石鎚山のイベントで出会った木のひとつが、この『リョウブ(令法)』です。【森のかけら】の日本の木120種の最後の120番目の木(アイウエオ順)がこのリョウブです。よく、「【森のかけら】にリストアップしてある木は全部使ったことがあると思うのですが、その中でもっともOOな木は何ですか?」という質問を受けることがあるのですが、『かけら』に加工した事はありますが、それら全ての木を建築用材や家具、クラフトなどに活用しているというわけではありません。
石鎚山のイベントで出会った木のひとつが、この『リョウブ(令法)』です。【森のかけら】の日本の木120種の最後の120番目の木(アイウエオ順)がこのリョウブです。よく、「【森のかけら】にリストアップしてある木は全部使ったことがあると思うのですが、その中でもっともOOな木は何ですか?」という質問を受けることがあるのですが、『かけら』に加工した事はありますが、それら全ての木を建築用材や家具、クラフトなどに活用しているというわけではありません。
【森のかけら】を作るぐらいのサイズ、例えば長さ500㎜で40~45㎜角ぐらいのものであれば入手出来ても、少し大き目の板材になると途端に入手困難になる木は沢山あります。このリョウブもそのひとつで、今まで多くの『リョウブのかけら』を販売してきましたが、恥ずかしながらいまだにこの木の『かけら以外』の材を扱ったことはありません。なので、この木の特性についても実感が伴っていません。【森のかけら】を作るまで、まあ今でも私にとっては縁遠い木のひとつ。
幹の樹皮が剥げ落ちると茶褐色で平滑になって『サルスベリ(百日紅)』のようになるので、そのまま床柱に使われる木です。北海道の南部から日本全国に分布し、尾根沿いなどの日なたを好む木だそうですが、私は石鎚山で初めて立木を見ました。そこで見かけたリョウブは結構な大きさのモノで、ネームプレートに「材は柄などの器具に使われる」との解説もありましたが、これぐらいの大きさがあればクラフト細工には十分。まあ、伐採せずに保護しているからの大きさだと思います。
だからといって伐採して使えればなどとは思いませんが・・・。確かに樹皮が部分的に剥がれてサルスベリのような趣きがありますが、私の知り限りのサルスベリよりは随分と大きいように感じました。材が干割れしない特徴があるということで、柄や床柱以外にも輪切りのまま工作用材や薪炭などにも利用されるそうですが、自分には縁遠かったこの木をなぜ【森のかけら】に加えたかというと、その変わった名前に惹かれたからに他なりません。明日は、この変わった名前の由来について。
2016年 5月 14日 土曜日 at 9:56 PM 1. 今日のかけら
石鎚山で出会った落葉高木『リョウブ』について。漢字で書くと『令法』と表わしますが、その名前の由来について植物学者の深津正氏によると「律令国家末期のあたる平安時代の初期から中期にかけて、農民たちに対して田畑の面積を基準として、一定量のリョウブの植栽及び葉の採取と貯蔵とを命ずる官令が発せられるのですが、この官令(令法)がそのまま木の名前になった」もので、当初は「リョウボウ」と呼ばれていたのが、後に転じて「リョウブ」になったと記されています。
愛媛県内ではさまざまな別名があるようで、この木の樹皮が薄いことから「ウスカワ」、夏に咲く白い小花をツツジの花に見立ててそれが枝先から穂のように長く伸びた様子から「オオツツジ」、樹皮が剥げて表面が平滑になってサルも滑るという意味で「サルスベリ」などの別名があります。また地域によって「リョウブナ」とか「ビョウブナ」など語尾にナ(菜)がつく方言名でも呼ばれるようですが(川之江や新居浜等)それは若葉を菜として食用にしたことに由来しているそうです。
このリョウブの古名は『ハタツモリ』といいますが、その名前の由来もリョウブと似ていて「ハタツモリ」のハタは畑、ツモリはあらかじめ見積もった量のことで、つまりハタツモリとは田畑の面積に応じて割り出した作物を植え付ける量のことで、『令法』と同じくかつて政府が飢饉の際の非常食として、この木の若葉の採取と貯蓄を奨励したことが語源となっているという変わり種の木です。ところがリョウブの花は5~8年に一度しか咲かないという事でその花を見るのはかなり貴重。
かつては救荒植物でしたが、最近ではリョウブのハチミツなども人気だそうですが、なにしろ5~8年に一度しか採取できないそうですからかなり貴重。政府が採取と貯蓄を奨励し、それが正式な名前になったのも頷けます。古い書物にも「令法とはもと田穀をおろしける其分量の目名なり、田人(たみ)の辞にこれを畠賦(はたつもり)といへり、(中略)また糧賦の字音と令法の音便と通したるこころあるべし」と、あるように名前の根拠だけでも【森のかけら】に加わる資格十分です。
さて本日は『リョウブ(令法)』の木としての特徴について。前日も書いたように、【森のかけら】を作り始めてから手にしたぐらいで、私自身馴染みも薄く活用事例もほとんどありません。森のかけらとして35㎜のキューブに加工して初めてその仕上がりの色合いや触感を知ったぐらいなのです。もしかしたら昔に樹皮が剥げて鹿の子模様になった『サルスベリ』の名前で使っていた床柱や変木丸太などの中には、このリョウブが混ざっていたのかもしれないなんて思ったりもするのです。
用材として身近でもないリョウブなのですが、私にとっては別に意味で馴染みがあります。それは、この木が【森のかけら】の日本の木・120種の120番目の木だから。この順番はアイウエオ順で3桁の番号が割り振られているのですが、ラ行の木は『リュウキュウマメガキ』とこのリョウブだけです。【森のかけら】をお買い上げいただいた際には、必ず120種のリストと照合していくのですが、その時一番最後に読み上げるのが『リョウブ』なので、その名前だけはいつも耳にします。
名前はよく知っていても、実物はよく知らないなんて木は『リョウブ』だけにとどまらず、恥ずかしながら沢山あるのです(逆に外国の木・世界の120種の方が実体験が伴っていたりします)。あるきっかけで、今まで近くにあっても気が付いていなかったモノが急に見え始めるようになって、そのものが突然身近に感じられるようになることってよくあるのですが、石鎚山で立ち木に出会ったことでリョウブももしかしたら、「120番目の木」から「もっと身近な木」になるかもしれません?!
〔補足解説〕
リョウブは、関西の里山ではどこにでもありますが、亜高木で、太いのは見ません。薪として使えるので、昔は薪炭林で残して使ったと聞きました。ニホンジカがこの樹皮を好んで食べるので、不思議に思って学生と一緒に内樹皮をかじったところ、苦味渋味がないのです。さらに不思議なことに、この木は樹皮を剥がれても枯れません。目立たないのに個性豊かな樹種です。(神戸大学大学院農学研究科 黒田慶子教授)※黒田先生から補足解説をいただきました。
★今日のかけら・#017【犬槇/イヌマキ】 マキ科マキ属・針葉樹・宮崎産
★今日のかけら・#017【犬槇/イヌマキ】 マキ科マキ属・針葉樹・宮崎産
以前から、造園屋さんが街路樹などの伐採作業しているのを見ると、あのプラタナス手に入らないかなとか、あのカイヅカイブキ捨ててしまうなんてモッタイナイなんて思っていました。当時は造園屋さんの知り合いがいなくて、指を咥えて見守るしかありませんでした。たぶん声をかければ分けていただく事もできたのでしょうが、こちらとしてもどんな木でもどんなサイズでもいくらでも欲しいというわけでもなくて、必要な木だけが必要な時期に欲しいので、迂闊に声をかけてもどうなのかと・・・
それがこの数年でひょんな事から市内の複数の造園屋さんと次々にご縁が出来て、事前にこちらの要望を伝えている事もあって、「今度、前から欲しがっていたOOの木を伐るけどいる?」なんて痒いところに手が届くようなお話をかけていただく事が増えて大変ありがたいのです。そういう木は、小さく割り返して桟積みして数年間天然乾燥させて、大きさに合わせて【森のかけら】や『モザイクボード』等々に加工していきます。先日も、市内の某所で伐採した木を分けていただいたのですが、
その中に『イヌマキ』がありました。これはありがたい!そもそもイヌとかカラスなどの動物の名前が頭につく木というのは、同属の主たる木に対してそれよりも劣るという意味で、その種を卑しんでつけられたもので、イヌマキもコウヤマキに対して同様に耐水力があったりするもののそれよりもやや劣るとしてイヌという言葉が頭に冠されたものだとされています。ちなみにコウヤマキが自生しない地域では、イヌマキの事をマキと呼ぶ場合、あるいはコウヤマキをホンマキと呼んで区別する事もあります。
植物学者・南方熊楠によれば、耐湿性の高きコウヤマキの別名がホンマキであるため、それよりも劣るが同様に耐湿性もあり、葉の形も似ている事からイヌマキの名がついたとされています。万葉集などで使われる古語のマキは、本来「まことの、優れた」という意味のマ(真)であって、スギやヒノキを指し示していたそうなので、少し話は複雑ですがいずれにしてもイヌマキの評価はその命名の由来から考えても決して高いモノではなかったようです。しかし【森のかけら】においては貴重なワンピース!続く・・・。
さて本日も『イヌマキ』の話ですが、名前の命名からは随分と卑下されたものの、材としては非常に有用な木として活用されてきました。高さ20m、直径500㎜ほどになる常緑の針葉樹で、大きなものになると直径が1m近くにまで成長するものもあるらしく、関東以西の太平洋側や四国、九州、沖縄などに広く分布しています。四国にも沢山生えているらしいのですが、木材市場に出てきたのを見たことがありません(広葉樹に関心の薄い愛媛の市場では、十把一絡げに雑木扱いされてしまうので)。
耐湿性が高いだけでなくシロアリに対しても強い抵抗性を発揮する事から、土台や柱などにも利用されるのですが、特にシロアリの多い沖縄では古くからイヌマキが使われ、その歴史は実に100年以上に及ぶとされています。コウヤマキの薬草のような匂いはしないものの、イヌマキにも独特の臭気がありますが、それと含有成分がシロアリに対して強い抵抗性を持っているらしく、土台や柱などの建築材に限らず家具や風呂桶、桶、屋根板、呑口(のみあなを塞ぐ栓)などにも使われます。
また潮風にも強い事から生け垣や庭園木としてもよく植えられていて、鹿児島の知覧の武家屋敷通りの立派なイヌマキ生け垣は有名です。以前に業社会の旅行で訪れた際には、立派で風情のあるイヌマキの生け垣と石垣の光景を目にしたものの、当時はまだイヌマキに対して今ほど関心が高くなく写真も撮らなかった事が今となっては悔やまれます。今回入手出来たイヌマキは一家庭の庭に植えられていたもので、そう大きなものではないためせいぜい【森のかけら】が取れる程度のもの。
それでも板になる前の状態(丸太)で出会えて、そこから順を追って板になるまでの過程を見続けられるという事は、材の特性を知る上でも貴重な経験です。うちは製材所ではないので、基本は板材での仕入れとなるため、元の姿を見る事は稀でした。最近は愛媛の木を原木で買ったり、庭園木をいただく事も増えて、立木や原木の姿を見る機会も増えたのですが、木を語るうえで『はじまりの姿』を知っておくことはとっても重要ですし、その端材まで大切にせねばという思いがますます強まるのです。
では実際に分けていただいた『イヌマキ』の丸太を挽いてみます。しっかり乾かせるためにも、手に入った後はなるべく早めに挽いてしまう事は肝心です。住宅の庭に植えていたようなイヌマキですので大きなモノではありません。造園屋さんが長さを1m~1.5m程度にカットしていただいています。直径は尺足らず(約250㎜前後)ですが、【森のかけら】などの小物を作るには充分なサイズです。伐採して2、3日経った状態ですが、小口を見ると白っぽく見えます。
ところが一面削ってみると、水分をたっぷり含んだ瑞々しい表情が現われます。イヌマキに限らず、伐採直後の生しい状態では、乾燥した時のそれからは想像も出来ないほどに濡れ色の別人顔です。水分が多い方が挽きやすいという事もありますが、虫の割れの事なども考えると、なるべく早い時期に挽く必要があります。これぐらいのサイズになると、節の具合や幅を見ながら、【森のかけら】にしようとか、『モザイクボード』にしようかとか、好みに合わせて挽けるのが嬉しいところ。
今回は、『森のりんご』狙いでしたので、普段よりも少し大きめに挽きました。下の画像は、挽いてから風通しのいい日陰で2,3日放置しておいたもの。水分が抜けて表面の淡いオレンジの濡れ色が灰褐色に変化。ただし、まだ完全に乾いているわけではないので、これをまた削り直すと内部はまだ湿っていますが、これぐらい(65×65㎜程度)のサイズであれば、一か月もすればすっかり乾いて内部まで同じような色合いになります。
弊社ではこの角材の他にも、九州は宮崎県産のイヌマキの板材を幾つか在庫しています。愛媛では材としてはほとんど認知度の無い木ですが、九州(特に南部)では馴染みがあるそうで、平成24年~平成25年にかけて行われた旧首里城守礼門の保存修理工事でもイヌマキが使われました。琉球王国時代に建造された首里城には、シロアリにも強くて耐久性の高いイヌマキが沢山使われていたため、今回の修復でもイヌマキを使おうという事になったのですが、沖縄にはそれだけのイヌマキがありませんでした。続く・・・
沖縄の旧首里城守礼門の修復工事で求められた『イヌマキ』ですが、生憎沖縄では手配できず鹿児島や宮崎などの九州各地の県から供給してもらい事無きを得たそうです。琉球王国時代は、イヌマキを計画的に植林して定期的な修復用に備えていたらしいのですが、その後植林事業が継続されず今回の事態となったようで、復元作業を契機に4000本の苗木を植えて、50年か100年先の修復の対応しようという試みがされているそうです。イヌマキに限らずこの手の話は多々あります。
始めてイヌマキの材を買ったのは20数年も前の事ですが、その頃はイヌマキに対する知識も関心も薄くて、それこそ『コウヤマキのまがいもの』なんてぐらいにしか考えていませんでした。なので、欲しくて買ったというよりは欲しいものとセットになっていたので仕方なく買ったという感じだったのですが、今にして思えばもっと買っておくんだったと強く後悔。そういう経験があるので、今は一期一会の出会いを大切にして、気になった木はとりあえず買っておくようにしています。
まあ、そんな事をしているからドンドン在庫が増えていってしまうのですが・・・。しかし、これからも国産材のちょっと珍しい木はますます入手が難しくなってくるのは間違いありません。材そのものが少なくなっているという事もあるでしょうが、それ以上に深刻なのはそういうレアな木を取り扱う業者の数が激減してしまっているという事。以前からお世話になっていた宮崎ルートもほぼ壊滅的となり、マニアックな国産広葉樹の道は絶たれたかと思っていたのですが、捨てる神あれば拾う神あり。
拾う神の話はまた改めてする事としますが、そんな宮崎からかつて仕入れたイヌマキな材が幾つか残っております。大き目の板はほぼ売り切ってしまったので、薄い板や小さな角材が主ですが、イヌマキについては次の供給ルートが見つかるまでは、販売用としてではなく、自社のオリジナル商品のための貴重な原料として保存しておかねばなりません。わずか35㎜角の【森のかけら】といえども、材が無くては話にならず。そんな【森のかけら】ももうすぐ累計で700セットになります!