この木は【森のかけら240】には含まれていないものの、庭木や街路樹などに植えられていて日常生活でよく見かける木です。成長すると樹高30mにもなる常緑高木ですが、建築用材として利用された話は聞いたことがありません。タイサンボクは漢字では、『泰山木』と表されるのですが、泰山とは中国の山東省中部にある標高1524mの山で、中国五岳のひとつとされ、地元では霊山として信仰の対象となっています。1987年に世界遺産(複合遺産)にも登録され、『岱宗』とも表わされます。 |
タイサンボクには純白で芳香のある大きな花が咲くのですが、その花の高貴で美しいさまを、霊山たる泰山に例えたのが名前の由来だとされています。また花は直径が150~300㎜にもなるほど大きく葉も同様に大きいことから、大山(タイサン)のようだという意味から『大山木(タイサンボク)』とか、花弁を盃に見立てて『大盞木』などと表わされることも。『ホオ(朴)』と同じモクレン科モクレン属の木であることから、白蓮木(ハクレンボク)や常盤木蓮(トキワモクレン)の別名もあります。 |
星の王子様の木・バオバブ
2014年 10月 29日 水曜日 at 11:43 PM 1. 今日のかけら
★今日のかけら・番外篇020 【バオバブ】Baobab パンヤ科・広葉樹
先日テレビを観ていたら、あるクイズ番組の問題に『バオバブの木』が出ていました。南アフリカのにある国立公園にバオバブの木があるのですが、そのバオバブの木が最近次々に枯れるという被害が発生しているのだが、その理由は何か?というクイズでした。ご覧になられた方もいらっしゃると思いますが、材木屋の性としてテレビなどで『木』とか出てくるとついつい見入ってしまいます。まあ、見てなくても子どもたちから「お父さん~、木の事やってるよ〜」と声がかかるのですが。
その答えというのが、昔に比べてその一帯の気象環境が変わってきていて、昔はかなり雨が降っていたのに最近は雨量が激減しており、慢性的な水不足にあるという事。それで、喉を枯らした象が、鋭い牙を使ってバオバブの木の幹を傷つけ削り取り、材中に蓄えてあった水分を吸っているためバオバブの木が枯れるという事態になっているのだという事でした。象が幹をバキバキに削る衝撃的な場面が映し出されていましたが、バオバブは水分を多く含み軟らかいとは聞いていたもののこれほどとは・・・!
繊維質が多いのだと思いますが、現地では樹皮がロープや布、織物としても利用されているそうです。またその実は食料や薬にもなり、樹齢が500年を越えるような大木の中に開いた大きな空洞は天然の貯蔵庫としても利用されるほど現地の人々の暮らしに密接な関わりがある木なのです。ただし水分が多く軟らかすぎる事から、用材としてはほとんど適性が無いと聞いた事があります。有史以前からひとの暮らしを支えたこの木の「今そこにある危機」は悲痛ですが、自然界の掟は冷徹でもあります。
動物たちも生きねばなりません。『レモネードツリー』(酸味がある特徴的な味が名前の由来)の別名を持つ水分豊かなバオバブの木に動物たちが群がってくるのも至極当然の事で、それが食物連鎖という事でしょう。普通に生えていた木を根ごと引き抜いて逆さまに植えたと表現されるそのユニークな姿から、どうしてもバオバブの木が被害者で、象が憎き犯人のような構図で考えてしまいがちですが、彼らの仲間を大地から伐り離し、引き裂き加工している我が身を省みれば自然の摂理に口出しなど出来ようはずもなく・・・
星の王子様の木・バオバブ②
さて、バオバブの木の続きですが、本日は具体的にその木について触れてみます。私たちがバオバブと聞いてイメージするのは、上下を逆さまにしたような造形の姿(アップサイドダウンツリーとも呼ばれます)ですが、実はバオバブというのは複数の木の総称なのです。アフリカに1種類、マダガスカルに固有種が8種類、オーストラリアに2種類が存在していて、先日テレビで放送されていたのは南アフリカの国立公園でしたので、Adansonia digitata(アダンソニア・ディギタータ)というアフリカ原産種。
マダガスカルのモロンダバ郊外にある「バオバブ・アベニュー(バオバブの並木道)」に呼ばれる小道に巨大なバオバブが立ち並び、違う星にでも来たかのような錯覚を覚える光景はよくテレビなどのメディアでも紹介されていますが、こちらのバオバブはAdansonia grandidieri(アダンソニア・グランディディエリ)という種類で、アフリカのそれとは少し印象が違います。高さは20m、直径10m前後で、平地を突き破って地下から生えてきたような違和感のある姿はなんとも不思議に思えてなりません。
フランス人のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリが書いた小説「星の王子様」に登場するバオバブは、アフリカ原産種だと言われています。主人公の「ぼく」の操縦する飛行機が不時着するのがアフリカのサハラ砂漠ですから、間違いないと思いますし、確かに有名な挿絵に描かれているのも、背の高いマダガスカル産ではなく、ずんぐりむっくりとしたアフリカ産のようです。名前だけならほとんどの人が知っているであろうこの超有名な小説ですが、恥ずかしながら私は完読した事がありません。
実は文庫本まで持っていて何度も挑戦しているのですが、最後まで読み切った事がないのです。体裁は児童文学ということになっていますが、最初に出会った小学生の頃に感じた「翻訳の言葉のリズムの違和感」に体が拒否反応を覚えてしまったのと、何だか抽象的というか哲学的というか回りくどい言いどうしても馴染めず途中で投げ出してしまった事がトラウマとなっていて、おとなになってから何度も挑戦しているのですが(バオバブの木のネタとして)、どうしてもうまく着陸できないようで・・・。
星の王子様の木・バオバブ③
商売人ですからまったく打算が無いわけではありませんが、それでも日頃からアフリカの木も扱わせていただき生活の糧とさせていただいている身としては、枯れるバオバブが残念でなりません。例えばその軟らかなバオバブで何かしらの商品を作って、売り上げの一部をバオバブの保護などに充ててもらうとか、あるいはフェアトレードのようなものでも出来たらなどと妄想は広がるのですが・・・まずは「星の王子様」の完読を目指しましょうか。ちなみにバオバブとは、アラビア語で『果実が多い』という意味に由来しています。