで大きく育てて製品として販売しようかしら?これぞ究極のエコロジアルなマテリアルです!右の画像は昨年伐採した幹です。幹もなんだか毎年少しずつ大きくなっているような・・・。これ、本当に育てようと思えば、5年もすれば相当の大きさに育つのではなるのでは!5年後に伐採、製材して製品になった時、『産地・大五木材敷地』なんて産地証明を書くことになるのでしょうか。名前も『大五桐』とか付けたりして・・・ああ、夢は広がる、桐の葉のように!

念のため、熟睡する息子の背中に乗せてみました。ああ、何だか余計に作り物っぽい画になってしまった!まあ、それぐらい大きいということです。ケチ根性と好奇心を両親に持つ【森のかけら】の製作者としては、こんな面白そうな桐の葉っぱを見てると、このまま朽ちさせてしまうのはもったいないと思ってしまうのです。樹皮は染料に、葉は防虫用に、炭は絵画用や眉墨にも利用されているようで、みんな骨までしゃぶっているなあ・・・さすがは日本人!さて、そんな桐の木ですが、肝心の材の方はどうかという事については、また後日詳しくアップさせていただきます。

*******************************************

あれよあれよと桐一葉*

今までにも何度か紹介させていただきましたが、弊社の事務所と歩道の間にあるわずかな隙間に『』の木が生え始めたのは10数年前の事。鳥の落とした糞の中に種でも入っていたのか、風に運ばれてきたのか定かではありませんが、気がついたら事務所の窓からその影が映るようになり、いつの間にやら2階のショールームの窓と同じ高さにある電線を脅かすほどに成長。1年間でドンドン大きくなり、その葉は人の顔よりも大きなサイズになります!右の写真は少し前のものですがリアルなサイズです。

さすがにあまり大きくなると電線にも接触したり、歩道にはみ出してくるので伐採するのですが、1年もすればたちまち元の大きさに復元。桐の木は伐れば伐るほどに大きくなる木で、今では幹の元部分は直径1尺(約300㎜)ほどにもなっています。事務所の前に水道があり、雨が降らなくても水道から流れ出た水のお陰で潤沢な環境にあるため、成長を促しているのかもしれません。根っこの方からは株分けした『ひこばえ』まで生えてきて、その不屈の成長力には驚くばかり!とても木とは思えないスピーディな成長力は、木ではないほど凄まじいが木と同じ事から『』という漢字が当てられたとの俗説もあるほどにスーパーエコロジカル。特に夏場の成長力は半端ではなく、一気に枝葉を伸ばしてくるので、思い切って根元から1mぐらいの高さのところでバッサリと伐りました。

その辺りでも直径は4~4,5寸(120~135㎜)ぐらいはあります。上の写真を見ると、残った幹の下半分あたりで色合いが変わっているのが分かると思いますが、その境が過去の伐採跡です。そこから伸びた幹の太さはは少し小さくなっていますが、その分根元が膨らんだようです。事務所の壁と歩道との間のスペースは、鉄の門扉の引き込み口でもあるので、いつもは門扉が収まっています。そのため桐はそのスペースで最大限に大きくなるために、その身を楕円に変形させて成長。恐れ入ります!

嘘のようですが、上の伐採から22日後の姿がこれ㊧。更に勢いを増したような大きな葉が猛烈な勢いで切り口を覆い隠しています。あっという間に切り株は緑の葉の中に包み込まれ、再び気がついた頃には、伸びた葉の上から幹が顔を出してくるのです。まるで『風の谷のナウシカ』のオウムの触覚のように、葉に隠された中で何からの治癒が行なわれているかのごとく。毎度毎度繰り返されるこの光景を見ていると、1日ごとに固定写真を撮って、奇跡の成長力を早送りで見たいなと思うのです。

毎日見ているとなかなかその変化に気付かないものですが、改めて2枚の写真を並べて見比べると2週間少しでこの変化は劇的!木というよりは非常に大きくて元気な観葉植物のような感覚です。この写真の段階で、既に最上部は私の背丈ほどもあるので、半年もすれば3mぐらいになりそうです。どの桐でもこれぐらいの樹勢があるのか、ここに根付いたこの桐だけが特別なのか分かりませんが(この地の地下から妖しい養分を吸い上げて・・・?!)、これだけの成長が見込めるのであれば、桐の木だけを植えた『桐山』もありかななどと夢想するのです。問題は、そこから産出された桐材の出口。その出口が定まっていなければ、いくら桐が生長しても意味がありません。桐=押入れの内装や引き出し内板、という従来の枠を越えた「新しい出口」を見つければ、この計画案外無謀でもないかも・・・?!

 

*******************************************

オフィス桐解体新書Ⅰ*

今回伐採した『』がこちら㊨。梢の方は何度も何度も枝を切り落としたので、そこが癒着したように凸凹の瘤状になっています。隣の白いポストは飾り物ですが、それでも高さは1mぐらいはあります。桐の大きさが分かってもらえると思います。白いポストの左隣に立て掛けてあるのが小枝、これで直径が50~60㎜ぐらいでしょうか。伐ってからこういう状態で壁に立て掛けていたのですが、20日以上経過しているにも関わらず、今でも新しい葉が次々と生まれ、成長し続けていうのです。幹の中に蓄えられた水分を糧に生き続けているのでしょうが、恐るべし生命力!うちの桐がここまで大きくなったのも初めての事で、さすがにここまで大きくなると刻んで焼却炉で燃やしてしまうには気が引けます。という事でとりあえず乾燥も兼ねて放置しておく事に・・・。

しかしその後台風接近などの影響もあり大雨が続き、切り口あたりがややダメージを受けてきたので割ってみる事にしました。20日以上経っているとはいえ、大きな幹の隣の小さな枝からも新芽が出てきて青々とした葉が姿を見せていますので、まだ材中の水分は抜けきってはいない様子。家具などの用材にするのであれば、きちんと乾燥させますが、とりあえず中の様子も気になるので、腐朽菌が全身に回って何にもならなくなる前にコンディションを確認。

弊社には製材台車はありませんが、小さな帯鋸はあるので、こんなサイズの木であれば丸太を割る事は出来ます。では、マグロの解体ショーならぬ、『オフィス桐の解体作業』の始まり~!まずは、瘤が幾つも絡み合った梢の方を、割合通直な幹と切り離します。これとて硬い木なら簡単なものではありませんが、この大きさでも手鋸で簡単に切れるのも桐ならでは。予想通り、小口を触るとシットリと濡れています。『命の水』が桐を今日まで生きながらせてきたのでしょう。

桐は中心部に穴の開いている不思議な木です。日本一とされる軽軟さ、木とは思えない成長力、伐れば伐るほど大きくなる復元力などその性質からして、通常の木とは異質です。その乾燥方法も独特で、材中の強い『アク』を含んでいるために、伐採後数年間も雨ざらしにしたり、大きな水槽に沈めてアク抜きをします。ここでしっかりとアク抜きをしておかないと、製材して板にした時、時間の経過とともにアクが滲み出てきます。桐は成長こそ早いものの、それをモノにするには手間隙かかる木でもあります。

*******************************************

オフィス桐解体新書Ⅱ*

結構大きそうに見えた『オフィス桐』ですが、丸みを落とすように製材してみると実際に取れるのはこれぐらいの量になってしまうのです。これとて【森のかけら】のような小物があらからこそこれぐらいのサイズでも使えますが、建築資材や家具材としてはとても使える代物ではありません。森の中で立っている木を仰ぎ見ると、この1本の木でどれほど多くの材が取れるんだろう~と想像を膨らませることでしょうが、実際には丸い物から四角いもの(あるいは板)を取るわけですから、歩留まりは恐ろしく低いのです。

製材するモノにもよりますが、柱や間柱など羽柄材(野縁や胴縁など)を取ったとしても、せいぜい歩留まりで60%もいけばよい方ではないでしょうか。つまり1本の原木を製材して柱などを取ると、材積的(ボリューム)にはおよそ半分ぐらいになってしまうという事です。大きな外材の原木を積んで走っているトラックを見かけることがあると思いますが、丸い物を運ぶわけですから、半分ぐらいは空気を運んでいるようなものです。大きな原木も製材すると、いきなり数分の一の大きさに「圧縮」されてしまいます。

木が立っている姿から考えると、実際に使える部分はとても少なくなってしまうのです。ただし、それは建築材などある程度の長さと大きさ、厚みが要求される材を求めた場合の話。もっとも製材効率がいいのは、丸太をそのまま「タイコ挽き」にする事です。芯の部分は外すか中心で割るか、考えねばないませんが、タイコ挽きすれば、丸太がほとんど無駄なく使えます。弊社では、「今そこにあるモノ」に添って商品を考えていくので、タイコ挽きにしておけばほぼ何にでも対応が利きます。

ただし桐の場合は、このように中心部にはまるで草の茎のような穴が開いていて空洞になっていますので、そこを避けた木取りをしなければなりません。ほぼ中心にあるとはいえ、木そのものが完全に通直というわけではないので、長い材を取るのは容易ではありません。幸いにも【森のかけら】などの小物であれば、短いもので対応できるので、空洞の曲がり具合を見ながらカット。わずかとなった『オフィス桐』ですが、ここから乾燥させて『出口』に辿りつくまでまだまだ先は長い・・・。

ちなみにこちらが、桐のアク抜が不完全で後から材面にアクによる滲(にじ)みが出た壁板の写真です。施工後すぐには分からないのですが、経年変化で顕著になることがあります。桐はその柔らかく調湿性に優れた特徴から、タンスや内装材や引出しの中板、琴や下駄、彫刻材などに利用されています。アク抜きや乾燥出来たものを仕入れていると、当然の事としてついその下処理の大切さ、大変さを忘れがちになります。こういう地味な作業に支えられていることを自覚せねばと反省。

*******************************************

桐から生まれしミニピラミッド*

随分と話が回り道になってしまいましたが、話を元に戻します。田舎育ちというと誰もが少年時代に川や野山を駆け回って、虫や小動物と共生して遊んでいたと思われるかもしれませんが、そんなわけではありません。素手で蛇や蛙などを掴んだりすることに何の抵抗もない、なんてのは偏見。田舎育ちでもインドア派な人間もいれば、蛇どころかバッタやセミすら触ることに躊躇する人間だっています、私のように。そんな私は実際に生きているリアル生物が大の苦手。幼少の頃、犬に噛まれたこともあって、仔犬すら苦手・・・。

そんな私ですので、材木の中に生息するカミキリ虫(特にミニミニモスラである幼虫)などは極力出会いを避けたいところなのですが、とはいっても大切な商売道具を喰われてしまっては大変なので、心では泣きながら感情を押し殺して虫の除去作業をしております。先日も、随分前に生材で仕入れして放置しておいたキリの耳付き板を久しぶりに引っ張り出したら、すっかり耳が虫に喰い荒らされてしまっていました。虫が穿孔したミニミニピラミッドそこかしこに乱立!

もともと他の材との抱き合わせで買ったもので、目的がはっきりして仕入れしたわけではないので、食害されてもたいした影響はないのですが、とはいえこのまま虫の餌食になるのを指を咥えて見ているわけにもいかず、泣き泣き除去作業。生材で樹皮が残っていた事が原因だったのですが、これがもし高価な材とかだったとしたら泣くに泣けません。キリは県内でも結構大きな材が出てきたりして、いくらか在庫もあるのですが出口(用途)がいまひとつ定まらず手に余している状態。

この食害をきっかけにキリの出口を考えてみることに。キリといえば、下駄や琴、箪笥(タンス)が有名です。広島県の福山市は有名な桐下駄の一大生産地で、かつては年間5,600万足もの下駄を生産していましたが、今や自宅に下駄がある世帯もほとんどないのが実情ではないでしょうか。また、下駄の素材としては、弊社のようなところで扱うキリ材なんどではとても対応できませんので、王道である出口以外の新たなキリの出口を模索するしかないのです。それで考えたのが・・・続く。

*******************************************

桐を削る!*

実際にその木を触った事が無い人でも(触った事はあってもそれがそうだとは認識していない事も含めて)『日本で一番軽い木』といえば、大抵の人はその答えが『キリ(桐』だと知っているのではないかと思います。それぐらい認知度のあるのが、キリという木です。しかもその出口といえば、これも実際にそのものに触れたことがなくとも、『桐箪笥(たんす』とか『下駄』とか『』とか、その用途までも答えられるほど、『使われて親しまれている木』というよりも、『語られて親しまれている木』だと思います。

そんなキリの木ですが、生命力は逞しくて、すぐに太くなります。なので一般的に、『お手頃で少し大きめの板』の基準となる直径300㎜(あくまでも私の独断)ぐらいのサイズは容易に手に入ります。成長のスピードが速いので、非常にエコロジカルな木でもあるのですが、成長が速い分材としては軟らかく、箪笥や下駄といった有名な使い方以外では案外お声がかからないというのも皮肉な話。なにしろ軟らかくて軽いので、300㎜を越えるサイズでも簡単に肩に担げます。しかしそれゆえに用途が限定され意外と足が遅い。

キリには灰汁(あく)があるので、昔は水に浸して灰汁抜きを行っていたところもありましたが、弊社にはそういうスペースはないので、天日で時間をかけて乾燥させます。すると灰汁が表面ににじみ出て来て、表面は濃い灰褐色になります。これをプレーナーで強めに削っていきます。通常の木材であれば2,3mmも削れば瑞々しい木目が顔を出してくれますが、キリの場合はなかなかその表情には出会えません。今回はそれも見越して15~20㎜以上削れるぐらい厚みのあるサイズのキリがあったのでそれを使います。これは削る前の写真。

これをプレーナーで削っていきます。幅は450㎜ぐらいありますが、こういう時に軽い素材だと助かります。しかしその分、傷もつきやすいので加工中も細心の注意を払わないと、すぐに傷ついたり凹みが出来たりするので油断は出来ません。熱く削れるといっても一度に5㎜も10㎜も削れるわけではないので、根気よく1,2mmずつ削っていきます。ひと削りすれば表面の汚れは取れるものの、やはりまだ染み出してきた灰汁が残っています。これを時間をかけながら削っていくと、次第に木の色が変わってくるのが分かります。続く・・・

*******************************************

桐を磨く!*

昨日に続いて、『日本で一番軽い木・キリ(桐)』の話。厚めに削ってすっかり綺麗になったキリですが、今回は耳を活かして使う用途なのでディスクグラインダーで耳を削ります。きちんと勉強をしていないので鉋のような精緻な木工道具は苦手ですが、こういうワイルドな道具は大好きです。気分だけでも木工家になったようで、作業中は妄想爆発です!こういう作業をしながら、もともと自分はひとを使うような立場の仕事じゃなくて、こうして独りで黙々と創作活動をする仕事の方が向いていたし、そこを目指していたのですが・・・

作業自体は楽しいのですが、素材が軽いキリで、しかも20年以上も乾かしてカラカラになっていたという事もあって、大量に噴出するグラインダー屑を全身に浴びるので、気がつくと腕も作業着も真っ白。私は眼鏡をかけているのですが、もちろん眼鏡の内にも外にも木粉がビッシリ。マスクは必需品ですが、眼鏡が曇るので、面倒でマスク無しで挑んで撃沈することもたびたび。気管支にも木粉が入ってゲホゲホなのですが、綺麗になった耳を見れば疲れも吹っ飛びます。さあこれから耳を仕上げていきます。

グラインダーでザックリ仕上げた部分を今度はサンダーで耳を磨いていきます。長年使い続けたサンダーは、(自分のイメージの中では)自分の腕と同化したように動いてくれます(あくまで脳内イメージ)、のはずなんですが、なかなか実際にはそうはならなくて、こっちを磨けばあっちが凹み、あっちを磨けばこっちが飛び出しを繰り返しながらどうにか仕上がり。その頃にはすっかり腕は痺れているのですが、デスクワークよりもこちらが向いているなあと思うのは、たまにやるお父さんの日曜大工の感想レベル・・・。

ま、どうにかそうして完成。片耳付きで、室内の踏み台となります。キリは軟らかい素材ですが、使い方の作法さえ守ってやれば、繊細な素材で、内部に空気を沢山取り込んでいるので、触ると木の温もりがほどよく感じられます。スリッパなどではなくて、靴下も履いてない素足で触れてほしいところです。素材の特徴に合わせて、それぞれの木が活躍できる場面は沢山あるはずなのに、価格や手間、利便性、供給安定性などいろいろな事情で木が表舞台に出れないなかで、木の出番を増やすためには、まず木を知ることからですね

*******************************************

復活の桐*

大五木材の狭い倉庫の中にはぎゅうぎゅう詰めに木材が押し込まれていて、スーパーマーケット並みにスペースの奪い合いが日々繰り広げられています。限られた空間を有効に活用するため、いったん鋸が入って割り返された残りの材のような木材は「指定席」から「自由席」に移っていただかねばなりません。天井窓から光が差し込み、いつも明るい場所で目につきやすく木製の台座に上に並べられるVIP待遇から、雨風の影響を受けやすい入口付近、次に差し掛けの屋根の下へと移されていきます。

それまでに早く『出口』を見つけてあげるのが私の仕事なのですが、200種以上もあるとすべての材に目が行き届きません。この木も以前に注文が入って、鋸で大割してあるものに活用したのですが、残った部分が長い年月、差し掛けの屋根の下で過ごしてきました。屋根があるといっても雨や風には晒されているので、すっかり表面は日焼けと汚れで灰褐色になってしまっています。一見すればもうこれは使い物にはならないレベルと思われるでしょう。しかし、私にはまだ勝機がありました。この木ならばまだ使えるはず!

幸いにも、この木の上にも少しだけ違う木材が乗っていたので、壊れかけた雨どいから落ちる雨水に穿たれて朽ちるという状況にはありませんでした。その木を削ってみると、綺麗な木肌が復活!写真では何の木なのか分りにくいかもしれませんが、これは『キリ(桐)』の木です。キリは伐採後そのまま使うと、後からアクが滲み出すので、水に浸してアク抜きをしてから使わなければなりませんが、それが出来るのは桐箪笥などそれなりの出口に利用されるごく一部のエリートのキリだけで、この辺りから出材される小径木のキリにまでその処置がされることはありません。

なので、後からアクが滲み出したりして評価が下がり、やっぱりキリを使うのは止めておこうという悪循環が発生したりするのですが、どこまで手間をかけれるかというのは難しいところ。それがこのキリは、たまたま長い間雨に晒される場所に放置晒されていたことで、いい感じにアク抜けが出来たみたいで、削ってみると以前よりもいい感じの美白。まさに怪我の功名ですが、たまたま素材がキリで、ほどほどに雨風に晒される場所で、運よく出番が巡った来たというだけで、そのまま朽ちていく木も多いので、失意のまま陽の目を見ることがなかった彼らへのこれがせめてもの罪滅ぼし。

*******************************************

カラコロ木琴・桐の音色*

 

ひと削りしてすっかり綺麗になったキリ(桐)ですが、今回はこれを使ったノベルティのご注文を受けており、桐材を適サイズに木取りしていきます。帯鋸でザックリ荒割して、プレーナーで削っていくのですが、ここで取り上げるのはその主となるノベルティグッズではなくて、それを作るために挽き割った残りの端材。通常ならばこのまま焼却炉の灰となるペラペラの薄板。さすがにこれからは【森のかけら】も『モザイクボード』も作れません。この段階で十分に採算は取れていますので処分しても問題はありませんが、

木材の製麺線について私はこう考えています。例え立派な材があったとしても、こちら側にアイデアがなく活かしきれなればそれはゴミであり、有効なアイデアが見いだせればそれは原料となると。それは端材についても同様で、使える原料にするのか、処分すべきゴミにしてしまうのかは、こちらがどれだけ引き出しあるいは出口を持っているか次第。このサイズだと『ストラップ』として有用ですが、現在その在庫はたっぷりとあるので、別の出口に使ってみようと思います。これを集めて丁寧に小割してサイズを揃えていきます。

それで作ったのがこちら。幅40㎜、厚み5㎜、長さは80~150㎜の8種類。小割した端材で取れるだけ取りました。ここまで短いものまで取り切ると、さすがにこれで残ったものには未練はありません。キリは非常に軟らかい木なので、建築用材としてはなかなか使いどころが少なくて、家具だと引き出し内部などに用途はあるものの、それもある程度のサイズ感が無ければ、あまりに小さな材だと使いづらい。有名な用途である下駄や琴は専門性が高すぎて弊社からは結び付かないので、軟らかい性質を活かせるキリならではの出口が見いだせるかどうか。

それでもヒントとしたのは、やっぱり。音楽はもとより楽器についてもまったく知見を持ち合わせはいませんが、昔からその素材に選ばれているぐらいだから音の響きが素晴らしいのでしょう。よく「それぞれの木の特徴を活かした出口を見つけたい」と言っていますが、それは決して斬新なものということだけでなく、昔から親しまれてきた使い道を今風にブラッシュアップさせたり、少し何かを付け足したりするということでもあります。なにしろ先人たちはもうこれ以上は出ないだろうと思われるほど材の特性を絞り出していますから。続く・・・

*******************************************

カラコロ木琴・竜のささやき*

一体どれぐらいの時間をかけて試し尽くしたんだろうと呆れるぐらいに、さまざまな樹種から個別の特性を引き出してきたのが日本人の暮らし。連綿と継承されてきた「トライアイル&エラー」は時代を追うごとに研ぎ澄まされて、この用途にはこの木でならなければならないというルーティンが確立されてきましたが、それは同時に日本人の情緒が生み出した「木の出口」でもあったと思います。私は木の工業的な指数にはほとんど興味がありませんが、先人たちが育み語り継いできた木の物語は大好きです。そこに木の魅力が詰まっているから。

その物語は遠い昔に大陸から日本に木が伝わって来た時に一緒に伝播した話などに基づくものもありますが、その後日本風にアレンジされてすっかり根付いたものもあります。その用途を更に細分化させてマニアックなまでに活用方法を確定させてきたのは日本人の気質。そのDNAが私にも受け継がれ【森のかけら】を作らせたのだと思います。まあそういう考え方なので、出口を探る際にもヒントにしているのは昔からの用途です。桐といえば中国の古い伝説では、空を飛ぶ竜が天から舞い降りて寝そべった姿が琴になったと言われています

そのため、琴の部位には「竜角」とか「竜尾」、「竜足」、「竜舌」、「竜甲」など竜の名前がつけられています。という事は琴の音色は竜の鳴き声か?そんな竜の鳴き声を聴いてみたいというピュアな発想で作ったのが、『カラコロ木琴』。8角形の台座に10㎜刻みで長さの違う8種類のキリの板をボンドで貼り合わせると完成です。この中に木の玉を入れてクルクル回転させると可愛い音色がします。今までにもホワイトオークヨーロッパビーチなどで作ってきましたが、それらの硬質な木に比べると軟性なキリは軽くて軟らかい音色(竜のささやき)がします。

台座はミズナラですが、これはたまたま台座に合うサイズの短材のミズナラがあったからで、決して大きな材から木取りしているわけではありません。いずれ台座も適サイズが集まったら何種類か樹種を増やそうかと考えています。ボンドで貼って簡単に作れるのでワークショップなどで好評を博しているカラコロ木琴ですが、以前からいろいろな種類の木で作ってみたいと思っていたのですが、少しずつそれ用に貯めていて端材が揃ってきたので、今後いろいろな種類のカラコロ木琴を作って、それぞれの音色の違いを楽しみたいと思っています。




Archive

Calendar

2020年4月
« 3月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930